むずむず脚症候群(下肢静止不能症候群;Restless leg syndrome)
聞き慣れない病気ですが、実はかなり以前からある病態です。睡眠障害の原因の一つとも言われ、症状がひどいと夜間寝られずに夜中中家の中をウロウロ歩き回る人もいると言われています。
むずむず脚症候群は別名“下肢静止不能症候群;Restless leg syndrome”とも呼ばれ、じっと座ったり横になったりすると、脚の中を虫が這っている様なむずむず、ピリピリ、痒み、火照り、針で刺される様な痛みなどの強い不快感を感じる症状が出ます。脚が主ですが、人によっては腰や背中、腕や手に症状が現れる場合があります。特に夕方から夜間にかけて症状が現れる場合が多く睡眠障害の原因ともなります。冬より夏、夜間就寝目的で布団入って体が温まると増強する傾向がある様です。寝ていても脚の置き場がなく、始終動いたり布団を蹴ったりして一緒に寝ているパートナーにも支障が出ます。日中でも絶えず脚を動かしたりして日常生活に大きな影響を及ぼします。この苦しさは「脚の中に手を突っ込んで掻き回したくなるくらい辛い」と表現する人もいます。独特なつらさです。
むずむず脚症候群の原因はまだ不明ですが、有力な説として脳内神経伝達物質であるドパミンの機能障害や貯蔵鉄(フェリチン)不足が関与していると言われています。
ドパミンはパーキンソン病の原因として有名ですが、様々な運動機能を円滑にする働きをしています(機械の潤滑油みたいな感じ?)。さらに鉄はドパミンを作る過程で欠かすことのない物質です。この鉄が不足してドパミン合成に支障を起こし症状が引き起こされると言われています。
むずむず脚症候群には原因不明なものと他の疾患から二次的に発症とする場合があります。代表的な病気としては、透析中の慢性腎臓病、鉄欠乏性貧血、糖尿病、パーキンソン病、関節リウマチなどがあります。あと病気ではありませんが、妊娠中も症状が引き起こされる事がある様です。治療が必要とされる人は日本でも約200万人はいるとされています。さらには原因がわからず放置されている潜在的な患者さんも人口の2〜5%いると言われています。むずむず脚症候群は基本的には40歳以上の中高年に多いと言われていますが、時には小児時期にも認められる事がある様です。
むずむず脚症候群の治療
まず脳神経内科の外来を受診して頂きたいと思います。神経内科専門医が診察をして、むずむず脚症候群の目安をつけます。その上で原因不明でドパミンが減っているのか、(貯蔵)鉄不足でドパミンが産生ができないのかを採血(鉄、フェリチン、貧血の有無、腎機能障害の有無など)で確認します。鉄分が少ない時には、食事にて鉄分の補給やカフェイン・アルコールを控えるなど日常生活の改善をお勧めします。鉄分が非常に少ない時には鉄剤を処方して内服してもらうこともあります。
上記でも改善しない場合や鉄分が少なくない場合には、鉄剤以外の薬物を使用する事があります。薬物の使用にてドパミンが補充されれば症状の改善が期待できます。ドパミン補充にはパーキンソン病で使用される一部の薬剤を少量から開始していきます。また一部の抗てんかん薬を使用する事もあります。
むずむず脚症候群はかなり以前からある病気ですが、診断がつけにくく原因不明で放置をされて来た病気でした。最近になりむずむず脚症候群はだいぶ認知をされてきました。長い間不眠症の原因とも気づかれず辛い思いをされてきた潜在的むずむず脚症候群の患者さんが今後脳神経内科などを受診され、適切な治療の元快適な日常生活が送れる様になる事をお祈りしております。
院長 篠原 伸顕