糖尿病と上手につきあう〜HbA1c・薬物療法・合併症予防まで〜
― 理事長より、はじめに ―
こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。日本では糖尿病またはその予備群とされる方が、推計約2,000万人。実に成人の6人に1人が該当する「もうひとつの国民病」です。
「健診でHbA1cが高いと言われた」「薬を始めましょうと言われたけれど、本当に必要?」「一生やめられないのが怖い」——糖尿病の診療では、こうしたご不安を毎日のように伺います。
糖尿病は「敵」ではなく「上手につきあう相手」です。2024年改訂の最新ガイドラインに沿って、目標値の考え方、食事・運動療法、最新の薬物療法(GLP-1・SGLT2)、合併症予防、そして当院の特徴であるフィブロスキャンによる脂肪肝・肝硬変評価まで、わかりやすくご紹介します。
📖 目次
1. 糖尿病とは?──血糖値とHbA1cの基本
糖尿病は、インスリンの作用不足によって血糖値(血液中のブドウ糖)が慢性的に高くなる病気です。インスリンは膵臓から分泌され、血糖を細胞内に取り込むカギの役割を果たします。
血糖値は食事で大きく変動するため、過去1〜2か月の血糖の平均を反映するHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)が管理の中心指標です。一回の採血で「最近の通信簿」がわかります。
| 分類 | 空腹時血糖 | HbA1c |
|---|---|---|
| 正常型 | 110 mg/dL未満 | 5.6%未満 |
| 境界型(予備群) | 110〜125 mg/dL | 5.6〜6.4% |
| 糖尿病型 | 126 mg/dL以上 | 6.5%以上 |
2. HbA1cの目標値(2024年版ガイドライン)
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」では、合併症予防のためのHbA1c目標は7.0%未満とされています。ただし、年齢・罹病期間・合併症・低血糖リスクなどを総合的に判断し、個別に目標を設定するのが大原則です。
| 目的 | HbA1c目標 | 対象 |
|---|---|---|
| 血糖正常化 | 6.0%未満 | 食事・運動だけで達成可能、薬剤でも低血糖の心配がない方 |
| 合併症予防 | 7.0%未満 | 大多数の方の標準的な目標 |
| 治療強化が困難 | 8.0%未満 | 高齢・低血糖リスク・併存疾患の多い方 |
⚠ 高齢者は「下げすぎ」も危険
高齢者は低血糖を起こすと、転倒・認知機能低下・心血管イベントのリスクが高まります。HbA1c 7.0〜8.5%程度を目安にゆるやかに管理することが、日本糖尿病学会・日本老年医学会の合同提言でも推奨されています。
3. 食事療法──炭水化物・食物繊維・果物
2024年版ガイドラインでは、過体重・肥満を伴う2型糖尿病では「エネルギー摂取量の制限」がまず推奨されました。さらに、炭水化物制限(6〜12か月以内の短期)と水溶性食物繊維の有用性も新たに明記されています。
🍚 炭水化物コントロール
糖質の総量を抑え、「食べる順序」(野菜→たんぱく質→炭水化物)で血糖スパイクを防ぎます。
🥦 水溶性食物繊維
海藻・大麦・オクラ・なめこなど。HbA1c・空腹時血糖・食後血糖の三つに有意な改善効果。
🍎 果物(適量)
2024年版で推奨項目に追加。果汁ジュースではなく丸ごと食べることが原則。
🍷 アルコール
糖質ゼロでも肝臓に負担。薬と併用すると低血糖リスクも上がります。
📚 ご参考:『あぶら落とすスープ』
五藤良将監修の書籍『あぶら落とすスープ』では、糖尿病・脂肪肝・肥満をお持ちの方でも続けやすい食事療法のレシピをご紹介しています。当院でもご相談時にお話することがあります。
4. 運動療法──有酸素+筋トレが基本
運動はインスリンの効きを良くし(インスリン感受性向上)、ブドウ糖を筋肉に取り込ませる作用があります。有酸素運動(週150分以上)とレジスタンス運動(筋トレ・週2〜3回)を組み合わせるのが理想です。
🏃♂️ おすすめは「食後30分以内のウォーキング」
食後の血糖値が上がるピーク前後に20〜30分の散歩をするだけでも、食後高血糖が大きく抑制されます。「ジムに行く時間がない」という方こそ、まずは食後の散歩から始めましょう。高血圧の記事でも、運動の重要性をご紹介しています。
5. 薬物療法──GLP-1・SGLT2阻害薬の時代
糖尿病の薬物療法は、ここ10年で大きく進化しました。特にSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、血糖を下げるだけでなく心臓・腎臓を守る効果が大規模試験で示され、「合併症の進行を遅らせる薬」として位置づけが大きく変わりました。
| 薬剤クラス | 代表薬 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| メトホルミン | メトグルコ | 2型糖尿病の第一選択。低血糖が少なく安価。 |
| SGLT2阻害薬 | フォシーガ・ジャディアンス | 尿に糖を出して血糖低下。心不全・腎臓保護効果。 |
| GLP-1受容体作動薬 | オゼンピック・リベルサス・マンジャロ | 血糖低下+体重減少。心血管イベント抑制効果。 |
| DPP-4阻害薬 | ジャヌビア・トラゼンタ | 日本で最も使われている。低血糖が少ない。 |
| インスリン | トレシーバ・ノボラピッド | 1型糖尿病・進行2型・妊娠糖尿病で必須。 |
⚠ GLP-1の自費・美容目的処方について
当院では糖尿病治療目的での保険診療のみでGLP-1製剤を処方しております。自費の美容・痩身目的処方は行っておりません。安全な使用のため、適応・副作用・継続性をしっかり判断したうえでお出ししています。
6. 合併症予防──三大合併症と動脈硬化
糖尿病の本当の怖さは、合併症です。しっかり管理すれば、これらは確実に予防・遅延できます。
👁 糖尿病網膜症
中途失明の主要原因。年1回の眼科検診を必ず受けましょう。
🩺 糖尿病腎症
透析導入の原因第1位。尿アルブミン検査が早期発見の鍵。
🦶 糖尿病神経障害
手足のしびれ・痛み。重症化すると足壊疽の原因に。
❤️ 動脈硬化
脳梗塞・心筋梗塞のリスク2〜3倍。脂質異常症記事も必読。
7. 糖尿病と頭痛・神経痛の関係
あまり知られていませんが、糖尿病は「頭痛・神経痛のリスク因子」です。当院は脳神経内科専門医・頭痛専門医の篠原院長が在籍しているため、糖尿病と頭痛の両方を一施設で管理できる稀有な体制を整えています。
高血糖による頭痛
血液粘度上昇→血流低下→首肩こり→慢性頭痛。
低血糖による頭痛
アドレナリン分泌→血管収縮→拍動性の激痛。
糖尿病性ニューロパチー
手足のしびれ・神経痛。三叉神経痛との鑑別も重要。
脳卒中リスク
糖尿病患者は脳卒中による死亡率が2〜3倍。
8. フィブロスキャンで脂肪肝・肝硬変もチェック
糖尿病の方は脂肪肝(MASLD/MAFLD)を高率に合併し、進行するとNASH(非アルコール性脂肪肝炎)→肝硬変→肝がんへと進展します。これは「もう一つの糖尿病合併症」と言える重要なテーマです。
🩻 当院ならフィブロスキャンで肝臓も評価できます
フィブロスキャンは、痛みなく、採血なしで肝臓の硬さ(線維化)と脂肪量を客観的に測定できる装置です。糖尿病をお持ちの方の合併症スクリーニングとして、定期的な評価をおすすめしています。都筑区・港北ニュータウンで保有施設は限られています。
- 糖尿病でHbA1cが高めに推移している方
- 健診でAST・ALT・γ-GTPの上昇を指摘された方
- BMI 25以上の肥満を伴う糖尿病の方
- SGLT2阻害薬・GLP-1の効果を肝臓の改善でも追跡したい方
9. 関連ブログ・関連クリニック
糖尿病は高血圧・脂質異常症・脂肪肝・神経合併症と複合的に関わります。当院ブログの関連記事もあわせてご覧ください。
📚 当院ブログ・関連テーマ
💗 高血圧症の最新治療
JSH2025/130/80 mmHg時代へ
🥗 脂質異常症と動脈硬化
LDL目標値・スタチン治療
⚡ 三叉神経痛
電撃のような顔の痛みの正体
🧠 片頭痛・緊張型頭痛
頭痛専門医による診療
🏥 五良会グループ 姉妹クリニックのブログもご活用ください
SHIROKANETAKANAWA
五良会クリニック白金高輪
消化器内科・肝臓内科を中心に最新の医療情報を配信。脂肪肝・肝硬変関連記事も豊富。
→ ブログを見る
DEN-EN-CHOFU
竹内内科小児科医院
大田区田園調布。理事長・五藤良将監修の生活習慣病コラムが充実。
→ ブログを見る
10. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 一度始めた糖尿病の薬は一生やめられないのですか?
A. 必ずしもそうではありません。生活習慣の改善でHbA1cが大きく改善し、減薬・休薬が可能になる方もいらっしゃいます。早期介入ほど可能性が高まります。
Q2. 痩せ型ですが糖尿病になりますか?
A. はい。日本人は欧米人に比べてインスリン分泌能が低く、痩せ型でも糖尿病になります。健診の血糖値・HbA1cは必ず確認しましょう。
Q3. 健診で「血糖値だけ少し高い」段階でも受診すべき?
A. ぜひお越しください。境界型(予備群)の段階で生活改善を始めれば、糖尿病への進行を防げる可能性が大きく高まります。
Q4. 糖尿病の方の頭痛も診てもらえますか?
A. はい。当院は脳神経内科専門医・頭痛専門医の篠原院長が常駐しており、糖尿病と頭痛・神経痛を一括して診療できる稀有な体制です。
執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将
五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪
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