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「下痢に血や粘液が混じる」を胃腸炎で終わらせない|潰瘍性大腸炎(IBD)の見分け方・診断・最新治療を理事長 五藤良将が解説

[2026.09.29]
ULCERATIVE COLITIS / IBD

「下痢に血や粘液が混じる」を、いつもの胃腸炎で終わらせない
〜潰瘍性大腸炎(IBD)の見分け方・診断・最新治療を理事長 五藤良将が解説〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・難病指定医)より、「4週間以上続く粘血便」が指定難病のサインであることと、そこから先の道すじをわかりやすくお伝えします。

潰瘍性大腸炎 粘血便・血便 指定難病97・医療費助成 横浜市都筑区・センター南

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「1か月くらい前から下痢が続いていて、ときどき血と、ゼリーのような粘液が混じります」「痔だと思って様子を見ていました」――旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた当院にも、こうしたご相談をいただくことがあります。多くは市販の整腸剤でしのぎ、「そのうち治るはず」と数か月が過ぎてから受診されます。

結論からお伝えします。粘液や血が混じる下痢が4週間以上続いているときは、ウイルス性の胃腸炎ではありません。潰瘍性大腸炎(指定難病97)をはじめとする炎症性腸疾患(IBD)を疑って、大腸内視鏡で粘膜を確かめる段階です。そして潰瘍性大腸炎は、早く見つけて炎症を鎮めておけば、仕事も学校も旅行も続けられる病気です。

本記事では、胃腸炎や痔との見分け方、診断のすすめ方、5-ASA製剤から生物学的製剤・JAK阻害薬までの治療の全体像、そして見落とされがちな医療費助成(指定難病の申請)までを、順を追って整理します。あわせて、当院が大切にしている3軸アプローチ――糖尿病・認知症・抗加齢の視点から、腸の慢性炎症を全身の問題としてとらえ直します。

THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY

医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将

日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医・難病指定医
この記事は五藤 良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。

📖 目次

  1. 🩸 4週間が分かれ目:胃腸炎と潰瘍性大腸炎の決定的な違い
  2. 潰瘍性大腸炎とはどんな病気か(指定難病97)
  3. 👀 その血は「痔」ですか? 出血のしかたで見分ける
  4. 病型と重症度――同じ病名でも治療が変わる理由
  5. 🔬 診断のすすめ方:採血・便検査・大腸内視鏡
  6. 💡 治療の全体像:5-ASAという土台と、その上の選択肢
  7. ⚠ 「ステロイドが減らせない」を避ける考え方
  8. 📋 医療費助成(指定難病)の申請と難病指定医
  9. 🔁 長くつきあうための2つの備え:定期内視鏡と感染対策
  10. 関連ブログ・関連クリニック
  11. よくあるご質問(FAQ)
  12. 🏥 センター南で診るという選択(当院が選ばれる理由)
  13. 🔁 3軸クロスポイント(糖尿病×認知症×抗加齢)

1. 🩸 4週間が分かれ目:胃腸炎と潰瘍性大腸炎の決定的な違い

ウイルスや細菌による感染性腸炎(いわゆる胃腸炎)は、ほとんどが数日から2週間以内に収まります。急に始まり、山を越えれば下り坂に入るのが感染症の形です。一方の潰瘍性大腸炎は、じわじわ始まって、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、4週間を超えても終わらないのが特徴です。この「時間の形」の違いが、ご自身で気づける最初の手がかりになります。

📊 このサインがそろったら、整腸剤ではなく受診を

  • 下痢や軟便が4週間以上続いている
  • 便にゼリー状の粘液や血が混じる(粘血便)
  • 夜中にトイレで目が覚める(夜間の排便は器質的な病気を示すサインです)
  • 排便回数が1日6回以上、またはトイレに間に合わないことがある
  • 発熱、体重減少、貧血(ふらつき・息切れ)をともなう
  • おなかを下したあともすっきりしない残便感と、排便前の左下腹部の痛みが続く

とくに夜間の排便と体重減少は、ストレス性・機能性の腸の不調では通常みられません。ここが、当院のブログでも解説してきた過敏性腸症候群(IBS)との大きな分かれ目です。「疲れやストレスのせいだろう」と片づける前に、一度は粘膜を見ておく価値があります。

2. 潰瘍性大腸炎とはどんな病気か(指定難病97)

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびまん性(連続的)な炎症が起こり、びらんや潰瘍ができる病気です。原因はまだ完全には解明されていませんが、遺伝的な素因を背景に、腸内細菌と免疫のバランスが崩れ、自分の腸の粘膜を免疫が攻撃してしまう状態と考えられています。クローン病とあわせて炎症性腸疾患(IBD:Inflammatory Bowel Disease)と呼ばれます。

📊 数字で見る潰瘍性大腸炎(難病情報センター/指定難病97)

  • 国内の医療受給者証所持者数は126,603人(2019年度)。難病のなかでも患者数の多い疾患です
  • 発症のピークは30歳未満。ただし小児にも、50歳以上にも発症します
  • 医療ビッグデータの解析(メディカル・データビジョン 2025年6月公表)では、男女とも40代の患者が最も多いと報告されています。長くつきあう病気であることの裏返しです
  • 指定難病であり、重症度などの条件を満たせば医療費助成の対象になります(第8章)

「難病」という言葉に強い不安を覚える方も多いのですが、ここは誤解を解いておきたいところです。指定難病とは「原因が完全には分かっておらず、長期の療養が必要で、国が医療費を支える対象と定めた病気」という制度上の区分です。治療法がない、という意味ではありません。潰瘍性大腸炎は、この20年で治療の選択肢が最も増えた病気のひとつで、炎症を抑え込んで症状のない状態(寛解)を保つことが十分に目指せます。

💡 腸管の外にも症状が出ることがあります

潰瘍性大腸炎は腸だけの病気ではありません。関節炎(手足の関節の痛み・腫れ)、虹彩炎(目の痛み・充血・かすみ)、皮膚症状といった腸管外合併症をともなうことがあります。「おなかの調子が悪い時期に、なぜか膝や指も痛む」「目が赤くなる」――この組み合わせは、内科で必ず伝えていただきたい情報です。当院は内科・神経内科・アレルギー科を併設しており、こうした全身の訴えを一つの窓口で受け止められます。

3. 👀 その血は「痔」ですか? 出血のしかたで見分ける

血便の受診が遅れる最大の理由は、「痔だと思った」です。実際、痔は非常に多い病気ですから、その推測は半分は当たっています。ただし出血のしかたには違いがあり、ご自身でもある程度は区別ができます。下の表は目安として役立ちますが、痔があることと大腸に病気がないことは別の話だという点を忘れないでください。両方が同時にあることは珍しくありません。

見るところ 痔(いぼ痔・切れ痔) 潰瘍性大腸炎
血のつき方 便の表面に付く、便の後にポタポタ落ちる、紙に付く 便と混ざり合っている。粘液と一緒に出る
粘液 ふつうは目立たない ゼリー状の粘液が特徴的(粘血便)
便の形 硬い便・便秘がきっかけになりやすい 下痢・軟便、排便回数が増える
痛み 排便時の肛門の痛み 排便前の左下腹部の痛み、残便感
夜間・全身 夜中に起きることはまれ。発熱・体重減少なし 夜間の排便で目が覚める。発熱・体重減少・貧血をともなう

⚠ 大腸がんも、同じ見た目で始まります

血便・粘液・便通の変化は、大腸がんでもまったく同じように現れます。そして大腸がんは、40代以降で発見数が増えていきます。「潰瘍性大腸炎かどうか」を調べる検査は、同時に「大腸がんではないこと」を確かめる検査でもあります。健診で便潜血が陽性だった方は、その結果を持ってご相談ください。

4. 病型と重症度――同じ病名でも治療が変わる理由

潰瘍性大腸炎の炎症は、必ず直腸から始まり、そこから連続して口側(奥)へ広がるという特徴があります。どこまで広がっているかで病型が分かれ、これが薬の選び方(飲み薬か、坐剤・注腸か)を大きく左右します。

直腸炎型

炎症が直腸だけ。下痢よりも血液と粘液、便意が近い感じが目立ちます。坐剤・フォーム剤が効きやすい病型です。

左側大腸炎型

脾曲(左上のカーブ)までの範囲。下痢と左下腹部痛が出そろいます。飲み薬と注腸剤の併用が有効です。

全大腸炎型

大腸全体に及ぶ範囲。発熱・貧血・体重減少が出やすく、長期の定期内視鏡(サーベイランス)が特に重要になります。

重症度は、排便回数・顕血便の程度・発熱・脈拍・ヘモグロビン値・炎症反応(CRP・赤沈)を組み合わせて、軽症・中等症・重症・激症に分類されます(難病情報センター/厚生労働省の診断基準)。ご自身の感覚だけでは中等症と重症の境目は分かりませんから、採血をして初めて重症度が確定すると考えてください。「我慢できる程度だから軽い」とは限らないのです。

⚠ すぐに受診・場合により救急へ(激症・重症のサイン)

1日15回以上の排便、38℃以上の発熱が続く、おなかが張って強く痛む、脈が速く、立ち上がれない、血が固まりのように出る。これらは入院治療が必要な状態を示します。土曜の午後や日曜・祝日にこうした症状が出たときは、様子を見ずに救急の受診をご検討ください。

5. 🔬 診断のすすめ方:採血・便検査・大腸内視鏡

潰瘍性大腸炎の診断は、「症状」「内視鏡でのびまん性粘膜病変」「生検(顕微鏡での確認)」の3つがそろい、かつ感染性腸炎などが除外されたときに確定します(厚生労働省の診断基準)。逆にいえば、採血や便検査だけで確定することはできません。順序を整理しておきましょう。

段階 調べること 分かること
① 問診 症状の始まりと期間、排便回数、夜間排便、体重、渡航歴、抗菌薬の使用、家族歴、喫煙 感染性か慢性か。ここで方向がほぼ決まります
② 採血 CRP・赤沈、ヘモグロビン、鉄、アルブミン、白血球 重症度の判定、貧血・栄養状態の把握
③ 便の検査 便培養(細菌)、CD毒素など。必要に応じて便中カルプロテクチン 感染性腸炎の除外。腸の炎症の強さの参考
④ 大腸内視鏡+生検 直腸から連続するびまん性の粘膜病変、血管透見像の消失、細かい顆粒状の粘膜、びらん・潰瘍 確定診断と病型(広がり)の決定。大腸がんの除外も同時に行えます

💡 内視鏡は、当院とグループで受けられます

当院では問診・採血・便検査までを行い、ここまでで「内視鏡が必要かどうか」をはっきりさせます。そのうえで、2026年10月より火曜午前に開設する消化器内科・肝臓内科・内視鏡外来(玉井博修医師)、または五良会クリニック白金高輪の内視鏡と連携して検査へ進みます。同じグループ内での紹介ですので、問診内容や採血結果をそのまま引き継げます。

6. 💡 治療の全体像:5-ASAという土台と、その上の選択肢

治療の考え方は、「燃えている炎を消す(活動期の治療)」と「消えた状態を保つ(維持療法)」の2段構えです。この2つを混同すると治療がうまくいきません。とくに大切なのは、症状が消えても維持療法はやめないということです。

治療 位置づけ ポイント
5-ASA製剤
(メサラジン等)
治療の土台。活動期にも維持期にも使う 飲み薬・坐剤・注腸があり、病型に合わせて選びます。長く続けることが、後述の発がんリスク低減にもつながります
ステロイド 活動期の火消し役 よく効きますが維持療法には使いません。減量の計画を立ててから始めるのが原則です(第7章)
免疫調節薬
(アザチオプリン等)
ステロイドを減らし、寛解を保つ 効果が出るまで数か月かかります。開始前の遺伝子検査(NUDT15)で副作用リスクを確認します
生物学的製剤
(抗TNF-α薬、ベドリズマブ、ウステキヌマブ等)
中等症〜重症、ステロイドが効かない・減らせない場合 注射・点滴。作用する標的が異なる薬が複数あり、合わなければ切り替えができます
JAK阻害薬
(トファシチニブ等)
中等症〜重症。飲み薬で強い効果が期待できる 立ち上がりが速いのが長所。帯状疱疹や血栓のリスクに配慮し、年齢や既往を踏まえて選びます
血球成分除去療法
(LCAP/GCAP)
薬を増やしにくい方の選択肢 血液から炎症にかかわる白血球を取り除きます。薬の全身性の副作用を避けたい場合に有用です

近年の目標は、症状が消えること(臨床的寛解)だけではなく、内視鏡で粘膜そのものがきれいに治っていること(粘膜治癒)まで届かせることに置かれています。粘膜治癒が保てている方は、その後の再燃や入院、手術、そして後述する発がんのリスクが低いことが知られています。「症状がないから通院をやめる」のではなく、「症状がないうちに粘膜を確認しておく」という発想の転換が、10年後の自分を守ります。

7. ⚠ 「ステロイドが減らせない」を避ける考え方

ステロイドは、活動期の炎症を鎮める力に優れた薬です。しかし維持療法の薬ではありません。減らすと再び悪くなる(ステロイド依存)、あるいは十分な量でも効かない(ステロイド抵抗性)という状態に入ったときは、ステロイドを続けるのではなく、生物学的製剤・JAK阻害薬・免疫調節薬・血球成分除去療法へ切り替える/上乗せするのが現在の標準的な考え方です。

📊 ステロイドを長く続けたときに積み上がるもの

  • 血糖の上昇(ステロイド糖尿病)――もともと糖尿病のある方は血糖が動きやすくなります
  • 骨がもろくなる(ステロイド性骨粗鬆症)――骨密度だけでなく骨の質も落ちます
  • 感染症への抵抗力の低下、白内障・緑内障、不眠、体重増加、皮膚が薄くなる

これは「ステロイドが悪い薬」という話ではありません。短期間で使いきり、次の手に渡すための薬だという話です。当院は糖尿病専門外来(水曜午前・理事長担当)と骨密度検査を院内に持っており、こうした副作用を見張りながら治療を進められます。

なお、ご自身の判断で急にステロイドを中止することは、決してしないでください。長く使っている場合、急な中断は体調の急激な悪化を招くことがあります。減らし方は必ず主治医と決める――これが安全に治療を進めるうえでの約束事です。

8. 📋 医療費助成(指定難病)の申請と難病指定医

ここは、外来で最もお伝えし損ねやすく、そして生活に最も直結する部分です。潰瘍性大腸炎は指定難病97にあたり、重症度分類が一定以上、または軽症でも医療費が一定の基準を超えて継続している場合(軽症高額該当)には、特定医療費(指定難病)の助成を受けられます。自己負担には所得に応じた月額上限が設けられ、上限を超えた分の負担はなくなります。

📋 申請のながれ(横浜市の場合)

  1. 難病指定医の診察を受け、臨床調査個人票(診断書)を作成してもらう
    ※この診断書は、都道府県の指定を受けた「難病指定医」しか書けません
  2. 申請書・臨床調査個人票・住民票・世帯の課税状況を示す書類・健康保険証の写しなどをそろえる
  3. お住まいの区の福祉保健センター(都筑区の方は都筑区役所)へ提出する
  4. 認定されると医療受給者証が交付される(更新は年1回)

必要書類や窓口の運用は自治体ごとに異なり、変更されることもあります。最新の内容は横浜市・都筑区役所の案内でご確認ください。

🏥 当院は難病指定医の診断書に対応しています

理事長 五藤 良将は難病指定医です。すでに他院で潰瘍性大腸炎と診断されている方の臨床調査個人票の作成や年1回の更新、また助成申請のご相談にも対応しています。「診断は大きな病院で受けたけれど、書類と定期的な採血は近くで済ませたい」というご希望は、当院がお引き受けできる部分です。軽症だから対象外だろうと思っていた方が、軽症高額該当に当てはまることもあります。一度ご確認ください。

9. 🔁 長くつきあうための2つの備え:定期内視鏡と感染対策

潰瘍性大腸炎は、寛解を保てていれば日常生活に大きな制限はありません。そのうえで、長い時間軸で意識しておきたい備えが2つあります。

📊 備え① サーベイランス内視鏡(炎症が長い方の大腸がん対策)

炎症が長期間続いた大腸、とくに全大腸炎型では、炎症を背景とした大腸がんが生じることがあります。そのため、経過の長い方には症状がなくても定期的に内視鏡で粘膜を確認する(サーベイランス内視鏡)ことが行われます。日本消化器内視鏡学会は、病歴の長い患者さんに対し1〜2年ごとといった間隔での実施を挙げています。間隔は病型・炎症の程度・これまでの所見によって変わりますので、主治医と決めてください。

心強いのは、5-ASA製剤を続けることと、定期的な内視鏡を受けることが、このリスクを下げる方向に働くと考えられている点です(難病情報センター)。維持療法をやめないことには、症状を抑える以上の意味があるのです。

💡 備え② 治療を始める前に、ワクチンの整理を

生物学的製剤・JAK阻害薬・免疫調節薬・ステロイドは、いずれも免疫のはたらきに影響します。そのため治療を強める前に、予防接種を整えておくのが順序として有利です。とくに帯状疱疹はJAK阻害薬使用時に注意が必要で、インフルエンザ・肺炎球菌も重症化予防の観点から重要です。生ワクチンは免疫抑制下では使えない場合があるため、始める前というタイミングが肝心になります。当院は予防接種を院内で行っており、治療計画とあわせてご相談いただけます。

🔁 3軸クロスポイント:潰瘍性大腸炎を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

潰瘍性大腸炎は「大腸の病気」と説明されます。しかし当院が大切にしている3軸アプローチ――糖尿病・認知症・抗加齢を分断せずに診る――の視点に立つと、この病気の本質は「体のどこかで慢性の炎症が何十年も続いている状態」だと見えてきます。炎症は腸にとどまりません。ここを意識できるかどうかで、20年後の姿が変わってきます。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連 ―― 治療薬が血糖を動かす

潰瘍性大腸炎の治療でステロイドを使うと、ステロイド糖尿病として血糖が上がることがあります。もともと糖尿病をお持ちの方では、内服量の調整だけで追いつかないこともあり、ステロイドを始めるときは血糖も同時に見張るのが安全な進め方です。当院は糖尿病専門外来(水曜午前・理事長担当)を持っており、腸の治療と血糖管理を別々の医療機関に分けずに進められます。
もうひとつ、見落とされやすい落とし穴があります。貧血があると、HbA1cが本来の血糖の状態を正しく映さないことがあるという点です。潰瘍性大腸炎では慢性的な出血で鉄欠乏性貧血をきたしやすいため、糖尿病の評価をするときはHbA1cの数字だけでなく、ヘモグロビンや鉄の状態も並べて読む必要があります。これは姉妹院・竹内内科小児科医院のブログでも取り上げているテーマです。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連 ―― 腸の炎症と脳のつながり

近年、炎症性腸疾患と認知症の関係を調べた研究が積み上がってきました。Scientific Reports 2025年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、10件の住民ベース研究(対象者合計789万人、うちIBD患者26万9,387人)を統合し、IBDのある方では認知症のリスクがやや高い(オッズ比 1.17、95%信頼区間 1.08〜1.27)という関連が示されました。
ただし、ここは正確にお伝えしなければなりません。著者自身が「現時点の証拠では因果関係を結論づけられない」と明記しています。「潰瘍性大腸炎だから将来認知症になる」という話ではありません。一方で、慢性炎症が全身に及ぶことや、脳腸相関(腸と脳が神経・免疫・腸内細菌を介して双方向に影響し合うしくみ)が注目されていることは確かです。だからこそ、炎症を長くくすぶらせず、しっかり鎮めておくことにはもうひとつの意味があると考えています。
もう一点、実務的に大切なことがあります。当院は脳神経内科・認知症外来・頭痛外来を併設しています。「下痢が治ったあとから手足がしびれる」「腸の治療中にふらつく」といった訴えは、貧血・電解質の乱れ・薬の影響・別の神経疾患のいずれもありえます。おなかと神経を同じ窓口で相談できるのは、この病気とつきあううえで小さくない利点です。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命 ―― 慢性炎症と「骨」を守る

抗加齢医学では、老化を加速させる要因として慢性炎症(inflammaging:炎症性老化)が重視されています。潰瘍性大腸炎は、まさにその慢性炎症を体内に抱えた状態です。20代・30代で発症し、40代で患者数がもっとも多いという疫学(メディカル・データビジョン 2025年)は、人生の後半を、この炎症とどう共存するかという設計の問題であることを示しています。
具体的に守りたいのは骨です。ステロイドの使用、腸からの栄養吸収の低下、炎症そのもの――この3つが重なると骨はもろくなります。骨密度が正常でも、骨の質が落ちて折れやすくなることがあり、一度の転倒・骨折から健康寿命が大きく縮むことは珍しくありません。当院では骨密度検査を院内で行い、その日に結果をお伝えできます。ステロイドを使う治療に入る前後で一度測っておくことを、私はおすすめしています。
そして平均寿命と健康寿命のギャップを縮めるという当院の目標に照らせば、目指すのは「症状が出ていない」ことではなく、粘膜が治り、骨と筋肉が保たれ、血糖も乱れていない状態です。腸だけを見ていては届かない地点です。

🏥 センター南で診るという選択(当院が選ばれる理由)

ここまでお読みいただいた内容を、当院ではこう診ています。潰瘍性大腸炎は「診断」「薬の調整」「書類」「副作用の見張り」「定期の内視鏡」という5つの仕事が、長い年月にわたって続く病気です。その大半を、通いやすい場所でまとめられることが、続けるうえでの一番の助けになります。

理由① 難病指定医が在籍しています

理事長 五藤 良将は難病指定医です。指定難病の医療費助成に必要な臨床調査個人票の作成と、年1回の更新に対応しています。

理由② 腸管外の症状も同じ窓口で

内科・脳神経内科・アレルギー科・認知症外来・頭痛外来を併設しています。関節の痛み、しびれ、目の症状などを別の医療機関に分けずに相談できます。

理由③ ステロイド中の血糖を見張れます

糖尿病専門外来(水曜午前)を理事長が担当しています。ステロイドによる血糖上昇を、腸の治療と切り離さずに管理できます。

理由④ 骨密度検査は院内・当日結果

ステロイド性骨粗鬆症の備えとして、骨密度検査をその日の結果までご説明できます。予防接種も院内で行えます。

理由⑤ 内視鏡はグループで連携します

2026年10月より、火曜午前に消化器内科・肝臓内科・内視鏡外来(玉井博修医師)を開設します。五良会クリニック白金高輪の内視鏡とも連携し、検査へ橋渡しします。

理由⑥ 通い続けられる時間と場所

月・水・木・金は18:30まで、土曜は9:00〜14:00 休憩なし。センター南駅から徒歩9分・駐車場4台。日曜・祝日は白金高輪のオンライン診療へご案内します。

血や粘液の混じる下痢が4週間以上続いているなら、一度ご相談ください。
他院で診断済みの方の書類・定期採血のご相談も承ります。

10. 関連ブログ・関連クリニック

📚 当院ブログ・関連テーマ

🩸 潰瘍性大腸炎(IBD)の見分け方・診断・最新治療

4週間以上続く粘血便から、指定難病の助成申請までを解説した記事です。

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陽性と出たあとの次のステップ、大腸内視鏡をすすめる理由を整理しています。血便で受診を迷っている方に。

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🧠 過敏性腸症候群(IBS)とストレス・脳腸相関

検査で異常が出ない腸の不調と、脳と腸のつながり。本記事の「見分けるべき相手」にあたるテーマです。

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骨粗鬆症ガイドライン2025年版とMD法の解説。ステロイド治療に入る前の備えとしてお読みください。

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下痢のあとに手足のしびれ・脱力が出るギラン・バレー症候群。おなかと神経を一緒に診る視点の記事です。

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潰瘍性大腸炎の活動期にステロイドを使うときに、最も気をつけたい副作用です。血糖がどう動き、どう気づき、どう対応するかを院長 五藤良将が解説しています。

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SHIROKANETAKANAWA 五良会クリニック白金高輪

胃カメラで「早期胃がん」が見つかったら|お腹を切らずに治せるESDとは

本記事で内視鏡の連携先としてご紹介した玉井博修医師による解説記事です(理事長 五藤良将 監修)。消化管の内視鏡診療の考え方がよくわかります。

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 潰瘍性大腸炎は「治る」のでしょうか。

A. 現在の医療では、根本的な原因を取り除いて「二度と起こらなくする」ことはできません。目指すのは、炎症のない状態(寛解)を保ち続けることです。ここは正直にお伝えします。ただし、治療の選択肢はこの20年で大きく増え、粘膜が治った状態を長く保ち、仕事・学業・妊娠・旅行を含めて普通の生活を続けている方が大勢いらっしゃいます。「治らない病気」より「付き合い方が確立してきた病気」と受け取っていただくのが、実態に近いと思います。

Q2. 食事で避けるべきものはありますか。

A. 寛解している時期に、一律に禁止される食品はありません。ここは多くの方が誤解されています。一方で症状が出ている活動期には、脂質の多いもの、香辛料、アルコール、冷たい飲み物、不溶性食物繊維の多いもの(きのこ・ごぼう・海藻など)が刺激になることがあります。大切なのは、ご自身で合わないと感じた食品を記録しておくことです。人によって違いますので、一般論より自分の記録が役に立ちます。過度な制限で栄養が不足すると、かえって体力と骨を損ないます。

Q3. 調子がいいので、薬をやめてもいいですか。

A. 自己判断での中止はおすすめできません。潰瘍性大腸炎で症状が消えているのは、多くの場合「治った」のではなく「薬で抑えられている」状態です。維持療法をやめると再燃する確率が上がり、5-ASA製剤の継続は長期的な発がんリスクを下げる方向に働くとも考えられています(難病情報センター)。薬の量や種類の見直しはできますので、やめたいというご希望はぜひ受診時にお話しください。黙ってやめてしまうのが一番もったいない選択です。

Q4. 大腸がんになるのが不安です。どのくらい心配すべきですか。

A. リスクが上がるのは、主に炎症が長期間続いている方、とくに全大腸炎型の方です。直腸炎型で炎症が落ち着いている方のリスクは、それほど大きくありません。そして対策は明確です。①5-ASA製剤などの維持療法を続ける、②症状がなくても定期的にサーベイランス内視鏡を受ける――この2つで、早い段階で見つけて対応できます(日本消化器内視鏡学会は病歴の長い方に1〜2年ごとといった間隔を挙げています)。不安は、通院をやめる理由ではなく続ける理由にしてください。

Q5. 妊娠・出産はできますか。

A. できます。重要なのは「寛解の状態で妊娠に臨む」ことで、活動期の炎症があるほうが妊娠中のリスクは高くなります。使用できる薬・注意が必要な薬がはっきり分かれていますので、妊娠をお考えの段階で、必ず事前にご相談ください。自己判断で薬をやめて炎症が再燃するのは、最も避けたい進み方です。当院は内科・小児科併設で、出産後のお子さまの診療まで同じ窓口でご相談いただけます。

Q6. 大きな病院で診断されました。通院を近くに移せますか。

A. ご相談ください。安定している時期の定期採血・処方・指定難病の臨床調査個人票(年1回の更新)は、当院で対応できる部分です。理事長 五藤 良将は難病指定医です。そのうえで、生物学的製剤の導入や入院が必要な状態、サーベイランス内視鏡については、専門の医療機関やグループの内視鏡施設と連携して進めます。「近くで続けられる部分」と「専門施設にお願いする部分」を整理するだけで、通院の負担はかなり軽くなります。紹介元の診療情報提供書をお持ちください。

AUTHOR / SUPERVISOR

医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事は、五藤 良将が公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆・監修しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、五良ファミリークリニック センター南(045-942-7783)までお知らせください。

📚 主な参考資料

  • 難病情報センター「潰瘍性大腸炎(指定難病97)」(患者数126,603人/2019年度、診断基準・重症度分類・治療)
  • 日本消化器病学会「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン」
  • 日本消化器内視鏡学会「炎症性腸疾患ではどのような内視鏡検査が行われますか?」(サーベイランス内視鏡の間隔)
  • Scientific Reports(2025)システマティックレビュー・メタ解析:IBDと認知症リスク(10研究・789万人、OR 1.17[95%CI 1.08–1.27]、因果関係は未確立)
  • メディカル・データビジョン プレスリリース(2025年6月):潰瘍性大腸炎の患者数推移、男女とも40代が最多

GORYO FAMILY CLINIC CENTER MINAMI
五良ファミリークリニック センター南
内科・小児科・神経内科・認知症外来・頭痛外来・アレルギー科・糖尿病内科・心療内科
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アレルギー科 糖尿病内科 予防接種 健康診断 心療内科
※旧名称:浜クリニック
〒224-0006 神奈川県横浜市都筑区荏田東4-3-19
横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン「センター南駅」徒歩9分/駐車場4台
診療時間 月 火 水 木 金 土 日・祝
9:00〜12:00 ○ ○ ○ ○ ○ 9:00
〜
14:00
休
15:00〜18:30 ○ 休 ○ ○ ○

休診日:火曜午後・日曜・祝日/土曜は9:00〜14:00(休憩なし)

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理事長 五藤 良将

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