メニュー

「2か月前に、軽く頭を打ちました」〜"治せる認知症"とも呼ばれる慢性硬膜下血腫の見分け方を理事長 五藤良将が解説〜

[2026.09.27]
CHRONIC SUBDURAL HEMATOMA
「2か月前に、軽く頭を打ちました」
〜“治せる認知症”とも呼ばれる慢性硬膜下血腫の見分け方を理事長 五藤良将が解説〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)より、頭を打ってから1〜3か月後にあらわれる「もの忘れ・片側の力の入りにくさ・歩きにくさ」の正体と、頭部CT1枚で見つかり手術で治せるという事実を、わかりやすくお伝えします。

慢性硬膜下血腫 治せる認知症 頭部打撲・転倒 脳神経内科・認知症外来

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「この1か月で、父が急に別人のようになりました。言葉が出にくくて、日中もぼんやりしていて、右足が引っかかるようになって……もう認知症が始まってしまったのでしょうか」。センター南の認知症外来には、こうしたご相談が毎週のように届きます。そのとき私が必ずお尋ねするのが、「ここ3か月のあいだに、頭を打ちませんでしたか」という一言です。

結論からお伝えします。数週間から数か月かけて「もの忘れ・意欲の低下・片側の手足の力の入りにくさ・歩きにくさ」が進んできた高齢の方では、慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)をまず除外しなければなりません。これは多くの場合、頭部CTを撮れば見つかり、局所麻酔の小さな手術で治せる、数少ない「治せる認知症」です。

本記事では、なぜ打撲から1〜3か月も経ってから症状が出るのかというしくみ、ご家族が気づける具体的なサイン、なりやすい方の条件(お酒・抗血栓薬・脳の萎縮)、そしてアルツハイマー型認知症・脳梗塞・特発性正常圧水頭症との見分け方を整理します。あわせて、穿頭(せんとう)ドレナージという標準治療と、再発を約3分の1に減らした2024年の大規模ランダム化比較試験までを、旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた当院の視点でお伝えします。

THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY

医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将

日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医
この記事は五藤 良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。

📖 目次

  1. 慢性硬膜下血腫とは|脳と硬膜のあいだに「じわじわ」たまる血だまり
  2. 日本では年間10万人あたり20.6人。最も多いのは80代です
  3. なぜ「打った直後」ではなく「1〜3か月後」に症状が出るのか
  4. 見逃されやすい4つのサイン|頭痛・片側の脱力・もの忘れ・歩きにくさ
  5. なりやすいのはこんな方|お酒・抗血栓薬・脳の萎縮・男性
  6. 「治せる認知症(treatable dementia)」の代表格である理由
  7. 似ている病気との見分け方|脳梗塞・正常圧水頭症・アルツハイマー型
  8. 診断は頭部CT、治療は局所麻酔の小さな穴|再発予防の最新治療まで
  9. ご家族ができること|受診の目安5つと、転倒を防ぐ暮らし方
  10. 🔁 3軸クロスポイント(糖尿病×認知症×抗加齢)
  11. センター南で診るという選択(当院が選ばれる理由)
  12. 関連ブログ・関連クリニック
  13. よくあるご質問(FAQ)

1. 慢性硬膜下血腫とは|脳と硬膜のあいだに「じわじわ」たまる血だまり

脳は、外側から順に「頭蓋骨 → 硬膜(こうまく)→ くも膜 → 脳」という層に守られています。慢性硬膜下血腫とは、この硬膜と脳の表面のあいだ(硬膜下)に、時間をかけて少量の血液がたまり、やがて脳を外側から押しはじめる状態です。

同じ「硬膜下の血のたまり」でも、交通事故のような強い衝撃で数時間のうちに脳を圧迫する急性硬膜下血腫とは、まったく性格が異なります。慢性硬膜下血腫の血だまりは、多くの場合しょうゆのような色をした、さらさらした液体で、たまるまでに数週間から数か月かかります。だからこそ「ある朝、突然倒れる」のではなく、ご家族が「そういえば、この1か月で変わった」と振り返って気づくという、独特の現れ方をします。

💡 まず押さえていただきたい3点

  • ゆっくり進むため、脳は押されながらも順応してしまい、痛みや麻痺が出るのが遅れます。
  • 片側だけに起こることが多く(両側は約10%)、症状も左右どちらかに偏ります。
  • 原因を取り除けば元に戻る——ここが、進行を止めることが治療目標となるアルツハイマー型認知症との決定的な違いです。

2. 日本では年間10万人あたり20.6人。最も多いのは80代です

「めずらしい病気なのでは」と思われるかもしれません。ところが日本の全国規模のデータを見ると、慢性硬膜下血腫は高齢者の脳の病気のなかで、けっして少なくないことがわかります。

📊 日本の全国データ(Journal of Neurosurgery 2017/全国診療データベース 63,358例の解析)

  • 日本での年間発生率は10万人あたり20.6人。
  • 患者さんの78.2%が70歳以上。年代別では80代が36.8%で最多、次に70代が32.9%、90代が8.5%。
  • 男女比は約2.2対1で、男性に多い(男性68.4%/女性31.6%)。
  • 90代以上では、入院時に約4分の3の方に意識の障害がみられました。発見が遅れるほど、状態が重くなってから受診していることを示す数字です。

高齢化が世界でもっとも進んだ日本では、この数はさらに増えていくと考えられています。横浜市都筑区も、ニュータウンとして街びらきした世代がそろって70代・80代を迎えつつある地域です。「うちの家族には関係ない」とは言いにくい病気だと、私は日々の診療のなかで実感しています。

3. なぜ「打った直後」ではなく「1〜3か月後」に症状が出るのか

この病気がいちばん誤解されるのは、「打った日は何ともなかったから、頭は大丈夫だったはず」という思い込みの部分です。実際には、軽い打撲のあと3週間〜3か月ほど経ってから症状が出てくるのが典型で、そこには次のようなしくみがあります。

① 細い血管がわずかに切れる

脳の表面と硬膜をつなぐ細い静脈(架橋静脈)が、軽い衝撃でわずかに傷つきます。この時点での出血はごく少量で、症状は出ません。

② 血だまりを包む膜ができる

数週間のうちに、血だまりのまわりに新しい膜(外膜)が形成されます。この膜には、もろく漏れやすい新しい血管がたくさん生まれます。

③ 少しずつ漏れて大きくなる

その新しい血管から、にじむような出血と水分の染み出しが繰り返されます。血だまりは自然に吸収されるどころか、じわじわ膨らんでいくのです。

④ ある大きさを超えて脳を押す

脳が押しのけられる限界を超えた時点で、頭痛・麻痺・もの忘れが一気に表面化します。ここが「急に人が変わった」と感じられるタイミングです。

📊 見落としの最大の原因は「打った覚えがない」こと

慢性硬膜下血腫では、頭を打った記憶がはっきりしない方が少なくありません。布団の上で頭をぶつけた、お風呂で滑って軽く後頭部を打った、自転車で転んだが膝の痛みばかり気にしていた——高齢の方にとっては、記憶に残らない程度のできごとで十分に起こりえます。ですから当院では、「打った覚えがない」=「この病気ではない」とは、決して判断しません。

4. 見逃されやすい4つのサイン|頭痛・片側の脱力・もの忘れ・歩きにくさ

慢性硬膜下血腫の症状は、血だまりが脳のどこを押しているかで変わります。そのため「頭痛の病気」とも「認知症のような病気」とも言えてしまい、診療科をまたいで見逃されやすいのです。ご家族に知っておいていただきたい代表的なサインを、4つに整理しました。

サイン ご家族が気づく、具体的な様子
① 頭痛・頭が重い 数週間かけてだんだん強くなるタイプの頭痛。朝に強い、横になると重いといった訴え。市販の痛み止めが以前ほど効かなくなる。吐き気を伴うこともあります。
② 片側の手足の力が入らない 左右どちらか一方の箸が使いにくい、コップを落とす、片方のスリッパだけ脱げる、口元が片側だけ下がる、言葉が出にくい。この「左右差」が最大のヒントです。
③ もの忘れ・意欲の低下 同じことを何度も聞く、日付があいまいになる、日中うとうとしている、テレビも新聞も見なくなる、身だしなみに構わなくなる。「急に認知症が始まった」と受け取られやすい部分です。
④ 歩きにくさ・尿の失敗 すり足になる、片側に寄っていく、段差でつまずく、方向転換でふらつく。進むと間に合わずに尿をもらすことも。転倒を繰り返して、さらに頭を打つ悪循環に入ります。

⚠ この場合は、その日のうちに医療機関へ

  • 呼びかけても反応が鈍い、うとうとして起きていられない
  • 片側の手足がまったく動かない/顔の片側が下がって話せない
  • けいれんを起こした
  • 激しい頭痛にくり返す嘔吐を伴う

これらは血だまりが脳を強く圧迫している可能性を示します。当院の診療時間外であれば、迷わず救急要請(119番)をご検討ください。「様子を見る」のではなく、その日のうちに画像検査ができる医療機関につながることが大切です。

5. なりやすいのはこんな方|お酒・抗血栓薬・脳の萎縮・男性

同じように頭を打っても、全員がこの病気になるわけではありません。「血だまりができやすい条件」と「血が止まりにくい条件」が重なった方に起こります。当院で問診の際に必ず確認している項目です。

🧠 脳の萎縮(加齢)

年齢とともに脳がわずかに小さくなると、脳と硬膜のあいだに「すきま」ができます。脳が揺れやすくなり、細い静脈が切れやすくなるため、高齢であること自体が最大の条件です。

🍷 習慣的な飲酒

お酒は脳の萎縮を進め、肝臓での凝固因子づくりにも影響し、さらに転倒そのものを増やします。この3つが同時に効くため、大量飲酒は明確な危険因子とされています。

🩸 抗血栓薬をのんでいる

心房細動や脳梗塞、心筋梗塞のあとに服用する抗凝固薬・抗血小板薬は、少量の出血が止まりにくくなるため危険因子になります。ただし自己判断での中止は絶対に避けてください(第9章)。

🚶 転びやすい状態

サルコペニア・フレイル、めまい、睡眠薬の持ち越し、起立時の血圧低下、そして低血糖。「転びやすさ」そのものが入口になります。

なお前述のとおり、日本のデータでは男性が女性の約2.2倍です。屋外での活動量や飲酒習慣の違いが背景にあると考えられています。「お酒をたしなむ、ひとり暮らしの高齢男性」は、ご家族が変化に気づきにくい立場でもあり、私が特に注意してお話を伺う対象です。

6. 「治せる認知症(treatable dementia)」の代表格である理由

もの忘れの原因となる病気のなかには、原因を取り除けば認知機能そのものが回復するものがあります。これを「治療可能な認知症(treatable dementia)」と呼び、慢性硬膜下血腫はその代表格です。ほかに、ビタミンB12欠乏症、甲状腺機能低下症、特発性正常圧水頭症、薬剤の影響、低血糖などが含まれます。

🏥 「治るもの」を先に外す、という診療の順番

センター南の認知症外来では、もの忘れのご相談をいただいたとき、アルツハイマー型かどうかを決める前に、まず「治せる原因」をひとつずつ外していきます。採血で甲状腺ホルモン・ビタミンB12・血糖・電解質・肝腎機能を確認し、服用中のお薬をすべて洗い出し、頭部の画像で血だまりや水頭症がないかを確かめる。手間はかかりますが、この順番を守ることでしか救えない方がいると考えています。

逆に申し上げると、「高齢だから、もの忘れは仕方がない」で止まってしまうことが、この病気にとって最も危険です。介護サービスの調整だけが進み、数か月後に意識の障害で救急搬送される——そうした経過は、残念ながら実際にあります。治せる病気を、治せる時期に見つける。それが認知症外来を併設している意味そのものだと、私は考えています。

7. 似ている病気との見分け方|脳梗塞・正常圧水頭症・アルツハイマー型

慢性硬膜下血腫は「症状の組み合わせ」が他の病気とよく似ています。ご家族が見分ける必要はありませんが、どこが違うのかを知っておくと、受診のときに伝えるべき情報がはっきりします。当院で実際に鑑別している主な病気を並べました。

病気 症状が出るまでの時間 見分けるポイント
慢性硬膜下血腫 打撲から3週間〜3か月かけて、じわじわ 頭痛+片側の脱力+もの忘れが同時に進む。頭部CTで片側に三日月型の血だまり。手術で回復する。
脳梗塞・脳出血 数分〜数時間で突然 「何時何分から」と発症時刻が言える突然の片麻痺・言語障害。時間との勝負で、ただちに救急搬送が必要。
特発性正常圧水頭症(iNPH) 数か月〜数年かけて 打撲と無関係。両足がすり足・足を開いた歩き方が先に出て、もの忘れ・尿失禁が続く。左右差が乏しい点が対照的。
アルツハイマー型認知症 数年かけてゆっくり 数週間単位で階段状に悪くなることはない。手足の麻痺や頭痛は伴わないのが原則。
低髄液圧症候群 数週間〜数か月 立つと頭痛、横になると消えるのが特徴。ただし放置すると慢性硬膜下血腫を合併することがあり、兄弟のような関係にあります。

⚠ 判断のいちばんの手がかりは「変化の速さ」です

ご家族が受診の際に伝えていただきたいのは、症状の細かな名前ではなく「いつから、どのくらいのスピードで変わったか」です。数年かけてならアルツハイマー型を、数週間から数か月でならまず慢性硬膜下血腫を、数分から数時間でなら脳梗塞を疑います。可能であれば、変化に気づいた時期をカレンダーに書き出してお持ちください。診断の精度が、はっきりと上がります。

8. 診断は頭部CT、治療は局所麻酔の小さな穴|再発予防の最新治療まで

この病気のありがたい点は、診断がむずかしくないことです。頭部CTを撮れば、頭蓋骨の内側に沿って三日月型(crescent)に広がる血だまりとして写り、脳が反対側へ押しやられている様子まで一目でわかります。血だまりの古さによって白く写るか黒く写るかは変わり、脳と同じ濃さに写って見えにくい場合や、左右対称にたまっている場合にはMRIで確かめることもありますが、多くは頭部CTで確認できる病気です。だからこそ「撮るかどうか」の判断が、すべてを分けます。

💡 標準治療は「穿頭(せんとう)ドレナージ」

症状が出ている場合の治療は手術です。とはいえ、開頭して脳を大きく触る手術ではありません。頭蓋骨に直径1cmほどの小さな穴をあけ、血だまりを洗い流して細い管で抜く方法で、多くは局所麻酔で行われます。

脳を押していた圧が取れると、麻痺やもの忘れが手術の翌日から目に見えて改善することも少なくありません。90代の方でも受けられることが多い治療です。血だまりが小さく症状がほとんどない場合は、手術をせずに画像で経過を追う選択もあります。

一方で、この病気には再発という課題があります。血だまりを抜いても、もろい新しい血管を含んだ膜が残っていれば、また少しずつたまることがあるのです。再発はおよそ10%前後(報告により10〜13%程度)とされ、高齢・飲酒・抗血栓薬の服用・凝固の異常がある方でリスクが上がります。

📊 【最新】再発を約3分の1に減らした「中硬膜動脈塞栓術」(NEJM 2024)

再発の源である「もろい新しい血管」への血流を、もとから断つという発想の治療が登場しました。血だまりを養っている中硬膜動脈にカテーテルを進め、内側から詰めてしまう中硬膜動脈塞栓術です。

2024年に『New England Journal of Medicine』で報告された米国39施設の多施設共同ランダム化比較試験EMBOLISE(400例)では、通常の手術に塞栓術を追加した群で、90日時点の血腫の残存・再発または再手術が約4%にとどまり、手術のみの群の約11%と比べておよそ3分の1に減りました。

※この治療は脳血管内治療の専門施設で行われるもので、すべての患者さんに必要というわけではありません。再発をくり返す方や再発リスクの高い方に、選択肢が増えたという位置づけです。逆に、かつて期待されたステロイド(デキサメタゾン)による内科的治療は、2020年の『New England Journal of Medicine』の試験(Dex-CSDH)でかえって成績が悪かったことが示され、現在は標準治療とされていません。「薬で散らす」のではなく、適切な時期に抜くことが基本です。

9. ご家族ができること|受診の目安5つと、転倒を防ぐ暮らし方

この病気は、ご本人よりもご家族のほうが先に気づけるという特徴があります。もの忘れや意欲の低下はご本人には自覚しにくく、「おかしいな」と感じるのは、いつも一緒に過ごしている方だからです。次の5つを確認してみてください。

👀 ご家族に確認していただきたい5つの質問

  1. この3か月のあいだに、転んだり頭を打ったりしませんでしたか(思い出せなくても構いません。「転びやすくなった」だけでも情報です)
  2. 変化は「数年」ではなく「数週間〜数か月」で起きていませんか
  3. 左右差はありませんか(片方の手だけ不器用、片方の足だけ引っかかる、口元が片側だけ下がる)
  4. 頭痛や「頭が重い」という訴えが増えていませんか
  5. 抗血栓薬(血をさらさらにするお薬)をのんでいませんか/お酒の量は多くありませんか

1つでも当てはまり、なおかつ生活の様子が変わってきているようであれば、「認知症が始まった」と結論づける前に一度ご相談ください。

⚠ 抗血栓薬を、自己判断で中止しないでください

「血をさらさらにする薬が原因なら、やめたほうがよいのでは」と考えたくなるお気持ちはよくわかります。しかし、これらのお薬は脳梗塞や心筋梗塞を防ぐために処方されています。勝手に中止すると、血のかたまりが飛んで命に関わる脳梗塞を起こす危険があります。慢性硬膜下血腫が見つかった場合の中止・再開のタイミングは、血腫の大きさと血栓のリスクを両方はかりにかけて医師が判断すべきことです。必ずご相談ください。

そして、この病気にはもう一つ確かな対策があります。転ばないことです。入口が頭部打撲であるため、転倒予防はそのまま予防策になります。これから寒くなる季節は、厚着で体が動きにくくなり、日が暮れるのも早くなり、居室と廊下の温度差で血圧が揺れやすくなる——転倒が増える条件がそろいます。

🏋️ 足の筋肉を落とさない

椅子からの立ち座りを10回、かかとの上げ下げを20回。これを1日2セット。あわせてたんぱく質を毎食とることが、サルコペニア対策の基本です。

🌳 家のなかの段差と明るさ

つまずきの多くは玄関・敷居・浴室・電気コードです。夜間のトイレまでの動線に足元灯を置くだけでも、転倒はぐっと減ります。

🩸 ふらつく原因を治す

睡眠薬の持ち越し、立ちくらみ、めまい、そして低血糖。「転びやすさ」の裏には治せる原因が隠れていることが多く、お薬の見直しも含めて整えられます。

🍷 お酒の量を見直す

飲酒は脳の萎縮・出血の止まりにくさ・転倒の3つに同時に働きます。「晩酌を1合減らす」だけでも、この病気に対しては意味のある一手です。

🔁 3軸クロスポイント:慢性硬膜下血腫を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

慢性硬膜下血腫は、一見すると「頭を打った人の、脳の外科的な病気」に見えます。しかし当院の3軸アプローチ——糖尿病・生活習慣病、認知症・神経、抗加齢医学——で眺め直すと、この病気はふだんの内科診療のなかで防げる部分が大きいことが見えてきます。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連 ―「転ばせない血糖管理」へ

糖尿病は、慢性硬膜下血腫の「入口」である転倒を、いくつもの経路から増やします。神経障害で足の裏の感覚が鈍れば段差に気づきにくくなり、網膜症で見えにくくなれば夜間の移動が危うくなり、起立性低血圧でふらつきます。そして最も見落とされやすいのが低血糖です。高齢の方の低血糖は、動悸や発汗といったわかりやすい前ぶれを欠き、ふらつきや脱力、ぼんやりとして現れることがあります。だからこそ高齢の方の血糖管理は「HbA1cを下げる」ことだけを目標にせず、低血糖を起こさない下限を設けるという考え方が、日本老年医学会・日本糖尿病学会の合同委員会からも示されています。心房細動などで抗凝固薬をのんでいる方であれば、「低血糖で転ぶ」+「血が止まりにくい」という二重の危険(ダブルジオパディ)が重なります。当院では糖尿病専門外来(水曜)で、HbA1cの数字だけでなく足元の安全まで含めて調整しています。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連 ―「治るもの」を必ず先に外す

もの忘れの診療でいちばん大切なのは、診断名を早く付けることではなく、治せる原因を取りこぼさないことです。慢性硬膜下血腫・特発性正常圧水頭症・ビタミンB12欠乏症・甲状腺機能低下症・薬剤性・低血糖。これらは原因を取り除けば認知機能そのものが戻る可能性がある病気で、いずれも採血と画像、そしてていねいな問診で拾い上げられます。当院が脳神経内科と認知症外来を併設しているのは、「もの忘れ」と「歩き方」と「手足の左右差」を、別々の窓口に分けずに同じ診察で診るためです。頭痛として来られた方の背景に血だまりが隠れていることもあり、頭痛外来との連続性も欠かせません。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命 ― 脳の萎縮と筋肉の両方を守る

抗加齢医学の視点から見ると、この病気の下地は「脳の萎縮」と「筋肉の減少」という、加齢の2つの側面が重なった場所にあります。脳が縮んですきまができれば血だまりができやすくなり、筋肉が減れば転んで頭を打つ機会が増える。どちらも「年齢」で片づけられがちですが、いずれも手を打てる領域です。運動(とくに下肢のレジスタンス運動)、たんぱく質を欠かさない食事、節酒、良質な睡眠、聴力や視力の補正、そして血圧・血糖・脂質の管理。これらはすべて、脳の萎縮の進みを緩めることと転倒を減らすことの両方に同時に効きます。平均寿命と健康寿命のあいだにあるギャップを縮める作業は、こうした地味な積み重ねの先にあります。「頭を打たない体をつくる」ことは、抗加齢医学のもっとも実践的な目標のひとつだと私は考えています。

🏥 センター南で診るという選択(当院が選ばれる理由)

ここまでお読みいただいたとおり、慢性硬膜下血腫を見つけるために必要なのは、特別な検査ではありません。「頭痛」「もの忘れ」「歩き方」「手足の左右差」を、別々の話として切り分けずに、ひとつの流れとして聞き取ることです。当院がこのテーマをどう診ているかを、事実だけでお伝えします。

理由① 脳神経内科と認知症外来を併設しています

もの忘れ・ふるえ・しびれ・めまい・歩きにくさを、同じ窓口で診られます。「もの忘れは認知症外来、歩きにくさは整形外科」と分かれないことが、この病気を拾い上げる条件になります。

理由② 頭痛外来を頭痛専門医・指導医が担当します

頭痛外来は篠原伸顕院長が担当し、日本頭痛学会の頭痛専門医・指導医の資格を有しています。「ただの頭痛」と「背景に原因がある頭痛」を切り分けることが、この病気の入口になります。

理由③ 「治せる認知症」を外す検査を院内で行います

甲状腺ホルモン・ビタミンB12・血糖・電解質・肝腎機能の採血と、服用中のお薬の洗い出しを院内で実施します。画像が必要な場合は連携医療機関へ速やかにおつなぎします。

理由④ 糖尿病専門外来で「転ばせない血糖管理」まで

糖尿病専門外来は水曜午前、理事長・五藤 良将(日本糖尿病協会登録医・日本抗加齢医学会専門医)が担当します。低血糖・起立性低血圧・お薬の調整まで含めて、転倒のリスクを下げる視点で拝見します。

理由⑤ 月・水・木・金は18:30まで、土曜は14時まで診療

月・水・木・金は18:30まで(2026年9月より延長)、土曜は9:00〜14:00・休憩なしで診療しています。ご家族の付き添いが必要な受診では、この時間帯が使えることが大きな意味を持ちます。

理由⑥ センター南駅から徒歩9分・駐車場4台

市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン「センター南駅」徒歩9分、駐車場4台をご用意しています。歩きにくさがある方のお車での受診にも対応できます。旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた場所です。

「この数か月で、家族が変わった」——そう感じたら、ご本人だけでなくご家族もご一緒にお越しください。

melmoのWEB予約は24時間受付中です。日曜・祝日は、五良会クリニック白金高輪のオンライン診療もご利用いただけます。

10. 関連ブログ・関連クリニック

📚 当院ブログ・関連テーマ

🚶 特発性正常圧水頭症(iNPH)の3つのサイン

歩行障害・もの忘れ・尿失禁。慢性硬膜下血腫と症状が重なりますが、打撲と無関係で左右差が乏しい点が対照的です。

▶ 記事を読む

🛏 横になると消える頭痛|低髄液圧症候群

脳脊髄液の漏れによる起立性頭痛。放置すると慢性硬膜下血腫を合併しうる、いわば兄弟のような病気です。

▶ 記事を読む

🩸 かくれ心房細動と脳梗塞の予防

抗凝固薬が必要になる代表的な病気です。この薬をのんでいる方は、頭部打撲への注意もあわせて必要になります。

▶ 記事を読む

🍬 その物忘れ、認知症ではなく低血糖かも

高齢者糖尿病の無自覚性低血糖とHbA1cの「下限」。転倒して頭を打つ、その一歩手前の話です。

▶ 記事を読む

💉 ビタミンB12欠乏症は治せる神経の病気

足のジンジンと歩行のフラつき。慢性硬膜下血腫と同じ「治せる認知症」のグループに入る病気です。

▶ 記事を読む

🧠 レビー小体型認知症|症状と見分け方

幻視や日による変動が特徴。もの忘れの原因を診断名で決める前に、鑑別しておきたい病気のひとつです。

▶ 記事を読む

🩹 “治せる認知症”|慢性硬膜下血腫

頭を打った1〜3か月後のもの忘れ・片側の脱力・歩きにくさ。見分け方と最新治療を解説しています。

📍 ご覧の記事です

🏥 五良会グループ 姉妹クリニックの関連ブログ

DEN-EN-CHOFU 竹内内科小児科医院

ステロイドのお薬で血糖値が上がる?「ステロイド糖尿病」の特徴と対策

本記事で触れたデキサメタゾンをはじめ、ステロイドは血糖を上げます。ふらつきや体調の変化にどうつながるかを、院長・五藤 良将が解説しています。

▶ 記事を読む

SHIROKANETAKANAWA 五良会クリニック白金高輪

爪の変化でわかる病気のサイン|スプーンネイル・ばち指・爪白癬

体は思わぬところに手がかりを残します。見た目のわずかな変化から全身の病気を読み取る視点を、理事長 五藤 良将が解説しています。

▶ 記事を読む

11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 頭を打った覚えがまったくありません。それでも慢性硬膜下血腫の可能性はありますか?

はい、あります。高齢の方では、記憶に残らない程度のごく軽い打撲——布団の上で頭をぶつけた、浴室で滑って軽く後頭部を打った、自転車で転んだが膝の痛みばかり気にしていた——でも起こりえます。実際の診療では「打った覚えがない」ことを理由にこの病気を除外することはしません。症状の組み合わせと変化のスピードが合っていれば、画像で確かめます。

Q2. 頭を打った直後に病院でCTを撮り「異常なし」と言われました。もう安心でしょうか?

打った直後のCTは急性の出血や骨折を確認するためのもので、その時点で異常がないことは大切な情報です。ただし慢性硬膜下血腫はその後3週間〜3か月かけて血だまりが育つ病気ですから、「直後のCTが正常だった」ことは今後の発症を否定しません。打撲後3か月ほどは、頭痛・もの忘れ・手足の左右差・歩きにくさに気をつけて、変化があれば再度ご相談ください。

Q3. 90歳を超えた母です。手術に耐えられるでしょうか?

標準治療である穿頭ドレナージは、頭蓋骨に直径1cmほどの穴をあけて血だまりを洗い流す手術で、多くは局所麻酔で行われます。開頭して脳を大きく触る手術ではないため、ご高齢の方でも実施できることが少なくありません。もちろん最終的な判断は全身状態を含めて脳神経外科医が行いますが、年齢だけを理由にあきらめる必要はない治療です。むしろ、状態が重くなってから受診されるほうが回復は不利になります。

Q4. 手術をすれば、もの忘れは元に戻りますか?

血だまりによる圧迫が原因だった部分については、手術の翌日から目に見えて改善することも少なくありません。一方で、もともとアルツハイマー型認知症などが併存していた場合は、その分は残ります。実際には「血だまりの影響」と「もともとの認知機能」が重なっていることも多く、まず圧迫を取り除いたうえで、あらためて認知機能を評価するという順番になります。この評価のための受け皿として、当院では認知症外来での術後フォローも承っています。

Q5. 血をさらさらにする薬をのんでいます。やめたほうがよいのでしょうか?

自己判断での中止は、絶対にお控えください。抗凝固薬・抗血小板薬は脳梗塞や心筋梗塞を防ぐために処方されており、勝手にやめると命に関わる血栓症を起こす危険があります。慢性硬膜下血腫が見つかった場合の中止・再開のタイミングは、血腫の大きさと血栓のリスクを両方はかりにかけて医師が決めるべき事柄です。ご心配な場合は、お薬をやめずに、まずご相談ください。

Q6. まず何科を受診すればよいですか?

意識の障害・片側がまったく動かない・けいれんといった緊急のサインがある場合は、ただちに救急要請(119番)をご検討ください。そうではなく「この数週間〜数か月で様子が変わってきた」という段階であれば、脳神経内科または認知症外来が適しています。当院では症状の聞き取りと診察を行い、画像検査が必要と判断した場合には、連携医療機関へ速やかにおつなぎします。手術が必要と分かった場合の術後のフォローも、当院で継続して承ります。

AUTHOR / SUPERVISOR

医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事は、五藤 良将が公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆・監修しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、五良ファミリークリニック センター南(045-942-7783)までお知らせください。

📚 主要参考文献

  • Toi H, Kinoshita K, Hirai S, et al. Present epidemiology of chronic subdural hematoma in Japan: analysis of 63,358 cases recorded in a national administrative database. Journal of Neurosurgery. 2018;128(1):222-228.
  • Davies JM, et al. Adjunctive Middle Meningeal Artery Embolization for Subdural Hematoma(EMBOLISE試験). New England Journal of Medicine. 2024.
  • Hutchinson PJ, et al. Trial of Dexamethasone for Chronic Subdural Hematoma(Dex-CSDH試験). New England Journal of Medicine. 2020;383:2616-2627.
  • 日本脳神経外科学会・Neuroinfo Japan「慢性硬膜下血腫」/社会福祉法人 恩賜財団 済生会「慢性硬膜下血腫」
  • 日本老年医学会・日本糖尿病学会 合同委員会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」


GORYO FAMILY CLINIC CENTER MINAMI
五良ファミリークリニック センター南
内科・小児科・神経内科・認知症外来・頭痛外来・アレルギー科・糖尿病内科・心療内科
内科 小児科 神経内科 認知症外来 頭痛外来
アレルギー科 糖尿病内科 予防接種 健康診断 心療内科
※旧名称:浜クリニック
〒224-0006 神奈川県横浜市都筑区荏田東4-3-19
横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン「センター南駅」徒歩9分/駐車場4台
診療時間 月 火 水 木 金 土 日・祝
9:00〜12:00 ○ ○ ○ ○ ○ 9:00
〜
14:00
休
15:00〜18:30 ○ 休 ○ ○ ○

休診日:火曜午後・日曜・祝日/土曜は9:00〜14:00(休憩なし)

melmoWEB予約 CLINICSWEB問診 melmo日祝は白金高輪
LINE 公式アカウント Instagram センター南公式 電話 045-942-7783

理事長 五藤 良将

HOME

最新の記事

脳MRIで「白質病変」「かくれ脳梗塞」と言われたら|脳の小血管病の意味と進行を抑える方法を理事長 五藤良将が解説
健診の「軽い脂肪肝」を10年放置していませんか 〜血液検査だけで肝臓の"硬さ"を推し量るFIB-4 indexと、MASLD診療ガイドライン2026を理事長 五藤良将が解説〜
「下痢に血や粘液が混じる」を胃腸炎で終わらせない|潰瘍性大腸炎(IBD)の見分け方・診断・最新治療を理事長 五藤良将が解説
骨密度検査はその日に結果がわかります|骨粗鬆症ガイドライン2025年版とMD法を理事長 五藤良将が解説|五良ファミリークリニック センター南
少し歩くと足がしびれ、前かがみで休むと また歩ける〜腰部脊柱管狭窄症と「糖尿病の神経障害」「足の動脈の病気」の見分け方を理事長 五藤良将が解説〜
今年のインフルエンザワクチンは「3株」|4価から3価になった理由とA型・B型の違いを理事長 五藤良将が解説
「2か月前に、軽く頭を打ちました」〜"治せる認知症"とも呼ばれる慢性硬膜下血腫の見分け方を理事長 五藤良将が解説〜
コップを口に運ぶとき、手がふるえる〜それは「本態性振戦」かもしれません。パーキンソン病との見分け方と治療を理事長 五藤良将が解説〜
夕方になると、まぶたが下がって物が二重に見える〜その「疲れやすさ」は年のせいではなく、重症筋無力症かもしれません。理事長 五藤良将が解説〜
【2026-2027】インフルエンザワクチン予約受付中|横浜市の高齢者2,300円・フルミスト・家族割を理事長 五藤良将が解説

ブログカレンダー

2026年10月
月 火 水 木 金 土 日
« 9月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME