頭痛診療の実際
私はここ10年間では主に頭痛を専門に診療を行ってきました。頭痛と言いましても、最新の国際頭痛分類第3版には、300種類以上の頭痛病名が記載されています。
2016年のデータですが、世界人口の10%を超える約10億4,000万人が片頭痛に罹患しており、YLD(ある集団において非致死的疾患または怪我による障がいの結果、失われた健康的な生活の年数を表す指標)の原因で10位以内に入っています。海外では第2~3位が大半ですが、日本は第4位で各国より順位がやや低い結果が出ました。
私が推察するにこの結果は日本人に片頭痛患者様が少ないのではなく、昔からの社会や家庭での“たかが頭痛位で仕事を休むのか家事をさぼるのか”という風潮があり、頭痛で医療機関を受診される方が少なかった事も関連があると思われます。ちなみにYLDの第1位は腰痛です。皆さんも思い当たる節があるのではないでしょうか。
近年頭痛診療が見直され、多くの医療機関でいわゆる“頭痛外来”を標榜する科が増えてきました。これは頭痛に悩まされている方々にとっては非常に良い事と思っています。ただ、実際に受診された方の中で十分に満足されている方がどの位いらっしゃるかは幾らか疑問です。これもやや古いデータですが、我々脳神経内科医が担当する60種類の疾患の内、脳神経内科医の片頭痛に対する治療満足度は97.1%ですが、実際の頭痛患者様の手ごたえでは、非常に満足とは思っていない方の割合は全体の80.9%でした。この様な医療者側と医療を受けられる側との解離が大きいことは問題であると思っています。
文責; 院長 篠原 伸顕