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熱帯夜と睡眠の質、そして「いびき」〜夏に悪化する睡眠時無呼吸症候群(SAS)を医師が解説〜

[2026.07.29]
TROPICAL NIGHT & SLEEP APNEA

熱帯夜と睡眠の質、そして「いびき」
〜夏に悪化する睡眠時無呼吸症候群(SAS)を医師が解説〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)より、「暑くて眠れない」の裏に隠れている病気・睡眠時無呼吸症候群(SAS)のサインと、今夜からできる熱帯夜の快眠術をわかりやすくお伝えします。

熱帯夜の快眠術 いびき・無呼吸 日中の強い眠気 自宅でできる検査

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。熱帯夜が続くこの時期、外来では「夜中に何度も目が覚める」「朝から疲れている」「夫のいびきが夏になってひどくなった」「昼間の眠気がつらいけれど、夏バテだと思って我慢している」というご相談が本当に多くなります。

結論からお伝えします。「暑いから眠れない」のは事実ですが、その陰に「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」が隠れているケースが少なくありません。SASは夏に悪化しやすく、放置すれば高血圧・糖尿病・心筋梗塞・認知症のリスクを静かに高めます。そして、検査は自宅で受けられ、治療で睡眠は見違えるほど変わります。

本記事では、熱帯夜が睡眠を壊す仕組みから、夏にいびき・無呼吸が悪化する理由、ご自宅でできるセルフチェック、検査と治療(CPAP・マウスピース)の流れ、そして今夜から実践できる快眠術まで、当院の3軸アプローチ(糖尿病×認知症×抗加齢)の視点も交えて解説します。ご自身だけでなく、ご家族の「いびき」が気になっている方もぜひ最後までお読みください。

1. 「暑くて眠れない」を放置しない──熱帯夜が睡眠を壊す仕組み

夜間の最低気温が25℃を下回らない夜を「熱帯夜」と呼びます。近年の猛暑では、横浜市を含む都市部で7〜8月の夜の多くが熱帯夜という年も珍しくなくなりました。人は眠りに入るとき、体の内部の温度(深部体温)を下げる必要があります。ところが高温多湿の寝室では熱がうまく逃げず、深部体温が下がりきらないために寝つきが悪くなり、眠りが浅くなり、夜中に何度も目が覚めるのです。🌙

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上の睡眠が推奨されています。睡眠は「時間」だけでなく「質」も重要で、浅く分断された睡眠が続くと、日中の眠気や倦怠感だけでなく、血圧・血糖・食欲のコントロールまで乱れていきます。「夏はよく眠れないのが当たり前」と諦めてしまうことこそ、夏の健康管理の落とし穴です。

💡 「眠りが浅い夏」は、隠れていた睡眠の病気が表に出る季節です

もともと軽い「いびき」や「無呼吸」があった方は、熱帯夜で眠りが浅くなることで症状の影響が一気に表面化します。「今年の夏は特に眠い」「いびきがひどくなったと言われた」──それは、次章でお話しする睡眠時無呼吸症候群(SAS)に気づくチャンスかもしれません。

2. その眠気といびき、夏バテではなく「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」かも

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中にのど(上気道)がふさがって10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や弱い呼吸(低呼吸)を一晩に何十回も繰り返す病気です。呼吸が止まるたびに脳は目を覚まして呼吸を再開させるため、本人は覚えていなくても、眠りは細切れに破壊され続けています。😴

決してまれな病気ではありません。Lancet Respiratory Medicine誌(2019年)の国際推計では、日本の中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸の該当者は約900万人と報告されています。ところが実際に治療を受けている方はその一部にとどまり、大多数は「夏バテ」「年のせい」「ただのいびき」として見過ごされているのが現実です。

📊 「一晩に何十回も溺れている」のと同じ状態です

重症のSASでは、1時間あたり30回以上、一晩に換算すると200回以上呼吸が止まることもあります。そのたびに血液中の酸素が低下し、心臓と血管には毎晩大きな負担がかかり続けます。「寝ている時間」が「体を痛めつける時間」になってしまっている──これがSASの本当の怖さです。

3. 夏にいびき・無呼吸が悪化する4つの理由

SASは1年中ある病気ですが、夏は症状が悪化・表面化しやすい季節です。理由は大きく4つあります。🔥

🍺 ① 夏の飲酒(特に寝る前のビール)

アルコールはのどの筋肉をゆるめ、気道をふさがりやすくします。寝酒・晩酌の増える夏は、いびき・無呼吸が最も悪化しやすい生活パターンになりがちです。

🤧 ② 冷房による鼻づまり・乾燥

エアコンの冷気や乾燥で鼻の粘膜が腫れると(血管運動性鼻炎など)、鼻呼吸ができず口呼吸に。口呼吸は舌が落ち込みやすく、いびきと無呼吸を悪化させます。

🌙 ③ 熱帯夜による眠りの分断

ただでさえ無呼吸で細切れの睡眠が、暑さによる中途覚醒でさらに分断されます。「睡眠の質の二重の悪化」で、日中の眠気が一気に強まります。

🍧 ④ 「夏バテ」との誤解で発見が遅れる

強い眠気・だるさ・朝の頭痛が出ても「夏バテだから仕方ない」と考えてしまい、受診が秋以降に先送りされる──夏はSASの見逃しが最も起こりやすい季節でもあります。

4. 今すぐできるSASセルフチェック

以下の項目に当てはまるものが多いほど、SASの可能性が高くなります。ご本人だけでなく、ご家族の様子を思い浮かべながらチェックしてみてください。✅

場面 チェック項目
夜間 ☐ 毎晩のように大きないびきをかく(かくと言われる)
☐ 「呼吸が止まっていた」「息が苦しそう」と指摘されたことがある
☐ 夜中に何度も目が覚める・トイレに2回以上起きる
朝〜日中 ☐ 起床時に頭痛や口の渇きがある・熟睡感がない
☐ 会議中・運転中・テレビを見ていて強い眠気に襲われる
☐ 集中力・記憶力が落ちた、イライラしやすくなったと感じる
体質・持病 ☐ 肥満傾向がある/最近体重が増えた
あごが小さい・首が短い・扁桃が大きいと言われたことがある
高血圧・糖尿病・不整脈で治療中(特に薬が効きにくいと言われている)

💡 一人暮らしの方・いびきを指摘してくれる人がいない方へ

スマートフォンのいびき録音アプリで一晩録音してみるのも、気づきのきっかけとして有効です。また「起床時の頭痛」「夜間頻尿」「日中の強い眠気」の3つは、指摘してくれる人がいなくても自分で気づけるSASの重要なサインです。夜間頻尿を年のせいと思っていたら、実はSASが原因だった──という方も少なくありません。

5. 「たかがいびき」の放置が危険な理由──高血圧・心筋梗塞・事故

SASの怖さは「眠い」だけでは終わりません。無呼吸のたびに繰り返される低酸素と覚醒反応は交感神経を興奮させ続け、全身の血管と代謝をむしばんでいきます。⚠

📊 放置されたSASが招くリスク──データが示す事実

  • SAS患者の約半数に高血圧が合併し、薬が効きにくい「治療抵抗性高血圧」の背景には高率にSASが潜むと報告されています
  • 未治療の重症SASでは、心筋梗塞・脳卒中などの心血管イベントのリスクが数倍に上がるとする海外の長期研究があります
  • 強い眠気による居眠り運転事故のリスクは約7倍とする報告も。ご自身と周囲の安全に直結します
  • 間欠的な低酸素はインスリンの効きを悪くし、2型糖尿病の発症・悪化にも関与します

逆に言えば、SASを見つけて治療することは、睡眠の質の改善にとどまらず、高血圧・糖尿病・心血管疾患・事故という複数のリスクをまとめて下げる「一石四鳥」の医療です。「高血圧症の最新治療(JSH2025)」でも二次性高血圧の原因としてSASの評価は重要とされており、当院でも血圧・血糖が安定しない方には睡眠の評価を積極的におすすめしています。

6. 検査は自宅でできます──簡易検査から診断までの流れ

「検査のために入院するのは大変そう」と思われがちですが、最初の検査はご自宅で、いつも通り寝るだけです。🏠

ステップ 内容
① 外来受診 問診で症状・生活習慣・持病を確認。鼻炎など悪化要因もあわせて評価します
② 自宅で簡易検査 貸出機器(指先センサーと鼻カニューレ)を着けてご自宅で1〜2晩眠るだけ。無呼吸の回数(AHI)と血中酸素の低下を測定します(保険適用)
③ 結果説明 AHI(1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数)が5回以上でSASと診断。15回以上は中等症、30回以上は重症です
④ 必要に応じて精密検査 簡易検査で判断がつかない場合は、脳波まで測定する精密検査(PSG)を連携医療機関でご案内します

7. 治療の選択肢──CPAP・マウスピース・生活改善

治療は重症度と原因に合わせて選びます。「睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020」(日本呼吸器学会)に沿った標準治療をご紹介します。🛌

💨 CPAP(シーパップ)療法

鼻マスクから空気を送り、気道の閉塞を防ぐ中等症〜重症の標準治療。基準を満たせば保険適用で、月1回程度の外来管理で継続します。「翌朝の目覚めが別人のよう」と実感される方が多い治療です。

🦷 マウスピース(口腔内装置)

下あごを少し前に出して気道を広げる装置。軽症〜中等症の方や、CPAPが合わない方の選択肢です。歯科と連携して作製します(診断書があれば保険適用)。

🏃 減量・生活改善

体重を10%減らすと無呼吸が大きく改善するという報告があり、肥満のある方では減量が根本治療になります。節酒・禁煙・鼻炎の治療も重要です。

🛏 横向き寝・寝具の工夫

あお向けで悪化するタイプでは横向き寝だけで無呼吸が減ることがあります。抱き枕の活用や、枕の高さの調整も効果的です。

8. 今夜からできる「熱帯夜の快眠術」7か条

SASの有無にかかわらず、熱帯夜の睡眠の質を守る工夫は全員に有効です。今夜から実践できる7か条をまとめました。🌙

🥗 熱帯夜の快眠術 7か条

  • ① エアコンは朝まで連続運転:室温26℃前後・湿度50〜60%を目安に。タイマー切れは中途覚醒と夜間熱中症のもと
  • ② 風は体に直接当てない:気流は壁や天井に向け、乾燥による鼻・のどの不調を防ぐ
  • ③ 就寝1〜2時間前にぬるめの入浴:38〜40℃で10〜15分。深部体温が下がるタイミングで自然な眠気が来ます
  • ④ 寝酒をやめる:寝つきは良くなっても眠りを浅くし、いびき・無呼吸を確実に悪化させます
  • ⑤ カフェインは午後2時まで:アイスコーヒー・緑茶・エナジードリンクの夕方以降の摂取は控える
  • ⑥ 寝る前1時間はスマホ・タブレットを手放す:強い光は眠りのホルモン(メラトニン)の分泌を抑えます
  • ⑦ 朝は決まった時間に起き、朝の光を浴びる:涼しい朝のうちの散歩は体内時計を整え、夜の眠りを深くします🚶

⚠ 快眠術を実践しても「いびき・無呼吸・強い眠気」が続くなら
それは生活の工夫だけでは解決できない、検査・治療が必要なサインです。我慢や根性で乗り切る問題ではありませんので、次章の受診目安をご確認ください。

9. 受診の目安と当院でできること

次のいずれかに当てはまる方は、一度ご相談ください。①家族に無呼吸やひどいいびきを指摘された、②運転中や仕事中に耐えがたい眠気がある、③起床時の頭痛・夜間頻尿・熟睡感のなさが続いている、④高血圧・糖尿病の数値が薬を飲んでいても安定しない──特に②は事故に直結するため、早めの受診をおすすめします。

🏥 当院(五良ファミリークリニック センター南)でできること

  • 睡眠時無呼吸の診療:問診・自宅でできる簡易検査(保険適用)・CPAP治療の導入と継続管理まで一貫して対応します
  • 糖尿病内科・内科の併診:SASと関係の深い高血圧・糖尿病・脂質異常症を、睡眠とセットで管理できるのが当院の強みです
  • 頭痛外来・神経内科・認知症外来の併設:「朝の頭痛」が片頭痛なのかSASなのか、「日中のぼんやり」が眠気なのか認知機能の問題なのか──紛らわしい症状の鑑別ができます
  • 旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた当院は、土曜も9:00〜14:00(休憩なし)で診療。お仕事帰りやご家族の付き添いにもご利用ください
  • 日曜・祝日は、姉妹院・五良会クリニック白金高輪のオンライン診療(melmo)をご案内しています(記事末尾のボタン参照)

🔁 3軸クロスポイント:睡眠を「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

当院は「糖尿病 × 認知症 × 抗加齢」の3軸クロス診療を特色としています。睡眠の質、とりわけSASは、この3軸すべての交差点に位置する重要テーマです。🔁

🩸 軸1: 糖尿病──眠りの質は血糖コントロールの土台

無呼吸による間欠的な低酸素と睡眠の分断は交感神経を興奮させ、インスリンの効きを悪くします(インスリン抵抗性)。SASのある方は2型糖尿病を合併しやすく、逆に糖尿病の方がSASを治療すると血糖が安定しやすくなることも知られています。睡眠不足が食後高血糖を招くメカニズムは、当院記事「血糖値スパイクとは」もあわせてどうぞ。

🧠 軸2: 認知症──深い睡眠は「脳のごみ掃除」の時間

深い睡眠中、脳ではアルツハイマー病に関わるアミロイドβなどの老廃物を洗い流す仕組み(グリンパティック系)が働いています。睡眠の分断や低酸素が続くと、この掃除時間が削られ、認知機能低下のリスクを高めると報告されています。「最近もの忘れが増えた」の背景に睡眠の問題が隠れていることもあり、当院では認知症外来と睡眠の評価を組み合わせて診療しています。

🌱 軸3: 抗加齢──睡眠は「無料で毎晩できる」最強のアンチエイジング

深い睡眠中には成長ホルモンが分泌され、日中に傷ついた血管・筋肉・皮膚の修復が進みます。質の良い睡眠は、高価なサプリメントに勝る抗加齢医学の基本です。夏の睡眠を立て直すことは、健康寿命と平均寿命のギャップ(約10年)を縮める、誰にでもできる第一歩。「よく眠れた朝」を夏でも当たり前にすることが、10年後の若さへの投資になります。🌱

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 痩せているのに「いびきがうるさい」と言われます。SASの可能性はありますか?

A. あります。日本人はあごが小さく気道が狭い骨格の方が多く、痩せていてもSASになるのが欧米との大きな違いです。「太っていないから大丈夫」という思い込みは禁物で、いびき・眠気などのサインがあれば体型にかかわらず検査をおすすめします。

Q2. CPAPは一度始めたら一生続けるのですか?

A. 必ずしもそうではありません。肥満が主因の方は減量に成功すれば無呼吸が改善し、CPAPを卒業できることもあります。マウスピースへの変更が可能になるケースもあります。大切なのは定期的に効果を確認しながら、その時々の体に合った治療を続けることです。

Q3. 寝苦しいので寝る前にお酒を飲んでいます。よくないでしょうか?

A. 寝酒は睡眠の質にとって逆効果です。アルコールは寝つきを良くするように感じさせますが、眠りを浅くし、のどの筋肉をゆるめていびき・無呼吸を確実に悪化させます。利尿作用で夜間のトイレと脱水も増えます。「眠るための飲酒」が習慣になっている方は、一度ご相談ください。

Q4. 夏の昼寝はしてもいいですか?

A. 午後3時までに15〜30分程度の短い昼寝であれば、夏の疲労回復に有効です。ただし、それ以上寝ないと持たないほどの強い眠気が毎日続く場合は、夜の睡眠に問題(SASなど)がある可能性が高いサインです。昼寝でごまかさず、原因を調べることをおすすめします。

Q5. 家族のいびきを録音して持って行ってもいいですか?

A. ぜひお持ちください。いびきの音の途切れ方(急に静かになって、あえぐように再開する等)は診断の大きな手がかりになります。ご本人に受診の意思がまだない段階でも、まずはご家族だけでご相談いただくことも可能です。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪


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