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抗インフルエンザ薬5種類の使い分け|高齢者・糖尿病の方へ|五良ファミリークリニック センター南

[2026.09.03]

【お知らせ】心療内科専門外来の終了について(2026年10月追記)

火曜午前の心療内科専門外来を担当していた阿部靖彦 医師は、2026年9月末をもって退職いたしました。これに伴い、当院の心療内科専門外来は2026年9月で終了しております。本記事中の心療内科に関する記載は掲載当時の内容です。
2026年10月からの火曜午前は、玉井博修 医師による消化器内科・肝臓内科の専門外来となりました。また、月・水・木・金曜の午後診療は18:30まで延長しております。

INFLUENZA ANTIVIRALS 2026-2027
抗インフルエンザ薬5種類の使い分け【2026-2027シーズン】
〜高齢者・糖尿病の方が「48時間以内」に受診すべき理由〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医)より、タミフル・リレンザ・イナビル・ゾフルーザ・ラピアクタの違いと、横浜市都筑区での受診の目安をわかりやすくお伝えします。

抗インフルエンザ薬 高齢者の重症化予防 糖尿病シックデイ センター南・都筑区

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「熱が出たけれど、まだ半日しか経っていない。今すぐ検査を受けたほうがいいの?」「父が82歳で心臓の薬を飲んでいます。インフルエンザだったら、どの薬を選べばいいのでしょうか」──2026年8月、横浜市でも異例の早さでインフルエンザが流行入りしてから、旧・浜クリニックの時代から通ってくださっている患者さんやご家族から、こうしたご相談が急に増えました。

結論からお伝えします。抗インフルエンザ薬は「どれが一番効くか」を競う薬ではなく、その方の年齢・持病・飲み込む力・吸える力に合わせて選ぶ薬です。そして高齢の方・糖尿病の方にとって本当に大切なのは、薬の種類選びよりも「発症から48時間以内に医療機関にたどり着くこと」です。

本記事では、日本で使える5種類の抗インフルエンザ薬の違いを表で整理したうえで、当院が特に力を入れている「高齢者の重症化」「糖尿病のシックデイ」「発熱後のせん妄」という3つの視点から、ご家族が今日から取れる行動をお伝えします。

1. 2026-2027シーズン|「真夏の流行入り」という異例の事態

2026年のインフルエンザは、例年とはまったく違う立ち上がり方をしました。通常であれば11月下旬から12月にかけて「流行入り」となるところ、今シーズンは8月中に全国・東京都ともに流行開始の基準を超えたのです。センター南・都筑区にお住まいの方にとっても、「まだ暑いのにインフルエンザ?」という戸惑いが大きかったと思います。

📊 2026年8月の流行状況──データが示す事実

  • 全国・第34週(8/17〜8/23)の定点当たり報告数:1.11人(流行開始の目安である1.00人を突破)
  • 東京都・同週:1.49人
  • 昨シーズン同時期と比べて約3.6倍
  • 統計が現在の形になった1999年以降で2番目に早い流行入り(最も早いのは2009年の新型インフルエンザ)

なぜこれほど早いのか。決定的な答えはまだありませんが、専門家の間では「新型コロナ流行期に社会全体でインフルエンザへの接触が減り、集団としての免疫が下がっている(イミュニティ・デット)」「訪日・出国を含む国際的な人の移動が完全に戻った」「南半球シーズンのウイルスが早期に持ち込まれた」といった要因が指摘されています。

📊 これは何を意味するのか?

流行が早いということは、ワクチンを「例年どおり11月に」と考えていると間に合わない可能性があるということです。同時に、9月・10月の発熱を「夏かぜだろう」と自己判断してしまうリスクも高まります。特に65歳以上の方、糖尿病・心疾患・呼吸器疾患をお持ちの方は、季節に関係なく「急な高熱=インフルエンザの可能性」として行動していただくのが今シーズンの正解です。

2. かぜとの違いと、受診の目安チェックリスト

ふつうのかぜ(普通感冒)は、のど・鼻の症状からゆっくり始まり、熱が出ても37〜38℃前後で全身状態は保たれます。一方インフルエンザは、「何時何分から具合が悪くなったか言える」ほど急激に38℃以上の高熱・強い倦怠感・関節痛や筋肉痛が出るのが典型です。

項目 ふつうのかぜ インフルエンザ
始まり方 数日かけてじわじわ 数時間で急激
発熱 なし〜38℃未満 38〜40℃(高齢者は熱が出ないこともある)
全身症状 軽い 関節痛・筋肉痛・強い倦怠感が先に出る
のど・鼻 最初から目立つ 熱のあとから遅れて出る
合併症 まれ 肺炎・脳症・心筋炎・持病の悪化

⚠ 「48時間」を待たずに、すぐ受診・救急要請していただきたいサイン

  • 呼吸が速い・肩で息をする・唇や指先が紫色(チアノーゼ)
  • 意識がもうろうとしている/呼びかけへの反応が鈍い
  • けいれん、繰り返す嘔吐で水分がまったく取れない
  • 胸の痛み・強い動悸(心筋炎・心筋梗塞の可能性)
  • 尿が半日以上出ていない(脱水)
  • 高齢の方で「いつもと明らかに様子が違う」「立てない」「食べない」

💡 高齢の方は「高熱が出ないインフルエンザ」があります

80代・90代の方では、免疫反応そのものが弱まっているため、37℃台の微熱、あるいは平熱のままインフルエンザにかかっていることがあります。代わりに現れるのが「食欲がない」「急にぼんやりした」「立ち上がれない」「失禁するようになった」といった非典型的なサインです。ご家族が「なんとなくおかしい」と感じたその感覚は、体温計の数字よりも当てになります。

3. 検査はいつ受ける?──タイミングで結果が変わります

一般的な迅速抗原検査は、鼻やのどの粘液に含まれるウイルスの量を見ています。したがって、発症直後でウイルスがまだ増えきっていない時期に検査をすると、インフルエンザであっても「陰性」と出てしまいます(偽陰性)。

発症からの時間 検査の信頼度 当院の考え方
6時間未満 低い(偽陰性が多い) 重症化リスクが高い方は、検査を待たずに診察・治療を判断することがあります
6〜12時間 やや上がる 陰性でも「否定できた」とは考えません
12〜48時間 最も高い 検査と治療開始の両方にとって最適な時間帯です
48時間超 やや低下 薬の効果は限定的になりますが、重症化リスクのある方には投与を検討します

⚠ 「検査が陰性でも治療を始めることがあります」
インフルエンザの診断は、検査キットだけで決めるものではありません。流行状況、周囲に発症者がいるか、症状の出方、そしてその方の重症化リスク──これらを合わせて臨床的に判断します。高齢の方や糖尿病の方で、流行期に典型的な症状があれば、陰性であっても治療を先行させるのは十分に妥当な判断です。「陰性だったから安心」ではなく、「陰性でも経過を見る」が正しい姿勢です。

4. 治療の原則|「発症48時間以内」が意味すること

インフルエンザウイルスは、体内に入ってからおよそ24〜48時間でピークまで増殖し、その後は自分の免疫の力で減っていきます。抗インフルエンザ薬は、すでに増えてしまったウイルスを消す薬ではなく、「これ以上増やさない」ための薬です。だからこそ、増殖がピークに達する前=発症から48時間以内に飲み始める必要があるのです。

🦠 ノイラミニダーゼ阻害薬

タミフル・リレンザ・イナビル・ラピアクタの4剤。増えたウイルスが細胞から「出ていく」段階をブロックし、周囲の細胞への拡散を止めます。

🧬 キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬

ゾフルーザ1剤。ウイルスが自分のコピーを作る最初の段階を止めます。作用点が上流のため、ウイルス量の減少が速いのが特徴です。

⏱ 効果の実際

発熱期間をおおむね1日程度短縮します。「飲めば翌日に治る」薬ではありません。期待すべきは肺炎など合併症の予防です。

🤔 必ず飲むべき?

健康な成人・学童で症状が軽い場合、必須ではありません。一方、重症化リスクのある方には積極的に使うべきです。ここが「使い分け」の本質です。

🏥 抗インフルエンザ薬を積極的に使う「重症化リスク群」

  • 65歳以上の方(特に75歳以上、施設入所中の方)
  • 糖尿病をはじめとする代謝性疾患のある方
  • 気管支喘息・COPDなど慢性呼吸器疾患のある方
  • 心不全・虚血性心疾患など慢性心疾患のある方
  • 腎機能障害のある方、透析中の方
  • 免疫抑制薬・抗がん剤治療中の方
  • 妊娠中の方、5歳未満(特に2歳未満)のお子さま
  • 高度肥満(BMI 30以上)の方

5. 抗インフルエンザ薬5種類の完全比較

日本では現在、5種類の抗インフルエンザ薬が使えます。「どれが一番強いか」ではなく「その方に合うのはどれか」という視点でご覧ください。

薬剤名(一般名) 剤形・用法 特徴 向いている方
タミフル®
(オセルタミビル)
カプセル/ドライシロップ
1日2回×5日間
最も使用実績が長い基本の薬。乳幼児から高齢者まで幅広く使える。腎機能に応じた減量が必要 吸入が難しいお子さま・ご高齢の方。飲み薬で確実に治療したい方
リレンザ®
(ザナミビル)
吸入粉末
1日2回×5日間
気道に直接届き、全身への吸収が少ない。腎機能による調整が不要 腎機能が低下している方、内服を避けたい方(吸入手技が確実にできる方)
イナビル®
(ラニナミビル)
吸入粉末
1回の吸入で終了
診察室で吸入を完了できるため飲み忘れがない。吸入できたかの確認が必須 お仕事や介護で服薬管理が難しい方。しっかり吸える成人・学童
ゾフルーザ®
(バロキサビル)
錠剤/顆粒
1回の内服で終了
ウイルス量の減少が速い。12歳以上ではオセルタミビルと同等の有効性。低感受性株の出現に注意 12歳以上で、吸入が難しく1回で終えたい方
ラピアクタ®
(ペラミビル)
点滴静注
単回点滴(重症例は連日)
内服・吸入がまったくできない状況でも確実に投与できる 嘔吐が強い方、意識状態が悪い方、入院が必要な重症例

💡 高齢のご家族の薬を選ぶときの3つの質問

①粉を勢いよく吸い込めますか?(吸えなければイナビル・リレンザは選べません)/②腎機能(eGFR)はどのくらいですか?(低下していればタミフルは減量、リレンザは調整不要)/③ご家族が服薬を見守れますか?(難しければ1回完結型が有利)。この3点を診察室でうかがって決めています。ご来院の際は、お薬手帳と直近の血液検査結果をぜひお持ちください。

6. ゾフルーザの「警告」(2025年9月改訂)と小児への配慮

「1回飲んで終わり」という手軽さから人気の高いゾフルーザですが、2025年9月の添付文書改訂で「警告」欄が新設されました。当院が特に丁寧にご説明している内容です。

📊 低感受性株(PA/I38変異)の検出頻度

  • 健康成人:約9.7%
  • 12歳未満・A香港型(H3N2):約20〜60%
  • 6歳未満で最も高頻度となる傾向

低感受性株が出現すると、いったん下がった熱が再び上がる(二峰性発熱)ことがあり、ウイルス排出期間が長引く可能性も指摘されています。

⚠ 2025年9月改訂で追加された「警告」の趣旨
12歳未満かつ体重20kg未満のお子さまに対しては、他の抗インフルエンザ薬が使えないかを十分に検討したうえで、本剤を使う必要性を特に慎重に判断すること──という内容です。あわせて体重10kg未満の用法も整備されました。当院では、「1回で済むから」という理由だけでお子さまにゾフルーザを選ぶことはしません。ご希望がある場合も、メリットとリスクを一緒に確認したうえで決めています。

なお12歳以上の方については、有効性はオセルタミビルと同等とされており、低感受性株の出現頻度も小児より大幅に低いため、通常の選択肢の一つとして問題なく使えます。「ゾフルーザは危険な薬」ではなく、「年齢と体重によって適否が変わる薬」とご理解ください。

7. 高齢者こそ危ない|心筋梗塞・脳梗塞・ADL低下・せん妄

ここからが、認知症外来・神経内科・心療内科を併設する当院がもっともお伝えしたい部分です。高齢の方にとってインフルエンザの本当の怖さは、「熱が出ること」ではなく「その後に起きること」にあります。

📊 インフルエンザ診断後7日以内の急性心筋梗塞リスク

カナダの大規模研究(Kwong KK, et al. New England Journal of Medicine 2018)では、インフルエンザが検査で確定した直後7日間の急性心筋梗塞の発症率が、それ以外の期間と比べて6.05倍(95%信頼区間 3.86〜9.50)に上昇していました。ウイルスによる全身の炎症が、血管の中の不安定なプラーク(脂質の塊)を破綻させ、血栓をつくると考えられています。脳梗塞についても同様の上昇が報告されています。

💗 心血管イベント

心筋梗塞・心不全の増悪・不整脈。もともと心疾患のある方は、解熱後2週間ほどは無理をしないことが大切です。

🫁 二次性細菌性肺炎

いったん解熱したあと再び熱が出て、痰が増える──肺炎球菌などによる二次感染のサインです。すぐ受診を。

🚶 ADL低下・フレイル

1週間寝込むと筋肉量は目に見えて落ちます。「治ったのに歩けない」が最も避けたい結末です。

🧠 せん妄

発熱・脱水・環境変化をきっかけに、一時的に意識と注意力が乱れます。次項で詳しくお話しします。

💡 高齢の方の「言動がおかしい」は、脳症ではなく多くが「せん妄」です

お子さまで問題になる「インフルエンザ脳症」と、高齢の方にみられる「せん妄」は、まったく別のものです。せん妄は、発熱・脱水・低酸素・薬剤・睡眠不足などが引き金となって起こる一時的な意識と注意の障害で、原因(この場合はインフルエンザと脱水)が改善すれば戻ります。

ただし注意すべき点が2つあります。第一に、もともと認知症のある方はせん妄を起こしやすく、そしてせん妄をきっかけに認知機能が元の水準まで戻りきらないことがあること。第二に、ご家族が「急に認知症が進んだ」と誤解しやすいことです。「急に始まった」「日内変動がある(夕方から夜に悪化)」「注意が続かない」──この3つが揃えばせん妄を疑い、まず脱水と発熱を治すことが最優先です。

🏥 当院(旧・浜クリニック)だからできること

  • 認知症外来・脳神経内科を併設──発熱後の「様子がおかしい」を、せん妄か認知症の進行かという視点で評価できます
  • 糖尿病内科──シックデイの血糖管理と休薬判断を、その場でご相談いただけます
  • 内科・小児科を併設──お子さまとご高齢の親御さんを、同じ日に同じ院で診られます
  • 心療内科を併設(火曜午前・阿部 靖彦医師)──療養が長引いたあとの不眠や気分の落ち込みもフォローできます
  • 土曜は9:00〜14:00 通し診療──平日に来られないご家族の付き添い受診に対応しています

8. 糖尿病の方へ|シックデイ・ルールと休薬の判断

糖尿病をお持ちの方がインフルエンザにかかると、感染そのもののストレスで血糖値が大きく上がります。一方で食事が取れずに低血糖になる方もいて、上下どちらにも振れうるのが厄介なところです。この「病気で具合が悪い日」の対応ルールをシックデイ・ルールと呼びます。

🥗 シックデイに「必ず」していただきたいこと

  • 水分をこまめに:1日1.5〜2L目安。経口補水液が理想的です
  • 炭水化物を少しずつでも:おかゆ・うどん・りんごジュースなど、食べられる形で
  • 血糖測定の回数を増やす:測定器をお持ちの方は普段より頻回に
  • インスリンは自己判断で中止しない:食べられなくても基礎インスリンは原則継続です
  • 体温・食事量・尿量を記録:受診時にとても役立ちます

⚠ シックデイに「いったん止める」ことを検討する薬

  • SGLT2阻害薬(フォシーガ・ジャディアンス・スーグラ等):脱水と正常血糖ケトアシドーシスのリスクがあるため、食事が取れないときは休薬を検討します
  • メトホルミン(メトグルコ等):脱水時は乳酸アシドーシスのリスクがあるため休薬を検討します
  • SU薬(アマリール等):食事量が減ると低血糖の危険が高まるため、減量・休薬を検討します
  • 利尿薬・一部の降圧薬(ARB/ACE阻害薬):脱水時は腎機能悪化に注意が必要です

※これらはあくまで「主治医と相談のうえ」の判断です。自己判断での中止・継続はどちらも危険です。当院かかりつけの方は、まずお電話(045-942-7783)でご相談ください。

⚠ すぐに受診が必要なシックデイのサイン
24時間以上まったく食事が取れない/嘔吐や下痢が続いて水分も取れない/血糖値が350mg/dL以上持続する/低血糖を繰り返す/意識がもうろうとする/呼吸が深く速い(ケトアシドーシスの疑い)。

9. ご家庭でできること|家庭内感染・出席停止・異常行動

ご家族のどなたかが発症したとき、次に守るべきは同居しているご高齢の方と乳幼児です。三世代で暮らしているご家庭が多い都筑区では、この視点が特に重要になります。

😷 部屋を分ける

発症者は個室で療養を。難しければ、せめて寝る場所と食事の時間をずらします。

🌬 換気と加湿

1〜2時間に1回、5〜10分の換気。湿度は50〜60%を目安に保ちます。

🧼 手洗い・タオル分け

ドアノブ・リモコン・スイッチをアルコールで。タオルは必ず個別にします。

👥 看病する人を1人に

世話をする方は持病のない成人1人に固定。高齢の方が看病役になるのは避けてください。

🏫 学校保健安全法による出席停止の基準

「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」登校・登園はできません。発症日は0日目として数えます(例:月曜に発熱したら、土曜以降で、かつ解熱後2日を満たした日から登校可)。当院では登校許可証・治癒証明書にも対応しています。

📊 異常行動への備え──発熱から「2日間」は目を離さないでください

突然走り出す、部屋から飛び出そうとする、意味のわからないことを言う──こうした異常行動は、抗インフルエンザ薬を飲んでいなくても起こることがわかっています。薬の有無にかかわらず、厚生労働省は発熱から少なくとも2日間の見守りを求めています。

  • 玄関や部屋の窓に補助錠をかける
  • ベランダに面した部屋で1人で寝かせない
  • できれば1階で寝かせる
  • 高齢の方の場合は、夜間の転倒予防も同時に(足元灯・ポータブルトイレの設置)

🔁 3軸クロスポイント:インフルエンザを「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

当院は「糖尿病・生活習慣病」「認知症・脳神経」「抗加齢医学(健康寿命)」という3つの軸を横断して診ることを診療の柱にしています。インフルエンザは一見「一過性の感染症」ですが、この3軸で見るとまったく違う顔が見えてきます。1週間の発熱が、その後の10年を左右することがあるのです。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連

糖尿病があると、好中球の遊走能や貪食能が低下し、感染症が重症化しやすくなります。逆にインフルエンザ罹患中はストレスホルモン(コルチゾール・カテコラミン)が上がってインスリン抵抗性が悪化し、血糖値が跳ね上がります。つまり「糖尿病→重症化しやすい」「感染→血糖が乱れる」という双方向の悪循環(ダブルジオパディ=二重の危険)が成立します。だからこそ、糖尿病の方には抗インフルエンザ薬を積極的に使い、シックデイ・ルールを事前に共有しておくことが重要なのです。関連記事:GLP-1受容体作動薬とは?

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連

感染症による全身の炎症は、脳内のミクログリアを活性化させ神経炎症を引き起こします。高齢者が発熱を機に起こすせん妄は、その急性の表れです。そして重要なのは、せん妄を起こした方はその後の認知機能低下が速まることが複数の研究で示されている点です。「熱が下がったのに、前ほど会話が続かない」──ご家族のこの気づきは、決して気のせいではありません。当院の認知症外来では、感染症後の認知機能を発症前と比べて評価することを大切にしています。関連記事:認知症の早期サイン

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

抗加齢医学の立場からインフルエンザを見ると、これは「炎症性老化(インフラメイジング)」を一気に加速させるイベントです。高齢の方が1週間ベッドで過ごすと、下肢筋量は数%単位で失われ、元に戻すには数か月かかります。平均寿命と健康寿命のギャップ──日本では男性約9年、女性約12年とされるこの差は、こうした「一度の寝込み」の積み重ねで広がっていきます。だから当院は、解熱後こそタンパク質の補給と早期離床をお願いしています。ベッドから起き上がり、家の中を歩き、日光を浴びる。これが最良の抗加齢治療です。関連記事:メタボリックシンドロームと脳梗塞

10. 関連ブログ・関連クリニック

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💊 抗インフルエンザ薬5種類の使い分け【2026-2027シーズン】 高齢者・糖尿病の方が「48時間以内」に受診すべき理由 📍 ご覧の記事です

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 発熱してすぐ受診したほうがいいですか?それとも半日待つべき?

A. 65歳以上の方、糖尿病・心疾患・呼吸器疾患のある方は、待たずにご相談ください。検査は発症12時間以降のほうが正確ですが、重症化リスクのある方では検査結果を待たずに治療を始めたほうがよい場面があります。一方、健康な成人で全身状態が良ければ、半日ほど様子をみてから受診されるのが検査の精度の面では合理的です。ただし、いずれの場合も48時間を超えないことが重要です。

Q2. 高齢の母は薬を吸い込むのが苦手です。どれを選べばよいでしょうか。

A. 吸入が難しい場合、イナビル・リレンザは効果が保証できないため選びません。タミフル(1日2回×5日の内服)が第一選択になることが多いです。ただし腎機能が低下している場合は用量を減らす必要があるため、直近の血液検査(eGFR・クレアチニン)の結果をお持ちいただけると、その場で適切な量を決められます。嘔吐で内服もできない場合はラピアクタの点滴という選択肢もあります。

Q3. ゾフルーザを希望していますが、子ども(小学2年生・体重18kg)でも大丈夫ですか?

A. 2025年9月の添付文書改訂により、12歳未満かつ体重20kg未満のお子さまへの投与は「特に慎重に判断すること」とされました。体重18kgのお子さまはこの範囲に入ります。当院では、まず他の薬(タミフルのドライシロップなど)が使えないかを検討し、それでもゾフルーザを選ぶ理由がある場合にのみ、低感受性株のリスクをご説明したうえで処方しています。「1回で終わるから」というご希望はよく理解できますが、お子さまの場合はメリットとリスクを一緒に確認させてください。

Q4. 熱が下がったあと、父がぼんやりして会話がかみ合いません。認知症が進んだのでしょうか?

A. 多くの場合、それはせん妄です。急に始まり、夕方から夜にかけて悪化し、注意が続かない──この特徴があれば、まず脱水と発熱の改善を優先します。数日から1〜2週間で戻ることがほとんどです。ただし、元の水準まで戻りきらないケースもあるため、当院の認知症外来では回復後に改めて認知機能を評価することをおすすめしています。ご心配な場合は遠慮なくご相談ください。

Q5. 48時間を過ぎてしまいました。もう薬を飲む意味はありませんか?

A. 発熱期間の短縮という効果は限定的になります。ただし、重症化リスクのある方(高齢者・糖尿病・心疾患・免疫抑制状態など)や、症状が続いている・悪化している方には、48時間を過ぎていても投与を検討します。合併症の予防という観点では意味があるためです。「もう遅いから」と受診をあきらめないでください。

Q6. 家族が発症しました。まだ症状のない私も薬をもらえますか?

A. それが「予防投与」です。65歳以上の方、糖尿病・慢性呼吸器疾患・慢性心疾患・腎機能障害のある方が主な対象で、健康保険は使えず自費となります。接触から48時間以内に始める必要があるため、お早めにご相談ください。詳しくは予防投与の記事で解説しています。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医)

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪

参考:日本感染症学会提言/各薬剤添付文書(2025年9月改訂版を含む)/厚生労働省インフルエンザ関連情報/Kwong JC, et al. N Engl J Med 2018;378:345-353


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※旧名称:浜クリニック
〒224-0006 神奈川県横浜市都筑区荏田東4-3-19
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