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〜脳梗塞の2〜3割を占める心原性脳塞栓症を、検脈とスマートウォッチで防ぐ〜

[2026.09.18]

【お知らせ】心療内科専門外来の終了について(2026年10月追記)

火曜午前の心療内科専門外来を担当していた阿部靖彦 医師は、2026年9月末をもって退職いたしました。これに伴い、当院の心療内科専門外来は2026年9月で終了しております。本記事中の心療内科に関する記載は掲載当時の内容です。
2026年10月からの火曜午前は、玉井博修 医師による消化器内科・肝臓内科の専門外来となりました。また、月・水・木・金曜の午後診療は18:30まで延長しております。

ATRIAL FIBRILLATION & STROKE PREVENTION
その動悸、脈の乱れは「隠れ心房細動」かもしれません
〜脳梗塞の2〜3割を占める心原性脳塞栓症を、検脈とスマートウォッチで防ぐ〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)より、心房細動という不整脈が「最も重い脳梗塞」を招くしくみと、今日から自宅でできる見つけ方をわかりやすくお伝えします。

心房細動 脳梗塞予防 検脈・スマートウォッチ 脳神経内科

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「健診で不整脈と言われたけれど、何も症状がないので放っておきました」「父のスマートウォッチに“心房細動の可能性”と出たのですが、本人はまったく元気なんです」──旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた当院の外来でも、秋の健診シーズンになるとこうしたご相談が一気に増えます。

結論からお伝えします。心房細動は「症状がないこと」こそが最大の危険サインです。約半数の方は無症状のまま経過し、ある日突然、脳梗塞のなかで最も重い「心原性脳塞栓症」を起こします。しかし、見つけて適切な治療を始めれば、その脳梗塞の約6割は防げます。

本記事では、脳神経内科・頭痛外来・認知症外来を併設する当院の立場から、心房細動が脳を壊すしくみ、危険度の数値化、ご自宅で15秒あればできる「検脈」、そしてスマートウォッチの正しい使い方と限界までを、順を追って解説します。ご家族の脈を確かめるきっかけにしていただければ幸いです。

📖 目次

  1. 心房細動とは──心房が「細かく震える」不整脈
  2. 約半数が無症状。これが最大の落とし穴です
  3. 心原性脳塞栓症──脳梗塞のなかで最も重い「ノックアウト型」
  4. あなたの危険度を数値化する:CHADS2スコアとHELT-E2S2スコア
  5. 15秒でできる「検脈」セルフチェックのやり方
  6. スマートウォッチ・家庭用心電計──できることと、できないこと
  7. 心房細動になりやすい人と、生活習慣でリスクを下げる方法
  8. 治療:抗凝固療法(DOAC)と、脈を整えるリズムコントロール
  9. センター南での検査の流れと、受診の目安
  10. 関連ブログ・関連クリニック
  11. よくあるご質問(FAQ)
  12. 🔁 3軸クロスポイント(糖尿病×認知症×抗加齢)

1. 心房細動とは──心房が「細かく震える」不整脈

心臓は、上の部屋である「心房」と下の部屋である「心室」が、規則正しくポンプのように動くことで全身に血液を送っています。ところが心房細動になると、心房が1分間に400〜600回という速さで無秩序に細かく震え、まとまった収縮ができなくなります。「細動(さいどう)」という名前は、この“細かく震える”状態からきています。

その結果、心室に伝わる信号もバラバラになり、脈が「不規則に不規則」になります。トン、トン、トトン、ト……と、リズムにも強さにもまったく規則性がないのが特徴です。日本では診断がついている方だけで約80万人、実際には100万人以上が心房細動を持っていると推計されています(日本脳卒中協会)。年齢とともに増え、80歳代では20〜30人に1人ともいわれる、決してめずらしくない不整脈です。

💡 「期外収縮」と「心房細動」は別物です

健診でよく指摘される「期外収縮」は、規則正しい脈のなかにポンと1拍余分が入るもので、多くは心配のいらない不整脈です。一方の心房細動は脈全体がずっと不規則で、脳梗塞のリスクに直結します。「不整脈」とひとことで言っても中身はまったく違うため、健診で指摘されたら“どの不整脈か”を必ず確認してください。

2. 約半数が無症状。これが最大の落とし穴です

心房細動というと「激しい動悸で苦しくなる病気」というイメージをお持ちの方が多いのですが、実際には患者さんの約半数が無症状です(日本脳卒中協会)。症状がある方は動悸、胸の違和感、息切れ、疲れやすさ、めまい、ふらつきなどを訴えますが、これらは「年のせい」「寝不足のせい」と片づけられやすいものばかりです。

そして無症状であっても、心房のなかで血栓(血のかたまり)はでき続けます。つまり「つらくないから安全」ということは、心房細動に限ってはまったく成り立ちません。無症候性心房細動の方が、むしろ発見が遅れるぶん危険ともいえます。

📊 見つかっていない・治療されていない

心房細動をお持ちの方のうち、脳梗塞を予防する抗凝固療法を実際に受けているのはおよそ半数にとどまると報告されています(日本脳卒中協会)。「見つかっていない人が多い」ことに加えて、「見つかっても治療につながっていない人が多い」という二重の課題があるのです。

3. 心原性脳塞栓症──脳梗塞のなかで最も重い「ノックアウト型」

心房が震えて血液がよどむと、心房の一角にある「左心耳(さしんじ)」という袋状の部分に血栓ができます。この血栓は動脈硬化でできる血栓と違って大きく、やわらかく、はがれやすいのが特徴です。はがれた血栓は血流にのって一気に脳へ運ばれ、太い血管を根元から詰まらせます。これが心原性脳塞栓症で、前ぶれもなく突然、広い範囲の脳が一度にダメージを受けることから「ノックアウト型脳梗塞」とも呼ばれます。

脳卒中全体のうち脳梗塞が約6割を占め、その脳梗塞のうち2〜3割が心原性脳塞栓症です。そして心原性脳塞栓症の原因の4分の3が心房細動だとされています(日本脳卒中協会)。

📊 心原性脳塞栓症を起こした方の、退院時の状態

退院時の状態 割合
不自由なく生活できる 29%
軽度の障害が残る 11%
歩けるが介助が必要 10%
車いす生活 18%
寝たきり(全介助) 19%
死亡 12%

出典:日本心臓財団「心原性脳塞栓とは?」(2024年)。およそ半数の方が、車いす・寝たきり、あるいは命を落とすという、きわめて重い転帰です。

当院の脳神経内科・頭痛外来でも、「もっと早く脈を診ておけば」と悔やまれるケースに出会うことがあります。心房細動は「起きてから治す」のではなく「起きる前に見つける」病気です。

4. あなたの危険度を数値化する:CHADS2スコアとHELT-E2S2スコア

心房細動があるすべての方が同じリスクではありません。どれくらい脳梗塞を起こしやすいかを数値化するために、世界的に使われているのがCHADS2(チャズツー)スコアです。

項目 内容 点数
C 心不全がある 1点
H 高血圧がある 1点
A 75歳以上 1点
D 糖尿病がある 1点
S2 脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)の既往 2点

合計が0点なら年間約2%、満点の6点では年間約20%という頻度で脳梗塞が起こると報告されています(日本心臓財団)。日本のガイドラインでは、原則としてCHADS2スコアが1点以上であれば抗凝固療法を検討します。血圧と血糖を放置している方は、それだけで2点になってしまうことに注目してください。

さらに2024年のJCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版(不整脈治療)では、日本人のデータから作られた「HELT-E2S2スコア」(高血圧・年齢・低体重・脳卒中の既往・心房細動の持続の型などを組み合わせたもの)が紹介され、日本人に合ったリスク評価が可能になりました。体格の小さい高齢の方が多い日本では、欧米の指標をそのまま当てはめない配慮が重要になります。

5. 15秒でできる「検脈」セルフチェックのやり方

心房細動を見つけるもっとも手軽な方法が、自分の脈を触って確かめる「検脈(けんみゃく)」です。日本脳卒中協会は語呂合わせで3月9日を「脈の日」と定め、検脈の習慣を呼びかけています。道具もお金も要りません。

🩺 ① 場所

手のひらを上に向け、手首の親指側のくぼみに、反対の手の人さし指・中指・薬指の3本をそっと当てます。

⏱ ② 時間

まず15秒。余裕があれば1分間数えます。座って落ち着いた状態で、朝晩など決まった時間に行うのがおすすめです。

👀 ③ 見るポイント

リズム(等間隔か)と強さ(一定か)。心房細動では「トン・トン・トトン・ト…」と、間隔も強さもバラバラになります。

📝 ④ 記録

日付・脈拍数・「規則的/不規則」をメモに残します。血圧計の測定値と一緒に記録すると、診察時にとても役立ちます。

⚠ ご家族の脈も、ぜひ確かめてください

心房細動は加齢とともに増えます。ご本人が無症状の場合、周囲が気づくしかありません。ご高齢のご両親の手首に、月に一度そっと触れてみる。それだけで、将来の寝たきりを防げる可能性があります。家庭用血圧計に「不規則脈波(IHB)」のマークが出る機種も多く、くり返し表示されるようなら受診の合図です。

6. スマートウォッチ・家庭用心電計──できることと、できないこと

近年、心電図記録機能をもつスマートウォッチが「家庭用心電計プログラム」として国内でも承認され、当院にも「時計に“心房細動の可能性”と表示された」というご相談が増えました。これは医療にとって大きな前進です。無症状の心房細動は、症状をきっかけに受診することができないため、機械が24時間見張ってくれる意義はきわめて大きいのです。

⭕ できること

・無症状の不規則な脈に「気づく」
・症状が出たその瞬間に記録を残す
・発作性(ときどき起こる型)の心房細動をとらえる
・受診のきっかけになる

⚠ できないこと

・確定診断はできません(診断は12誘導心電図などが必要)
・他の不整脈との区別は不十分なことがある
・「異常なし」と出ても心房細動を否定できない
・治療の要否・薬の選択は判断できない

大切なのは、スマートウォッチは「診断装置」ではなく「気づきの装置」だと理解しておくことです。通知が出たときは慌てず、その記録(波形のPDFやスクリーンショット)を保存して、外来にお持ちください。逆に、通知が出ないから安心とは言えません。動悸やふらつきの症状があれば、機械の判定にかかわらずご相談ください。

7. 心房細動になりやすい人と、生活習慣でリスクを下げる方法

心房細動は「たまたま起こる」ものではなく、心房に負担をかけ続ける要因が積み重なって起こります。裏を返せば、その要因の多くは今日から減らせるということです。

危険因子 なぜ心房細動を招くか/対策
高血圧 最も重要な因子。左心房に圧がかかり拡大します。JSH2025でも診察室血圧130/80 mmHg未満が基本目標です。
糖尿病 心房の線維化と自律神経障害を進めます。CHADS2スコアでも1点。水曜の糖尿病専門外来で一緒に管理します。
睡眠時無呼吸(SAS) 夜間の低酸素と胸腔内圧の変動が心房を刺激します。いびき・日中の眠気がある方は検査を。
飲酒 量に比例してリスクが上がります。習慣的に飲む方が禁酒すると再発が明らかに減ることが無作為化比較試験で示されています(NEJM 2020)。
肥満・メタボ 体重減量そのものが心房細動の発作を減らします。まずは体重の5%減が現実的な目標です。
甲状腺機能亢進症 見逃されやすい原因。採血1本で調べられ、治療すれば心房細動が改善することがあります。
加齢・喫煙・心不全・弁膜症 加齢は避けられませんが、禁煙と基礎疾患の管理でリスクは確実に下げられます。

💡 秋こそ、脈を確かめる季節です

朝晩の冷え込みが出てくるこの時期は血圧が上がりやすく、心臓への負担が増えます。また、夏のあいだに減っていた飲酒量が行事とともに戻りやすい季節でもあります。健診結果が返ってくる秋は、血圧・血糖・脈をまとめて見直す絶好のタイミングです。

8. 治療:抗凝固療法(DOAC)と、脈を整えるリズムコントロール

心房細動の治療は、大きく①血栓を作らせない(抗凝固療法)、②脈の速さを整える(レートコントロール)、③本来のリズムに戻す(リズムコントロール)の3本柱です。なかでも脳を守るうえで最優先されるのが①です。

🩸 ① 抗凝固療法(DOAC)

血液を固まりにくくして、心房のなかに血栓ができるのを防ぎます。適切に続ければ心房細動による脳梗塞の約6割を予防できるとされています(日本脳卒中協会)。現在は、従来のワルファリンに代わってDOAC(直接経口抗凝固薬:ダビガトラン・リバーロキサバン・アピキサバン・エドキサバン)が第一選択です。

DOACは納豆や青汁などの食事制限が不要で、効き目を確認するための頻回な採血も原則不要です。ただし腎機能や体重、年齢によって用量が細かく決められており、自己判断での減量・中断は最も危険です。血液をさらさらにする以上、出血のリスクとの天秤になりますので、必ず定期的な採血で腎機能を確認しながら続けます。

💗 ② レートコントロール/③ リズムコントロール

脈が速すぎると動悸や息切れ、心不全の原因になるため、β遮断薬などで脈の速さを抑えるのがレートコントロールです。一方、抗不整脈薬や電気ショック、カテーテルアブレーション(肺静脈を電気的に隔離する治療)で正常な洞調律に戻すのがリズムコントロールです。

近年は、診断してから早い時期にリズムコントロールを行ったほうが心血管イベントが少ないことが大規模試験(EAST-AFNET 4、NEJM 2020)で示され、2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版でもカテーテルアブレーションの位置づけが整理されました。「年だから」と諦めるのではなく、まずは専門施設で適応を評価してもらう価値があります。当院では評価のうえ、必要な方を不整脈専門医のいる医療機関へご紹介しています。

⚠ 自己判断で薬をやめないでください

「脈が落ち着いたから」「アブレーションを受けたから」といって、抗凝固薬を自己判断で中止するのは非常に危険です。中止後に脳梗塞を起こす例は少なくありません。歯科治療や内視鏡、手術の前に休薬が必要かどうかも、必ず処方医にご確認ください。

9. センター南での検査の流れと、受診の目安

「脈が不規則な気がする」「スマートウォッチに通知が出た」「健診で不整脈と書かれた」──どれも、立派な受診理由です。当院では次のような流れで評価します。

🏥 当院での評価の流れ

1. 問診・検脈・血圧測定(症状の頻度、持続時間、きっかけを整理します)
2. 12誘導心電図──その場で心房細動かどうかを確認します
3. ホルター心電図(24時間)──ときどきしか出ない発作性心房細動を捕まえます
4. 採血──甲状腺機能、腎機能、貧血、血糖(HbA1c)を確認。腎機能はDOACの用量決定に必須です
5. リスク評価(CHADS2スコア等)のうえ、治療方針をご相談。心エコーやカテーテル治療が必要な方は連携医療機関へご紹介します

🚨 すぐに救急要請(119番)を

次の症状が突然現れたら、脳梗塞の可能性があります。時間との勝負ですので、様子を見ずに救急車を呼んでください。
・顔の片側がゆがむ、笑うと片方が下がる
・片腕に力が入らない、上げたまま保てない
・ろれつが回らない、言葉が出ない、相手の言うことが分からない
・突然の激しいめまい、立てない、片方が見えない
症状が数分で消えても、それは一過性脳虚血発作(TIA)で、本格的な脳梗塞の直前サインです。必ず受診してください。

当院はセンター南駅から徒歩9分、駐車場4台をご用意しています。土曜は9:00〜14:00(休憩なし)まで診療していますので、平日にお時間の取りにくい方もご相談ください。日曜・祝日は、グループの五良会クリニック白金高輪のオンライン診療をご利用いただけます。

🔁 3軸クロスポイント:心房細動を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

心房細動は「心臓だけの問題」と思われがちですが、当院が大切にしている3軸アプローチ(糖尿病×認知症×抗加齢)で眺めると、まったく違う姿が見えてきます。心房細動は、生活習慣病の結果であり、認知症の入り口であり、そして「心臓の老化の見える化」でもあるのです。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連

糖尿病があると心房細動を発症しやすくなることが知られています。高血糖が続くと心房の筋肉に線維化(かたくなる変化)が起こり、自律神経の調節も乱れるためです。さらに糖尿病はCHADS2スコアで1点に数えられ、心房細動が見つかった時点で抗凝固療法の対象になりやすくなります。糖尿病と心房細動をあわせ持つことは、脳梗塞にとってまさに「ダブルジオパディ(二重の危険)」です。当院では水曜日の糖尿病専門外来で血糖とともに血圧・脈をあわせて確認しています。HbA1cの値そのものが実態とずれる場合もありますので、あわせてご確認ください。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連

ここが、脳神経内科・認知症外来を併設する当院がとくに強調したい点です。心房細動があると、大きな脳梗塞を起こしていなくても認知症のリスクが約1.3〜1.4倍に高まると報告されています(J Gen Intern Med 2021、システマティックレビュー・メタ解析)。原因として、症状の出ない微小な脳梗塞がくり返し起こること、脈が乱れることで脳への血流が不安定になることなどが考えられています。つまり心房細動は「治せる可能性のある認知症リスク因子」なのです。「もの忘れが気になる」という方の脈を確かめるのは、認知症外来にとって欠かせない診察のひとつです。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

心房細動の本質は「心房のリモデリング(作り替え)」、すなわち心臓の老化です。高血圧・肥満・飲酒・睡眠時無呼吸が心房を引き伸ばし、線維化させ、震えやすい土壌を作ります。裏を返せば、減量・節酒・血圧管理・SAS治療といった介入で、その進行は遅らせられるということです。これはまさに抗加齢医学の実践であり、「老化の見える化」の好例です。心原性脳塞栓症の約半数が車いす・寝たきり・死亡という転帰をたどる以上、心房細動対策は健康寿命と平均寿命のギャップを縮める、最も費用対効果の高い一手のひとつと言えます。

10. 関連ブログ・関連クリニック

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 健診の心電図で「異常なし」でした。心房細動は否定できますか?

A. 残念ながら否定はできません。健診の心電図はわずか10秒ほどの記録です。ときどきしか起こらない「発作性心房細動」は、その10秒に出ていなければ写りません。症状がある方や脈の乱れを自覚する方は、24時間記録するホルター心電図での確認をおすすめします。

Q2. スマートウォッチで「心房細動の可能性」と出ました。すぐ救急受診すべきですか?

A. 息苦しさ・胸痛・失神・麻痺などの症状がなければ、慌てて救急受診する必要はありません。記録された波形を保存し、数日以内に外来を受診してください。ただし、顔のゆがみ・片腕の脱力・ろれつ障害など脳梗塞を疑う症状があれば、ただちに119番です。

Q3. 「血液サラサラの薬」として、アスピリンを飲んでいれば大丈夫ですか?

A. いいえ。心房細動が原因の脳梗塞に対して、アスピリンなどの抗血小板薬では十分な予防効果が得られないことが分かっています。心房内にできる血栓には、DOACやワルファリンなどの抗凝固薬が必要です。同じ「血液サラサラ」でも働く場所が違いますので、自己判断でのすり替えは危険です。

Q4. 抗凝固薬を飲むと、出血が心配です。

A. もっともなご心配です。たしかに鼻血やあざ、歯ぐきからの出血は起こりやすくなります。しかし多くの方では、出血のリスクよりも、寝たきりにつながる脳梗塞を防ぐ利益のほうが大きいと判断されます。血圧をしっかり下げること、転倒を防ぐこと、腎機能に応じた用量を守ることで、出血リスクは減らせます。不安があれば中止せず、まずご相談ください。

Q5. 家族に心房細動の人がいます。私も気をつけたほうがいいですか?

A. 心房細動は家族内で多く見られることが知られており、ご家族に患者さんがいる方はやや発症しやすいとされます。ただし、より影響が大きいのは高血圧・糖尿病・肥満・飲酒・睡眠時無呼吸といった「変えられる要因」です。まずは月に一度の検脈を習慣にし、健診の血圧・血糖を放置しないことから始めましょう。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)

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