糖尿病の「シックデイ」対応|風邪・発熱・胃腸炎の日に命を守るルール|センター南
【お知らせ】心療内科専門外来の終了について(2026年10月追記)
火曜午前の心療内科専門外来を担当していた阿部靖彦 医師は、2026年9月末をもって退職いたしました。これに伴い、当院の心療内科専門外来は2026年9月で終了しております。本記事中の心療内科に関する記載は掲載当時の内容です。
2026年10月からの火曜午前は、玉井博修 医師による消化器内科・肝臓内科の専門外来となりました。また、月・水・木・金曜の午後診療は18:30まで延長しております。
― 理事長より、はじめに ―
こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「糖尿病なのに、熱が出て食事がとれないとき、薬やインスリンはどうすれば?」「食欲がないのにインスリンを打って大丈夫?」——旧・浜クリニックの時代から地域に親しまれてきた当院(五良ファミリークリニック センター南)の糖尿病外来でも、こうしたご質問をよくいただきます。
結論からお伝えします。風邪・発熱・下痢・嘔吐などで体調をくずした「シックデイ」こそ、糖尿病は脱水・高血糖・ケトアシドーシス・低血糖といった危険な状態に急に傾きやすく、あらかじめ決めた“シックデイルール”を知っておくことが、まさに命綱になります。
本記事では、シックデイとは何か、水分・食事・血糖測定の基本、お薬ごとの「休む薬・続ける薬」の考え方(インスリンは自己判断でやめない/SGLT2阻害薬・メトホルミンは休薬など)、そして受診・救急の目安まで、ご本人にもご家族にもわかるように整理しました。
📖 目次
1. シックデイとは? ― 「いつもの管理」が通用しない日
シックデイ(sick day)とは、糖尿病の方が発熱・下痢・嘔吐・食欲不振などで体調をくずし、ふだん通りに食事がとれない・血糖管理がいつも通りにできない日のことです。かぜ・インフルエンザ・胃腸炎・歯の痛み・けがなど、きっかけはさまざまです。
健康な方であれば数日で治る体調不良でも、糖尿病の方では血糖値が大きく乱れ、ときに命にかかわる状態に進むことがあります。だからこそ、「具合が悪いときにどうするか」を元気なうちに決めておくことが大切です。この“決めごと”がシックデイルールです。
2. なぜ危険? ― 脱水・高血糖・ケトアシドーシス・低血糖
体調不良のときは、体がストレスに反応して血糖を上げるホルモン(コルチゾールなど)が増えます。その結果、食べていなくても血糖値が上がることがあります。一方で、食事がとれないのにいつも通りの薬やインスリンを使うと、今度は低血糖の危険も。「上がる」と「下がる」の両方向のリスクが同時に生じるのがシックデイの怖さです。
⚠ シックデイで起こりうる危険な状態
- 脱水:発熱・下痢・嘔吐で水分が失われ、血液が濃くなる。腎機能悪化にもつながる。
- 高血糖・糖尿病性ケトアシドーシス(DKA):インスリン不足で体が脂肪を分解し、酸性物質(ケトン体)が増える。
- 低血糖:食べられないのに薬・インスリンが効きすぎる。
- 高浸透圧高血糖状態:とくにご高齢の方で、極端な高血糖と脱水が重なる。
3. シックデイの基本4か条 ― 安静・水分・食事・血糖測定
① 安静・保温
無理をせず休みます。仕事や運動は控え、体力の消耗を防ぎます。
② 水分をしっかり
1日1〜1.5L以上を目安に、お茶・水・スープなどでこまめに。脱水を防ぎます。
③ 食べられるものを
おかゆ・うどん・果物・ゼリー・スープなど、消化がよく糖質を含むものを少量ずつ。
④ こまめに血糖測定
血糖自己測定(SMBG)やCGMをお持ちの方は、いつもより頻回に確認します。
💡 まったく食べられないときの工夫
固形物が無理でも、糖質を含む水分(果汁・スポーツドリンク・重湯・具なしみそ汁など)で少しずつ糖分と水分・塩分を補います。「食べられない=何もとらない」ではなく、「とれる形でエネルギーと水分を切らさない」ことが大切です。
4. インスリンは「自己判断でやめない」 ― 特に1型
⚠ もっとも大切なルール
食欲がないからと、インスリンを自己判断で完全に中止しないでください。とくに1型糖尿病の方がインスリンを止めると、短時間で糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)という命にかかわる状態に陥る危険があります。食事がとれない日でも、体は生きるためにインスリンを必要としています。
ただし、食事量が減れば必要なインスリン量は変わります。「食前に打つインスリン(追加インスリン)は食べられた量に応じて減らす」「持続的に効くインスリン(基礎インスリン)は原則続ける」といった調整の考え方は、あらかじめ主治医と決めておくことが重要です。当院では、患者さんごとに「シックデイのときのインスリンの打ち方」を具体的にお伝えしています。迷ったときは、自己判断せず当院にご連絡ください。
5. お薬別の対応 ― 休薬する薬・調整する薬
飲み薬(経口血糖降下薬)は、種類によってシックデイの対応が異なります。以下は日本糖尿病協会などが示す一般的な考え方です。ご自分の薬がどれに当たるかは、必ず主治医・薬剤師にご確認ください。
| 薬の種類(例) | シックデイの対応 | 理由 |
|---|---|---|
| SGLT2阻害薬 | 必ず休薬 | 脱水を強め、正常血糖でもケトアシドーシスを起こす危険(詳細は次章)。 |
| ビグアナイド薬 (メトホルミン) |
休薬 | 脱水時に乳酸アシドーシスの危険。特に高齢者・腎機能低下の方。 |
| α-グルコシダーゼ阻害薬 | 休薬 | 下痢・腹部症状を強める。中止しても血糖は大きく上がらない。 |
| GLP-1/GIP受容体作動薬 イメグリミン |
吐き気・腹痛があれば休薬 | 消化器症状を悪化させることがある。 |
| SU薬/速効型インスリン 分泌促進薬(グリニド) |
食事量に応じて減量・休薬 | 食べられないと低血糖の危険。全量食べられれば通常量、半分なら半量、ほぼ食べられなければ休薬が目安。 |
| DPP-4阻害薬/ チアゾリジン薬 |
主治医の指示に従う(多くは影響小) | 単独では低血糖・脱水への影響は比較的小さい。 |
| インスリン | 自己判断で中止しない | 特に1型はDKAの危険。量の調整は事前に決めたルールで(前章参照)。 |
なお、糖尿病以外のお薬でも、利尿薬・一部の降圧薬(ACE阻害薬・ARB)・痛み止め(NSAIDs)は、脱水時に腎臓へ負担をかけることがあり、シックデイに調整を検討する場合があります。これらも事前に主治医とご相談ください。
6. SGLT2阻害薬の落とし穴 ― 「正常血糖ケトアシドーシス」
SGLT2阻害薬(フォシーガ・ジャディアンス・カナグル・スーグラ・ルセフィ・デベルザなど)は、尿から糖を出すことで血糖を下げるお薬です。心臓や腎臓を守る効果も知られ、幅広く使われています。ただしシックデイには特有の危険があります。
📊 見落とされやすい「正常血糖ケトアシドーシス」
通常の糖尿病性ケトアシドーシスは血糖250mg/dL以上の高血糖を伴います。ところがSGLT2阻害薬を服用中は、尿に糖が出るため血糖値がそれほど高くない(=一見正常に見える)のに、危険なケトアシドーシスを起こすことがあります。「血糖が高くないから大丈夫」という思い込みが、発見を遅らせる原因になります。だからこそ、シックデイには必ず休薬し、水分をしっかりとることが重要です。
7. こんなときは受診・救急 ― 受診の目安
⚠ 早めに受診・連絡を(迷ったら電話でご相談ください)
- 嘔吐・下痢が続き、水分もとれない
- 高熱が丸1日以上続く/症状がどんどん悪化する
- 血糖値が高いまま下がらない(例:350mg/dL以上が続く)、または低すぎる
- 尿ケトンが強く出ている(測定できる方)
- 強い倦怠感・呼吸が速い・意識がもうろうとする
- まったく食事がとれない状態が続く
とくに意識がもうろうとする・呼吸が速く苦しい・呼びかけへの反応がおかしいときは、ケトアシドーシスなど緊急の状態が疑われます。ためらわず救急要請(119番)をしてください。判断に迷うときは、平日の診療時間内であれば当院へお電話でご相談いただけます。
8. シックデイに備える ― 平時にしておく準備
シックデイ対応は、元気なうちの準備が9割です。次のことを、体調の良いときに整えておきましょう。
- 「シックデイの指示」を主治医と決めておく:どの薬を休むか、インスリンをどう調整するか、どこに連絡するか。
- 備蓄:経口補水液・スポーツドリンク・おかゆ・ゼリー・体温計を常備。
- 血糖測定の準備:血糖自己測定器(SMBG)やCGMのセンサー、(お持ちの方は)尿ケトン試験紙。
- お薬手帳・連絡先を分かる場所に。ご家族とも情報を共有しておく。
🏥 ご家族へ
ご高齢の方や、認知機能に不安のある方は、ご本人だけで判断するのが難しい場面があります。ご家族が「今日は食べられている?」「水は飲めている?」「薬はどうする予定だった?」と一緒に確認してあげてください。あらかじめ当院で決めた「シックデイの指示」を、ご家族も把握しておくと安心です。
9. 当院でできること ― 個別のシックデイ指導
🏥 五良ファミリークリニック センター南 糖尿病内科
- 患者さんごとの「シックデイの指示」作成(休薬する薬・インスリン調整・連絡先)
- 院内でHbA1cが約5分でわかる迅速検査、血糖・ケトン・腎機能の評価
- 脱水時の点滴など、その日のうちの対応
- SGLT2阻害薬・メトホルミンなどを使う方への、事前のシックデイ教育
- 「叱らない・伴走する」診療。治療中断からの再開も歓迎します
当院では、糖尿病内科・神経内科・認知症外来・心療内科を併設し、「血糖だけでなく全身を診る」診療を大切にしています。シックデイの備えについて不安がある方は、体調の良いときにぜひ一度ご相談ください。土曜は9:00〜14:00(休憩なし)で診療しております。日曜・祝日は、五良会グループの白金高輪(土日祝も診療・オンライン診療対応)もご利用いただけます。
🔁 3軸クロスポイント:シックデイを「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる
当院・センター南が大切にしているのが、糖尿病・生活習慣病/脳神経・認知症/抗加齢という「3軸」で全身を診る姿勢です。シックデイ対応も、この3軸で見ると、単なる「病気の日の応急処置」以上の意味を持ちます。
🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連
🧠 軸2: 認知症・神経系との関連
🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命
10. 関連ブログ・関連クリニック
📚 当院ブログ・関連テーマ
🩸 糖尿病内科のご案内
GLP-1・SGLT2・CGM・合併症まで、全身を診る糖尿病診療。
🩺 高血圧(JSH2025)
利尿薬・降圧薬とシックデイの関係もこちらから。
🧠 認知症・もの忘れ
ご家族での見守りとシックデイの備えにも役立ちます。
🏥 五良会グループ 姉妹クリニックの関連情報
DEN-EN-CHOFU 竹内内科小児科医院
生活習慣病・こどもの健康コラム
田園調布・多摩川の当グループ院。糖尿病・AGEs測定・訪問診療など、ご家族の健康に役立つ記事を発信しています。
SHIROKANETAKANAWA 五良会クリニック白金高輪
土日祝も診療・オンライン診療対応
センター南が休診の日曜・祝日も、白金高輪駅直結の当グループ院が診療。体調不良のご相談やオンライン診療にも対応しています。
11. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 食欲がありません。インスリンは打たなくてよいですか?
A. 自己判断で完全に中止しないでください。とくに1型糖尿病では、インスリンを止めると短時間でケトアシドーシスの危険があります。食べられた量に応じて追加インスリンを調整し、基礎インスリンは原則続けます。具体的な量は、あらかじめ主治医と決めた「シックデイの指示」に従い、迷えば当院へご連絡ください。
Q2. SGLT2阻害薬(フォシーガなど)は、風邪のとき飲んでよいですか?
A. シックデイには必ず休薬してください。脱水を強め、血糖値が高くなくても危険なケトアシドーシス(正常血糖ケトアシドーシス)を起こすことがあります。体調が回復し、食事・水分が通常どおりとれるようになってから再開します。判断に迷うときはご連絡ください。
Q3. 何も食べられないとき、水分は何をとればよいですか?
A. 経口補水液・スポーツドリンク・果汁・重湯・具なしみそ汁など、糖質と塩分を含む水分を少量ずつこまめに。まったく糖質をとらないと低血糖やケトーシスに傾くことがあります。1日1〜1.5L以上を目安に、脱水を防ぎましょう。嘔吐が続いて水分もとれない場合は受診が必要です。
Q4. どんなときに病院へ行くべきですか?
A. 嘔吐・下痢で水分がとれない、高熱が丸1日以上続く、血糖が高いまま下がらない(または低すぎる)、尿ケトンが強い、強い倦怠感・呼吸が速い・意識がもうろうとする――こうしたときは早めに受診・ご連絡を。意識障害や呼吸が苦しいときは、ためらわず救急要請(119番)してください。
執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将
五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪
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