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朝、うがいの水が口からこぼれる〜顔面神経麻痺(ベル麻痺・ハント症候群)と脳梗塞の見分け方を理事長 五藤良将が解説〜

[2026.09.20]
FACIAL NERVE PALSY
朝、うがいの水が口からこぼれる
〜顔面神経麻痺(ベル麻痺・ハント症候群)と脳梗塞の見分け方を理事長 五藤良将が解説〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)より、顔の片側が動かなくなったときに「その日のうちに」何をすべきか、そして発症から72時間という治療のタイムリミットについてお伝えします。

顔面神経麻痺 ベル麻痺 ハント症候群 脳神経内科・センター南

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「朝、歯をみがいていたら、口の端から水がこぼれ落ちた」「鏡を見たら、片方の目がうまく閉じられない」——こうしたご相談で、ご家族と一緒に慌てて来院される方が、秋から冬にかけて確実に増えてきます。多くの方が最初に口にされるのは、「脳梗塞でしょうか」という一言です。

結論からお伝えします。顔の片側が動かないときにまず確かめるべきは「おでこにシワを寄せられるかどうか」で、シワが寄せられる場合は脳卒中を強く疑って救急要請、シワが寄せられない場合は末梢性の顔面神経麻痺を考え、それでも“その日のうち”に受診してください。末梢性であっても、治療効果が最も高いのは発症から72時間以内だからです。

本記事では、顔面神経麻痺の二大原因であるベル麻痺とハント症候群(ラムゼイ・ハント症候群)の違い、脳卒中との見分け方、ステロイド治療のエビデンス、目を守るケア、そして後遺症を軽くするためにやってはいけないリハビリまでを、脳神経内科・頭痛外来を併設する当院の立場から順を追ってご説明します。旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた当院には、「どの科に行けばいいのか分からない」という状態で駆け込まれる方が少なくありません。まずはこの記事を、最初の判断の手がかりにしていただければ幸いです。

THIS ARTICLE IS WRITTEN AND SUPERVISED BY

医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将

日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医
この記事は五藤 良将が執筆・監修し、内容に責任を持っています。

📖 目次

  1. 朝、顔の片側が動かない——最初の30分で確かめること
  2. 顔面神経麻痺とは|「顔を動かす電線」が、骨の細いトンネルで詰まる
  3. 【最重要】脳卒中との見分け方|おでこのシワを見てください
  4. ベル麻痺とハント症候群|原因ウイルスが違うと、治り方も違う
  5. 数字で見る顔面神経麻痺|発症率と回復率
  6. 治療は時間との勝負|発症72時間以内のステロイドが要
  7. 目を守る|閉じられないまぶたは、角膜を傷つけます
  8. 後遺症「病的共同運動」と、やってはいけないリハビリ
  9. 糖尿病・高血圧の方が注意したい理由
  10. 繰り返すとき・治らないとき|ほかの病気を疑う場面
  11. 予防できる顔面神経麻痺がある|帯状疱疹ワクチンという選択
  12. 🏥 センター南で診るという選択(当院が選ばれる理由)
  13. ❓ よくあるご質問(FAQ)
  14. 🔁 3軸クロスポイント(糖尿病×認知症×抗加齢)

1. 朝、顔の片側が動かない——最初の30分で確かめること

顔面神経麻痺は、ほとんどの場合片側だけに、数時間から1〜2日かけて症状が出そろいます。朝起きたときに気づく方が多いのは、寝ている間に進行するからです。痛みがないことも多く、「疲れているだけだろう」と一日様子を見てしまう方が、実際にとても多くいらっしゃいます。この記事でいちばんお伝えしたいのは、様子を見る一日が、半年後の顔の動きを変えてしまうということです。

👀 目が閉じきらない

力いっぱい閉じても、白目が見える・まつげが隠れない。「兎眼(とがん)」と呼ばれる状態です。

💧 口から水・食べ物がこぼれる

うがい、歯みがき、飲み物。口をすぼめられず、頬の内側に食べ物がたまります。

😐 笑うと口角が上がらない

写真を撮ると左右差に気づきます。ご家族に指摘されて来院される方も多い症状です。

👂 音がうるさく響く・味がしない

聴覚過敏、舌の前3分の2の味覚低下、涙や唾液の減少。顔面神経は表情だけの神経ではありません。

📊 迷わず救急車を呼んでいただきたい組み合わせ

顔の麻痺に加えて、片方の手足の力が入らない/ろれつが回らない/言葉が出てこない/ものが二重に見える/立てないほどのふらつき/突然の激しい頭痛のどれかがあれば、顔面神経麻痺ではなく脳卒中を強く疑います。この場合は当院ではなく、ためらわず119番をお願いします。

2. 顔面神経麻痺とは|「顔を動かす電線」が、骨の細いトンネルで詰まる

顔の表情をつくる筋肉は、顔面神経(第Ⅶ脳神経)という1本の神経が支配しています。この神経は脳幹から出たあと、耳の奥にある側頭骨の「顔面神経管」という非常に細い骨のトンネルをくぐって顔に出てきます。ここが、顔面神経の弱点です。

ウイルスの再活性化などで神経に炎症が起こると、神経はむくんで太くなります。ところが周囲は硬い骨で、逃げ場がありません。腫れた神経が自分自身を骨のトンネルの中で圧迫し、血流が途絶えて機能が止まる——これが顔面神経麻痺の本体です。足がしびれる「正座」の、逃げ場のない版とお考えいただくと分かりやすいかもしれません。

💡 だからこそ「早さ」が効く

治療の中心がステロイド(副腎皮質ステロイド)なのは、神経の腫れを早く引かせて、自分で自分を締めつける悪循環を止めるためです。腫れが長く続いて神経の線維そのものが変性してしまってから薬を飲んでも、取り戻せるものは少なくなります。発症72時間以内という目安には、こうした理屈があります。

3. 【最重要】脳卒中との見分け方|おでこのシワを見てください

ご家族から最も多くいただく質問が、「これは脳梗塞ではないのか」です。ご自宅でも確認できる、医学的に理にかなった見分け方があります。鏡の前で、思い切り眉を上げて、おでこにシワを寄せてみてください。

確かめること 末梢性(ベル麻痺・ハント症候群) 中枢性(脳梗塞・脳出血)
おでこのシワ 寄せられない(麻痺側の眉が上がらない) 寄せられる(おでこは左右とも動く)
目を閉じる 閉じきれない(白目が見える) たいてい閉じられる
手足の症状 ない(顔だけ) 片側の脱力・しびれを伴うことが多い
出方 数時間〜1〜2日かけて進む 突然、その瞬間に完成する
対応 その日のうちに受診(脳神経内科・耳鼻咽喉科) 直ちに119番

理由は、おでこの筋肉が左右両方の脳から二重に指令を受けているためです。片側の脳がダメージを受けても、反対側の脳がおでこを動かし続けてくれます。一方、顔面神経そのものがやられる末梢性では、その神経が担当するおでこから口元まで、顔の半分がまるごと動かなくなります。

⚠ この見分け方にも例外があります

脳幹(橋)の梗塞では、顔面神経の出発点そのものが障害されるため、末梢性とそっくりの顔の麻痺が出ることがあります。この場合はめまい、複視、手足の脱力、ろれつの悪さなどを伴うのが普通です。「おでこのシワが寄らないから安心」ではなく、「脳卒中の緊急度ではないかもしれないので、今日中に受診する」——この温度感で受け止めてください。最終的な判断は、必ず医師の診察で行います。

4. ベル麻痺とハント症候群|原因ウイルスが違うと、治り方も違う

末梢性顔面神経麻痺の大部分は、次の2つで占められます。どちらも「ウイルスが神経の中で再び暴れ出す」病気ですが、犯人のウイルスが違い、治りやすさが明確に違います。

🧠 ベル麻痺(特発性顔面神経麻痺)

末梢性顔面神経麻痺のおよそ6〜7割を占める、最も多いタイプです。多くは単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の再活性化が関わっていると考えられています。皮疹はなく、耳の痛みも軽いことが多いのが特徴です。かつては「原因不明(特発性)」とされ、その名残で今も「ベル麻痺」という病名が使われています。適切に治療すれば、9割以上の方が正常またはほぼ正常まで回復します。

🔥 ハント症候群(ラムゼイ・ハント症候群)

子どものころの水ぼうそうウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス=VZV)が、耳の奥の神経節で再活性化して起こります。顔の麻痺に加えて、耳の強い痛み・耳介や外耳道の赤い水ぶくれ・めまい・難聴・耳鳴りを伴うのが典型です。ある報告では、難聴が43%、ふらつきやめまいが51%、耳鳴りが20%に認められました。ベル麻痺より治りにくく、後遺症を残しやすいのが最大の問題です。

📊 見逃されやすい「無疱疹性帯状疱疹(zoster sine herpete)」

やっかいなことに、水ぶくれが出ないハント症候群があります。見た目はベル麻痺そのものなのに、正体はVZV。麻痺が出た数日後に遅れて水ぶくれが現れることもあります。耳の奥がズキズキ痛む・めまいがする・聞こえが悪いという訴えがあれば、皮疹がなくてもハント症候群を想定して治療を組み立てるのが、現在の実地診療の考え方です。受診時には、耳の痛みや聞こえの変化を必ずお伝えください。

5. 数字で見る顔面神経麻痺|発症率と回復率

📊 決して珍しい病気ではありません

  • ベル麻痺の発症率:人口10万人あたり年間15〜30人。日本全体では毎年数万人規模が発症している計算になります
  • ハント症候群の発症率:人口10万人あたり年間およそ5人。急性の顔面神経麻痺の約7%を占めます
  • 治療後に正常〜ほぼ正常まで回復する割合:ベル麻痺は90%以上、ハント症候群は約70%
  • 後遺症(病的共同運動)が残る割合:ベル麻痺約16%に対し、ハント症候群は約40%

この数字の並びから読み取っていただきたいのは、「ほとんどは治る。しかし、一定の割合で確実に後遺症が残る」という事実です。そして、その分かれ目に最も強く効いてくるのが、最初の3日間に治療を始められたかどうかです。「顔面神経麻痺は放っておいても治る」という話を耳にされた方もいるかもしれませんが、それは治療した場合の到達点を知らない言い方です。

6. 治療は時間との勝負|発症72時間以内のステロイドが要

ベル麻痺の治療を決定づけたのは、スコットランドで行われた大規模比較試験(Sullivan ら、New England Journal of Medicine 2007)です。発症72時間以内の患者さんを対象に、プレドニゾロン(ステロイド)とアシクロビル(抗ウイルス薬)を組み合わせて比較したこの研究の結果は、今も治療の土台になっています。

📊 ステロイドを使ったか、使わなかったか(NEJM 2007)

  • 3か月後に顔の動きが完全に回復した割合:ステロイド群83.0% / 非投与群63.6%
  • 9か月後に完全回復した割合:ステロイド群94.4% / 非投与群81.6%
  • 抗ウイルス薬(アシクロビル)単独では、明らかな上乗せ効果は示されませんでした

9か月たっても、10人に2人近くが後遺症を残すのが治療しなかった場合の姿です。ステロイドを早期に使うことで、その差が明確に縮まります。日本でも『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』(日本顔面神経学会)において、ベル麻痺に対する副腎皮質ステロイドの早期全身投与が治療の中心に位置づけられています。

💡 抗ウイルス薬の位置づけ ―― ベル麻痺とハント症候群で違います

軽症のベル麻痺では、抗ウイルス薬の上乗せ効果は限定的とされています。一方、重症のベル麻痺と、ハント症候群では話がまったく別です。ハント症候群の原因はVZVというウイルスそのものであり、ステロイドと抗ウイルス薬(バラシクロビルなど)の併用を、可能な限り早く、十分な量で行うことが標準的な考え方になっています。皮疹があるかどうか、耳の痛みや難聴があるかどうかを、診察の場で丁寧に確認する理由はここにあります。

⚠ 「72時間を過ぎたから、もう手遅れ」ではありません

72時間は最も効果が期待できる目安であって、締め切りではありません。発症から1週間ほど経ってから治療を始めても、有益と考えられています。「もう数日たってしまった」という方こそ、今日ご相談ください。あきらめて受診しないことが、いちばん失うものが大きい選択です。

7. 目を守る|閉じられないまぶたは、角膜を傷つけます

治療の説明でつい後回しになりがちですが、急性期にいちばん実害が出やすいのは「目」です。まばたきは、涙を目の表面に配る役割を持っています。まぶたが閉じきらない状態が続くと、角膜が乾いて傷つき、角膜潰瘍に進むと視力に影響が残ることもあります。顔の動きは回復したのに目にトラブルを残す、というのは最も避けたい結末です。

💧 人工涙液をこまめに

防腐剤の入っていない点眼を、1日に何度も。「乾いたら」ではなく「時間で」さすのがコツです。

🌙 就寝時は眼軟膏とテープ

眠っている間こそ無防備です。眼軟膏を使い、まぶたを下向きにテープで優しく閉じて保護します。

😎 日中はメガネで防風

風・エアコン・ほこりが乾燥を加速させます。伊達メガネでも効果があります。

⚠ 痛み・充血・視力低下は即受診

目の痛みやかすみが出たら、角膜が傷ついているサインです。すぐに眼科での診察が必要です。

8. 後遺症「病的共同運動」と、やってはいけないリハビリ

顔面神経麻痺の後遺症として、患者さんの生活の質をいちばん下げるのが病的共同運動(びょうてききょうどううんどう)です。「食事をすると目が勝手に細くなる」「笑うと目が閉じてしまう」「まばたきをすると口角が引きつる」——切れた電線がつなぎ直されるときに、配線が本来と違う筋肉につながってしまうことで起こります。

⚠ 良かれと思って、かえって悪化させてしまう3つ

  • 顔の強いマッサージ・叩く刺激:回復期の誤った配線を強めてしまう恐れがあります
  • 全力で「イー」「ウー」と大きく動かす訓練の反復:力を込めるほど、目と口が一緒に動く癖が固定されます
  • 低周波などの電気刺激を自己判断で続ける:病的共同運動を助長する可能性が指摘されています

推奨されるのは逆の方向、「鏡を見ながら、小さく、ゆっくり、左右対称に」という低負荷のリハビリです。鏡で自分の顔を見てフィードバックしながら、目と口が連動しない範囲の小さな動きを練習します。急性期に「早く治したい」という一心で顔を酷使してしまう方が多いからこそ、最初の説明の段階で、やらない方がよいことをお伝えするようにしています。

9. 糖尿病・高血圧の方が注意したい理由

顔面神経麻痺は「たまたま運悪く起きた病気」に見えますが、背景の全身状態が、発症しやすさと治りやすさの両方に影響します。とくに糖尿病は、ベル麻痺の発症リスクを高め、かつ回復を悪くする因子として繰り返し報告されてきました。理由は大きく2つあります。

🩸 神経を養う細い血管が傷んでいる

高血糖が続くと、神経に酸素と栄養を届ける微小血管が障害されます。もともと血流に余裕のない神経が、腫れによる圧迫に耐えられなくなります。

🛡 ウイルスを抑え込む力が落ちる

高血糖は免疫の働きを鈍らせ、神経節に潜むヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化を起こしやすくします。

⚠ 治療そのものが血糖を上げます

顔面神経麻痺の治療はステロイドが中心ですが、ステロイドには血糖値を上げる作用があります。糖尿病をお持ちの方では、この数日〜2週間ほど血糖が跳ね上がることが珍しくありません。だからといって麻痺の治療を弱めるのは本末転倒です。内科と神経の両方を同じ窓口で診られることが、こうした場面では効いてきます。当院では水曜に糖尿病専門外来を設けており、ステロイド投与中の血糖管理まで含めて一緒に組み立てられます。

10. 繰り返すとき・治らないとき|ほかの病気を疑う場面

ベル麻痺は「ほかの原因が否定されたときにつける診断名」です。したがって、典型から外れる経過をたどるときには、立ち止まって別の可能性を考える必要があります。次のような場合には、MRIや血液検査などの追加検査をご提案しています。

典型から外れるサイン 考えたいこと
数週間かけて、じわじわ悪化していく 耳下腺腫瘍・聴神経腫瘍など、神経を圧迫する病変
両側の顔が同時に動かない ギラン・バレー症候群、サルコイドーシス、ライム病など
同じ側で何度も再発する 腫瘍性病変、耳の慢性炎症、まれな症候群
4か月たっても、まったく改善がない ベル麻痺以外の原因。画像検査で必ず確認します
難聴・耳鳴り・強いめまいを伴う ハント症候群、あるいは脳幹・小脳の病変

11. 予防できる顔面神経麻痺がある|帯状疱疹ワクチンという選択

ベル麻痺そのものを確実に防ぐ方法は、残念ながらまだありません。しかしハント症候群は違います。原因が水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化である以上、帯状疱疹ワクチンによって、その引き金そのものを減らせる可能性があるからです。回復率が約70%、後遺症が約40%に残るという数字を思い出していただくと、この意味の大きさがお分かりいただけると思います。

帯状疱疹ワクチンは2025年度から65歳の方などを対象に定期接種となり、費用面のハードルも下がりました。横浜市にお住まいの方も、対象年齢であれば助成の仕組みが使えます。当院でも接種を行っていますので、対象になるかどうかも含めてお気軽にお尋ねください。50歳を超えて「最近、疲れが抜けない」と感じている方ほど、検討する価値があります。

💡 日々の「老化の見える化」も、そのまま予防になります

ウイルスを抑え込んでいるのは、ご自身の細胞性免疫です。睡眠不足・過労・血糖コントロールの乱れは、その力を確実に落とします。抗加齢医学の視点では、睡眠・血糖・筋肉量という3つを整えることが、そのまま感染症に対する守りになります。ワクチンと生活、両方の手を使うのが現実的です。

🔁 3軸クロスポイント:顔面神経麻痺を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

顔面神経麻痺は、耳鼻咽喉科か脳神経内科かという「科の問題」として語られがちです。しかし当院が大切にしている3軸アプローチ——糖尿病・認知症・抗加齢を分断せずに診るという考え方——で眺め直すと、この病気は「一本の神経の事故」ではなく、全身の代謝と免疫、そして年齢の状態が顔に現れた出来事として見えてきます。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連

糖尿病は、顔面神経麻痺の発症リスクを高め、回復を遅らせる因子です。さらに治療に使うステロイドが血糖を押し上げるため、麻痺の治療と血糖管理を同時に走らせる必要があります。足裏のしびれで見つかることの多い糖尿病神経障害と同じ土台の上で、顔の神経にも同じことが起きうるとお考えください。ここが、神経を診る医師と糖尿病を診る医師が同じ院内にいることの実利です。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連

ご高齢の方の顔面神経麻痺では、「顔が動かない」だけで終わらせないことが大切です。目が閉じられないために新聞やテレビから遠ざかり、口元が思うように動かないために会話や外出を避け、食事量が落ちる——この数週間の引きこもりが、認知機能とフレイルの両方を押し下げます。当院が認知症外来を併設しているのは、こうした「病気のあとに起きること」まで含めて診るためです。回復期には、意識して人と話す機会を戻していきましょう。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

帯状疱疹もハント症候群も、加齢とともに落ちていく細胞性免疫を背景に起こります。年齢そのものは戻せませんが、睡眠・血糖・筋肉量・ストレスという4つは手を入れられます。ワクチンで引き金を減らし、生活で免疫の土台を上げる——この二段構えが、平均寿命と健康寿命のギャップを縮める抗加齢医学の実践です。顔の麻痺という出来事を、全身を見直す機会にしていただければと思います。

🏥 センター南で診るという選択(当院が選ばれる理由)

顔の片側が動かないとき、「脳神経内科なのか、耳鼻科なのか、それとも救急なのか」で迷って半日を失ってしまう——これが、この病気でいちばん多い遠回りです。当院では、その入り口をひとつにまとめています。

理由① 脳神経内科を併設しています

しびれ・めまい・ふるえ・もの忘れを同じ窓口で診ています。「脳卒中か、末梢性か」の切り分けを、診察の場で行えます。

理由② 頭痛外来を専門医が担当

篠原伸顕院長は頭痛専門医・指導医です。耳の奥の痛み・顔面の痛みを、頭痛や神経痛と併せて評価できます。

理由③ 糖尿病専門外来は水曜

五藤理事長が担当します。ステロイド治療中の血糖上昇にも、同じ院内で対応できます。

理由④ 平日は18:30まで診療

月・水・木・金は18:30まで(2026年9月より延長)。土曜は9:00〜14:00を休憩なしで診療しています。

理由⑤ 帯状疱疹ワクチンに対応

ハント症候群の背景にあるウイルスへの備えとして、定期接種の対象確認を含めてご相談いただけます。

理由⑥ 日曜・祝日はグループで補います

日祝は五良会クリニック白金高輪のオンライン診療へご案内しています。週末に気づいた症状も、相談先があります。

顔の片側が動かない——その日のうちに、ご相談ください。迷っている時間が、いちばん惜しい病気です。

ご予約はmelmoから24時間受付中です。/お電話 045-942-7783

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❓ よくあるご質問(FAQ)

Q. 顔面神経麻痺は、何科を受診すればよいですか?

A. 脳神経内科、または耳鼻咽喉科です。当院は脳神経内科を併設しており、脳卒中との切り分けを含めて診察できます。ただし、手足の脱力・ろれつが回らない・強い頭痛を伴う場合は、受診先を探さずに119番をお願いします。判断に迷われるときは、まずお電話(045-942-7783)でご相談ください。

Q. どのくらいで治りますか?

A. 軽症のベル麻痺では、2〜3週間で動きが戻り始め、多くは2〜3か月で回復します。重症例やハント症候群では、半年から1年かけてゆっくり改善していくこともあります。逆に、4か月たっても改善の兆しがまったくない場合は、ほかの原因がないかを画像検査で確認します。

Q. 顔を冷やさないほうがよい、というのは本当ですか?

A. 冷えが原因で顔面神経麻痺になるという医学的な根拠はありません。ただし、麻痺側は感覚も鈍くなっていることがあり、冷たい風が直接当たると不快感や目の乾燥につながります。急性期はマフラーやメガネで顔と目を守るとお過ごしが楽になります。

Q. 鍼治療やマッサージは受けてもよいですか?

A. まず、ステロイドなどの薬物治療を発症早期に受けることが最優先です。そのうえで、急性期から回復期にかけての強いマッサージや過度な電気刺激は、病的共同運動を助長する可能性が指摘されています。何かを併用される場合は、必ず主治医にご相談のうえ、時期と内容を決めてください。

Q. 再発することはありますか?

A. ベル麻痺の再発はまれですが、起こりえます。同じ側で繰り返す場合は、神経を圧迫する病変がないかを調べる必要があるため、必ず主治医にお伝えください。糖尿病や強いストレス、睡眠不足が続いている方では、背景の調整も再発予防の一部になります。

Q. 発症からすでに1週間たってしまいました。今さら受診しても無駄でしょうか?

A. 決して無駄ではありません。治療開始が1週間ほど遅れても有益と考えられていますし、目の保護・後遺症を避けるリハビリの指導・ほかの病気の除外は、いつ始めても意味があります。時間がたっているからこそ、一度きちんと診察を受けてください。

AUTHOR / SUPERVISOR

医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(ごとう よしまさ)

  • 防衛医科大学校 医学部 卒業(27期)。防衛医科大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院ほかで臨床経験を積む
  • 医療法人社団 五良会 理事長/医療法人社団 正友会 理事長/竹内内科小児科医院 院長
  • 日本内科学会 認定内科医/日本抗加齢医学会 専門医/日本糖尿病協会 登録医/日本旅行医学会 認定医
  • 日本温泉気候物理医学会 温泉療法専門医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/難病指定医
  • 所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本東洋医学会、日本リウマチ学会、日本外来小児科学会、日本抗加齢医学会、日本睡眠学会、日本美容内科学会、日本旅行医学会 ほか
  • 著書『あぶら落とすスープ』(アスコム)。NHK・TBS・フジテレビ・日本テレビ・テレビ朝日などメディア出演多数

執筆・監修責任について

本記事は、五藤 良将が公的機関の発表・国内外の診療ガイドライン・査読済み論文を確認したうえで執筆・監修しています。内容は公開時点の情報に基づくものであり、新しい知見やガイドラインの改訂があった場合は、こちらで記事を更新します。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個々の患者さんの診断・治療に代わるものではありません。症状や治療のご判断については、必ず医師にご相談ください。記載内容について気になる点がございましたら、五良ファミリークリニック センター南(045-942-7783)までお知らせください。

📚 主な参考

日本顔面神経学会『顔面神経麻痺診療ガイドライン 2023年版』/Sullivan FM, et al. Early Treatment with Prednisolone or Acyclovir in Bell's Palsy. N Engl J Med 2007;357:1598-1607./Ramsay Hunt Syndrome(StatPearls, NCBI Bookshelf)/厚生労働省「帯状疱疹ワクチンの定期接種について」(2025年4月開始)


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