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「たかが便秘」と、放置していませんか?〜慢性便秘症の危険なサイン・原因となる病気・便秘薬の新常識を医師が解説〜

[2026.09.08]

【お知らせ】心療内科専門外来の終了について(2026年10月追記)

火曜午前の心療内科専門外来を担当していた阿部靖彦 医師は、2026年9月末をもって退職いたしました。これに伴い、当院の心療内科専門外来は2026年9月で終了しております。本記事中の心療内科に関する記載は掲載当時の内容です。
2026年10月からの火曜午前は、玉井博修 医師による消化器内科・肝臓内科の専門外来となりました。また、月・水・木・金曜の午後診療は18:30まで延長しております。




 
 
CHRONIC CONSTIPATION
「たかが便秘」と、放置していませんか?
〜慢性便秘症の危険なサイン・原因となる病気・便秘薬の新常識を医師が解説〜

医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)より、便秘という「ありふれた症状」の裏に隠れた病気の見つけ方と、市販薬に頼りきらないための正しい治療をお伝えします。

慢性便秘症
便秘薬の新常識
パーキンソン病の前ぶれ
センター南・都筑区

― 理事長より、はじめに ―

こんにちは。医療法人社団 正友会 理事長の五藤 良将です。「もう10年以上、市販の便秘薬を飲まないと出ません」「母が毎日つらそうにトイレにこもっているのですが、便秘で病院に行ってもいいのでしょうか」——旧・浜クリニックとして地域に親しまれてきた当院の外来でも、こうしたご相談を毎週のようにお受けします。多くの方が「便秘くらいで受診するのは恥ずかしい」と、何年も一人で抱え込んでいらっしゃいます。

結論からお伝えします。便秘は「体質」ではなく、診断基準と治療指針をもつ立派な「病気(慢性便秘症)」です。そして、便秘の裏に大腸がん・甲状腺の病気・糖尿病の神経障害・パーキンソン病が隠れていることが実際にあります。刺激性下剤を毎日飲み続けている方ほど、一度きちんと原因を調べる価値があります。

本記事では、慢性便秘症の正しい定義とタイプ分け、見逃してはいけない「危険なサイン」、便秘を起こす病気と薬、そして酸化マグネシウム・刺激性下剤の落とし穴と近年登場した新しい便秘薬まで、脳神経内科・糖尿病内科・消化器内科を併設する当院ならではの3つの視点から整理してお伝えします。

1. 便秘は「体質」ではなく「病気」です

日本消化管学会の『便通異常症診療ガイドライン2023 ― 慢性便秘症』では、便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義しています。ここで大切なのは、「毎日出ないこと」=便秘ではないという点です。排便が2〜3日に1回でも、すっきり出て苦痛がなければ便秘ではありません。逆に、毎日出ていても「量が少ない」「残った感じがする」「いきまないと出ない」なら、それは便秘です。

そして「慢性便秘症」とは、その状態が6か月以上前から始まり、直近3か月続いているものを指します。つまり、多くの方が「もう何年もこうだから」と諦めている状態こそが、まさに治療の対象なのです。

📊 日本の便秘 ― 数字で見る実態

  • 厚生労働省「国民生活基礎調査」では、便秘の有訴者は若年〜中年では女性に圧倒的に多いのが特徴です。
  • ところが70歳を超えると男女ともに急増し、80歳以上ではほぼ男女差がなくなります。加齢そのものが強い危険因子です。
  • 慢性便秘症の方は、そうでない方に比べて心血管イベントや生命予後が不良であるという複数の疫学報告があります(Sumida K, et al. Atherosclerosis 2019 ほか)。便秘は「生活の質の問題」にとどまりません。

2. あなたの便秘はどのタイプ?(セルフチェック)

便秘は大きく「そもそも便が出てこない(排便回数減少型)」と「便はあるのに出し切れない(排便困難型)」の2つに分かれます。この2つは治療薬がまったく違うため、外来で最初に必ず切り分けます。市販の便秘薬が効かない方の多くは、実は後者だった、というケースが少なくありません。

タイプ こんな症状・こんな方
排便回数減少型
(大腸通過遅延型)
数日〜1週間出ない。お腹が張る。腸の動きが遅い。糖尿病・パーキンソン病・甲状腺機能低下症・薬剤性で多い。
排便回数減少型
(大腸通過正常型)
食事量・食物繊維・水分の不足で、そもそも便の材料が足りない。ダイエット中の若い女性や、食が細くなった高齢の方に多いタイプです。
排便困難型
(便排出障害)
便意はあるのにいきんでも出ない/指で押さないと出ない/残便感が強い。骨盤底筋がうまく緩まない、直腸瘤、直腸の感覚低下など。下剤を増やしても解決しません。

💡 便の形で腸の状態がわかります(ブリストル便形状スケール)

世界共通で使われる7段階の分類です。タイプ1(コロコロの硬い塊)・タイプ2(ゴツゴツしたソーセージ状)は便秘、タイプ3〜5が正常、タイプ6〜7は下痢に相当します。理想はタイプ4(表面がなめらかなバナナ状)。ご自身の便が「どの番号か」を覚えておくだけで、診察がぐっとスムーズになり、薬の量の調整精度も上がります。

3. 【最重要】見逃してはいけない「危険なサイン」7つ

ガイドラインでは、以下を「警告徴候(アラームサイン)」と呼びます。これらが1つでもあれば、生活習慣の指導や下剤の処方の前に大腸内視鏡などの精密検査を優先すべきとされています。大腸がんは、日本人の部位別がん罹患数で男女合計第1位(国立がん研究センターがん統計)。その初期症状が「最近、便秘がちになった」だけ、ということが実際にあるのです。

⚠ こんなときは「便秘薬」ではなく「検査」です

  1. 血便・黒い便が出た(痔だと思い込まない)
  2. ここ数か月で急に便秘になった/便が細くなった
  3. 体重が意図せず減っている(半年で5%以上)
  4. 便秘と下痢を繰り返すようになった
  5. 血液検査で貧血を指摘された
  6. 50歳以上で初めて便秘が始まった
  7. 血縁者に大腸がん・大腸ポリープの方がいる

※「痔の出血だと思って2年放置していた」——これが大腸がん発見が遅れる最も多いパターンです。出血を自己判断しないでください。

4. 便秘の裏に隠れる「病気」と「お薬」

便秘には、腸そのものの問題(一次性)と、他の病気やお薬が原因で起きる便秘(二次性)があります。二次性便秘は原因を治せば便秘も治るため、内科での鑑別がとても重要です。とくに高齢の方では、複数の診療科から出たお薬が重なって便秘を作っていることが珍しくありません。

🩺 便秘を起こす主な病気

大腸がん・大腸ポリープ/甲状腺機能低下症(だるさ・むくみ・寒がりを伴う)/糖尿病(自律神経障害)/パーキンソン病/脳梗塞後遺症/脊髄の病気/高カルシウム血症・低カリウム血症/うつ病・摂食障害/腸閉塞・術後の癒着

⚠ 便秘を起こしやすいお薬

抗コリン薬(過活動膀胱の薬・胃腸薬の一部)/抗ヒスタミン薬(第一世代の風邪薬・アレルギー薬)/三環系抗うつ薬/一部の睡眠薬・抗精神病薬/カルシウム拮抗薬(降圧薬)/鉄剤/医療用麻薬(オピオイド)/制酸薬の一部

当院では、便秘のご相談をいただいた際にまずお薬手帳を拝見します。「風邪薬を飲み始めてから出なくなった」「膀胱の薬を始めてから」というきっかけが判明することが本当によくあり、その場合は処方の見直しだけで下剤が不要になることもあります。血液検査では甲状腺ホルモン・血糖・HbA1c・電解質・貧血の有無を確認します。

5. 便秘は「パーキンソン病の前ぶれ」かもしれません

ここからは、脳神経内科・頭痛外来・認知症外来を併設する当院ならではの視点です。あまり知られていませんが、頑固な便秘は、パーキンソン病の運動症状(手のふるえ・動作の遅さ)が現れる10〜20年も前から出現しうる「前駆症状」として、神経内科では広く知られています。

📊 排便回数とパーキンソン病リスク(ホノルル・アジア加齢研究)

日系男性約7,000人を24年間追跡した有名な研究(Abbott RD, et al. Neurology 2001)では、排便が1日1回未満の方は、1日1回の方に比べてパーキンソン病の発症リスクが約2.7倍、1日2回以上の方と比べると約4倍高いと報告されました。便秘は「腸の老化」だけでなく、神経の変化を映す鏡でもあるのです。

背景にあるのが、Braak仮説(Braak H, 2003)です。パーキンソン病の原因物質とされる異常なαシヌクレインが、まず腸の神経(腸管神経叢)に蓄積し、迷走神経を伝って脳幹へ、そして中脳黒質へと上行していく——という考え方です。実際、パーキンソン病の患者さんの7〜8割が便秘を合併し、その多くは診断より何年も前から便秘に悩んでいます。

💡 誤解のないように ― 便秘の方が皆パーキンソン病になるわけではありません

便秘はきわめてありふれた症状で、その大多数はパーキンソン病とは無関係です。過度に怖がる必要はまったくありません。ただし、便秘に加えて「においが分かりにくくなった」「寝ているときに大声を出す・手足が激しく動く(レム睡眠行動異常症)」「字が小さくなった」「歩幅が狭くなった」が重なる場合は、一度脳神経内科での確認をおすすめします。当院ではこの評価を、便秘の診療と同じ日に行うことができます。

6. 糖尿病と便秘 ― 自律神経障害という合併症

糖尿病の合併症というと、目(網膜症)・腎臓(腎症)・足のしびれ(神経障害)が有名です。しかし消化管も、自律神経を通じて確実に高血糖の影響を受けます。糖尿病の神経障害のなかで消化器症状としてもっとも頻度が高いのが便秘で、報告により糖尿病の方の20〜60%にみられるとされています。

🩸 なぜ糖尿病で便秘に?

高血糖が続くと腸を動かす自律神経(副交感神経)が傷み、大腸のぜん動運動が弱まります。さらに胃の動きも落ちる胃不全麻痺(胃排出遅延)を合併すると、食後の張り・吐き気・食欲低下も加わります。

🔁 便秘と下痢を繰り返すことも

腸内で細菌が異常増殖したり、腸液の分泌が乱れることで、頑固な便秘のあとに夜間の下痢が起こる「糖尿病性下痢」というパターンもあります。この交代性の症状は大腸がんとの鑑別も必要で、自己判断は禁物です。

さらに見落とされやすいのが血糖の乱れそのものが便秘を悪化させる点です。高血糖では尿量が増えて体が脱水に傾き、便が硬くなります。逆に、便秘の治療で使う一部の薬剤や食事の変更は血糖値にも影響します。便秘と血糖は、同じ診察室で同時に整えるのが最も効率的です。当院では毎週水曜日に糖尿病専門外来を設けており、HbA1c・血糖の管理と消化管症状の評価をあわせて行っています。

7. ストレスと便秘 ― 脳腸相関と便秘型IBS

「大事な会議の前になると必ずお腹が張って出ない」「休日は普通なのに、平日だけ便秘になる」——こうした方は、便秘型の過敏性腸症候群(IBS-C)の可能性があります。IBSは日本人の約10〜15%にみられる、きわめて頻度の高い疾患です。

腸は「第二の脳」と呼ばれるほど多くの神経細胞をもち、脳と双方向に情報をやり取りしています(脳腸相関)。ストレスがかかると脳から出るCRHという物質が腸の運動と知覚を乱し、腸の不調がまた不安を強める——この悪循環が、IBSの中心にあります。ですから「下剤を足す」だけでは根本的に良くなりません。

🏥 当院の強み ― 心療内科を併設しています

五良ファミリークリニック センター南では、毎週火曜日の午前に心療内科の専門外来を実施しています。IBSや機能性の消化器症状は、消化管そのものへの治療(リナクロチドなど)と、ストレス・睡眠・自律神経への働きかけを組み合わせたときに最も改善します。「内科で異常なしと言われたが、症状は確実にある」という方こそ、一度ご相談ください。同じような機能性の症状として、のどのつかえ感(咽喉頭異常感症)についても当院ブログで詳しく解説しています。

8. 治療① 今日から変えられる生活習慣

危険なサインがなく、原因となる病気や薬も見つからなかった場合、まず取り組むのが生活習慣です。「もう全部やった」とおっしゃる方でも、次の5つのうち2つ以上が抜けていることがほとんどです。

🥗 ① 食物繊維は「量」と「種類」の両方を

日本人の食物繊維の目標量は成人でおおむね1日18〜21g以上ですが、実際の平均摂取量は約14gと大きく不足しています。ポイントは種類の使い分けです。
・水溶性食物繊維(海藻、こんにゃく、大麦・もち麦、オクラ、りんご、ごぼう)=便をやわらかくする
・不溶性食物繊維(豆類、きのこ、根菜、玄米)=便のかさを増やして腸を刺激
硬くてコロコロの便の方が不溶性ばかり増やすと、かえって悪化します。まずは水溶性から。白米にもち麦を混ぜるのは、最も手軽で効果が出やすい方法です。

💧 ② 水分は「食物繊維とセット」で

水分だけを増やしても便秘は改善しにくいのですが、食物繊維を増やすときに水分が足りないと、逆に便が詰まって悪化します。食事以外に1日1〜1.5Lを目安に。朝起きてすぐのコップ1杯の冷たい水は、胃結腸反射を起こして腸を目覚めさせる古典的かつ有効な方法です。※心不全・腎臓病で水分制限のある方は主治医の指示を優先してください。

🚶 ③ 歩くこと・お腹をひねること

運動は大腸の通過時間を短縮します。1日20〜30分の歩行に加え、腹筋(いきむ力)が落ちている高齢の方には、椅子に座ったままの体幹ひねりや、おへその周りを「の」の字にさするマッサージも有効です。フレイル対策と便秘対策は、同じ方向を向いています。

⏰ ④ 朝食を抜かない・便意を我慢しない

食べ物が胃に入ると大腸が動き出す胃結腸反射は、1日のうち朝食後が最も強く起こります。朝食を抜くと、この最大のチャンスを毎日捨てていることになります。そして便意を我慢し続けると直腸の感覚が鈍り、便があっても催さない体になってしまいます。朝食後にトイレに座る5分を、習慣にしてください。

💡 ⑤ 意外な盲点 ―「正しい排便姿勢」

洋式トイレにまっすぐ座ると、直腸と肛門の角度(直腸肛門角)が曲がったままで、便の通り道が狭くなります。足元に15〜20cmほどの台を置き、かかとを上げ、上半身を35度ほど前に倒す——ロダンの「考える人」の姿勢です。これだけで直腸肛門角がまっすぐに近づき、いきむ力が半分で済みます。排便困難型の方には、薬より先に試していただきたい方法です。

9. 治療② 便秘薬の新常識と、当院の診療

便秘薬をめぐる考え方は、この10年で大きく変わりました。かつては「酸化マグネシウムか、センナか」の二択でしたが、2012年以降、作用機序のまったく異なる新しい薬が次々に登場し、タイプに合わせた選択ができるようになっています。

⚠ とくにお伝えしたい2つの注意点

① 刺激性下剤(センナ、センノシド、大黄、ピコスルファート、多くの市販便秘薬・便秘茶)は「毎日飲む薬」ではありません。連用すると効きが悪くなり量が増えていき、大腸の粘膜が黒く変色する大腸メラノーシス(大腸黒皮症)を起こして、腸が自力で動く力を失います。ガイドラインでも頓用(出ないときだけ)が原則とされています。

② 酸化マグネシウムは安全な薬ですが、腎機能が低下した方・高齢の方では「高マグネシウム血症」に注意が必要です。吐き気、脱力、血圧低下、徐脈などを起こすことがあり、重症例も報告されています(PMDAより注意喚起)。長期に内服される場合は、定期的な血液検査で血清マグネシウム値を確認してください。市販薬で長年飲み続けている方こそ、一度チェックをおすすめします。

分類(代表的な薬) はたらきと位置づけ
浸透圧性下剤
(酸化マグネシウム)
腸に水を引き込んで便をやわらかく。第一選択のひとつ。腎機能低下例では血清Mg測定を。
ポリエチレングリコール製剤
(モビコール®)
水に溶かして飲むタイプ。電解質異常を起こしにくく、2歳以上の小児から高齢者まで使える。腎機能を気にせず使いやすい。
ラクツロース製剤
(ラグノスNF経口ゼリー®)
糖類下剤。ゼリー状で飲みやすく、腸内細菌のえさにもなる。
上皮機能変容薬
(アミティーザ®/リンゼス®)
腸の壁から水分を出させて便をやわらかく。リンゼス®(リナクロチド)は腹痛にも効くため、便秘型IBSに適します。
胆汁酸トランスポーター阻害薬
(グーフィス®)
胆汁酸を大腸に届け、水分分泌とぜん動運動の両方を促す。腸の動きが落ちたタイプに。
刺激性下剤
(センノシド、ピコスルファート)
頓用が原則。連用で耐性・大腸メラノーシス。市販の便秘薬・便秘茶の多くがこの系統です。
末梢性μオピオイド受容体拮抗薬
(スインプロイク®)
医療用麻薬による便秘(OIC)に特化した薬。がん治療中の方の生活の質を大きく改善します。
坐薬・浣腸/漢方 排便困難型には坐薬が有効なことも。漢方では大建中湯・麻子仁丸など。大黄・センナを含む漢方は刺激性下剤と同じ扱いで連用に注意。

🏥 当院での便秘診療の流れ

① 問診(回数・便の形・いきみ・残便感・発症時期・お薬手帳の確認)→ ② 診察(腹部の診察、必要に応じて直腸診)→ ③ 血液検査(甲状腺機能・血糖・HbA1c・電解質・貧血・腎機能)→ ④ 必要に応じて腹部レントゲン・腹部エコー → ⑤ タイプに合わせた生活指導と処方。
危険なサインがある場合や、治療しても改善しない場合には、日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医が在籍する五良会クリニック白金高輪での大腸内視鏡検査へスムーズにおつなぎします。グループ内での連携ですので、検査結果はそのまま当院での治療に引き継がれます。

🔁 3軸クロスポイント:便秘を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

当院が大切にしているのが、ひとつの症状を糖尿病(生活習慣病)・認知症(脳神経)・抗加齢医学(健康寿命)という3つの軸で立体的にとらえる「3軸アプローチ」です。便秘は、この3軸がまさに交差する場所にある症状で、消化器だけを診ていては見えないものが確実にあります。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連 ― 便秘は「合併症の窓」

便秘は、糖尿病の自律神経障害という合併症のサインであり得ます。そして自律神経障害がある方は、無自覚性低血糖・起立性低血圧・不整脈のリスクも高いことが知られています。つまり「便秘の相談」から、命に関わる合併症の評価につながることがあるのです。
逆方向の関係もあります。食物繊維を増やして腸内細菌が短鎖脂肪酸(酪酸など)を作ると、インスリンの効きが良くなり食後血糖の上昇がゆるやかになります。便秘の食事療法は、そのまま血糖の食事療法でもある——これが3軸で診る最大の利点です。当院では毎週水曜日の糖尿病専門外来で、この両者をまとめて調整しています。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連 ― 「抗コリン負荷」という盲点

便秘を起こすお薬の代表である抗コリン作用をもつ薬(過活動膀胱の薬、第一世代の抗ヒスタミン薬、三環系抗うつ薬、一部の胃腸薬)は、同時に認知機能を低下させる可能性が指摘されています。英国の大規模研究(Richardson K, et al. BMJ 2018 ほか)では、抗コリン薬の長期使用と認知症リスク上昇との関連が報告されました。
「便秘が強い高齢の方ほど、認知機能に不利な薬を飲んでいる」——これが、当院が便秘の診察で必ずお薬手帳を拝見する理由です。便秘の改善と認知症予防を、1回の処方見直しで同時に前進させられることがあります。
さらに、本記事の5章でお伝えしたとおり、頑固な便秘はパーキンソン病やレビー小体型認知症の前駆症状であり得ます。認知症外来と脳神経内科を併設する当院では、便秘の背後にある神経の変化まで見据えた評価が可能です。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命 ― 腸内細菌の多様性を守る

加齢に伴い、腸内細菌の多様性は低下し、酪酸をつくる菌(酪酸産生菌)が減っていくことが分かっています。酪酸は腸の粘膜のエネルギー源であり、全身の炎症を抑える働きももちます。慢性便秘はこの流れを加速させ、慢性炎症(インフラメイジング)を通じて動脈硬化やフレイルの土台をつくります。
実際、慢性便秘の方では心血管イベントや生命予後が不良であるとの報告があり、便秘は単なる不快症状ではなく健康寿命と平均寿命のギャップを広げる要因と考えるべきです。
発酵食品+水溶性食物繊維(シンバイオティクス)・週150分の歩行・良質な睡眠——便秘対策として当院がお伝えしていることは、そのまま抗加齢医学の王道でもあります。「便通を整える」は、老化のスピードを整えることと同義なのです。

10. 関連ブログ・関連クリニック

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 何日出なかったら受診すべきですか?

A. 日数だけで決める必要はありません。「快適に出せているか」が基準です。3日に1回でも苦痛がなければ問題ありませんし、毎日出ていても残便感が強ければ治療の対象です。目安としては、①市販の便秘薬を週2回以上・1か月以上使っている、②お腹の張りや痛みで日常生活に支障がある、③本記事3章の危険なサインがある——いずれかに当てはまれば、ぜひ一度ご相談ください。

Q2. 市販の便秘薬をやめると出なくなりそうで怖いです。急にやめても大丈夫ですか?

A. 自己判断で急にやめないでください。刺激性下剤を長く連用してきた腸は、一時的に自力で動きにくくなっています。当院では、浸透圧性下剤や新しいタイプの薬を土台として先に入れてから、刺激性下剤を数週間かけて少しずつ減らすという方法をとります。多くの方が「頓用だけで済む」状態まで戻ることができます。一人で我慢せず、減らし方こそ一緒に組み立てましょう。

Q3. ヨーグルトも食物繊維も試しましたが、まったく効きません。

A. その場合、タイプが合っていない可能性が高いです。とくに排便困難型(便はあるのに出せない)の方は、食物繊維を増やすとかえってお腹が張って悪化します。また、硬いコロコロ便の方が不溶性食物繊維(豆・きのこ・玄米)ばかり増やすのも逆効果です。「効かない」は、タイプを見直すサイン。診察と検査でタイプを確定させることが、遠回りのようで一番の近道です。

Q4. 高齢の親が便秘です。本人が受診を嫌がるのですが、家族だけの相談でもよいですか?

A. はい、まずはご家族だけのご相談でも結構です。高齢の方の便秘は、宿便による腸閉塞・食欲低下・脱水・せん妄につながることがあり、決して軽視できません。あわせてお薬手帳をお持ちください。他院で出ている薬が原因のこともあり、それだけで方針が見えることがあります。また「便秘+歩幅が狭い+動作が遅い」など神経の症状が重なる場合は、認知症外来・脳神経内科の視点からもご相談いただけます。

Q5. 大腸カメラは受けたほうがよいですか?センター南で受けられますか?

A. 本記事3章の危険なサインがある方、50歳以上で一度も受けたことがない方、便潜血検査が陽性だった方は、受けていただくことをおすすめします。当院では大腸内視鏡検査は行っておりませんが、日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医が在籍するグループの五良会クリニック白金高輪へ責任をもっておつなぎします。当院で問診・血液検査・腹部エコーまで済ませてからのご紹介となりますので、二度手間になりません。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医・日本糖尿病協会登録医)

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪



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五良ファミリークリニック センター南
内科・小児科・神経内科・認知症外来・頭痛外来・アレルギー科・糖尿病内科・消化器内科

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〒224-0006 神奈川県横浜市都筑区荏田東4-3-19
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