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脳神経内科について

 
 
NEUROLOGY — PROTECT YOUR BRAIN, NERVES & FUTURE

脳神経内科について
〜もの忘れ・頭痛・しびれ・パーキンソン病・てんかんを「3軸」で診る〜

脳神経内科は「脳・脊髄・末梢神経・筋肉」の病気を、手術ではなく内科的に診る診療科です。もの忘れ・頭痛・しびれ・めまい・ふるえ・脱力・歩きにくさ――こうした症状の背景に、認知症・片頭痛・脳卒中後遺症・パーキンソン病・てんかん・末梢神経障害といった疾患が隠れていることがあります。横浜・センター南のかかりつけ目線で、最新エビデンスにもとづいた診療と「内科・糖尿病内科・心療内科」との連携をご案内します。

認知症・MCI
片頭痛/CGRP抗体
パーキンソン病
てんかん(高齢発症)
脳卒中・TIA予防

― はじめに:「脳神経内科って、どんなとき行く科ですか?」 ―

「最近もの忘れが増えた」「片頭痛がひどくて仕事にならない」「足のしびれが続いている」「家族にパーキンソン病ぎみと言われた」――センター南の外来でも、ご本人やご家族からこうしたご相談を毎日のように頂きます。旧名称・浜クリニックの時代から地域の皆さまに親しまれてきた当院では、内科・糖尿病内科・脳神経内科・認知症外来・頭痛外来・心療内科を併設し、神経の病気を「全身病」として横断的に診ています。

脳神経内科は「神経内科」と呼ばれてきた診療科です。日本神経学会が「脳の病気を扱う内科」と一般の方に分かりやすくお伝えするため、近年は「脳神経内科」という名称への変更を進めています。脳神経外科(手術が中心)、精神科・神経科(こころの病気)、心療内科(ストレス由来の身体症状)と紛らわしいのですが、脳・脊髄・神経・筋肉の病気を内科的に診るのが脳神経内科です。

本ページでは、脳神経内科で扱う代表的な病気を、もの忘れ・頭痛・めまい・しびれ・ふるえ・てんかん・脳卒中後管理まで整理し、レカネマブ/ドナネマブ(抗アミロイド抗体薬)CGRP関連抗体薬・新規ゲパント系(アトゲパント/リメゲパント)脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕など、最新の治療動向にもとづいて分かりやすくご説明します。

📖 目次

  1. 脳神経内科とは?──「神経内科」との関係と扱う病気
  2. こんな症状はご相談を──受診の目安チェックリスト
  3. もの忘れと認知症──MCIから抗アミロイド抗体薬まで
  4. 頭痛・片頭痛──CGRP抗体薬とゲパント系の新時代
  5. めまい・ふらつき──脳から来るか、耳から来るか
  6. しびれ・脱力・歩きにくさ──末梢神経障害と脳卒中の鑑別
  7. パーキンソン病・パーキンソン症候群──ふるえと歩行
  8. てんかん──高齢者てんかんと認知症との鑑別
  9. 脳卒中の予防と慢性期管理──TIA・抗血栓薬・血圧
  10. 検査──神経学的診察・MRI/CT・脳波・神経伝導検査
  11. 当院・センター南の脳神経内科の強み──ワンストップ連携
  12. 🔁 3軸クロスポイント(糖尿病×認知症×抗加齢)
  13. 関連ブログ・関連クリニック
  14. よくあるご質問(FAQ)



1. 脳神経内科とは?──「神経内科」との関係と扱う病気

脳神経内科は、脳・脊髄・末梢神経・筋肉に原因がある病気を、手術ではなく内科的に診断・治療する診療科です。これまで「神経内科」と呼ばれてきましたが、診療内容を一般の方に分かりやすく伝えるため、日本神経学会は「脳神経内科」という名称への変更を進めています。「神経内科」と「脳神経内科」は、基本的に同じ診療科を指しています。

💡 「脳神経外科」「精神科」「心療内科」との違い

🧠 脳神経内科:脳・脊髄・神経・筋肉の病気を薬と生活指導で治す内科系の科
🔪 脳神経外科:くも膜下出血・脳腫瘍・水頭症など手術が必要な脳の病気が中心
🧘 精神科・神経科:うつ病・統合失調症・不安症などこころの病気
🫀 心療内科:ストレスから来る身体の症状(過敏性腸症候群・自律神経失調症など)

どの科を受診すべきか迷う症状(もの忘れ/頭痛/めまい/しびれ/不眠)が、脳神経内科の入口となりやすい代表的なご相談です。当院・センター南は脳神経内科・心療内科・内科を併設しているため、「まずはここに来ていただければ、必要な科へ橋渡しできる」ワンストップ型の構造になっています。

病気のカテゴリ 代表疾患 主な症状
認知症・MCI アルツハイマー型/レビー小体型/血管性/前頭側頭型認知症、軽度認知障害(MCI) もの忘れ、判断力低下、性格変化、幻視、歩行障害
頭痛 片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、薬物乱用頭痛、二次性頭痛(くも膜下出血等) ズキンズキンする痛み、頭重感、吐き気、光・音過敏
脳血管障害 脳梗塞、TIA(一過性脳虚血発作)、脳出血の慢性期管理 片麻痺、構音障害、しびれ、ろれつ困難、視野欠損
運動異常症 パーキンソン病、本態性振戦、ジストニア、薬剤性パーキンソン症候群 手のふるえ、動作緩慢、歩行障害、姿勢の前傾
てんかん 部分発作・全般発作、高齢者てんかん、一過性てんかん性健忘(TEA) けいれん、意識消失、一過性の記憶障害、ボーッとする
末梢神経・筋疾患 糖尿病性/アルコール性ニューロパチー、手根管症候群、ギラン・バレー症候群 手足のしびれ、感覚低下、筋力低下、こむら返り
神経変性・免疫疾患 多発性硬化症、ALS、脊髄小脳変性症、重症筋無力症 進行する歩行障害、嚥下障害、複視、易疲労



2. こんな症状はご相談を──受診の目安チェックリスト

脳神経内科にかかるタイミングを迷う方は多くいらっしゃいます。以下のような症状があれば、「経過観察」よりも「一度プロに見てもらう」方を強くおすすめします。早期に診断がつけば、回復・進行抑制の可能性が大きく変わります。

🧠 もの忘れ

何度も同じ話をする/約束を忘れる/買い物の支払いに戸惑う/道に迷う。家族が「最近おかしい」と感じる時点で要受診。年齢相応のもの忘れか、認知症・MCIか、私たちが見極めます。

💢 頭痛

月に2回以上の片頭痛/市販薬を月10日以上飲んでいる/吐き気で寝込む/突然の激烈な頭痛。「人生最悪の頭痛」はくも膜下出血の合図のことがあり救急へ。

🌀 めまい・ふらつき

回転性めまい/ふらつきが続く/立ちくらみ/ろれつが回らない/物が二重に見える。耳の病気か、脳の病気かの見極めが大切。当院では神経学的診察+必要時にMRIで判定。

🦶 しびれ・脱力

手足のしびれ/ボタンがかけにくい/箸がうまく使えない/力が入らない。糖尿病・椎間板ヘルニア・脳卒中・末梢神経障害など原因は多様。早期診断が後遺症を減らします。

🤲 ふるえ・動作緩慢

じっとしているときに手がふるえる/字が小さくなった/歩幅が狭くなった/表情が乏しいと言われた。パーキンソン病・本態性振戦・薬剤性などの鑑別を行います。

⚡ けいれん・ボーッとする

意識が遠のいた/全身けいれん/一瞬「あれ?」となり時間が抜ける。てんかんは高齢者でも初発します。「認知症かと思ったらてんかんだった」例も少なくありません。

⚠ こんなときは「救急」を呼んでください

FAST(顔の歪み Face/腕の麻痺 Arm/話しにくさ Speech/発症時刻 Time)に当てはまる症状、突然の激烈頭痛、けいれんが5分以上続く、意識が戻らない――これらは脳卒中・くも膜下出血・てんかん重積のサインです。クリニックの順番を待たず、迷わず119番にご連絡ください。t-PA静注療法は発症から4.5時間以内、血栓回収療法は最長24時間以内が目安です。時間が脳を救います



3. もの忘れと認知症──MCIから抗アミロイド抗体薬まで

日本の認知症の人は約443万人(2022年・厚生労働省)と推計され、MCI(軽度認知障害)を含めると1,000万人超に達するとされています。65歳以上の約7人に1人が認知症、4人に1人がMCI――もはや「特別な病気」ではありません。重要なのは、「症状が完成する前」に見つけて手を打つことです。

📊 認知症「4大タイプ」と特徴

  • アルツハイマー型認知症(約7割):脳にアミロイドβ・タウが蓄積。近時記憶障害(数分前のことを忘れる)から始まる。
  • レビー小体型認知症(約1割)幻視(鮮明な人や動物の幻覚)、認知機能の変動、パーキンソン症状。抗精神病薬に過敏なため処方注意。
  • 血管性認知症(約1割):脳梗塞・脳出血の積み重ねが原因。階段状の悪化、まだら認知症(できることとできないことが極端)。
  • 前頭側頭型認知症:人格変化・脱抑制(万引き、暴言)が初期から目立つ。若年(50~60代)発症が多く、しばしば「うつ病」と誤診される。

2023~2024年は、認知症診療における歴史的な転換点でした。レカネマブ(レケンビ®)がアルツハイマー型認知症の早期患者を対象に2023年12月に承認。続いてドナネマブ(ケサンラ®)が2024年11月に承認され、「アミロイドβを直接取り除く」初めての治療薬として保険診療に組み込まれました。

薬剤 適応 投与・特徴
レカネマブ(レケンビ®) MCI〜軽度アルツハイマー型認知症、アミロイドPETまたは脳脊髄液検査でAβ陽性 2週に1回点滴。臨床的悪化を約27%抑制。ARIA(脳浮腫・微小出血)に注意。
ドナネマブ(ケサンラ®) 同上(早期アルツハイマー型) 月1回点滴。アミロイド除去後は中止可能(卒業治療)。ARIAリスクは比較的高め。
従来薬 軽度〜高度認知症(タイプにより) ドネペジル/ガランタミン/リバスチグミン/メマンチン。症状緩和が主で、病態進行は抑えない。

💡 「早期に診断する」ことが何より重要

レカネマブ・ドナネマブはともに「MCI〜軽度」段階のアルツハイマー型認知症が適応です。中等度以降では適応外になります。「なんとなく忘れっぽい」「家族から気になると言われた」段階で受診することが、新薬の恩恵を受けられる条件となります。当院では認知機能検査(HDS-R/MMSE/MoCA-J)・血液検査・MRIで一次評価を行い、抗アミロイド抗体薬の適応がある方は連携している基幹病院(アミロイドPETを実施できる施設)へお繋ぎします。

さらに認知症は「治せる認知症(treatable dementia)」が10〜20%含まれています。慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミンB12欠乏、うつ病、薬剤性認知障害――これらは原因を取り除けば改善します。「認知症は治らない」と諦めずに、まずは脳神経内科で原因検索を受けてください。



4. 頭痛・片頭痛──CGRP抗体薬とゲパント系の新時代

日本では片頭痛の有病者が約840万人緊張型頭痛は約2,000万人。働き盛りの女性の20〜30%が片頭痛を抱え、仕事・学業・家事への損失(プレゼンティーズム)は経済学的にも大きな課題です。「ただの頭痛」では決してありません。

📊 一次性頭痛の3タイプ

  • 片頭痛:脈打つ痛み(拍動性)、片側、4〜72時間、吐き気・光音過敏。動くと悪化。前兆(閃輝暗点)がある型/ない型。
  • 緊張型頭痛:締め付けられる痛み、両側、30分〜7日、肩こり・眼精疲労を伴う。動いても悪化しない。
  • 群発頭痛:片側の眼の奥がえぐられる激痛、15〜180分、涙・鼻水・結膜充血を伴う。男性に多い。「自殺頭痛」とも。

片頭痛治療は2021年以降、世界的に大きく変わりましたCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)が片頭痛発作の中心メディエーターであることが確立され、CGRPを標的とした薬剤が次々と登場しています。

薬剤 分類・用法 特徴
エムガルティ®(ガルカネズマブ) 抗CGRPモノクローナル抗体/月1回 皮下注射 予防薬。月の発作日数を約50%減らす方が約半数。
アジョビ®(フレマネズマブ) 抗CGRPモノクローナル抗体/月1回または3か月に1回 投与間隔を柔軟に選べる。通院頻度を抑えやすい。
アイモビーグ®(エレヌマブ) 抗CGRP受容体抗体/月1回 受容体に結合する唯一の薬剤。便秘の副作用に注意。
レイボー®(ラスミジタン) 5-HT1F受容体作動薬/頓用 内服 トリプタンが使えない方(心血管疾患合併)に。眠気・めまいに注意。
アクイプタ®(アトゲパント) 経口CGRP受容体拮抗薬(ゲパント系)/毎日内服 2026年発売。注射が苦手な方の予防選択肢。
ナルティーク®(リメゲパント) 経口CGRP受容体拮抗薬/頓用 + 予防 急性期と予防を1剤でカバーできる新しい設計。

⚠ 「市販の頭痛薬を月10日以上飲んでいる」は危険信号

鎮痛薬(ロキソプロフェン・イブプロフェン・トリプタン製剤)を月10〜15日以上使い続けると、薬そのものが頭痛を悪化させる「薬物乱用頭痛(MOH)」になります。「効かないから増やす→もっと痛くなる」の悪循環。脳神経内科では、原因薬剤の段階的減量と予防薬(CGRP抗体など)への切り替えで、この悪循環を断つ治療を行います。

詳しい片頭痛の予防・急性期治療については、当院の頭痛関連ブログ記事もあわせてご覧ください。



5. めまい・ふらつき──脳から来るか、耳から来るか

めまいは、原因が「耳(前庭系)」「脳(中枢性)」「全身(起立性・心因性)」に分かれる症状の代表です。同じ「目が回る」訴えでも、放っておけば良くなるものから、急いで脳梗塞治療を始めないと命に関わるものまで含まれます。脳神経内科の役割は、「危険な中枢性めまい」と「危険でない末梢性めまい」を見分けることです。

タイプ 代表疾患 特徴
末梢性(耳) 良性発作性頭位めまい症(BPPV)、メニエール病、前庭神経炎 回転性めまい、頭の向きを変えると悪化、難聴・耳鳴り合併(メニエール)、神経症状なし
中枢性(脳) 小脳・脳幹梗塞、脳出血、椎骨脳底動脈解離、聴神経腫瘍 ふらつき、複視、ろれつ困難、片麻痺、しびれ、激しい頭痛 → 救急受診
起立性 起立性低血圧、自律神経障害、脱水、薬剤性 立ち上がった瞬間に目の前が暗くなる、糖尿病・パーキンソン病合併で増える
心因性 PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)、不安・パニック障害 3か月以上続くふわふわ感、人混みで悪化、検査で異常なし

💡 ベッドサイドで使える「HINTS テスト」

脳神経内科ではHINTSテスト(Head Impulse/Nystagmus/Test of Skew)という3つの簡単な眼球運動検査を組み合わせて、中枢性めまいの除外を行います。実は、これらのベッドサイド神経学的所見は、急性期の頭部MRI(特に発症早期)よりも感度が高いと報告されています。「めまいで脳のMRIで異常なし」と言われても、神経内科の専門的診察で初めて見つかる脳幹梗塞があり得ます。



6. しびれ・脱力・歩きにくさ──末梢神経障害と脳卒中の鑑別

「しびれ」と一言で言っても、原因部位は脳・脊髄・神経根・末梢神経とさまざまです。脳神経内科の最大の強みは、症状の分布(手袋・靴下型/片側/髄節型)性質(感覚低下/ジンジン/焼ける/電気が走る)から、どの部位が病んでいるかを推定する「神経学的局在診断」にあります。

🧠 中枢性(脳・脊髄)

片側全体(顔も含む)のしびれ・脱力+構音障害・視野欠損=脳卒中。両下肢のしびれ・歩行障害+膀胱直腸障害=脊髄圧迫。緊急対応が必要。

💉 糖尿病性ニューロパチー

両足先からの「靴下型」しびれ。糖尿病罹病10年で約半数。糖尿病と認知症の3軸クロスポイント。血糖管理+ミロガバリン・デュロキセチンが第一選択。

🤲 手根管症候群

親指・人差し指・中指のしびれ、夜間〜明け方に増悪、振ると軽快。妊娠中・更年期女性に多い。神経伝導検査で診断、軽症は装具・重症は手術。

⚡ ギラン・バレー症候群

風邪・下痢の1〜3週後に急性発症。両下肢から上行する脱力・しびれ。呼吸筋麻痺もあり、進行性なら緊急入院・免疫グロブリン療法を行います。

🍷 アルコール性ニューロパチー

慢性的な飲酒+ビタミンB1欠乏で起きる「両足型」のしびれ。断酒とビタミンB1補充で改善することが多い。心療内科との併診も。

🦴 頚椎症性脊髄症

首の骨の変形で脊髄を圧迫。手の細かい動きがしにくい(巧緻運動障害)+歩行不安定+下肢の腱反射亢進。整形外科と連携。

💡 「しびれ」は神経内科 or 整形外科?

迷ったらまず脳神経内科で構いません。神経学的診察で、首・腰のヘルニアによるしびれと判断すれば整形外科にお繋ぎし、脳・末梢神経が原因と分かれば当院で治療を継続します。「行ったらたらい回しになった」が起きないよう、当院は整形外科・耳鼻科・眼科と密に連携しています。



7. パーキンソン病・パーキンソン症候群──ふるえと歩行

パーキンソン病は、脳の黒質でドパミンを作る神経細胞が減ることで起こる、進行性の神経変性疾患です。日本の患者数は15〜20万人(国の指定難病6)。4大症状=振戦(ふるえ)/無動・寡動(動作緩慢)/筋強剛(こわばり)/姿勢反射障害(転びやすい)。50〜60代発症が多く、男女比はやや男性に多めです。

📊 パーキンソン病の「非運動症状」も大切

パーキンソン病は「ふるえと動きにくさ」だけの病気ではありません。便秘、嗅覚低下、レム睡眠行動異常症(夢で大声・暴れる)、起立性低血圧、抑うつ運動症状の数年前から先行することが知られ、近年は「プレモータ期(運動症状前段階)」での早期介入研究が進んでいます。これらの非運動症状に気づくのは、しばしば家族や近しい方です。

治療は「症状を抑えて生活の質を維持する」ことが目標。現時点で病気の進行そのものを止める薬はありませんが、組み合わせと工夫で長期間良好な生活を続けることができます。

分類 代表薬 特徴
L-ドパ製剤 レボドパ・カルビドパ(メネシット®/ネオドパストン®) 最も効果が高い。高齢者・症状が強い方の第一選択。長期使用でウェアリングオフ・ジスキネジア。
ドパミンアゴニスト プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン貼付 若年発症の初期に。L-ドパよりウェアリングオフが少ないが、衝動制御障害・突発睡眠に注意。
MAO-B阻害薬 セレギリン、ラサギリン、サフィナミド 早期から使用可。L-ドパとの併用でウェアリングオフを抑える。
COMT阻害薬 エンタカポン、オピカポン L-ドパが脳に届きやすくする。オピカポンは1日1回で利便性が高い。
その他 ゾニサミド(トレリーフ®)、ドロキシドパ、アマンタジン ゾニサミドはふるえ・ウェアリングオフに効果。ドロキシドパは起立性低血圧に。

⚠ 「薬剤性パーキンソン症候群」を見落とさない

抗精神病薬(ハロペリドール、リスペリドン等)、制吐薬(メトクロプラミド、スルピリド)、一部の抗うつ薬は、パーキンソン病とほぼ同じ症状を引き起こします。「パーキンソン病と診断されたが、原因は服薬だった」例が高齢者で散見されます。当院では初診時に必ずお薬手帳を確認し、原因薬剤の中止で改善するかを評価します。



8. てんかん──高齢者てんかんと認知症との鑑別

てんかんは「子どもの病気」というイメージが強いですが、実際は高齢者の発症がもっとも多いことが分かっています。65歳以上の新規発症率は、若年層の数倍。「もの忘れ」「ぼーっとする時間」「意識消失発作」が認知症と紛らわしく、見逃されているケースが少なくありません

📊 高齢者てんかんの特徴

  • 原因の多くは脳卒中後(約3割)、認知症(約2割)、脳腫瘍、頭部外傷などの症候性てんかん。
  • けいれんを伴わない発作(焦点意識減損発作)が多く、「ぼーっとする」「動作が止まる」「数分後に元に戻る」といった軽い症状が中心。
  • 一過性てんかん性健忘(TEA):「直前の数分〜数時間が思い出せない」発作を繰り返し、認知症と誤診される。
  • 非けいれん性てんかん重積(NCSE):意識障害が長引くタイプ。脳波がないと診断不能。

治療は、新規発症のほぼ全例で抗てんかん薬1剤から始めます。高齢者では薬物相互作用と副作用が問題になりやすいため、肝・腎機能、併用薬を考慮して薬剤を選びます。

薬剤 特徴
レベチラセタム(イーケプラ®) 薬物相互作用が少なく、高齢者にも使いやすい第一選択。腎機能で用量調整。
ラコサミド(ビムパット®) 焦点起始発作に。新世代Naチャネル遮断薬。眠気・めまいに注意。
ペランパネル(フィコンパ®) AMPA受容体拮抗薬。低用量から開始が高齢者には安全。単剤療法も保険適応。
従来薬 カルバマゼピン、バルプロ酸、フェニトイン。薬物相互作用が多く、高齢者では慎重に。

💡 「認知症と思ったら、てんかんだった」を見逃さない

高齢者で「もの忘れの程度に大きな波がある」「数分〜数時間の記憶がすっぽり抜ける」「同じ話を短時間で何度もする」場合、認知症ではなく一過性てんかん性健忘の可能性があります。抗てんかん薬を始めると劇的に改善するため、当院では認知症と診断する前に、必要に応じて脳波検査(連携基幹病院)で確認します。



9. 脳卒中の予防と慢性期管理──TIA・抗血栓薬・血圧

脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)は日本人の死因第4位、要介護の最大原因。急性期治療は基幹病院が担いますが、「再発予防」と「慢性期の管理」こそ、かかりつけ脳神経内科の本領です。

📊 脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕の最新ポイント

  • t-PA静注療法:軽症脳梗塞(NIHSS 5点以下)でも、生活への影響を慎重に評価したうえで投与を検討してよい、と記載。
  • 機械的血栓回収療法:発症24時間以内・広範な梗塞コア例にも適応拡大(RESCUE-Japan LIMIT、SELECT2、ANGEL-ASPECT等の大規模RCTを反映)。
  • 血栓回収療法後の血圧管理:再灌流後は収縮期180 mmHg以下へ速やかに降圧することが妥当。
  • 抗アミロイド抗体薬(レカネマブ等)投与中のt-PA:脳のARIA所見を確認のうえ、慎重に判断する旨を新規記載。

⚠ TIA(一過性脳虚血発作)は「未完成の脳梗塞」

片麻痺・ろれつ困難・視野欠損が数分〜数時間で完全に治った場合、それはTIAかもしれません。TIA後90日以内に約10〜15%が脳梗塞を発症し、その半数は48時間以内です。「治ったから様子見」ではなく、その日のうちに脳神経内科または基幹病院へ。当院は地域の脳卒中センターと連携し、迅速に紹介できる体制を整えています。

慢性期は、再発予防のために抗血小板薬(脳梗塞)または抗凝固薬(心房細動による心原性脳塞栓)血圧130/80未満LDLコレステロール70未満糖尿病管理禁煙を組み合わせます。詳細は高血圧脂質異常症のページも併せてご覧ください。



10. 検査──神経学的診察・MRI/CT・脳波・神経伝導検査

脳神経内科で最も大切な検査は、いきなりMRIを撮ることではなく、「神経学的診察」そのものです。問診と神経診察で病変部位の見当をつけ、必要な画像検査を絞り込みます。「とりあえずMRI」では見つからない病気が、神経診察で初めて分かることが日常的にあります。

🩺 神経学的診察

意識、高次脳機能、脳神経(眼球運動・顔面運動・嚥下)、運動・感覚、腱反射、協調運動、歩行、自律神経を体系的にチェック。当院で初診時に必ず実施

🧠 頭部MRI/MRA

脳梗塞・脳出血・脳萎縮・腫瘍・脱髄病変を評価。MRAで脳動脈瘤・動脈狭窄をスクリーニング。連携医療機関で実施、結果を当院で説明。

📊 認知機能検査

HDS-R/MMSE/MoCA-Jでスクリーニング。MCI〜軽度認知症の判定、抗アミロイド抗体薬の適応評価につながる。当院外来で実施可能。

⚡ 脳波検査

てんかん・意識障害・脳炎の評価。当院では連携基幹病院に依頼。一過性てんかん性健忘の鑑別に必須。

🦶 神経伝導検査

末梢神経のしびれ・脱力の客観的評価。糖尿病性ニューロパチー・手根管症候群・ギラン・バレー症候群の確定診断に。連携先で実施

🩸 血液・尿検査

ビタミンB1・B12・葉酸欠乏、甲状腺機能、梅毒、自己免疫マーカー、HbA1cなど。「治せる認知症」「治せるニューロパチー」を見つける鍵。



11. 当院・センター南の脳神経内科の強み──ワンストップ連携

当院・センター南は、旧名称・浜クリニック時代から地域に根ざした「内科+糖尿病内科+脳神経内科+心療内科」の併設構造を持つかかりつけクリニックです。脳神経内科の症状の多くは、生活習慣病・心の状態と複雑に絡みあっており、診療科をまたぐ橋渡しが診断のカギを握ります。

🏥 当院ならではの強み

  • 同日中に複数科を受診できる:脳神経内科で認知機能評価+糖尿病内科でHbA1c評価+心療内科でうつ・不眠の相談を一日で。
  • 抗アミロイド抗体薬(レカネマブ・ドナネマブ)の窓口機能:当院で一次スクリーニング後、必要な方は連携基幹病院(アミロイドPET施設)へ紹介。
  • 頭痛外来併設:CGRP関連抗体薬・ゲパント系の適応評価から導入まで、ガイドライン準拠で対応。
  • 家族同伴の受診を歓迎:ご本人の自尊心を傷つけずに「ついでにもの忘れチェック」という入口をご家族と相談しながら設計します。
  • 姉妹院との連携:田園調布・竹内内科小児科医院では訪問診療・AGEs測定、白金高輪・五良会クリニック白金高輪では胃カメラ・大腸カメラ・土日祝対応・2階アンチエイジング外来との連携が可能。



🔁 3軸クロスポイント:脳神経内科を「糖尿病」「抗加齢」の視点でとらえる

当院・センター南が大切にしている診療思想が、糖尿病×認知症×抗加齢の3軸クロスです。脳神経内科で扱う認知症・末梢神経障害・脳卒中・パーキンソン病――いずれも、糖尿病・全身代謝・血管老化と切り離せない病気です。

🩸 軸1: 糖尿病・代謝

糖尿病があるとアルツハイマー型認知症は約1.5〜2倍、脳血管性認知症は約2〜2.5倍、脳卒中は2〜4倍、糖尿病性ニューロパチー(しびれ)は罹病10年で約半数。HbA1c・血圧・LDL・体重・睡眠・歯周病を一体で整える視点が、神経変性・神経障害の予防にも直結します。詳しくは糖尿病内科ページ

🧠 軸2: 認知症・神経系

脳神経内科の主戦場である認知症・MCI・脳卒中・パーキンソン病・てんかんは、いずれも「生活習慣+遺伝+老化」が交差する病態。レカネマブ・ドナネマブ・CGRP抗体薬など、近年は「進行を遅らせる/発作を抑える」新薬が次々と保険適応になり、「神経の病気は治らない」時代は終わりました。早期発見・早期介入の価値は、糖尿病・がんと並ぶレベルで重要です。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

脳の老化は「全身の老化」と同じレールの上にあります。日本抗加齢医学会の視点では、糖化(AGEs)・酸化ストレス・慢性炎症・サルコペニア・睡眠負債が認知機能と神経機能を蝕みます。AGEs測定や食後高血糖の見える化は姉妹院・竹内内科小児科医院(田園調布)、抗加齢点滴・グルタチオン・NMN・プラセンタなどの自由診療メニューは五良会クリニック白金高輪2階・アンチエイジング外来でご相談いただけます。



📚 当院・センター南の関連ページ/ブログ

🧠 認知症(MCIから新薬まで)

レカネマブ・ドナネマブまで解説

 


🩸 糖尿病内科

神経障害・認知症との3軸クロス

 


🩺 高血圧(JSH2025)

脳卒中・認知症予防の中心

 


🧬 脂質異常症

LDLと脳卒中再発予防

 


🫀 心療内科

頭痛・不眠・自律神経との連携

 


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🏥 五良会グループ 姉妹クリニック

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糖尿病内科・AGEs測定・訪問診療

大田区田園調布・多摩川駅/沼部駅。総合内科専門医による糖尿病・生活習慣病診療。AGEs測定で糖化ストレスを見える化。訪問診療にも対応。

 


SHIROKANETAKANAWA 五良会クリニック白金高輪

胃カメラ・大腸カメラ/土日祝診療/アンチエイジング外来

港区・白金高輪駅直結。胃カメラ・大腸カメラ(内視鏡検査)を実施可能。土日祝も診療。2階アンチエイジング外来では、抗加齢点滴・グルタチオン・NMN・プラセンタなど自由診療メニューも提供。

 



よくあるご質問(FAQ)

Q1. 「脳神経内科」と「神経内科」「脳神経外科」「精神科」「心療内科」、どこに行けばよいのか分かりません。

A. 「脳神経内科」と「神経内科」は基本的に同じ診療科です。手術を要する病気は脳神経外科、こころの病気は精神科、ストレスからくる身体症状は心療内科。もの忘れ・頭痛・しびれ・めまい・ふるえなどは、まずは脳神経内科でご相談いただいてかまいません。当院は脳神経内科・心療内科・内科を併設しているため、ワンストップで適切な診療科へ繋ぎます。

Q2. 親のもの忘れが心配です。本人は元気で「病院は嫌だ」と言います。どうすれば?

A. ご家族の感じる「最近様子がおかしい」は、医学的にもとても価値ある観察です。「健康診断のついで」「血圧の薬をもらいに行くついで」「ふらつきが気になる」といった身体の理由を入口に受診される方が多いです。最初からご本人に「認知症の検査に行こう」とは伝えず、ご家族同伴で「ついでにチェックしておきましょう」という流れがおすすめ。早期発見ができれば、抗アミロイド抗体薬(レカネマブ・ドナネマブ)の適応につながる可能性があります。

Q3. 片頭痛で市販薬を月15日くらい飲んでいます。良くないのでしょうか?

A. 薬物乱用頭痛(MOH)のリスク域です。鎮痛薬の使用が月10〜15日を超えると、薬そのものが頭痛を悪化させる悪循環に入ります。脳神経内科では、原因薬剤の段階的減量と、CGRP関連抗体薬(エムガルティ/アジョビ/アイモビーグ)新規ゲパント系(アクイプタ/ナルティーク)などの予防薬で、この悪循環を断ち切ります。「最近、薬が効かない」と感じている方こそご相談ください。

Q4. 父がパーキンソン病かもしれないと言われました。どんな検査をするのですか?

A. パーキンソン病は「神経学的診察」が診断の中心です。当院では、振戦のパターン(安静時 vs 動作時)、無動・寡動、筋強剛、姿勢反射、書字、歩行を観察し、「薬剤性パーキンソン症候群」の除外を含めて評価します。必要時は連携医療機関でMRI/MIBG心筋シンチ/DATスキャンを依頼します。確定診断後は、本人の年齢・症状の強さ・職業を考慮して、L-ドパ・ドパミンアゴニスト・MAO-B阻害薬・ゾニサミド・オピカポンなどを組み合わせて治療します。

Q5. 高齢の母が「同じことを何度も話す」「数分前のことを忘れる」のですが、認知症と何が違うのですか?

A. ご質問のような症状は認知症(特にアルツハイマー型)の典型ですが、「高齢者てんかん(特に一過性てんかん性健忘)」のことも少なくありません。てんかんは抗てんかん薬で改善するため、認知症と決めつける前に脳神経内科でしっかり鑑別します。当院では認知機能検査・血液検査・MRIを一次評価で行い、必要に応じて連携基幹病院で脳波検査を実施します。

Q6. 糖尿病があり、足のしびれが続いています。神経内科と糖尿病内科、どちらに行くべき?

A. 当院では同じクリニック内で両方の科を受診できますので、その点をご心配いただく必要はありません。糖尿病性ニューロパチーが疑われる場合、HbA1c・血糖変動の改善(糖尿病内科)と、しびれそのものへのお薬(ミロガバリン/デュロキセチン/プレガバリン)の調整(脳神経内科)を組み合わせます。神経伝導検査が必要な場合は連携医療機関へお繋ぎします。

Q7. レカネマブ・ドナネマブを受けたいです。当院で投与できますか?

A. レカネマブ・ドナネマブはアミロイドPETが可能な基幹病院での投与が原則です。当院では一次スクリーニング(認知機能検査・MRI・血液検査・既往歴の確認)を行い、適応の可能性が高い方を連携病院へ紹介する役割を担っています。投与開始後の併診(血圧・糖尿病管理・他科の相談)は当院で継続できますので、お気軽にご相談ください。

Q8. 受診時に持参すべきものはありますか?

A. ① お薬手帳(または現在飲んでいる薬の写真)② 健康診断結果③ 過去のMRI/CT画像(CD-R)と報告書があれば持参ください。ご家族の同伴は、もの忘れ・頭痛・ふるえ・てんかん疑いなどでは特に有用です。ご本人が話しにくい症状(例:パーキンソン病の動作緩慢、夜間の異常行動)は、第三者の観察が診断の決定打になります。WEB予約(melmo)・お電話予約のいずれでも受診いただけます。

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