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その手の「ふるえ」、大丈夫?〜本態性振戦とパーキンソン病の見分け方を医師が解説〜

[2026.08.02]
 
 
TREMOR — ESSENTIAL TREMOR & PARKINSON'S DISEASE

その手の「ふるえ」、大丈夫?
〜本態性振戦とパーキンソン病の見分け方を医師が解説〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)より、「コップを持つ手がふるえる」「字が書きにくくなった」——そんな不安の正体と、受診の目安の本質をわかりやすくお伝えします。

手のふるえ・振戦
本態性振戦
パーキンソン病
神経内科(センター南)

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「最近、コップを持つ手がふるえるんです。もしかしてパーキンソン病でしょうか…」「親が字を書くときに手がふるえていて心配で」——神経内科の外来で、とても多くいただくご相談です。ふるえ(医学用語で「振戦」)は、ご本人にとってもご家族にとっても、不安の大きい症状ですよね。

結論からお伝えします。手のふるえの原因として最も多いのは「本態性振戦」という良性の病気であり、パーキンソン病とは「ふるえ方」がまったく違います。そして、どちらであっても有効な治療の選択肢があります。大切なのは、自己判断で「歳のせい」と放置せず、ふるえのタイプを正しく見分けることです。

本記事では、ふるえの3つのタイプ、本態性振戦とパーキンソン病の見分け方のポイント、検査・最新治療、日常生活の工夫までを、神経内科・認知症外来・頭痛外来を併設する当院(旧・浜クリニック)の視点から、わかりやすく解説します。

1. 「ふるえ(振戦)」とは?〜誰にでも起こる、でも放置してよいとは限らない

ふるえ(振戦)とは、自分の意思とは関係なく、手や頭、声などが規則的にふるえてしまう症状のことです。実は、健康な方でも緊張したとき・寒いとき・カフェインを摂りすぎたときなどに手がふるえることがあり、これは「生理的振戦」と呼ばれる正常な反応です。

一方で、「コップの水がこぼれる」「字がうまく書けない」「人前で食事がしづらい」など、日常生活に支障をきたすふるえは、本態性振戦やパーキンソン病、甲状腺の病気などが隠れていることがあります。🧓 特に中高年以降に新しく出てきたふるえは、一度は神経内科での評価をおすすめします。

📊 ふるえは「よくある症状」です

本態性振戦の有病率は全人口の約2.5〜4%、65歳以上に限ると5%を超えるとも報告される、非常に身近な病気です。一方、パーキンソン病は日本で人口10万人あたり100〜180人程度、65歳以上では約100人に1人とされ、高齢化とともに増え続けています。「ふるえ=パーキンソン病」ではありませんが、「ふるえ=歳のせい」でもないのです。

2. ふるえの3タイプ〜「いつふるえるか」が最大のヒント

ふるえの診断で私たち神経内科医が最初に注目するのは、「どんなときにふるえるか」です。ふるえは大きく次の3タイプに分けられ、これだけで原因のかなりの部分を絞り込めます。

タイプ どんなときにふるえる? 代表的な原因
安静時振戦 何もせず、力を抜いてじっとしているときにふるえる。動作を始めると軽くなる パーキンソン病
姿勢時振戦 腕を前に伸ばして保持したとき、コップを持ったときなどにふるえる 本態性振戦、甲状腺機能亢進症、薬剤性、生理的振戦
動作時(企図)振戦 字を書く・ボタンをとめるなど動作の最中、特に目標に近づくほどふるえが強くなる 本態性振戦、小脳の病気 など

💡 ご家族ができる簡単な観察ポイント

テレビを見てひざの上に手を置いてじっとしているときにふるえる→パーキンソン病型のふるえの可能性。お茶碗やコップを持ったとき、字を書くときにふるえる→本態性振戦型の可能性。スマートフォンでふるえの様子を動画に撮って受診時に見せていただくと、診断の大きな助けになります。📱

3. 最も多い「本態性振戦」〜特徴とセルフチェック

本態性振戦は、ふるえ以外の症状を伴わない、ふるえだけの病気です。「本態性」とは「明らかな原因がない」という意味で、命に関わったり寿命を縮めたりする病気ではありません。ただし、字を書く・食事をする・人前で話すといった場面で困りごとが大きくなり、生活の質(QOL)を確実に下げていく点が問題です。

半数の方に家族歴(血縁者に同じようなふるえのある方)が見られ、若い頃から始まる方もいれば、中高年から目立ってくる方もいます。緊張やストレスで悪化し、興味深いことに少量の飲酒で一時的に軽くなる方が多いのも特徴です(ただし治療としての飲酒はおすすめできません🍷🚭)。

✅ 本態性振戦セルフチェック(あてはまるほど可能性が高まります)

  • コップや箸を持ったとき、字を書くときに手がふるえる
  • じっとしているときは、ほとんどふるえない
  • 両手にほぼ同じようにふるえが出る
  • 緊張する場面(人前での記帳・乾杯など)で強くなる
  • 家族にも同じようなふるえの人がいる
  • 頭(首を横に振るような)や声のふるえを伴うことがある

4. パーキンソン病のふるえ〜初期サインと4大症状

パーキンソン病は、脳内で運動の調整を担うドパミンという物質をつくる神経細胞が徐々に減っていく病気です。ふるえはパーキンソン病の代表的な初発症状のひとつで、「安静時振戦」=じっとしているときに、片側の手から始まるのが典型です。親指と人差し指で丸薬を丸めるような「pill-rolling(ピルローリング)」と呼ばれる、1秒に4〜6回程度のゆっくりした規則的なふるえが特徴的です。

パーキンソン病では、ふるえに加えて次の症状(あわせて「4大症状」と呼びます)が少しずつ現れます。

🤲 安静時振戦

じっとしているときの、片側から始まるふるえ。歩いているときに片手だけふるえるのも典型的です。

🐢 動作緩慢(無動)

動きが小さく・遅くなる。歩幅が狭くなる、まばたきが減り表情が乏しくなる、字がだんだん小さくなる(小字症)など。

💪 筋強剛(こわばり)

関節を動かすとカクカクと抵抗を感じる。肩こり・腰痛として整形外科を受診され、あとから判明することもあります。

🚶 姿勢反射障害

バランスがとりにくく、転びやすくなる。進行してから現れることが多い症状です。

⚠ ふるえの「前」から始まる非運動症状にも注目

パーキンソン病では、運動症状が出る何年も前から便秘、嗅覚の低下、睡眠中に大声で寝言を言い体を動かす(レム睡眠行動障害)、気分の落ち込みなどが先行することが知られています。ふるえ+これらのサインがそろう場合は、早めの神経内科受診をおすすめします。

5. 【比較表】本態性振戦とパーキンソン病の見分け方

両者の違いを一覧表にまとめました。もちろん最終的な診断は診察と検査によりますが、「いつ・どちらの手で・どんなふうにふるえるか」を意識して観察するだけで、見え方が大きく変わります。👀

比較ポイント 本態性振戦 パーキンソン病
ふるえるタイミング 物を持つ・字を書くなど動作・姿勢保持のとき じっとしているとき(動作で軽減)
左右差 両側にほぼ対称 片側から始まることが多い
ふるえの速さ やや速く細かい(1秒に6〜10回程度) ゆっくり大きめ(1秒に4〜6回程度)
ふるえ以外の症状 原則なし(頭・声のふるえは伴うことあり) 動作緩慢・筋強剛・小字症・表情の乏しさ・便秘・嗅覚低下など
経過・家族歴 年単位でゆっくり。家族歴が約半数 ゆっくり進行性。家族歴は少数
飲酒との関係 少量の飲酒で一時的に軽減することが多い 変化しにくい
歩行 正常 歩幅が狭い・腕の振りが小さい・すり足

なお、本態性振戦と診断されていた方が、のちにパーキンソン病を発症することもゼロではありません。「ふるえ方が変わってきた」「動きが遅くなってきた」と感じたら、そのつど再評価を受けることが大切です。

6. 見逃したくない、その他のふるえの原因

ふるえの原因は、本態性振戦とパーキンソン病だけではありません。内科の病気やお薬が原因のことも多く、これらは原因を取り除けばふるえが改善するため、見逃したくないポイントです。

📊 こんな原因が隠れていることも

  • 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など):細かい手のふるえ+動悸・汗・体重減少。血液検査でわかります
  • 薬剤性振戦:一部の気管支拡張薬・抗うつ薬・気分安定薬(リチウム)・抗てんかん薬(バルプロ酸)・ステロイドなど
  • 低血糖:糖尿病治療中の方の冷や汗・動悸を伴うふるえは低血糖のサインかもしれません
  • カフェインの過剰摂取・アルコール離脱:エナジードリンクの多飲、常習飲酒者の急な断酒後のふるえ
  • 書痙(しょけい):字を書くときだけ手がふるえる・こわばる、局所性ジストニアの一種

当院は神経内科に加えて内科・糖尿病内科を併設しているため、神経の病気か、内科的な原因か、お薬の影響かを一つの窓口で横断的に評価できます。お薬手帳を必ずお持ちください。📚

7. 検査と診断の流れ〜当院でできること

ふるえの診断の中心は、神経内科医による問診と診察です。ふるえの出方(安静時か姿勢時か)、速さ、左右差、歩き方、筋肉のこわばり、字の書き方(らせんを描くテストなど)を丁寧に確認します。そのうえで、必要に応じて次のような検査を組み合わせます。

検査 目的
血液検査 甲状腺機能・血糖・肝機能・電解質など、内科的な原因の除外
頭部MRI・CT 脳梗塞・正常圧水頭症など、ふるえや動きにくさを起こす他の脳の病気の除外(連携医療機関にて)
DATスキャン 脳内ドパミン神経の減り具合を画像化。パーキンソン病と本態性振戦の鑑別に有用(連携医療機関にて)
MIBG心筋シンチ パーキンソン病で低下する心臓の交感神経機能を評価(連携医療機関にて)

🏥 センター南(旧・浜クリニック)での診療体制

当院では神経内科・認知症外来・頭痛外来を併設し、ふるえの初期評価から、パーキンソン病診療ガイドライン2018(日本神経学会)に沿った治療、大学病院・地域基幹病院との連携(DATスキャン等の精密検査、集束超音波治療の適応相談)まで一貫して対応します。センター南駅徒歩9分・駐車場4台。ご高齢の方はご家族同伴での受診も歓迎です。🤝

8. 治療法〜のみ薬から集束超音波(FUS)まで

本態性振戦の治療は、「困りごとの大きさ」に合わせて選びます。日常生活に支障が少なければ経過観察でも構いません。治療が必要な場合、第一選択はβ遮断薬(アロチノロールなど)ののみ薬で、ふるえの振幅を抑えます。緊張場面だけ困る方には、場面に合わせた頓服的な使い方を相談することもあります。薬で不十分な重症例では、メスを使わずに超音波でふるえの回路をピンポイントに治療するMRガイド下集束超音波治療(FUS)が2019年から本態性振戦に保険適用となり、選択肢が大きく広がりました。

パーキンソン病の治療は、不足するドパミンを補うレボドパ製剤を中心に、ドパミンアゴニスト、MAO-B阻害薬などを症状・年齢・生活スタイルに合わせて組み合わせます。適切な薬物治療と運動療法により、発症後も長く自立した生活を続けられる時代になっています。さらに2025年には、iPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞を用いた再生医療製品「アムシェプリ™」が登場し、治療は新しい段階に入りつつあります(詳しくは当院ブログの解説記事をご覧ください)。

💡 「治療するかどうか」もご相談ください

本態性振戦は命に関わる病気ではないため、「薬を使ってでも困りごとを減らしたいか」はご本人の価値観次第です。仕事で字を書く機会が多い方、人前での食事が苦痛な方、趣味(書道・手芸・ゴルフ⛳など)に支障がある方——生活の困りごとを具体的に教えていただければ、それに合わせた治療強度をご提案します。

9. 日常生活の工夫〜ふるえと上手につきあう

治療と並行して、日常のちょっとした工夫でふるえによる困りごとはかなり減らせます。

☕ カフェイン・睡眠の見直し

コーヒー・エナジードリンクの摂りすぎと睡眠不足はふるえを増幅します。まずここから整えましょう。

🍴 道具の工夫

重み・太さのある箸やスプーン、ふた付きカップ、太軸のペンなど。「持ち手が重い道具」はふるえの影響を受けにくくなります。

💪 体の使い方

ひじをテーブルにつけて書く・両手でカップを持つなど、腕を「固定」する姿勢でふるえの振幅を小さくできます。

🚶 運動の習慣化

特にパーキンソン病では、ウォーキングやリズム体操などの運動療法自体が症状の進行対策として重要です。

そして何より大切なのは、ふるえを恥ずかしがって外出や人付き合いを減らさないことです。活動量の低下は筋力低下(フレイル・サルコペニア)や気分の落ち込みにつながり、悪循環を生みます。困りごとは治療で減らせます。ひとりで抱え込まず、ご相談ください。💗

🔁 3軸クロスポイント:「ふるえ」を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

当院が大切にしている「3軸アプローチ」——糖尿病×認知症×抗加齢の視点でふるえをとらえ直すと、単なる「手の症状」ではなく、全身の健康と老化のサインとしての意味が見えてきます。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連

糖尿病治療中の方の突然のふるえは低血糖のサインのことがあり、冷や汗・動悸・強い空腹感を伴えばまずブドウ糖の補給が必要です。また甲状腺機能亢進症によるふるえは動悸・体重減少を伴い、血液検査で診断できます。当院は毎週水曜日午前に糖尿病専門外来を設けており、血糖変動とふるえの関係も内科・神経内科の両面から評価します。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連

パーキンソン病は経過中に認知機能の低下を合併することがあり、またレビー小体型認知症はパーキンソン症状(ふるえ・動作緩慢)と認知症状が並行して現れる病気です。「ふるえ+もの忘れ」がそろったら、認知症外来を併設する当院での早期評価が有効です。早期発見できれば、生活支援や治療の選択肢はぐっと広がります。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

ふるえを気にして書く・食べる・出かけることを控えると、筋力と社会的つながりが同時に失われ、健康寿命と平均寿命のギャップを広げてしまいます。抗加齢医学の視点では、ふるえの適切な治療は「恥ずかしさによる活動制限」を取り除き、運動・栄養・交流を守るための重要な投資です。日本抗加齢医学会専門医として、ふるえ治療を健康寿命延伸の入り口と位置づけています。

10. 関連ブログ・関連クリニック

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 手がふるえる=パーキンソン病、なのでしょうか?

A. いいえ。手のふるえの原因として最も多いのは本態性振戦で、パーキンソン病とは別の病気です。じっとしているときにふるえるのか、物を持ったとき・字を書くときにふるえるのかが、見分けの最大のポイントです。自己判断せず、一度神経内科でご相談ください。

Q2. 本態性振戦は放っておくとパーキンソン病になりますか?

A. 本態性振戦がそのままパーキンソン病に「変わる」ことはありません。ただし、ふるえは年齢とともにゆっくり目立ちやすくなることがあり、また別の病気としてパーキンソン病を発症する可能性はゼロではありません。「ふるえ方が変わった」「動きが遅くなった」と感じたら再受診してください。

Q3. 緊張したときだけ手がふるえます。これも病気ですか?

A. 緊張時のふるえは誰にでも起こる生理的振戦の増強で、多くは病気ではありません。ただし、記帳・乾杯・スピーチなど特定の場面のふるえが強く生活や仕事に支障がある場合は、本態性振戦や社交不安が背景にあることもあり、治療で楽になる可能性があります。当院は心療内科も併設していますので、あわせてご相談いただけます。

Q4. 何科を受診すればよいですか?受診時に準備するものは?

A. ふるえの診療は神経内科が専門です。受診の際は、お薬手帳と、可能であればふるえている様子のスマートフォン動画をお持ちください。「いつから」「どんなときに」「左右どちらに」ふるえるかをメモしておくと診察がスムーズです。

Q5. 若くても本態性振戦になりますか?

A. なります。本態性振戦は10〜20代で始まる方も少なくなく、家族歴のある方ではより若く発症する傾向があります。学生さんの「実験器具を持つ手がふるえる」「習字でふるえる」といったご相談もあります。年齢を問わず、困りごとがあればご相談ください。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪


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