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過敏性腸症候群(IBS)とストレス〜脳と腸はつながっている「脳腸相関」の話〜

[2026.08.04]
IRRITABLE BOWEL SYNDROME

過敏性腸症候群(IBS)とストレス
〜脳と腸はつながっている「脳腸相関」の話〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)より、「検査では異常がないのに、お腹の不調が続く」過敏性腸症候群の本質と、心療内科・内科の両面からの治療をわかりやすくお伝えします。

過敏性腸症候群 脳腸相関 ストレスと自律神経 火曜午前 心療内科専門外来

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「通勤電車に乗ると、急にお腹が痛くなってしまう」「大事な会議の前は必ず下痢をする」「検査では異常なしと言われたのに、便秘と腹痛がずっと続いている」――外来で、そんなご相談を受けることが少なくありません。ご本人はもちろん、「息子が朝、トイレから出られなくて学校に遅れそうになる」とご家族が心配されて来院につながるケースもあります。

結論からお伝えします。それは「気のせい」でも「性格の問題」でもなく、脳と腸が互いに影響し合う「脳腸相関」の乱れによって起こる、れっきとした病気――過敏性腸症候群(IBS)の可能性があります。そして、生活習慣・食事・お薬・ストレスケアを組み合わせることで、症状は十分にコントロールできます。

本記事では、過敏性腸症候群のタイプと診断基準、ストレスとお腹をつなぐ脳腸相関のしくみ、低FODMAP食などの食事の工夫、最新のお薬、そして当院が力を入れる心療内科的アプローチまでを、内科と心療内科の両方の視点から整理してお伝えします。旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた当院は、毎週火曜日の午前に心療内科専門外来を行っており、「ストレスと体の症状」のご相談を得意としています。

1. 過敏性腸症候群(IBS)とは?――約10人に1人の身近な病気

過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)は、大腸カメラや血液検査では明らかな異常が見つからないのに、腹痛と便通異常(下痢・便秘)が慢性的に続く病気です。日本消化器病学会の「機能性消化管疾患診療ガイドライン2020(IBS改訂第2版)」によると、日本人の有病率はおよそ10%前後、つまり約10人に1人が該当すると報告されている、とても身近な疾患です。

🧠 特徴的なのは、症状がストレスや緊張と連動して悪化することです。「家ではなんともないのに、通勤・通学の途中でお腹が痛くなる」「休日は調子がよい」――こうしたパターンは、IBSを疑う大きなヒントになります。命に関わる病気ではありませんが、通勤・通学・外出への不安から生活の質(QOL)を大きく下げてしまうことが問題で、10〜40代の比較的若い世代に多く、女性にやや多い傾向があります。

📊 これは何を意味するのか?

有病率約10%ということは、40人のクラスや職場なら約4人がIBSに悩んでいる計算です。「自分だけがおかしい」わけでは決してありません。一方で、受診して適切な治療を受けている方はその一部にとどまるといわれ、「我慢してやり過ごしている人が非常に多い」のがこの病気の実情です。

2. 症状と4つのタイプ(下痢型・便秘型・混合型・分類不能型)

IBSは便の形状(かたさ)によって、大きく4つのタイプに分けられます。タイプによって使うお薬が変わるため、この分類は治療方針に直結します。

タイプ 主な便通 よくある困りごと
下痢型(IBS-D) 軟便・水様便が中心 通勤・通学中の急な便意。男性にやや多い
便秘型(IBS-C) 硬便・コロコロ便が中心 残便感・お腹の張り。女性にやや多い
混合型(IBS-M) 下痢と便秘を繰り返す 便通が安定せず予定が立てにくい
分類不能型(IBS-U) 上記のどれにも当てはまらない 腹痛・腹部不快感が前面に出る

いずれのタイプでも共通するのは、「排便によって腹痛がやわらぐ」「排便の回数や便の形が変わるタイミングで腹痛が起こる」という、腹痛と便通の連動です。ガスがたまりやすい、お腹がゴロゴロ鳴る、残便感がある、といった症状を伴うことも多くみられます。

3. なぜ起こる?――「脳腸相関」とストレス・自律神経

IBSを理解するキーワードが「脳腸相関(のうちょうそうかん)」です。脳と腸は自律神経・ホルモン・免疫のネットワークで双方向につながっており、脳が感じたストレスは腸の動きを乱し、腸の不調は脳に伝わって不安を強める――この悪循環がIBSの本態と考えられています。緊張すると胃がキュッと痛む、心配ごとがあると食欲が落ちる。誰にでもある、あの反応の延長線上にある病気なのです。

腸は「第二の脳」と呼ばれるほど神経細胞が豊富な臓器で、幸せホルモンとして知られるセロトニンの約90%は腸に存在します。ストレスがかかると腸のセロトニンが過剰に働き、腸の動きが乱れて下痢や腹痛につながります。また、IBSの方の腸は刺激に敏感になっており(内臓知覚過敏)、健康な方なら気にならない程度の腸の動きやガスを「痛み」として感じてしまいます。さらに近年は、腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れや、感染性腸炎のあとに発症する「感染後IBS」の存在も注目されています。

🧠 ストレス・自律神経

緊張・不安が自律神経を介して腸の運動と知覚を乱す。IBS最大の増悪因子

🔁 内臓知覚過敏

腸が刺激に敏感になり、わずかな動きやガスでも痛み・便意として感じてしまう

🌱 腸内フローラの乱れ

腸内細菌のバランスの崩れがガス産生や知覚過敏に関与。食事・プロバイオティクスが治療の柱に

🦠 感染後IBS

食中毒や感染性腸炎のあと、腸の粘膜と神経の過敏さが残り発症するタイプ

4. ⚠ IBSと決めつけてはいけない「危険なサイン」

「ストレスのせいのお腹の不調」と自己判断してしまう前に、必ず確認していただきたいことがあります。潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)や大腸がんも、初期には下痢・腹痛・便通異常というIBSとよく似た症状で始まることがあるからです。

📊 次のサインがあれば、IBSと決めつけず必ず検査を

  • 血便・黒い便が出る
  • ダイエットをしていないのに体重が減っていく
  • 発熱を伴う、夜間に眠りを妨げるほどの腹痛・下痢で目が覚める
  • 健診で貧血便潜血陽性を指摘された
  • 50歳以降に初めて症状が出た
  • ご家族に大腸がん・炎症性腸疾患の方がいる

これらは「警告徴候(アラームサイン)」と呼ばれ、ひとつでも当てはまる場合は大腸内視鏡検査などによる精査が優先されます。当院で診察のうえ、内視鏡検査が必要な場合は姉妹院の五良会クリニック白金高輪(消化器内視鏡専門医が在籍)などへ速やかにご紹介します。グループ内で診断から治療まで切れ目なくつながるのが、五良会・正友会グループの強みです。

5. 診断の流れ――Rome IV基準と除外診断

IBSの診断には、国際的な診断基準であるRome IV(ローマ4)基準(2016年)が用いられます。ポイントは次のとおりです。

💡 Rome IV基準(要約)

直近3ヶ月間、平均して週1日以上の腹痛が繰り返しあり、その腹痛が「①排便に関連する」「②排便回数の変化を伴う」「③便の形状の変化を伴う」の2項目以上に当てはまること(症状の始まりは6ヶ月以上前)。

ただし、この基準はあくまで「症状のパターン」の確認です。実際の診療では、問診に加えて血液検査(貧血・炎症反応・甲状腺機能など)や便検査を行い、必要に応じて内視鏡検査で他の病気を除外したうえで診断を確定します。🏥 当院では、症状の経過・生活背景・ストレス状況までを丁寧にうかがい、「体の検査」と「心理・社会的な評価」を並行して進めます。

6. 治療① 生活習慣と食事の工夫(低FODMAP食)

IBS治療の土台は、お薬の前にまず生活リズムと食事です。🚶 規則正しい食事時間、十分な睡眠、適度な運動(ウォーキングなどの有酸素運動)は、自律神経と腸のリズムを整える基本です。そのうえで、食事面では「低FODMAP(フォドマップ)食」という考え方が世界的に注目されています。FODMAPとは、小腸で吸収されにくく大腸で発酵してガスや水分貯留を起こしやすい糖質の総称で、これらを一時的に減らすことで症状が改善する方が多いことが報告されています。

🥗 比較的お腹にやさしい食品(低FODMAP)の例

  • 主食:白米、玄米、そば(十割)、グルテンフリー食品
  • たんぱく質:肉、魚、卵、木綿豆腐
  • 野菜・果物:にんじん、トマト、なす、ほうれん草、バナナ、いちご、キウイ
  • 乳製品の代替:乳糖の少ないチーズ(ハード系)、アーモンドミルク

⚠ 症状が強い時期は控えめにしたい食品(高FODMAP)の例

  • 小麦製品:パン、パスタ、うどん(食べ過ぎに注意)
  • 豆類・一部野菜:大豆、ひよこ豆、玉ねぎ、にんにく、ごぼう
  • 乳製品:牛乳、ヨーグルト(乳糖)※合う・合わないに個人差あり
  • 果物・甘味料:りんご、梨、はちみつ、キシリトールなどの人工甘味料
  • その他:炭酸飲料、アルコール、カフェインの摂り過ぎ

⚠ 低FODMAP食は「ずっと続ける食事」ではありません
すべてを厳格に除去し続けると栄養バランスが偏り、腸内細菌の多様性も損なわれかねません。基本は「2〜6週間ほど減らして症状の変化を確認し、1品目ずつ戻しながら自分に合わない食品だけを特定する」方法です。自己流で極端な除去食に進む前に、ぜひ外来でご相談ください。

7. 治療② タイプ別のお薬

生活・食事の工夫だけで不十分な場合は、タイプに合わせてお薬を組み合わせます。IBSの薬物療法はこの10年で選択肢が大きく広がりました。

分類 代表的なお薬 特徴
全タイプの基本 ポリカルボフィルカルシウム、トリメブチン、プロバイオティクス(整腸剤) 便の水分と腸の動きを整える。第一段階として広く使用
下痢型(IBS-D) ラモセトロン(セロトニン5-HT3受容体拮抗薬) 腸で過剰に働くセロトニンをブロックし、下痢・腹痛を改善
便秘型(IBS-C) リナクロチド、ルビプロストン、酸化マグネシウム など 腸管内の水分を増やして便をやわらかくし、腹痛・腹部不快感も軽減
腹痛・ガスが強い場合 鎮痙薬(チキジウムなど)、消泡薬 腸のけいれん性の痛みや張りをやわらげる
不安・抑うつを伴う場合 抗不安薬・抗うつ薬(少量から) 脳腸相関の「脳側」に働きかける。心療内科的評価のうえで使用

大切なのは、「どの薬を使うか」よりも「自分のタイプと増悪パターンに合った組み合わせを見つける」ことです。効果を見ながら1〜2ヶ月単位で調整していきますので、初回で完璧を目指す必要はありません。

8. 治療③ 心療内科的アプローチ――ストレスと付き合う技術

IBSは脳腸相関の病気ですから、腸だけを治療しても半分しか治療していないことになります。特に「また電車でお腹が痛くなったらどうしよう」という予期不安は、それ自体がストレスとなって症状を呼び起こす悪循環の入り口です。この悪循環を断つのが心療内科的アプローチで、認知行動療法(CBT)はIBSの症状改善に有効であることが複数の臨床研究で示されており、ガイドラインでも心理療法が治療選択肢として位置づけられています。

🧘 リラクセーション

腹式呼吸・筋弛緩法で自律神経の緊張をゆるめ、腸の過敏な反応を鎮める

📚 認知へのアプローチ

「絶対に漏らしてはいけない」という破局的思考をほぐし、予期不安の悪循環を断つ

📖 症状日記

食事・睡眠・ストレスと症状の関係を「見える化」し、自分の増悪パターンを知る

🤝 環境調整

通勤ルートの工夫、職場・学校との相談など、安心して過ごせる環境づくりも立派な治療

💡 不眠や不安、気分の落ち込みを伴う方も少なくありません。睡眠の問題を並行して整えると腸の症状も安定しやすくなります。睡眠でお悩みの方は、当院の関連記事「不眠症とは|タイプ・原因・治療」もあわせてご覧ください。

9. 当院の診療体制――火曜午前は心療内科専門外来

🏥 センター南でIBSを診る、当院の強み

  • 毎週火曜日午前は心療内科専門外来――ストレスと体の症状(心身症)の診療を専門的に行います
  • 内科・心療内科併設だから、「体の検査による除外診断」と「心のケア」をひとつの窓口で完結できます
  • 血液検査・貧血・甲状腺などの内科的スクリーニングを院内で実施
  • 内視鏡検査が必要な場合は、姉妹院五良会クリニック白金高輪へスムーズにご紹介(グループ連携)
  • 糖尿病専門外来(水曜)・神経内科・頭痛外来・認知症外来を併設し、「3軸アプローチ」で全身を診ます
  • センター南駅徒歩9分・駐車場4台。土曜は9〜14時(休憩なし)診療

「心療内科に行くほどではない気がする」「まず体の病気じゃないか確かめたい」という方こそ、内科併設の当院に向いています。普段の内科受診の延長で、自然にストレスのご相談まで進めるのが当院のスタイルです。😷 もちろん、ご家族からの「本人が受診を渋っている」というご相談も歓迎します。

🔁 3軸クロスポイント:過敏性腸症候群を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

当院は糖尿病・認知症・抗加齢医学の「3軸クロスポイント」を大切にしています。一見「お腹の病気」であるIBSも、この3つの軸から眺めると、全身の健康とつながっていることが見えてきます。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連

糖尿病で高血糖が長く続くと、自律神経障害によって下痢や便秘などの消化管症状が起こることがあり、IBSとよく似た症状を呈します。「IBSだと思っていたら糖尿病性の神経障害だった」というケースを見逃さないためにも、血糖チェックは重要です。当院では毎週水曜日に糖尿病専門外来を行っており、腸の症状と血糖の両面から評価できます。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連

脳腸相関の研究はいま、認知症の分野へ広がっています。腸内細菌叢の乱れが慢性炎症を介して脳の老化や認知機能に影響する可能性が報告され、「腸から脳を守る」という発想が注目されています。パーキンソン病でも便秘が運動症状より何年も先行することが知られており、「腸は脳の窓」ともいえます。神経内科・認知症外来を併設する当院ならではの視点で、腸と脳をまとめて診ていきます。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

腸内細菌の多様性は、免疫・代謝・炎症を通じて「老化のスピード」に関わる重要な因子です。IBSの治療で食事と腸内環境を整えることは、単に腹痛を減らすだけでなく、健康寿命と平均寿命のギャップを縮める抗加齢医学の実践でもあります。日本抗加齢医学会専門医の立場からも、「腸を整えることは、若さを保つこと」とお伝えしたいと思います。

10. 関連ブログ・関連クリニック

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ストレスで悪化する「体の病気」の全体像を心療内科の視点で解説。IBSも代表的な心身症のひとつです

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🌙 不眠症とは

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 過敏性腸症候群は治りますか?

A. 症状の波はありますが、生活・食事・お薬・ストレスケアを組み合わせることで、多くの方が「日常生活で困らないレベル」まで改善します。大切なのは、自分の増悪パターン(特定の食品・状況・ストレス)を知り、対処法を身につけることです。焦らず一緒に調整していきましょう。

Q2. 大腸カメラは必ず受けないといけませんか?

A. 全員に必須ではありません。ただし、血便・体重減少・発熱・貧血・便潜血陽性・50歳以降の発症などの警告サインがある場合や、治療をしても改善が乏しい場合は、大腸がんや炎症性腸疾患の除外のため内視鏡検査をおすすめします。必要な場合は姉妹院の五良会クリニック白金高輪などへご紹介します。

Q3. 市販の下痢止めや整腸剤で様子を見てもよいですか?

A. 短期間であればよいのですが、市販薬でしのぎ続けると、背後にある病気の発見が遅れたり、タイプに合わない薬でかえって症状が悪化したりすることがあります(下痢止めの使いすぎで便秘型が悪化するなど)。症状が1ヶ月以上続く場合は、一度受診して原因を確かめることをおすすめします。

Q4. 子どもでも過敏性腸症候群になりますか?

A. なります。特に思春期のお子さんでは、朝の登校前に腹痛・下痢を繰り返し、遅刻や欠席につながるケースが少なくありません。「怠けている」わけではなく、脳腸相関の乱れによる体の症状です。当院は小児科も併設していますので、お子さんの腹痛・便通のお悩みもお気軽にご相談ください。

Q5. 心療内科の受診は初めてで緊張します。どんなことを話せばよいですか?

A. 特別な準備は不要です。「いつから、どんな時に、どんな症状が出るか」をそのままお話しいただければ十分です。当院は内科併設ですので、まず体の検査から入り、必要に応じてストレスのご相談へ自然に進められます。火曜午前の心療内科専門外来のほか、通常の内科外来でもご相談いただけます。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪


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