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めまいの種類と見分け方〜BPPV・メニエール病・危険な「脳のめまい」まで神経内科医が解説〜

[2026.08.13]
DIZZINESS & VERTIGO GUIDE

めまいの種類と見分け方
〜BPPV・メニエール病・危険な「脳のめまい」まで神経内科医が解説〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)より、「ぐるぐる」「ふわふわ」「立ちくらみ」——3つのめまいの正体と、受診すべき危険なサインをわかりやすくお伝えします。

めまい・ふらつき 良性発作性頭位めまい症 メニエール病 脳卒中のサイン

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「朝、布団から起き上がった瞬間に天井がぐるぐる回った」「母が最近ふわふわすると言って外出を怖がる」「立ち上がるたびに目の前が暗くなる」——めまいのご相談は、当院の神経内科外来で頭痛と並んで最も多いお悩みのひとつです。

結論からお伝えします。めまいの多くは耳の中の「耳石」がずれて起こる良性発作性頭位めまい症(BPPV)など命に関わらないもので、正しく診断すればその場の治療手技で改善が期待できます。ただし約1割弱は脳卒中など「脳のめまい」が隠れており、見分けのポイントを知っておくことが何より大切です。

本記事では、「ぐるぐる」「ふわふわ」「立ちくらみ」という3タイプの整理から、BPPV・メニエール病・前庭神経炎・前庭性片頭痛・中枢性めまいの見分け方、当院での診断の流れ、ご自宅でできるセルフケア、そして高齢のご家族の転倒予防まで、旧・浜クリニックの時代から地域の皆さまを診てきた経験を踏まえて、まとめて解説します。

1. その「めまい」、3つのタイプに分けられます

ひとくちに「めまい」と言っても、患者さんの表現はさまざまです。実は、めまいは大きく3つのタイプに分けて考えると、原因の見当がつきやすくなります。ご自身やご家族のめまいがどれに近いか、まず確認してみてください。

タイプ 感じ方 主な原因
回転性(ぐるぐる) 自分や天井がぐるぐる回る。吐き気を伴いやすい 内耳(BPPV・メニエール病・前庭神経炎)が中心。まれに脳
浮動性(ふわふわ) 雲の上を歩くよう。体が揺れる、地に足がつかない 脳(小脳・脳幹)、加齢による平衡機能の低下、心因性、薬剤性など
立ちくらみ(クラッ) 立ち上がった瞬間に目の前が暗くなる、血の気が引く 起立性低血圧、貧血、不整脈、降圧薬の効きすぎなど「全身」の問題

めまいは非常にありふれた症状で、一生のうち約3〜4人に1人が経験するとされます。そして外来を受診されるめまいのうち最も多いのが耳(内耳)が原因の「末梢性めまい」で、命に関わることはまずありません。一方で、少数ながら脳卒中などの「中枢性めまい」が紛れ込んでいる——これがめまい診療の要点です。

2. ⚠ まず確認:救急受診すべき「危険なめまい」のサイン

各疾患の解説に入る前に、いちばん大切なことからお伝えします。めまいに次のような症状が一つでも伴う場合は、脳梗塞・脳出血(特に小脳や脳幹)の可能性があるため、当院の受診を待たず救急要請(119番)を検討してください。

🚨 めまい+この症状は要注意(脳卒中のサイン)

  • ろれつが回らない、言葉が出にくい
  • 顔・手足の片側のしびれ、力が入らない
  • 物が二重に見える(複視)、視野の一部が欠ける
  • これまで経験したことのない激しい頭痛・後頸部痛
  • まっすぐ立てない・支えても歩けないほどのふらつき
  • 飲み込めない、むせる、意識がぼんやりする

小脳・脳幹の脳卒中は、手足の麻痺が目立たず「めまいと嘔吐だけ」で発症することがあります。高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・心房細動のある方、ご高齢の方は特に慎重な判断が必要です。

逆に言えば、これらのサインがなく、「頭を動かした瞬間だけ短くぐるぐるする」「耳鳴りとともに繰り返す」といったパターンであれば、多くは内耳が原因のめまいです。次の章から順に見分け方を解説します。

3. 最も多い「良性発作性頭位めまい症(BPPV)」

めまいで受診される方のうち、もっとも頻度が高いのが良性発作性頭位めまい症(BPPV:Benign Paroxysmal Positional Vertigo)です。内耳の「耳石器」からはがれた小さなカルシウムの粒(耳石)が、体のバランスを感知する三半規管に迷い込み、頭を動かすたびに管の中でリンパ液をかき乱すことで、激しい回転性めまいを引き起こします。

💡 BPPVを疑う典型パターン

  • 朝、寝返りを打った瞬間・起き上がった瞬間にぐるぐる回る
  • 1回のめまいは数秒〜1分以内と短い(じっとしていると治まる)
  • 頭を同じ方向に動かすと繰り返す(上を向く、美容院の洗髪台なども誘因)
  • 難聴・耳鳴りは伴わない/手足のしびれや麻痺もない

BPPVは50〜70歳代の女性に多く、加齢や骨代謝の低下(骨粗しょう症)、長期間の臥床などが背景になるとされます。診断は、頭を特定の位置に動かして眼球の動き(眼振)を確認する頭位変換検査(Dix-Hallpike法など)で行い、治療は後述する耳石置換法(エプリー法)が第一選択です。うまく適応すれば1〜数回の施行で約7〜9割の改善が報告されている、「その場で治療できるめまい」の代表格です。

4. メニエール病——回転性めまい+耳鳴り・難聴

「ぐるぐる回るめまいが10分〜数時間続き、そのたびに耳鳴り・耳の詰まった感じ・聞こえにくさを伴う」——このパターンで繰り返す場合に疑うのがメニエール病です。内耳を満たすリンパ液が過剰にたまる「内リンパ水腫」が本態で、30〜50歳代の働き盛りに多く、ストレス・睡眠不足・気圧の変化が発作の引き金になりやすいことが知られています。

治療は、利尿作用のある内服薬(イソソルビドなど)や抗めまい薬に加えて、減塩・十分な睡眠・ストレスマネジメント・適度な有酸素運動といった生活習慣の調整が重要です。発作を繰り返すと低音域の難聴が進行することがあるため、聴力検査を含めた耳鼻咽喉科との連携で経過を追います。低気圧が近づくと悪化する方は、気象病・天気痛の記事もあわせてご覧ください。

5. 前庭神経炎と前庭性片頭痛——頭痛外来との接点

前庭神経炎は、バランス情報を脳に伝える前庭神経にウイルス感染などをきっかけとした炎症が起こる病気です。風邪のあとなどに突然の激しい回転性めまいが数日間続き、吐き気で動けなくなる一方、難聴や耳鳴りは伴わないのが特徴です。急性期は本当につらい病気ですが、多くは徐々に回復し、その後は前庭リハビリテーションで残ったふらつきを取っていきます。

もうひとつ、頭痛外来を掲げる当院として強調したいのが前庭性片頭痛(vestibular migraine)です。片頭痛をお持ちの方が、頭痛発作とは別のタイミングも含めて、数分〜数日続くめまい発作を繰り返す病態で、片頭痛患者さんの約1割に見られるとされ、実は「原因不明のめまい」の中に相当数隠れています。光や音に敏感になる、乗り物酔いしやすい、といった片頭痛体質が手がかりです。治療は片頭痛に準じ、生活リズムの調整と予防薬で発作の頻度を減らせます。当院は頭痛専門の立場から、最新の片頭痛予防薬を含めた治療選択肢をご用意しています。

疾患 めまいの持続 難聴・耳鳴り 特徴・誘因
BPPV 数秒〜1分 なし 寝返り・起き上がりなど頭位変換
メニエール病 10分〜数時間 あり(反復) ストレス・睡眠不足・気圧変化
前庭神経炎 数日間持続 なし 感冒後などに突然発症、一回性
前庭性片頭痛 数分〜数日 通常なし 片頭痛の既往、光・音過敏を伴う
中枢性めまい 持続性が多い 通常なし 神経症状(ろれつ・麻痺・複視)を伴う

6. 脳が原因の「中枢性めまい」と生活習慣病

小脳や脳幹は、内耳から送られてくるバランス情報を統合する「平衡の司令塔」です。ここに脳梗塞・脳出血・一過性脳虚血発作(TIA)・腫瘍などが起こると、めまいやふらつきが生じます。めまい全体に占める割合は多くありませんが、見逃すと命に関わるため、神経内科ではまずこの中枢性めまいを除外することから診察を組み立てます。

📊 中枢性めまいのリスクを高める因子

高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・心房細動・脳卒中の既往は、椎骨脳底動脈系(小脳・脳幹を養う血管)の動脈硬化を進め、めまいで発症する脳梗塞のリスクを高めます。60歳以上でこれらの危険因子をお持ちの方の「初めての強いめまい」は、慎重な評価が必要です。当院では神経診察に加え、必要に応じて連携医療機関でのMRI検査を速やかに手配します。

裏を返せば、血圧・血糖・コレステロールの管理こそが最大の「めまい予防」でもあります。高血圧治療ガイドラインJSH2025でも降圧目標の達成が脳卒中予防の柱とされており、当院では糖尿病専門外来(水曜)とあわせて、めまいの背景にある生活習慣病を一体で管理できる体制を整えています。

7. 立ちくらみ型——起立性低血圧・貧血・お薬の影響

「立ち上がった瞬間にクラッとして目の前が暗くなる」タイプは、耳や脳そのものではなく、脳への血流が一時的に足りなくなることで起こります。代表が起立性低血圧で、立位になって3分以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下する場合に診断されます。

  • お薬の影響:降圧薬の効きすぎ、利尿薬、前立腺肥大の薬、一部の抗うつ薬・睡眠薬など。「めまい=新しい病気」と思いきや、処方内容の調整で解決することが少なくありません。
  • 貧血:立ちくらみ・だるさ・動悸の背景に鉄欠乏性貧血が隠れていることがあります。特に女性やご高齢の方では血液検査での確認が大切です。
  • 糖尿病による自律神経障害:血圧を素早く調整する自律神経の働きが低下し、起立性低血圧を起こしやすくなります。
  • 不整脈・心疾患:脈が飛ぶ・失神を伴う場合は心電図検査が必要です。

対策は、急に立ち上がらない(一呼吸おいて段階的に)、朝一番の起床時はベッドの縁に一度腰かける、弾性ストッキングの活用、こまめな水分補給など。お薬が原因と疑われる場合は、自己判断で中断せず必ずご相談ください。

8. 当院での診断の流れ——問診が8割

めまいの診断は、実は問診で8割方の見当がつくと言われます。当院を受診される際は、次の4点を思い出してきていただけると、診断が格段にスムーズになります。

⏱ ① どのくらい続くか

数秒か、数時間か、数日か。持続時間は疾患の見分けに最も役立つ情報です。

🔄 ② 何をすると起こるか

寝返り・起立・ストレス・天候など、誘因があるか。頭の位置で誘発されるならBPPVが有力です。

👂 ③ 耳の症状はあるか

耳鳴り・難聴・耳閉感を伴えばメニエール病など内耳疾患を疑います。

🧠 ④ 神経の症状はあるか

ろれつ・複視・しびれ・麻痺・強い頭痛の有無。一つでもあれば中枢性を第一に考えます。

🏥 神経内科・頭痛外来併設クリニックとしての当院の強み

当院では、神経診察(眼振・小脳機能・歩行の評価、頭位変換検査)に加えて、血圧の立位測定、血液検査(貧血・血糖・脂質)、心電図までを院内で行い、「耳のめまいか、脳のめまいか、全身のめまいか」を切り分けます。MRIなど精密検査が必要な場合は連携医療機関へ速やかにご紹介し、BPPVには耳石置換法、前庭性片頭痛には頭痛専門の治療、生活習慣病が背景にある方には糖尿病専門外来(水曜)と、原因に応じた出口までワンストップでご案内できるのが、めまい診療における当院の特色です。

9. 治療とセルフケア——エプリー法・前庭リハビリ・転倒予防

めまいの治療は「原因別」が大原則ですが、共通して役立つ考え方があります。それは、めまいを怖がって動かないでいると、かえって治りにくくなるということです。

  • 耳石置換法(エプリー法):BPPVに対して、頭をゆっくり一定の順序で動かし、三半規管に迷い込んだ耳石を元の場所へ戻す治療手技です。外来で数分ででき、薬に頼らず改善が期待できます。
  • 前庭リハビリテーション:目と頭を動かす訓練やバランス訓練を毎日続けることで、脳が平衡感覚のズレを補正(前庭代償)していきます。前庭神経炎の後遺症や加齢性のふらつきに有効です。
  • 薬物療法:急性期の吐き気止め・抗めまい薬、メニエール病の利尿薬、前庭性片頭痛の予防薬など。漫然と飲み続けるのではなく、原因に合わせて使い分けます。
  • 生活習慣:睡眠不足・ストレス・過労はほぼすべてのめまいを悪化させます。減塩・節酒・禁煙・適度な運動は、内耳にも脳血管にも効く共通の処方箋です。

⚠ ご高齢の方は「転倒予防」もセットで

高齢者の転倒の背景には、めまい・ふらつきが高頻度に関わっています。転倒による大腿骨骨折は要介護の主要な入り口です。夜間のトイレ動線の照明、手すり、滑りにくい履き物といった環境調整と、下肢筋力を保つ運動を、めまい治療と同時に始めましょう。当院ではフレイル予防の観点からの運動指導もあわせて行っています。

🔁 3軸クロスポイント:めまいを「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

当院が掲げる3軸アプローチ(糖尿病×認知症×抗加齢)で見ると、めまいは単なる「耳の不調」ではなく、全身の血管・神経・体力の状態を映すサインであることが分かります。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連

糖尿病は、動脈硬化を介して小脳・脳幹の血流障害(中枢性めまい)のリスクを高めるだけでなく、自律神経障害による起立性低血圧、低血糖によるふらつきと、三方向からめまいに関わります。原因のはっきりしないふらつきを繰り返す方には、血糖・HbA1cの評価をお勧めしています。水曜の糖尿病専門外来で、めまいの背景因子まで踏み込んだ管理が可能です。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連

平衡感覚(前庭機能)の低下は、空間認知を担う脳のネットワークとも深く関わり、近年は前庭機能低下と認知機能低下の関連を示す研究が蓄積しています。またLancet委員会報告2024は、難聴や身体不活動を認知症の修正可能なリスク因子として挙げており、「めまいが怖くて外出しない」生活はまさにその悪循環の入り口です。めまいをきちんと治療して活動量を取り戻すことは、認知症予防の一手でもあります。認知症外来を併設する当院ならではの視点で診療にあたります。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

バランス能力は筋力と並ぶ「老化の見える化」指標のひとつです。めまい・ふらつきを放置すると、転倒→骨折→活動量低下→フレイルという連鎖で健康寿命と平均寿命のギャップが広がります。前庭リハビリと下肢筋力トレーニングは、平衡機能そのものを鍛え直せる数少ない介入です。日本抗加齢医学会専門医として、めまい治療を「守り」ではなく健康寿命を延ばす「攻め」のケアと位置づけてサポートします。

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. めまいは耳鼻科と神経内科、どちらを受診すべきですか?

A. どちらでも診療可能ですが、まず大切なのは「危険なめまい(脳)」の除外です。当院は神経内科として脳のめまいの評価から、BPPVの頭位変換検査・耳石置換法まで対応し、聴力の精密検査が必要な場合は耳鼻咽喉科へご紹介します。迷ったらまずご相談ください。

Q2. めまいのときはじっと安静にしていた方がいいですか?

A. 激しい急性期は無理をする必要はありませんが、落ち着いたあとに動かないでいると平衡機能の回復(前庭代償)が遅れます。BPPVや前庭神経炎の回復期は、医師の指導のもとで少しずつ頭や体を動かす方が早く治ることが分かっています。

Q3. めまいで受診するとき、何を伝えれば診断に役立ちますか?

A. ①持続時間(数秒/数時間/数日)②誘因(寝返り・起立・ストレスなど)③耳の症状の有無④ろれつ・しびれなど神経症状の有無、の4点です。加えて、お薬手帳を必ずお持ちください。薬剤性のふらつきは処方調整だけで改善することがあります。

Q4. 一度治まっためまいでも受診した方がいいですか?

A. はい、特に高血圧・糖尿病などをお持ちの方は受診をお勧めします。短時間で治まっためまいが一過性脳虚血発作(TIA)で、脳梗塞の前触れだったというケースがあるためです。また、BPPVやメニエール病は再発しやすく、再発予防の指導が有効です。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪


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