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コップを口に運ぶとき、手がふるえる〜それは「本態性振戦」かもしれません。パーキンソン病との見分け方と治療を理事長 五藤良将が解説〜

[2026.09.26]
ESSENTIAL TREMOR
コップを口に運ぶとき、手がふるえる
〜それは「本態性振戦」かもしれません。パーキンソン病との見分け方と治療を理事長 五藤良将が解説〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)より、「ふるえ」が出るタイミングで病気を見分ける方法と、今の日本で受けられる治療の選択肢をわかりやすくお伝えします。

本態性振戦 手のふるえ パーキンソン病との違い 脳神経内科・センター南

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「父の手がふるえるようになりました。パーキンソン病でしょうか」「人前で書類にサインするとき、手が止まらなくて恥ずかしい」。センター南の脳神経内科・もの忘れ外来には、こうしたご相談が毎週のように届きます。ふるえは、ご本人よりもご家族が先に気づくことが多い症状です。

結論からお伝えします。ふるえは「いつ出るか」で病気が大きく分かれます。コップを持つ・字を書くなど“動かしたとき”にふるえるなら本態性振戦の可能性が高く、ひざの上でじっとしているときにふるえるならパーキンソン病を疑います。そして本態性振戦は、飲み薬で日常生活が取り戻せることの多い、治療できるふるえです。

本記事では、ご自宅で今日から確かめられる見分け方、見逃してはいけない「治せるふるえ」(甲状腺・低血糖・お薬の副作用)、そして日本で保険が使える治療までを、ご家族の目線で順番に整理します。旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた当院が、日々の診察でお伝えしている内容そのままです。

THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY

医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将

日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医
この記事は五藤 良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。

📖 目次

  1. そのふるえは「いつ」出ますか?——3秒でできる最初の質問
  2. 本態性振戦とは——65歳以上の5〜14%にみられる、ありふれた病気
  3. パーキンソン病との見分け方【比較表】
  4. 見逃してはいけない「治せるふるえ」——甲状腺・低血糖・お薬
  5. ご自宅でできるセルフチェック(うずまき・コップ・箸)
  6. 当院での検査の進め方——採血1本と問診から始めます
  7. 治療① 飲み薬——アロチノロールという選択肢
  8. 治療② 薬で足りないとき——集束超音波(FUS)と脳深部刺激療法(DBS)
  9. 日常生活の工夫と、やってはいけないこと
  10. 🔁 3軸クロスポイント(糖尿病×認知症×抗加齢)
  11. 🏥 センター南で診るという選択(当院が選ばれる理由)
  12. 関連ブログ・関連クリニック
  13. よくあるご質問(FAQ)

1. そのふるえは「いつ」出ますか?——3秒でできる最初の質問

ふるえ(振戦)の診察で、私たちが最初にうかがうのはたった一つです。「それは、手を動かしたときに出ますか。それとも、じっとしているときに出ますか」。この一言で、鑑別の道筋の半分は決まります。難しい検査の前に、ご家庭でも確かめられる情報だからです。

🥄 動かすと、ふるえる

コップを口に運ぶ、箸で豆をつまむ、字を書く、スプーンでスープを飲む。こうした動作時・姿勢保持時にふるえが出るタイプ。本態性振戦を第一に考えます。

🪑 じっとしていると、ふるえる

ひざの上に手を置いてテレビを見ているとき、歩いているときに片手だけがふるえる。こうした安静時振戦は、パーキンソン病で典型的にみられます。

😰 緊張した場面だけ、ふるえる

人前でのサイン、結婚式のスピーチ、上司の前。誰にでもある生理的振戦が強まった状態のことも、本態性振戦が緊張で目立っている状態のこともあります。

⚡ 急に始まった、片側だけ

数日以内に突然始まった、片側の手足の力が入らない、ろれつが回らないを伴う——この場合は脳卒中などの急性疾患を考え、受診を急ぎます。

💡 ご家族へのお願い:スマートフォンで30秒、動画を撮ってください

ふるえは、診察室という緊張した場所では強く出たり、逆に一瞬おさまったりします。①ひざの上に手を置いて力を抜いた状態、②両手を前にまっすぐ伸ばした状態、③コップの水を飲む動作——この3つをご自宅で撮影してお持ちいただくと、診断の精度が上がります。当院の外来でも、ご家族が撮影された動画が決め手になった方が何人もいらっしゃいます。

2. 本態性振戦とは——65歳以上の5〜14%にみられる、ありふれた病気

本態性振戦(ほんたいせいしんせん)は、ふるえ以外に目立った神経の異常がないのに、手・頭・声などがリズミカルにふるえる病気です。「本態性」とは「原因となる別の病気が見当たらない」という意味で、けっして「気のせい」という意味ではありません。

📊 数字で見る本態性振戦

  • 人口全体では2.5〜10%、40歳以上で約4%、65歳以上では5〜14%と報告されています。
  • ふるえの速さは1秒間に4〜12回。パーキンソン病の安静時振戦(およそ4〜6回)より、やや細かく速いのが特徴です。
  • およそ半数の方にご家族の中に同じ症状の方がいます(家族性)。「父もそうだった」というお話は、診断を支える大切な情報です。
  • 年齢とともにゆっくり目立ってきますが、若い方にも起こります。学生さんが「発表のときだけ手が震える」と受診されることもあります。

本態性振戦の一番の問題は、命に関わることではなく、生活の質が静かに削られていくことです。外食で汁物を頼まなくなる、人前で字を書く用事を避ける、お茶会や同窓会に行かなくなる——。当院では、こうした「やめてしまったこと」を必ずうかがいます。ここは、健康寿命を考えるうえでとても大切な情報だからです。

3. パーキンソン病との見分け方【比較表】

ご家族が最も心配されるのが、この点です。診察室でお見せしている比較表を、そのまま掲載します。ひとつでも当てはまれば決まり、というものではありませんが、全体の傾向をつかんでいただけます。

見るポイント 本態性振戦 パーキンソン病
ふるえが出る場面 動作時・姿勢保持時(コップ・箸・字) 安静時(ひざの上、歩行中)
左右差 両手に出ることが多い(差はあっても軽度) 片側から始まることが多い
ふるえの形 細かく速い(1秒間に4〜12回)、上下・左右の往復 丸薬を丸めるような親指と人差し指の動き
頭や声のふるえ あり(首が縦・横に揺れる、声が震える) まれ(声はむしろ小さくなる)
ほかの症状 基本的にふるえだけ 動作が遅い・歩幅が狭い・表情が乏しい・筋肉がこわばる
前ぶれの症状 特になし においが分かりにくい・便秘・寝言で暴れるが先行することがある
家族歴 約半数にあり 多くは家族歴なし
お酒で軽くなるか 一時的に軽くなる方が多い 変わらない
進み方 何年もかけて、ゆっくり 数年単位で、ふるえ以外の症状が加わっていく

⚠ 「お酒を飲むと止まる」を治療にしないでください

本態性振戦の方の多くは、少量の飲酒で一時的にふるえが軽くなります。これは診断の手がかりになる大切な情報ですが、治療として使ってよいものでは決してありません。効果は1〜2時間で切れ、そのあと反動でふるえが強まること(リバウンド)があり、量が増えやすく、肝臓・血糖・血圧・認知機能すべてに不利に働きます。「お酒でごまかす」段階に入ったら、それは薬物治療を検討すべきサインです。どうぞ隠さずにお話しください。

4. 見逃してはいけない「治せるふるえ」——甲状腺・低血糖・お薬

ここが、脳神経内科と内科・糖尿病内科を同じ建物で診ている当院が、いちばん力を入れている部分です。ふるえの中には、原因を取り除けばきれいに消えるものがあります。「年のせい」「本態性振戦でしょう」と片づけてしまうと、その機会を逃してしまいます。

原因 一緒に出やすい症状 確かめる方法
甲状腺機能亢進症(バセドウ病など) 動悸、汗が多い、食べているのに体重が減る、暑がり、下痢気味 採血(TSH・FT4)
低血糖 冷や汗、動悸、空腹感、意識がぼんやりする。食事の数時間後や明け方に出やすい 症状が出たときの血糖測定、持続血糖測定
お薬の副作用(薬剤性) お薬を始めた・増やした時期と、ふるえが出た時期が一致する お薬手帳の確認(処方医と相談のうえ調整)
カフェイン・睡眠不足・強い疲労 夕方に強い、コーヒーを飲んだ後に強い 1〜2週間、控えて変化をみる
アルコールの離脱 朝方のふるえ、発汗、いらいら。飲むとおさまる 飲酒歴の聴取、肝機能検査
ビタミンB12欠乏・末梢神経障害 手足のしびれ、歩くときのふらつき、貧血 採血(ビタミンB12・葉酸)
不安・緊張(心因性・生理的振戦の増強) 特定の場面だけ強い、動悸や息苦しさを伴う、眠れない 問診、必要に応じて心療内科的アプローチ

⚠ ふるえを起こしやすいお薬の例(自己判断で中止しないでください)

ぜんそく・COPDの吸入薬や貼り薬(β刺激薬)、気管支拡張薬(テオフィリン)、一部の抗うつ薬、気分を安定させるお薬(リチウム)、一部の抗てんかん薬(バルプロ酸)、ステロイド、吐き気止めや胃腸薬の一部、認知症のお薬の一部など。

大切なのは、絶対に自己判断で中止しないことです。必要があって飲んでいるお薬がほとんどで、やめることで元の病気が悪化するほうが危険です。お薬手帳を持って受診していただければ、「ふるえの原因になりうるか」「代わりの選択肢があるか」を処方医と連携して一緒に整理します。

5. ご自宅でできるセルフチェック(うずまき・コップ・箸)

受診の前に、ご自宅で記録していただけると診断が早くなる3つの方法です。結果をご自分で判断するためのものではなく、診察室に持ってきていただく「資料」を作るためとお考えください。

🎨 ① うずまきを描く

紙に手を置かず、中心から外へ渦巻きを描きます。左右それぞれ1枚ずつ。線がギザギザに波打つのが本態性振戦の特徴で、治療の前後を比べる物差しにもなります。日付を書いて保存してください。

🥛 ② コップの水

コップに8分目まで水を入れ、口まで運びます。こぼれるか、口に近づくほど揺れが大きくなるかを見ます。近づくほど強くなる場合は、小脳系の要素を考える手がかりになります。

🥢 ③ 生活の中の「できない」

箸で豆がつまめるか、ボタンがとめられるか、お札が数えられるか、スープが飲めるか。「最近やめてしまったこと」をメモしてお持ちください。治療の目標そのものになります。

📱 ④ 30秒の動画

前章のとおり、安静時・両手を前に伸ばした姿勢・コップを飲む動作の3場面。手元がはっきり映るように、明るい場所で撮影してください。

📊 セルフチェックより優先して、すぐ受診していただきたいサイン

  • 数時間〜数日で急に始まったふるえ、または片側の手足の脱力・しびれ・ろれつが回らない・顔のゆがみを伴う(脳卒中を疑います)
  • ふるえに加えて歩きにくさ・転びやすさ・もの忘れ・尿失禁が数か月で進んできた
  • 意識がもうろうとする、冷や汗を伴うふるえをくり返す(低血糖の可能性)
  • 動悸・体重減少・強い汗を伴う(甲状腺の可能性)

6. 当院での検査の進め方——採血1本と問診から始めます

「ふるえの検査」と聞くと大がかりな印象をお持ちかもしれませんが、本態性振戦の診断の大半は、ていねいな問診と診察、そして採血で道筋がつきます。日本神経学会の『振戦に関する診療ガイドライン2011』でも、診断の基本は症状の評価と、ほかの原因の除外に置かれています。

🏥 センター南での初診の流れ

  1. 問診:いつから/どんな場面で/家族歴/お薬手帳/飲酒/カフェイン/やめてしまった生活動作。ご家族からの情報を大切にします。
  2. 神経学的診察:安静時・姿勢時・動作時のふるえを分けて評価し、筋肉のこわばり、動作の遅さ、歩き方、反射、小脳の働きまで確認します。
  3. 採血:甲状腺(TSH・FT4)、血糖・HbA1c、肝機能・腎機能、ビタミンB12、貧血、電解質など。ここで原因が見つかる方は少なくありません。
  4. 画像検査:脳梗塞・脳出血・正常圧水頭症などを除外する必要があると判断した場合、近隣の連携医療機関で頭部CT・MRIを手配します。
  5. 専門的検査の紹介:パーキンソン病との鑑別が難しい場合、ドパミントランスポーターシンチ(DaTスキャン)やMIBG心筋シンチグラフィが可能な施設へご紹介します。

当院は脳神経内科・頭痛外来・認知症外来を併設しています。ふるえ・しびれ・めまい・もの忘れを、別々の科に回らずに同じ窓口で相談していただける——これがセンター南の設計思想です。検査の結果、当院での治療が適さないと判断した場合は、適切な専門施設へ責任をもってご紹介します。

7. 治療① 飲み薬——アロチノロールという選択肢

まずお伝えしたいのは、本態性振戦は「治療しなければいけない病気」ではないということです。生活に支障がなく、ご本人が気にならないのであれば、経過を見るだけで十分です。治療を始める目安は、症状の強さではなく「そのふるえのせいで、やめてしまったことがあるかどうか」です。

💊 日本で本態性振戦に保険が使えるお薬

日本で本態性振戦という病名に保険適用が認められているのは、β遮断薬のうちアロチノロールだけです。もともとは血圧や不整脈のお薬ですが、ふるえを抑える作用が認められています。少量から始め、効果と脈拍・血圧を見ながら調整していきます。

効果が不十分な場合、海外のガイドラインで用いられるプリミドンなどを検討することがありますが、日本では本態性振戦への適応が認められていない使い方になるため、必要性・副作用・費用をご説明したうえで、専門施設と相談しながら判断します。緊張する場面だけ困る方には、その場面に合わせた頓用という考え方もあります。

⚠ β遮断薬を使えない方・注意が必要な方

ぜんそくのある方、脈が遅い方(徐脈)、心臓の伝導障害のある方、血圧が低めの方では使えない、あるいは慎重な調整が必要です。そして糖尿病でインスリンやSU薬を使っている方では、β遮断薬が低血糖の警告症状(動悸・ふるえ・冷や汗)を隠してしまうことがあります。だからこそ、ふるえの治療は「脳神経内科の話」だけでは完結しません。次章の3軸クロスポイントで詳しくご説明します。

💡 治療の「ゴール」は、ふるえをゼロにすることではありません

お薬でふるえが完全に消える方は多くありません。私たちが一緒に目指すのは、「外食で味噌汁を頼めるようになる」「孫の前で字を書ける」「通帳に記帳できる」といった、具体的にひとつ取り戻すことです。初診のときにうかがった「やめてしまったこと」のリストが、そのまま治療の成績表になります。

8. 治療② 薬で足りないとき——集束超音波(FUS)と脳深部刺激療法(DBS)

お薬で十分な効果が得られず、日常生活への支障が大きい場合には、次の段階の治療があります。いずれも専門施設で行う治療で、当院の役割は「適応がありそうな方を見つけて、適切な施設へおつなぎすること」です。「歳だから仕方ない」とあきらめる前に、こうした選択肢があることだけは知っておいていただきたいと思います。

🔊 集束超音波治療(MRgFUS)

MRIで確認しながら、超音波を脳の一点に集めて、ふるえの信号を中継する部分(視床)に働きかける治療です。頭を切り開かず、頭蓋骨に穴も開けません。日本では2019年12月に本態性振戦に対して保険適用となりました。頭髪を剃る必要があり、原則として片側の治療です。ふらつき・しびれ・言葉の出にくさなどの副作用が起こりうるため、適応の判断は専門施設で行われます。

⚡ 脳深部刺激療法(DBS)

脳に細い電極を入れ、胸に埋め込んだ装置から電気刺激を送る治療です。手術は必要ですが、刺激の強さを後から調節でき、両側の治療も可能という利点があります。装置の電池交換など、定期的な管理が続きます。両手のふるえで困っている方では、こちらが検討されることがあります。

どちらを選ぶかは、ふるえの左右差、年齢、併存疾患、ご本人がいちばん取り戻したい動作によって変わります。まずは「本当に本態性振戦なのか」を確かめるところからです。診断が変われば、治療はまったく別のものになります。

9. 日常生活の工夫と、やってはいけないこと

お薬と同じくらい、毎日の工夫が効きます。診察室でよくお話ししている内容をまとめました。

🥗 今日からできる工夫

  • 重いものを使う:重みのあるスプーン・箸・ペンは、ふるえの振れ幅を抑えます。カトラリーに輪ゴムを巻いて太くするだけでも持ちやすくなります。
  • ひじを固定する:食事のとき、ひじをテーブルにつける。字を書くとき、手首を紙につける。支点をつくると揺れが減ります。
  • コップは半分まで、ふた付きを:ストローやふた付きのタンブラーは、外食の楽しみを取り戻す近道です。
  • カフェインを見直す:コーヒー・エナジードリンク・濃い緑茶。1〜2週間減らして、変化を記録してみてください。
  • 睡眠をそろえる:寝不足と疲労はふるえを確実に強めます。眠れない状態が続くなら、そこも相談してください。
  • 緊張する場面は「段取り」で減らす:銀行や役所の記入は事前に自宅で、代筆や電子手続きも遠慮なく使ってよいものです。

⚠ やってはいけないこと

  • お酒でふるえを抑えようとすること(前述のとおり、依存と反動のリスクがあります)
  • 飲んでいるお薬を自己判断で中止すること
  • ご家族の前で「またふるえてる」と指摘すること。緊張はふるえを強めます。責めずに、そっと道具を替えるほうが効果的です。
  • 「年のせい」で受診をやめてしまうこと。甲状腺・低血糖・お薬という治せる原因を見落とすことになります。
  • 人と会うのをやめること。外出と会話の減少は、フレイルと認知機能の低下に直結します。ここがいちばん心配な点です。

🔁 3軸クロスポイント:手のふるえを「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

ふるえは、脳神経内科だけの症状ではありません。当院が3軸アプローチと呼んでいる糖尿病・認知症・抗加齢の視点を重ねると、同じ「手のふるえ」がまったく違って見えてきます。どの科に行けばよいか分からない症状だからこそ、分断せずに診る意味があります。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連——ふるえは低血糖の「警報」です

手のふるえ・冷や汗・動悸は、血糖が下がったときに体が出す警報です。この警報があるから、多くの方は飴をなめて自分を守れます。ところが問題が2つあります。

ひとつは無自覚性低血糖。低血糖をくり返すうちに警報が鳴らなくなり、ふるえも出ないまま意識障害に至ることがあります。もうひとつが、本態性振戦の治療に使うβ遮断薬が、この警報そのものを弱めてしまうことです。インスリンやSU薬を使っている方で「ふるえを止める薬」を始めるなら、血糖の管理とセットで考えなければ危険だということになります。

当院では水曜日に糖尿病専門外来を設け、私(五藤)が担当しています。ふるえの治療と血糖の管理を、同じ建物・同じカルテの中で進められることは、このテーマでは大きな安全装置になります。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連——「ふるえ=認知症の始まり」ではありません

ご家族が最も不安に思われるのがここです。本態性振戦そのものが、認知症に直結するわけではありません。ただし、いくつかのコホート研究で高齢発症の本態性振戦の方に認知機能低下がやや多いという報告があり、小脳を含むネットワークの関与が議論されています。「心配しなくてよい」でも「必ず進む」でもなく、定期的に確認しておく価値がある、というのが現時点での正確な言い方です。

より実務的に大切なのは、ふるえに「もの忘れ」「歩きにくさ」「幻視」「寝言で暴れる」が加わったときです。レビー小体型認知症やパーキンソン病、正常圧水頭症など、別の診断に切り替わる可能性があります。当院は認知症外来を併設しており、ふるえの経過観察の中でこうした変化をとらえ、同じ窓口でそのまま評価に進めます。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命——ふるえが奪うのは「外出」です

抗加齢医学の視点で本態性振戦を見たとき、最大のリスクは手そのものではなく、ふるえを恥ずかしいと感じて人と会わなくなることです。外食をやめ、趣味の会をやめ、記帳や買い物を家族に任せる。この流れは、社会的フレイル→身体的フレイル→認知機能低下という、私たちが最も避けたい経路そのものです。

日本人の平均寿命と健康寿命のギャップは、およそ10年前後とされています。このギャップを縮める実務とは、病気をゼロにすることではなく、「できなくなったこと」を一つずつ取り戻すことです。重いスプーンに替える、ひじをつく、お薬を試す——どれも小さな工夫ですが、外出を1回取り戻すことの価値は、検査値1つの改善より大きいと私は考えています。日本抗加齢医学会専門医として、ここを診療の中心に置いています。

🏥 センター南で診るという選択(当院が選ばれる理由)

ここまでお読みいただいて、「ふるえは、脳神経内科・内科・糖尿病・心の状態が交差する症状だ」とお感じいただけたと思います。当院は、その交差点に立つクリニックとして設計されています。

理由① 脳神経内科・認知症外来を併設しています

ふるえ・しびれ・めまい・もの忘れを、同じ窓口で診ることができます。経過の中で診断が変わっていく病気だからこそ、続けて診られる体制に意味があります。

理由② 頭痛外来は頭痛専門医・指導医が担当

篠原伸顕院長が頭痛外来を担当しています。ふるえと頭痛、しびれが混在するご相談も、神経の専門家が同じクリニック内で対応します。

理由③ 糖尿病専門外来は水曜日

理事長・五藤良将(日本糖尿病協会登録医)が担当します。β遮断薬と低血糖の関係のように、ふるえの治療と血糖管理を切り離せない場面で力を発揮します。

理由④ 心療内科を併設しています

「人前でだけ手が震える」「ふるえが気になって外出できない」。体の診療と心の診療を分けずに相談していただけます。

理由⑤ 採血・お薬の整理までその日のうちに

甲状腺・血糖・ビタミンB12などの採血と、お薬手帳をもとにした処方の見直しを、初診の流れの中で行います。内科・小児科併設で、ご家族そろって受診できます。

理由⑥ 通いやすさと、休日の受け皿

月・水・木・金は18:30まで、土曜は9:00〜14:00(休憩なし)。センター南駅から徒歩9分、駐車場4台。日曜・祝日は五良会クリニック白金高輪のオンライン診療へおつなぎします。

「歳のせい」で片づける前に、一度ご相談ください。採血1本で原因が見つかることもあります。

ご予約はmelmoから24時間受付中です。お薬手帳と、ご自宅で撮った30秒の動画をお持ちください。

10. 関連ブログ・関連クリニック

📚 当院ブログ・関連テーマ

🧠 「そこに、子どもがいる」と父が言う|レビー小体型認知症

ふるえに幻視・寝言で暴れる・調子の波が加わったとき。本態性振戦との分かれ道になる病気です。

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高齢者糖尿病の無自覚性低血糖とHbA1cの「下限」。本記事の軸1と直結する内容です。

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🦵 足のジンジンと歩くときのフラつき|ビタミンB12欠乏症

採血1本で見つかり、治療できる神経の病気。ふるえの鑑別でも必ず確認する項目です。

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✋ 夜中に手がしびれて目が覚める「手根管症候群」

「手が使いにくい」の原因が、ふるえではなく神経の圧迫のことも。見分け方をまとめています。

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🤝 コップを口に運ぶとき、手がふるえる|本態性振戦

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DEN-EN-CHOFU 竹内内科小児科医院

立ちくらみ・胃もたれ・汗の異常は「糖尿病の自律神経障害」かも

無自覚性低血糖・無痛性心筋虚血のサインを院長・五藤良将が解説。「ふるえという警報が鳴らなくなる」仕組みを、より詳しく扱っています。

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SHIROKANETAKANAWA 五良会クリニック白金高輪

血圧の薬を飲んでも下がらない方へ|原発性アルドステロン症

ふるえの治療に使うβ遮断薬は、血圧の薬でもあります。高血圧を合併している方が「なぜ下がらないのか」を考えるときの必読記事です。

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 本態性振戦は、いずれパーキンソン病になるのですか?

A. いいえ、本態性振戦がパーキンソン病に「変わる」病気ではありません。ただし、本態性振戦の方にパーキンソン病がのちに合併しやすいかどうかについては研究が続いており、結論は出ていません。実務的には、安静時のふるえ・動作の遅さ・歩幅の狭まり・表情の乏しさが出てきていないかを、定期的に確認していくことが大切です。当院では経過観察の中でこの点を毎回確認しています。

Q2. 治療しないと、どんどん悪くなりますか?

A. 多くは何年もかけてゆっくり目立ってきますが、急に悪化する病気ではありません。治療を始めるかどうかは、進行の速さではなく「生活にどれだけ支障があるか」で決めます。気にならない方は経過をみるだけで十分ですし、困りごとが出てきた時点で始めても遅くはありません。

Q3. 血圧が低めなのですが、ふるえの薬は飲めますか?

A. β遮断薬は血圧と脈拍を下げる作用があるため、もともと血圧が低い方・脈が遅い方・ぜんそくのある方では使えない、あるいは慎重な調整が必要です。飲めない方には、生活の工夫や道具の変更、場面を限った対応、専門施設での治療のご相談など、別の道筋をご提案します。「薬が合わない=打つ手なし」ではありません。

Q4. 糖尿病で治療中です。ふるえの薬を飲んでも大丈夫でしょうか?

A. 飲めないわけではありませんが、注意が必要です。インスリンやSU薬を使っている方では、β遮断薬が低血糖の警告症状(動悸・ふるえ・冷や汗)を隠してしまうことがあります。当院では水曜日の糖尿病専門外来と連携し、血糖の管理状況を確認したうえで、必要なら血糖自己測定の併用も含めて一緒に設計します。この調整ができることが、内科と脳神経内科を併設している意味です。

Q5. 緊張する場面だけ手が震えます。これも病気ですか?

A. 誰にでもある生理的なふるえが強く出ているだけのこともあれば、本態性振戦が緊張で目立っていることもあります。見分けるには、ふだん落ち着いているときにコップや箸でふるえが出るかが手がかりになります。いずれにせよ、その場面を避けるようになっているのなら相談する価値があります。当院は心療内科も併設していますので、体と心の両面から一緒に考えられます。

Q6. 受診のとき、何を持っていけばよいですか?

A. ①お薬手帳(他院のぶんも含めてすべて)②ご自宅で撮った30秒の動画 ③うずまきを描いた紙(日付入り)④「ふるえのせいでやめてしまったこと」のメモ。この4点があれば、初診でかなりのところまで進めます。健診結果や他院の採血データをお持ちでしたら、あわせてご持参ください。

AUTHOR / SUPERVISOR

医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事は、五藤 良将が公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆・監修しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、五良ファミリークリニック センター南(045-942-7783)までお知らせください。


GORYO FAMILY CLINIC CENTER MINAMI
五良ファミリークリニック センター南
内科・小児科・神経内科・認知症外来・頭痛外来・アレルギー科・糖尿病内科・心療内科
内科 小児科 神経内科 認知症外来 頭痛外来
アレルギー科 糖尿病内科 予防接種 健康診断 心療内科
※旧名称:浜クリニック
〒224-0006 神奈川県横浜市都筑区荏田東4-3-19
横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン「センター南駅」徒歩9分/駐車場4台
診療時間 月 火 水 木 金 土 日・祝
9:00〜12:00 ○ ○ ○ ○ ○ 9:00
〜
14:00
休
15:00〜18:30 ○ 休 ○ ○ ○

休診日:火曜午後・日曜・祝日/土曜は9:00〜14:00(休憩なし)

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理事長 五藤 良将

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骨密度検査はその日に結果がわかります|骨粗鬆症ガイドライン2025年版とMD法を理事長 五藤良将が解説|五良ファミリークリニック センター南
少し歩くと足がしびれ、前かがみで休むと また歩ける〜腰部脊柱管狭窄症と「糖尿病の神経障害」「足の動脈の病気」の見分け方を理事長 五藤良将が解説〜
今年のインフルエンザワクチンは「3株」|4価から3価になった理由とA型・B型の違いを理事長 五藤良将が解説
「2か月前に、軽く頭を打ちました」〜"治せる認知症"とも呼ばれる慢性硬膜下血腫の見分け方を理事長 五藤良将が解説〜
コップを口に運ぶとき、手がふるえる〜それは「本態性振戦」かもしれません。パーキンソン病との見分け方と治療を理事長 五藤良将が解説〜
夕方になると、まぶたが下がって物が二重に見える〜その「疲れやすさ」は年のせいではなく、重症筋無力症かもしれません。理事長 五藤良将が解説〜
【2026-2027】インフルエンザワクチン予約受付中|横浜市の高齢者2,300円・フルミスト・家族割を理事長 五藤良将が解説

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