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特殊な片頭痛:①片麻痺型片頭痛

[2025.10.09]
 
 
HEMIPLEGIC MIGRAINE

特殊な片頭痛①:片麻痺性片頭痛
〜手足の麻痺・しびれ・言葉の出にくさを伴う、まれな片頭痛〜

当院 院長・篠原 伸顕(神経内科・頭痛外来担当)執筆、医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将編集。頭痛外来で診る「脳梗塞とまちがえやすい片頭痛」を、最新の分類・遺伝・治療(2026年版)までわかりやすくお伝えします。

片頭痛
頭痛外来
脳梗塞との鑑別
神経内科

「頭痛のときに、片方の手足が動かしにくくなる」「言葉が一瞬出てこなくなり、家族に脳卒中では?と心配された」──そんなご相談を、当院(旧・浜クリニック)の頭痛外来でいただくことがあります。

結論からお伝えします。それは「片麻痺性片頭痛」という、まれですが実在する片頭痛の特殊型かもしれません。症状は脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)とそっくりで、初めての発作では必ずMRIで脳卒中との見極めが必要です。そして一般的な片頭痛薬であるトリプタン・エルゴタミンは使えず、別の薬を選ぶ必要があります

本記事では、片麻痺性片頭痛の症状・分類・原因遺伝子から、脳梗塞との鑑別、2026年最新の治療薬(ラスミジタン=レイボー®、経口ゲパント=ナルティーク®・アクイプタ®、抗CGRP注射薬)まで、横浜市都筑区センター南の地域の皆さまにお役立ていただける形で、頭痛専門外来の視点からまとめ直しました。最後に、当院ならではの「3軸(糖尿病×認知症×抗加齢)」の視点もお伝えします。

📖 目次

  1. 片麻痺性片頭痛とは──「片頭痛なのに手足が動かない」
  2. どんな症状が出るのか──麻痺・感覚・言葉・視覚の前兆
  3. 分類と名前──ICHD-3での位置づけ(前兆のある片頭痛の特殊型)
  4. 家族性(FHM)と孤発性(SHM)──3つの原因遺伝子
  5. 最重要:脳梗塞・TIAとの鑑別とMRI(緊急受診の判断)
  6. なぜトリプタン・エルゴタミンが使えないのか
  7. 発作が起きたときの治療(急性期)──レイボー®とゲパント
  8. 予防の選択肢──ベラパミル・抗CGRP製剤・生活習慣(2026最新)
  9. ご家庭でできること・当院 頭痛外来の流れ
  10. 関連ブログ・関連クリニック(頭痛シリーズ)
  11. よくあるご質問(FAQ)
  12. 🔁 3軸クロスポイント(片頭痛×認知症×抗加齢)

1. 片麻痺性片頭痛とは──「片頭痛なのに手足が動かない」

片麻痺性片頭痛(へんまひせいへんずつう/hemiplegic migraine)は、片頭痛の発作にともなって体の片側に運動麻痺(脱力)が起こる、まれなタイプの片頭痛です。「片麻痺型片頭痛」とも呼ばれます。多くの片頭痛では、前兆(アウラ)といえばチカチカした光やギザギザの模様(閃輝暗点)が中心ですが、このタイプでは前兆として手足の動かしにくさが加わるのが最大の特徴です。

発症の多くは20歳より前(小児〜思春期)とされ、家族の中に同じ症状の方がいる「家族性」と、一人だけに起こる「孤発性」があります。症状が脳梗塞や一過性脳虚血発作(TIA)とよく似ているため、救急外来で脳卒中を疑われることも少なくありません。だからこそ、正しく診断されることが何より大切なのです。

💡 ここがポイント

「麻痺」と聞くと脳卒中の後遺症のような強い障がいを思い浮かべるかもしれませんが、片麻痺性片頭痛の麻痺は多くが一過性で、時間とともに完全に回復するのが一般的です。ただし、まれに数時間〜数日(長い例では数週間)続くことがあり、初回や繰り返す場合は必ず専門的な評価が必要です。

2. どんな症状が出るのか──麻痺・感覚・言葉・視覚の前兆

片麻痺性片頭痛の前兆は、典型的な片頭痛よりも「ゆっくり広がり、長く続く」傾向があります。代表的な症状を整理します。

🧠 主な前兆症状

  • 運動症状(必須):片側の手や足、顔の脱力・動かしにくさ。診断にはこの運動麻痺が必須です。
  • 感覚症状:片側の手足や顔のしびれ・ピリピリ感。指先から腕、顔へとゆっくり広がることが多い。
  • 視覚症状:閃輝暗点(チカチカ・ギザギザ)、視野の一部が見えにくくなる。
  • 言語症状:言葉が出にくい、ろれつが回らない(一過性の失語)。
  • 脳幹症状を伴うこと:めまい・耳鳴り・複視・意識のもうろうなどを伴う例もあります。

⚠ 前兆が「長い」のが特徴
通常の片頭痛の前兆は5〜60分ほどで消えますが、片麻痺性片頭痛では運動症状が最長72時間続くことがあります。前兆が終わったあと、または前兆と前後して、ズキンズキンという拍動性の頭痛が片側〜両側に起こります。発作の順番や強さは人によってさまざまです。

3. 分類と名前──ICHD-3での位置づけ

国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)では、片麻痺性片頭痛は「前兆のある片頭痛」の中の特殊型として位置づけられています。日本の『頭痛の診療ガイドライン2021』(日本神経学会・日本頭痛学会)でも、同じ枠組みで扱われています。診断は、運動麻痺をともなう前兆が完全に回復することや、他の原因(脳卒中など)が否定されることなどをもとに行います。

分類 特徴
家族性片麻痺性片頭痛(FHM) 血のつながった家族(第1〜2度近親者)に同じ片麻痺性片頭痛の方がいるタイプ。常染色体優性遺伝で、原因遺伝子が判明していることが多い。
孤発性片麻痺性片頭痛(SHM) 家族歴がなく、ご本人だけに起こるタイプ。症状はFHMと同様で、遺伝子変異が見つかる場合もあります。

4. 家族性(FHM)と孤発性(SHM)──3つの原因遺伝子

家族性片麻痺性片頭痛では、脳の神経細胞の「イオンの出入り(チャネル)」にかかわる遺伝子の変異が原因として知られています。これらの変異により、神経が興奮しやすくなり、前兆のもとになる「皮質拡延性抑制(CSD)」という、脳の表面をゆっくり広がる神経活動の波が起こりやすくなると考えられています。常染色体優性遺伝のため、親が変異を持つ場合、お子さんに受け継がれる確率は理論上50%です。

遺伝子 はたらき
FHM1 CACNA1A P/Q型カルシウムチャネル。FHMで最も多く約40〜50%。一部に小脳症状(ふらつき)を伴う家系がある。
FHM2 ATP1A2 ナトリウム・カリウムポンプ。てんかんを合併することがある。
FHM3 SCN1A ナトリウムチャネル。神経の過剰興奮に関与。

💡 遺伝子検査は「必ず受けるもの」ではありません

診断は症状と経過、画像検査をもとに臨床的に行うのが基本で、遺伝子検査は必須ではありません。家族歴や経過から必要と判断された場合に、専門施設で検討します。当院では、まず正確な診断と脳卒中の除外、そして安全な薬の選択を優先します。

5. 最重要:脳梗塞・TIAとの鑑別とMRI

片麻痺性片頭痛で最も大切なのは、脳梗塞・一過性脳虚血発作(TIA)・てんかんなど、緊急の対応が必要な病気を見落とさないことです。片側の手足の麻痺やろれつの回りにくさは、脳卒中でも起こる症状です。とくに「初めての発作」では、片頭痛と決めつけず、まず脳の病気を疑って評価します。

📊 こんなときは「すぐに」受診・救急要請を

  • 突然、片側の手足が動かない・ろれつが回らない症状が初めて起きた
  • 顔のゆがみ、片側の脱力、言葉のもつれが同時にそろっている(FAST:脳卒中のサイン)
  • これまでの頭痛とまったく違う、突然で激しい頭痛
  • 麻痺やしびれが長時間続き、回復しない

※迷ったら救急(119番)をためらわないでください。脳梗塞は時間との勝負です。

鑑別のために、頭部MRI・MRA(必要に応じてCT、血液検査、心電図など)を行います。MRIでは、脳梗塞や血管の異常、まれな脳の病気(MELASなどのミトコンドリア病、CADASILなど)との見分けを行います。診断がついた後も、発作のたびに「いつもと違う」と感じたら、改めて受診していただくことが安全につながります。

6. なぜトリプタン・エルゴタミンが使えないのか

一般的な片頭痛の発作には「トリプタン製剤(スマトリプタンなど)」がよく使われます。ところが、片麻痺性片頭痛では、このトリプタンとエルゴタミン製剤は原則として使えません(添付文書上の禁忌)。これは、これらの薬に血管を収縮させる作用があり、脳の血流が一時的に低下しているおそれのある片麻痺性片頭痛・脳幹性前兆を伴う片頭痛では、症状を悪化させる懸念があるためです。

⚠ 自己判断で市販薬・他人の薬を使わない

ご家族や知人がトリプタンを持っていても、片麻痺性片頭痛の方が借りて飲むのは危険です。「片頭痛だから同じ薬」ではありません。必ず医師の診断のうえで、このタイプに安全な薬を選びましょう。

7. 発作が起きたときの治療(急性期)──レイボー®とゲパント

トリプタンが使えない片麻痺性片頭痛でも、近年は血管を収縮させない新しい急性期治療薬が登場し、選択肢が広がっています。基本は、吐き気止めや消炎鎮痛薬(NSAIDs・アセトアミノフェン)に加えて、必要に応じて次の薬を検討します。

💊 血管収縮作用のない急性期薬(注目の選択肢)

  • ラスミジタン(レイボー®/2022年発売):トリプタンの次世代にあたる「ジタン系」。5-HT1F受容体に作用し、血管を収縮させないのが特徴。トリプタンが使いにくい方の選択肢になり得ます。
  • 経口ゲパント(CGRP受容体拮抗薬)ナルティーク®(リメゲパント/2025年12月発売)は急性期と予防の両方に使え、アクイプタ®(アトゲパント/2026年4月発売)は予防に使えます。ゲパントも血管収縮作用がないため、トリプタンが禁忌の方でも候補になります。

📚 大切な注意
これらの新薬は「片麻痺性片頭痛そのもの」を適応として承認された薬ではなく、血管収縮作用がないため候補となる、という位置づけです。眠気などの副作用や、ほかの持病・お薬との兼ね合いもあります。必ず頭痛を専門に診る医師と相談して選んでいきましょう。

8. 予防の選択肢──ベラパミル・抗CGRP製剤・生活習慣(2026最新)

発作の回数が多い・重い場合は、毎日(または定期的に)薬を使って発作を減らす「予防療法」を検討します。片麻痺性片頭痛では、原因が神経のイオンチャネルにあることから、次のような薬が用いられます。

🛡 予防に用いられる主な薬

  • ベラパミル(カルシウム拮抗薬):FHMの原因がカルシウムチャネルにあることから、孤発性・家族性ともに用いられることがあります(保険上の取り扱いに留意して使用)。
  • ラモトリギン、アセタゾラミド:神経の過剰興奮を抑える目的で使われることがあります。
  • 抗CGRP抗体(注射・予防専用)エムガルティ®・アジョビ®・アイモビーグ®(いずれも2021年発売)。月1回などの皮下注射で発作を予防します。
  • 経口ゲパント:ナルティーク®・アクイプタ®は予防にも使えます。
  • 従来の片頭痛予防薬(ロメリジン、バルプロ酸、プロプラノロール、アミトリプチリンなど)も状況に応じて選びます。

💡 薬だけでなく「引き金(トリガー)」対策も

睡眠不足・寝すぎ、ストレス、脱水、強い光や音、頭部への軽い衝撃などが発作の引き金になることがあります。規則正しい睡眠、こまめな水分補給、過労を避けるといった生活の工夫も、予防の大切な土台です。頭痛ダイアリー(記録)をつけると、ご自分の引き金が見えてきます。

9. ご家庭でできること・当院 頭痛外来の流れ

片麻痺性片頭痛は、正しく診断され、安全な薬と生活管理がそろえば、発作とうまく付き合っていける病気です。当院(旧・浜クリニック)の頭痛外来では、次の流れで進めます。

🩺 ① 問診・神経診察

症状の出方・順番・持続時間、家族歴、引き金をていねいに伺います。

🧲 ② 画像検査で鑑別

脳梗塞・TIAなどを除外。必要時は連携医療機関でMRI/MRAを手配します。

💊 ③ 安全な薬の選択

トリプタンを避け、レイボー®・ゲパント・予防薬を一人ひとりに合わせて。

📒 ④ 生活管理と経過観察

頭痛ダイアリーで引き金を整理し、定期的に発作の頻度を見直します。

🏥 当院の強み

五良ファミリークリニック センター南は、神経内科・頭痛外来・認知症外来・心療内科を併設しています。頭痛だけでなく、ストレスや睡眠の問題、将来の脳の健康(認知症予防)まで、一人の患者様を「3軸(糖尿病×認知症×抗加齢)」で総合的に診られるのが特徴です。土曜も9〜14時(休憩なし)で診療しています。

🔁 3軸クロスポイント:片麻痺性片頭痛を「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

当院は、目の前の症状だけでなく、その方の将来の脳と全身の健康まで見すえて診療することを大切にしています。片麻痺性片頭痛も、糖尿病(生活習慣病)・認知症・抗加齢という3つの軸でとらえると、ご自身でできることが見えてきます。

🩸 軸1:糖尿病・生活習慣病と「血管リスク」

前兆をともなう片頭痛(片麻痺性片頭痛もこの仲間です)は、脳卒中のリスクがやや高めであることが知られています。そこに高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙などの血管リスクが重なると、リスクは上乗せされます。逆に言えば、これらをきちんと管理することが、発作と将来の脳卒中の両方を遠ざける近道です。👉 血糖値スパイクと脳の関係 もぜひご覧ください。

🧠 軸2:認知症・脳の健康との関連

前兆のある片頭痛では、脳MRIで小さな白質病変がやや多くみられるという報告があります。また、FHM1(CACNA1A)の一部の家系では小脳症状(ふらつき)を伴うことも。発作をきちんとコントロールし、血管リスクを整えることは、将来の認知機能を守る土台にもなります。当院は認知症外来を併設し、脳の健康を長い目で見守ります。

🌱 軸3:抗加齢医学・健康寿命

頻繁な頭痛や鎮痛薬の使いすぎ(薬物乱用頭痛)は、生活の質を大きく下げます。発作を減らし、睡眠・運動・ストレス・水分を整えることは、まさに「健康寿命」を延ばす抗加齢の実践です。必要に応じてMRIなどで脳の状態を確認する「老化の見える化」も、安心につながります。理事長(日本抗加齢医学会専門医)の視点で、頭痛の先にある"これからの元気"までご一緒に考えます。

10. 関連ブログ・関連クリニック(頭痛シリーズ)

この記事は「特殊な片頭痛」シリーズの①です。📍 ご覧の記事です。あわせて、続編やほかの頭痛のお話もどうぞ。

📚 当院ブログ・頭痛シリーズ

🏥 五良会グループ 姉妹クリニックのご案内

11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 片麻痺性片頭痛は遺伝しますか?

A. 家族性(FHM)は常染色体優性遺伝で、親が原因遺伝子を持つ場合、お子さんに受け継がれる確率は理論上50%です。一方、家族歴のない孤発性(SHM)もあります。心配な場合は、まずご相談ください。

Q2. 市販の頭痛薬を飲んでもよいですか?

A. 市販の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンやNSAIDs)が使える場合もありますが、トリプタンやエルゴタミンは原則使えません。また、鎮痛薬の使いすぎは「薬物乱用頭痛」を招きます。自己判断せず、まず受診をおすすめします。

Q3. 脳梗塞と見分けるにはどうすればよいですか?

A. 症状だけでの自己判断は危険です。とくに初めての発作いつもと違う激しい頭痛・長引く麻痺のときは、迷わず受診・救急要請を。診断には頭部MRI/MRAなどが役立ちます。

Q4. どんな治療薬が使えますか?

A. 急性期は血管収縮作用のないラスミジタン(レイボー®)経口ゲパント(ナルティーク®)が候補です。予防にはベラパミルや抗CGRP製剤(エムガルティ®・アジョビ®・アイモビーグ®)などがあります。一人ひとりに合わせて選びます。

Q5. センター南で診てもらえますか?

A. はい。当院(旧・浜クリニック)は神経内科・頭痛外来を併設しています。脳卒中の除外が必要な場合は連携医療機関と協力して対応します。土曜も9〜14時で診療していますので、お気軽にご相談ください。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪


GORYO FAMILY CLINIC CENTER MINAMI
五良ファミリークリニック センター南
内科・小児科・神経内科・認知症外来・頭痛外来・アレルギー科・糖尿病内科・心療内科

内科 小児科 神経内科 認知症外来 頭痛外来
アレルギー科 糖尿病内科 予防接種 健康診断 心療内科

※旧名称:浜クリニック
〒224-0006 神奈川県横浜市都筑区荏田東4-3-19
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