高齢者の熱中症とかくれ脱水|糖尿病・認知症の方が危ない理由を医師が解説|五良ファミリークリニック センター南
【お知らせ】心療内科専門外来の終了について(2026年10月追記)
火曜午前の心療内科専門外来を担当していた阿部靖彦 医師は、2026年9月末をもって退職いたしました。これに伴い、当院の心療内科専門外来は2026年9月で終了しております。本記事中の心療内科に関する記載は掲載当時の内容です。
2026年10月からの火曜午前は、玉井博修 医師による消化器内科・肝臓内科の専門外来となりました。また、月・水・木・金曜の午後診療は18:30まで延長しております。
― 理事長より、はじめに ―
こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「エアコンはつけていたのに、実家の母がぐったりして運ばれてしまった」「本人は暑くも喉が渇いてもいないと言うのに、気づいたら熱中症だった」——毎年この季節、そんなご相談が急に増えます。旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた当院にも、ご家族に付き添われて来られる高齢の患者さんが少なくありません。
結論からお伝えします。高齢者の熱中症の多くは「屋内」で「気づかないうちに進む脱水(かくれ脱水)」から始まります。とくに糖尿病・高血圧・認知症をお持ちの方、利尿薬やSGLT2阻害薬を服用中の方は、ふつうの方より脱水が起こりやすく、しかも本人が異変に気づきにくい「二重の危険(ダブルジオパディ)」の状態にあります。
本記事では、2025年の最新統計と「熱中症診療ガイドライン2024」(日本救急医学会)をふまえ、なぜ高齢者が危ないのか、ご家族が今日からできる見守りと環境づくり、そして持病のある方が特に注意すべき薬とサインを、具体的に整理してお伝えします。
📖 目次
1. 2025年、熱中症は「屋内・高齢者」に集中している
「熱中症は炎天下でスポーツをする人の病気」というイメージは、もう過去のものです。むしろ命に関わるのは、自宅で静かに過ごしていた高齢の方です。2025年の夏は記録的な暑さとなり、熱中症による救急搬送は過去最多を更新しました。
📊 2025年 熱中症のデータ(総務省消防庁ほか)
・65歳以上の高齢者が全体の約57%を占める
・発生場所は「住居(屋内)」が約38%で最多
・高齢者では、屋内での発症が半数以上にのぼる
つまり、いちばん危ないのは「自宅にいる高齢のご家族」なのです。しかも、暑い日が続く年ほど、翌年以降の高齢者の認知症発症や死亡が増える可能性も国内の大規模研究で指摘されており、熱中症対策は「その日の命」だけでなく「これからの健康寿命」にも関わる問題だといえます。
2. 「かくれ脱水」とは?喉が渇く前にもう始まっている
熱中症の入り口は、ほとんどが「脱水」です。やっかいなのは、体の水分が不足し始めても、はっきりした自覚症状が出ないまま進む「かくれ脱水」の段階があること。喉の渇きを感じたときには、すでに体重の2%前後の水分が失われているとされ、高齢者ではさらに気づきが遅れます。
👀 かくれ脱水のサイン(ご家族がチェック)
・皮膚や口の中、脇の下が乾いている
・手の甲の皮膚をつまむと、戻りが遅い
・尿の色が濃い、トイレの回数が減った
・微熱っぽい、脈が速い、立ちくらみがする
「本人は平気と言っている」ことが、かえって危険なサインです。本人の申告より、まわりの観察のほうがあてになる——これが高齢者の熱中症対策の大原則です。
3. なぜ高齢者は熱中症になりやすいのか(3つの理由)
年齢を重ねると、体の「暑さを察知し、放熱し、水を蓄える」しくみが少しずつ衰えます。大きく3つの理由があります。
🔥 ① 暑さを感じにくい
温度を感じる感覚が鈍くなり、「暑い」と気づくのが遅れます。エアコンをつけない・厚着のままになりがちです。
💧 ② 水分をためにくい
体内の水分量が若い頃より少なく、喉の渇きも感じにくいため、脱水になりやすく回復も遅くなります。
🌡 ③ 汗をかきにくい
発汗で熱を逃がす力が落ち、体に熱がこもりやすくなります。持病や服薬がこれに拍車をかけます。
さらに、判断力や認知機能の低下が加わると、「暑いからエアコンをつけよう」「水を飲もう」という行動そのものが起こりにくくなります。ここに持病が重なったときが、もっとも危険です。
4. 糖尿病・高血圧の方がとくに危ない理由
糖尿病内科を診療科にもつ当院として、とくに強調したいのがこの点です。糖尿病・高血圧・心臓や腎臓の病気がある方は、熱中症になりやすいことが国内外の調査で示されています。理由はいくつも重なっています。
⚠ 糖尿病があると脱水が進みやすい
・自律神経障害があると、発汗や体温調節がうまく働かない
・喉の渇きを感じる感覚も鈍りやすい
・脱水で血糖がさらに上がり、悪循環になりやすい
高血圧の方も、血圧の薬(とくに利尿薬)によって尿が増え、脱水に傾きやすくなります。「持病があるからこそ、夏はいつも以上に水分と室温に気をつける」——この意識がとても大切です。血圧管理そのものについては、高血圧の解説ページもあわせてご覧ください。
5. 注意したい薬:SGLT2阻害薬・利尿薬とシックデイ
近年、糖尿病や心臓・腎臓を守る目的で幅広く使われているSGLT2阻害薬は、尿に糖と一緒に水分を出すことで効果を発揮します。とても有用な薬ですが、その仕組み上、夏場の発汗と重なると脱水に傾きやすいという性質があります。血圧の利尿薬も同様です。これらを2剤以上併用している方、腎機能が低下している高齢の方は、とくに注意が必要です。
⚠ 「シックデイ」には自己判断で休薬を検討
💡 夏の水分補給の目安
服薬中の方は、普段より500mL〜1L多めを目安に、喉が渇く前にこまめに。カフェインの少ない麦茶やほうじ茶がおすすめです。ただし、心臓・腎臓の病気で水分制限がある方は、必ず主治医の指示に従ってください。当院ではシックデイ時の休薬ルールも個別にご説明しています。
6. 認知症の方の熱中症〜「暑い」「つらい」を言えない
認知症外来を併設する当院では、認知症のある方の夏の見守りについても多くご相談を受けます。認知機能が低下すると、「暑い」「喉が渇いた」「気分が悪い」といった感覚を認識し、言葉で伝え、エアコンや水分でみずから対処する——という一連の行動が難しくなります。
「リモコンの使い方がわからずエアコンを消してしまう」「暑いのに厚着をしている」「水を飲んだことを忘れて飲まない」といったことが、熱中症に直結します。認知症の方は、本人まかせにできない前提で、環境そのものを整えておくことが命綱です。具体策はセクション9でまとめます。
🏥 センター南だからできる「まとめて相談」
当院は内科・糖尿病内科に加え、認知症外来・神経内科・心療内科を併設しています。「持病の薬」「物忘れ」「夏の見守り」を別々の病院に分けず、ご家族と一緒に一か所で相談できるのが強みです。旧・浜クリニック時代から続く地域のかかりつけとして、ご家族の不安ごとお受けします。
7. 重症度の見分け方と、すぐ救急を呼ぶサイン
「熱中症診療ガイドライン2024」(日本救急医学会)では、重症度をⅠ〜Ⅳ度に分類しています。約10年ぶりの改訂で、これまでのⅢ度の中でも特に危険な最重症群が「Ⅳ度」として新たに定義されました。ご家族の判断の目安として、簡単に整理します。
| 重症度 | 主な症状 | 対応 |
|---|---|---|
| Ⅰ度 | めまい、立ちくらみ、こむら返り、大量の汗 | 涼所で休み、水分・塩分。改善なければ受診 |
| Ⅱ度 | 頭痛、吐き気、だるさ、集中力の低下 | 医療機関の受診を。飲めない時は迷わず救急 |
| Ⅲ・Ⅳ度 | 意識がおかしい、呼びかけに反応が鈍い、けいれん、まっすぐ歩けない、体が熱い | ためらわず119番。冷やしながら救急要請 |
😷 迷わず119番を呼ぶサイン
・自分で水分がとれない(飲めない・飲んでも吐く)
・けいれんしている、まっすぐ歩けない
・体が異常に熱いのに、汗が出ていない
8. 応急処置:体を冷やす正しい手順
熱中症が疑われるときは、「とにかく早く体を冷やす」ことが最優先です。ガイドラインでも、重症例には積極的に体を冷やす治療(アクティブクーリング)を行うことが推奨されています。救急車を待つ間も、次の手順で冷却を始めてください。
🧊 その場でできる冷却の手順
② 衣服をゆるめ、体の熱を逃がす
③ 首・両脇の下・太ももの付け根を、保冷剤や氷のうで冷やす
④ 皮膚に水をかけ、うちわや扇風機で風を送る(気化熱で冷える)
⑤ 意識がはっきりしていれば、水分と塩分(経口補水液)を少しずつ
意識がはっきりしない方に、無理に水を飲ませてはいけません(誤嚥の危険があります)。その場合はすぐに救急要請し、冷却を続けてください。
9. ご家族が今日からできる予防と見守り
高齢のご家族、とくに持病や認知症のある方の熱中症は、「環境を整える」「見える化する」「声をかける」の3つで大きく防げます。本人の我慢や自己申告に頼らないのがコツです。
🌡 環境を整える
エアコンは「暑くなってから」ではなく室温28℃以下を目安に常時。温湿度計を目につく場所に置く。遮光カーテンを活用。
💧 見える化する
1日に飲む水をペットボトルで「見える量」にして置く。飲んだ時間をメモ。エアコンのリモコンは設定を固定し操作を簡単に。
📞 声をかける
離れて暮らす場合は1日1回の電話で「エアコンつけてる?」「お水飲んだ?」を確認。返答の元気さも観察のうち。
💡 「電気代がもったいない」への声かけ
高齢の方はエアコン使用をためらいがちです。「熱中症で入院するほうがずっと大変」「今は昔よりずっと省エネ」と、否定せずに繰り返し伝えるのが効果的です。頭ごなしではなく、一緒に設定する形が長続きします。
🔁 3軸クロスポイント:熱中症を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる
熱中症は「夏の一時的なトラブル」に見えて、実は当院が大切にしている糖尿病×認知症×抗加齢の3軸すべてに深く関わります。1回の重い脱水や熱中症が、その後の健康寿命を左右することもあります。
🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連
🧠 軸2: 認知症・神経系との関連
🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命
10. 関連ブログ・関連クリニック
📚 当院ブログ・関連テーマ
🏥 五良会グループ 姉妹クリニックの関連情報
DEN-EN-CHOFU 竹内内科小児科医院
生活習慣病・こどもの健康コラム
田園調布・多摩川の当グループ院。糖尿病・AGEs測定・訪問診療など、ご家族の健康に役立つ記事を発信しています。
SHIROKANETAKANAWA 五良会クリニック白金高輪
土日祝も診療・オンライン診療対応
センター南が休診の日曜・祝日も、白金高輪駅直結の当グループ院が診療。体調不良のご相談やオンライン診療にも対応しています。
11. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 高齢の親が「暑くない」と言ってエアコンを使いません。どうすれば?
A. 暑さを感じる感覚が鈍っているサインでもあります。本人の体感に頼らず、温湿度計で「28℃を超えたらつける」など数字で決めておくのが効果的です。設定を固定し、リモコン操作を簡単にしておきましょう。否定せず、繰り返し一緒に確認するのがコツです。
Q2. 水分は何を、どれくらい飲めばよいですか?
A. 喉が渇く前に、こまめにが基本です。カフェインの少ない麦茶・ほうじ茶や水がおすすめ。大量に汗をかいた時や体調不良時は経口補水液も有効です。ただし心臓・腎臓の病気で水分制限のある方は、必ず主治医の指示を優先してください。
Q3. 糖尿病の薬(SGLT2阻害薬)は夏はやめたほうがよいですか?
A. 自己判断で中止せず、まずは主治医にご相談ください。ふだんの服薬は続けつつ、発熱・嘔吐・下痢などで食事や水分がとれない「シックデイ」の日だけ原則休薬する、という対応が一般的です。当院ではあらかじめ個別のシックデイルールをお伝えしています。
Q4. どのくらいの症状で受診・救急を呼べばよいですか?
A. めまい・立ちくらみ程度なら涼所で休み水分を。頭痛・吐き気・強いだるさが出たら受診を。意識がおかしい・自分で水が飲めない・けいれん・まっすぐ歩けないときは、ためらわず119番してください。冷やしながら救急車を待ちます。
執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将
五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪
| 内科 | 小児科 | 神経内科 | 認知症外来 | 頭痛外来 |
| アレルギー科 | 糖尿病内科 | 予防接種 | 健康診断 | 消化器内科 |
〒224-0006 神奈川県横浜市都筑区荏田東4-3-19
横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン「センター南駅」徒歩9分/駐車場4台
| 診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日・祝 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 9:00〜12:00 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9:00 〜 14:00 |
休 |
| 15:00〜18:30 | ○ | 休 | ○ | ○ | ○ |
休診日:火曜午後・日曜・祝日/土曜は9:00〜14:00(休憩なし)
LINE 公式アカウント |
センター南公式 |
電話 045-942-7783 |
理事長 五藤 良将
