脂質異常症と動脈硬化 〜LDL・HDL・中性脂肪のコントロール〜
― 理事長より、はじめに ―
こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。健診で「LDLコレステロールが高め」「中性脂肪が引っかかった」と言われた経験のある方は多いのではないでしょうか。
脂質異常症もまた、糖尿病・高血圧と同じく「自覚症状なく動脈硬化を進める」病気です。気づいたときには心筋梗塞や脳梗塞——というケースを長年の臨床で何度も経験してまいりました。
一方で、ご自身のリスクの程度によって「すぐに薬が必要」な方と「まず生活習慣改善で十分」な方が大きく異なるのも、この病気の特徴です。本記事では、動脈硬化学会のガイドラインに沿って、その判断基準をていねいにご紹介します。
📖 目次
1. 脂質異常症とは?──「悪玉」「善玉」って何?
脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪のバランスが乱れている状態です。一概に「コレステロールが高い」=悪、ではなく、種類によって役割が異なります。
🔴 LDLコレステロール(悪玉)
血管壁に入り込み、動脈硬化を進める。低いほうが望ましい。
🟢 HDLコレステロール(善玉)
余分なコレステロールを回収する。高いほうが望ましい。
🟡 中性脂肪(TG)
エネルギー源。過剰だと脂肪肝・膵炎・動脈硬化へ。
🟣 Non-HDL-C
総コレステロール−HDL。動脈硬化全体を反映する指標。
2. 診断基準(日本動脈硬化学会)
| 項目 | 診断基準 |
|---|---|
| 高LDLコレステロール血症 | LDL-C 140 mg/dL 以上 |
| 境界域高LDLコレステロール血症 | LDL-C 120-139 mg/dL |
| 低HDLコレステロール血症 | HDL-C 40 mg/dL 未満 |
| 高トリグリセライド血症 | 空腹時 TG 150 mg/dL 以上 / 随時 TG 175 mg/dL 以上 |
| 高Non-HDLコレステロール血症 | Non-HDL-C 170 mg/dL 以上 |
3. なぜLDLが高いと「動脈硬化」が進むのか
動脈硬化は、血管の壁にコレステロールが少しずつ蓄積し、「プラーク」と呼ばれる粥状(じゅくじょう)の塊が形成されることで進行します。
LDLが血管壁に侵入
血管内皮の傷から、LDLが血管壁内に潜り込みます。
酸化LDLとマクロファージ
LDLが酸化され、マクロファージ(白血球)に貪食され「泡沫細胞」に。
プラーク形成・血管狭窄
血管壁が厚くなり、血管が狭くなる(狭窄)。
プラーク破綻・血栓形成
プラークが破れ、血栓ができて血管が詰まる→心筋梗塞・脳梗塞。
4. あなたのリスクは?──久山町スコア
動脈硬化学会の2022年版ガイドラインでは、福岡県久山町の長期疫学研究を基にしたスコア(久山町スコア)を用いて、患者さま個々の絶対リスクを評価します。
評価項目:性別・年齢・収縮期血圧・糖代謝異常・LDL-C・HDL-C・喫煙歴
🟢 低リスク
10年以内の動脈硬化性疾患発症が2%未満
🟡 中リスク
10年以内発症リスク 2-10%
🟠 高リスク
10年以内発症リスク 10%以上、または糖尿病・CKD・PADあり
5. LDLコレステロール 管理目標値
リスクの程度によって、目指すべきLDL-Cの目標値が大きく異なります。
| 区分 | 対象 | LDL-C目標 |
|---|---|---|
| 一次予防 低リスク | 基礎疾患なし・若年 | 160 mg/dL 未満 |
| 一次予防 中リスク | 中等度のリスク因子あり | 140 mg/dL 未満 |
| 一次予防 高リスク | 糖尿病・CKD・PAD | 120 mg/dL 未満 (糖尿病で末梢動脈疾患・細小血管症あり、または喫煙者は100未満) |
| 二次予防 | 冠動脈疾患・アテローム血栓性脳梗塞既往 | 100 mg/dL 未満 |
| 二次予防 高高リスク | 急性冠症候群/FH/糖尿病/冠動脈+脳梗塞合併 | 70 mg/dL 未満 |
💡 ポイント
同じ「LDL 150 mg/dL」でも、リスクが低い若い方なら経過観察、糖尿病をお持ちの方であれば即治療開始が必要、というように対応が大きく異なります。個別評価が大切です。
6. 食事・運動による改善
🥗 LDLを下げる食事
- 飽和脂肪酸(バター・脂身・霜降り肉)を減らす
- トランス脂肪酸(マーガリン・菓子パン)を避ける
- 食物繊維(野菜・大豆・海藻・きのこ)を増やす
- 魚(青魚のEPA・DHA)を積極的に
🍶 中性脂肪を下げる
- 糖質・甘いもの・果物の摂りすぎに注意
- アルコールを控える(特に効果大)
- 有酸素運動を継続
- 体重を適正範囲に
💪 HDLを上げる
- 有酸素運動がもっとも効果的
- 禁煙
- 適正体重の維持
- 適度な飲酒(過剰は逆効果)
🚶 運動量の目安
- 有酸素運動 1日30分以上
- 週150分以上の中等度運動
- 早歩き・水中ウォーキング・自転車
- 無理せず楽しく続けることが鍵
7. 薬物療法──スタチンを中心に
| 分類 | 代表薬 | 主な作用 |
|---|---|---|
| スタチン系 | クレストール、リピトール、リバロ | 第一選択。LDLを強力に下げる。心血管イベント抑制効果。 |
| エゼチミブ | ゼチーア | 小腸でのコレステロール吸収を抑制。スタチンと併用。 |
| PCSK9阻害薬 | レパーサ、プラルエント | 皮下注射。LDLを劇的に低下。FH・難治例に。 |
| フィブラート系 | パルモディア、リピディル | 中性脂肪を下げる。HDL上昇効果も。 |
| EPA製剤 | エパデール、ロトリガ | 魚油由来の中性脂肪低下薬。動脈硬化抑制。 |
⚠ スタチンの注意点
まれに筋肉痛・横紋筋融解症(CK上昇)の副作用があります。「全身の筋肉が痛い・力が入らない・尿が褐色」などの症状があれば、早めにご相談ください。また、グレープフルーツとの相互作用にも注意が必要な薬剤があります。
8. 脂肪肝(MASLD)とフィブロスキャン
脂質異常症や肥満、糖尿病の方の50〜70%に脂肪肝がみられます。お酒を飲まない人にも起こる脂肪肝は、近年「MASLD(旧NAFLD)」として国際的に注目されており、放置すれば肝硬変・肝癌のリスクとなります。
🩻 当院のフィブロスキャン検査
超音波で肝臓の硬さ(線維化)と脂肪量を、痛みなく・採血なしで評価できる検査です。スタチンを長期服用される方の肝機能管理にも有効です。
- 脂質異常症で脂肪肝を指摘されている方
- スタチン長期服用中で肝機能をチェックしたい方
- 健診でAST・ALT・γ-GTP上昇を指摘された方
- 飲酒習慣のある方の肝障害評価
※都筑区・港北ニュータウン地域でフィブロスキャンを保有する診療所は限られています。
9. 家族性高コレステロール血症(FH)に注意
家族性高コレステロール血症(FH)は、遺伝によりLDL受容体に異常が起こり、生まれつきコレステロールが高い病気です。日本人の200〜500人に1人と決して稀な病気ではありませんが、診断されないまま若くして心筋梗塞を起こす方が後を絶ちません。
⚠ FHを疑うサイン
- 未治療でLDL-Cが 180 mg/dL 以上
- 近親者(親・きょうだい)に若年発症の心筋梗塞既往者がいる
- アキレス腱が太い・皮膚に黄色腫がある
→ 早期診断・早期治療が極めて重要です。
10. 関連ブログ・関連クリニック
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執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将
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