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アクイプタ®(アトゲパント)|経口CGRP受容体拮抗薬で片頭痛予防を|頭痛専門医が5剤を比較【センター南】

[2026.05.21]
 
 
ATOGEPANT · AQUIPTA · MIGRAINE PREVENTION

アクイプタ®(アトゲパント)発売
〜経口CGRP受容体拮抗薬による片頭痛予防の新しい選択肢〜

頭痛外来を担当する院長 篠原 伸顕(神経内科・頭痛外来)が、2026年4月17日に発売されたアクイプタ®(アトゲパント)について、ナルティーク®(リメゲパント)や注射薬3剤(エムガルティ・アジョビ・アイモビーグ)との違いまで含めて整理します。前職場で本剤の治験にも参加した経験を交え、現場感のあるご説明をお届けします。

当院 院長・篠原 伸顕(神経内科・頭痛外来)執筆、医療法人社団 正友会 理事長・五藤 良将編集

アクイプタ® アトゲパント 片頭痛予防 頭痛外来

「月に何日も片頭痛で予定が崩れる」「トリプタンは効くけれど、毎月使う頻度が増えてきた」「注射は怖くて踏み切れない」──そんなお声を、長年いただき続けてきました。

結論からお伝えします。2026年4月17日、第2の経口CGRP受容体拮抗薬「アクイプタ®(アトゲパント)」がアッヴィ合同会社から発売されました。1日1回の内服で片頭痛の発作頻度を減らす、毎日続けやすい「予防薬」です。注射が苦手な方や、ナルティーク®とは違う使い方を求める方に、選択肢が大きく広がりました。

本記事では、片頭痛予防薬5剤の全体像を整理し、アクイプタ®の特徴・他剤との違い・効果のエビデンス(ADVANCE試験・PROGRESS試験)・副作用・当院での処方の流れまで、頭痛専門医の視点でやさしくまとめます。私自身、前職場時代に本剤の治験にも参加しており、開発段階から見てきた印象も交えてお伝えします。

1. 「片頭痛持ち」のあなたへ──予防薬がここまで進歩した

日本における片頭痛の有病率は 約8.4%(人口の約1割)といわれており、女性で特に多く、働き盛りの20〜40代の生活と仕事を大きく揺さぶる病気です。痛みが起きてからトリプタンで対処する「急性期治療」と、痛みが起きないように回数を減らす「発症抑制治療(予防治療)」の両輪で診療します。

予防治療の世界はこの数年で劇的に進化しました。従来のロメリジン(ミグシス®)・バルプロ酸・プロプラノロール・アミトリプチリンといった「もともと別の病気のために開発された薬の流用」から、「片頭痛のために開発された CGRP 関連薬」へとパラダイムが変わったのです。2026年4月にアクイプタ®が加わったことで、選択肢は 注射薬3剤+経口薬2剤=計5剤 になりました。

2. CGRPとは何か──片頭痛の発症メカニズム

CGRP(Calcitonin Gene-Related Peptide:カルシトニン遺伝子関連ペプチド) は、三叉神経の終末から放出される神経ペプチドです。脳の血管壁にある CGRP受容体 に結合すると、血管が拡張し、炎症性物質が放出され、痛みのシグナルが増幅されます。これが片頭痛発作の中核メカニズムと考えられています。

🧠 CGRPに対する治療戦略は2つ

  • ① CGRPそのものを捕まえる(リガンド阻害型)──エムガルティ®、アジョビ®。CGRPが受容体に届く前にブロックする
  • ② CGRP受容体側を塞ぐ(受容体阻害型)──アイモビーグ®(注射)、ナルティーク®/アクイプタ®(経口)。受容体に蓋をしてCGRPが結合できないようにする

アクイプタ®(アトゲパント)はこのうちの「②受容体阻害型」かつ「経口」というポジションです。

3. 片頭痛発症抑制薬5剤の全体マップ

「片頭痛のために開発された CGRP 関連薬」は、現在日本で 5剤 使えます。注射薬3剤(2021年=令和3年に相次いで発売)と経口薬2剤(2025年12月のナルティーク®、2026年4月のアクイプタ®)です。

薬剤名 一般名 投与 標的 発売
エムガルティ® ガルカネズマブ 注射 月1回(初回2本) CGRPリガンド 2021年
アジョビ® フレマネズマブ 注射 4週ごと または 3か月ごと(3本同時) CGRPリガンド 2021年
アイモビーグ® エレヌマブ 注射 4週ごと(ペン型) CGRP受容体 2021年
ナルティーク® リメゲパント 経口 1日おき(予防)/頓服(急性期) CGRP受容体 2025年12月
アクイプタ® アトゲパント 経口 1日1回毎日(予防のみ) CGRP受容体 2026年4月

📊 全般的な傾向

5剤いずれも片頭痛発作頻度を平均 月3〜5日程度減らす 効果が示されています。共通する副作用は 便秘 がもっとも多く、注射薬では加えて 注射部位反応・血管迷走神経反射、経口薬では 悪心・倦怠感・眠気 が報告されています。

4. アクイプタ®(アトゲパント)の特徴

アクイプタ®は、米国アッヴィ社が開発した 経口の CGRP 受容体拮抗薬(gepant 系:ゲパント系) です。日本では2026年2月に承認、4月17日に発売されました。剤形は 10mg/30mg/60mg の3規格があり、患者さんごとの用量調整が可能です。

💊 アクイプタ®の特徴まとめ

  • 1日1回・毎日内服──成人は通常60mgを1日1回経口投与(症状や副作用に応じて10mg・30mgへ調整可)
  • 適応は「片頭痛発作の発症抑制(予防)」のみ──現時点では急性期頓服薬としての適応はなし
  • 反復性片頭痛・慢性片頭痛のいずれにも有効性を確認(ADVANCE試験・PROGRESS試験)
  • 半減期が短く、毎日の服用で安定した予防効果を出す設計
  • 注射薬と異なり、注射の痛み・通院頻度・自己注射手技の習得が不要
  • 末期腎不全患者にも投与可能(薬物動態に大きな影響がなく、特別な減量規定なし)

💡 院長より(治験参加時の現場感)

私は前職場時代にアクイプタ®(アトゲパント)の治験に参加させていただきました。記憶に残っているのは、診察時に 寝た状態と座った状態で何度も血圧を測定 したり、心電図・採血を厳密にフォローしたりと、安全性確認の基準がとても厳格だった点です。それだけ慎重に検証された薬剤が、日常診療で使えるようになったのは率直に大きな前進だと感じます。

5. ナルティーク®(リメゲパント)との違い

経口CGRP受容体拮抗薬は現時点で ナルティーク®(リメゲパント)アクイプタ®(アトゲパント) の2剤。同じ「ゲパント系」ですが、性格はかなり異なります。

項目 ナルティーク®(リメゲパント) アクイプタ®(アトゲパント)
適応 発症抑制 + 急性期頓服(両方OK) 発症抑制のみ(現時点)
服用頻度 予防:1日おき/頓服:発作時 毎日1回
用量 75mg OD錠(1規格) 10/30/60mg(3規格・調整可)
半減期 比較的長い 比較的短い
注意点 予防内服した日は頓服NG(要管理) 急性期は別途トリプタンなどで対応

💡 使い分けの目安

「予防と頓服を1剤で済ませたい」「発作日数が少なめでメリハリ運用したい」 → ナルティーク®(リメゲパント)。
「毎日1回の方が飲み忘れにくい」「予防だけにフォーカスしたい」「用量を細かく調整したい」 → アクイプタ®(アトゲパント)。
急性期治療には別途トリプタン製剤やレイボー®(ラスミジタン)なども選択肢になります。詳しくは ナルティークOD錠の解説記事 もご参照ください。

6. 注射薬3剤(エムガルティ・アジョビ・アイモビーグ)との位置づけ

2021年に立て続けに発売された注射薬3剤は、いまも片頭痛予防治療の中核を担います。経口薬2剤の登場で、患者さんが 「自分のライフスタイルに合った剤形」を選べる 時代になりました。

💉 注射薬3剤が向いている方

  • 毎日の内服が続けにくい
  • 月1〜3か月に1回の通院でOKにしたい
  • 初回からスピーディに効果を出したい(エムガルティ®は初回2本で立ち上げ)

💊 経口薬2剤(ナルティーク/アクイプタ)が向いている方

  • 注射が怖い/針アレルギーがある
  • 注射部位反応(腫れ・痒み)の経験がある
  • 頻繁な通院が難しい・自宅で完結したい
  • 用量を細かく調整したい(アクイプタ®)

⚠ 効果が物足りない時の「作用機序チェンジ」
エムガルティ®・アジョビ®(リガンド阻害型)からアクイプタ®・アイモビーグ®(受容体阻害型)へ、またはその逆へ切り替えると、効果が劇的に改善するケースが報告されています。「1剤目で効かなかった」と諦めず、別の作用機序を試す価値があります。

7. エビデンス:ADVANCE試験・PROGRESS試験

アクイプタ®の効果は、国際的な大規模ランダム化比較試験で検証されています。

📊 ADVANCE試験(反復性片頭痛)

N Engl J Med 2021。12週間の月間片頭痛日数の減少:
60mg群:−4.2日
・30mg群:−3.9日
・10mg群:−3.7日
・プラセボ群:−2.5日(差は統計学的に有意)

📊 PROGRESS試験(慢性片頭痛)

Lancet 2023。ベースライン平均月間片頭痛日数 19日 の慢性片頭痛患者で、60mg1日1回投与・30mg1日2回投与のいずれもプラセボと比較して有意な月間片頭痛日数の減少を達成。

これらのデータから、アクイプタ®は 「月数日程度の反復性片頭痛」から「月15日以上の慢性片頭痛」まで幅広く有効 であることが裏付けられています。投与開始から早ければ 第1週 で効果が現れ始め、12週で安定した発症抑制が得られるのが一般的な経過です。

8. 副作用と注意点──便秘・新薬14日処方制限など

📊 アクイプタ®の主な副作用

  • 便秘──最も多い(数%〜10%程度)。CGRP関連薬全般に共通する副作用
  • 悪心(吐き気)──軽度のことが多い
  • 倦怠感・眠気──服用開始期に出やすい
  • 食欲低下・体重減少(まれ)
  • 注射薬で見られる 注射部位反応・血管迷走神経反射 は経口薬では起きない

⚠ 新薬の14日処方制限について
アクイプタ®は2026年4月発売の新薬です。日本の薬剤規制により、発売から1年間は1回の処方で最大14日分までに制限されます。この期間は、最低 2週間に1度の通院が必要です。2027年4月以降は、長期処方(30日・60日分など)が可能になる予定です。土曜診療(9〜14時)を活用してご通院ください。

🩺 注意が必要な方(投与前に必ずご相談を)

  • 妊娠中・授乳中の方(安全性データが十分でない)
  • 妊娠を計画している方
  • 重度の肝機能障害がある方(用量調整の検討)
  • 強力な CYP3A4 阻害薬・誘導薬を内服中の方(薬物相互作用)
  • 慢性便秘ですでに下剤を要する方

9. 当院での処方の流れと費用の目安

当院では 頭痛外来(脳神経内科併設) でアクイプタ®の処方が可能です。標準的なフローをご紹介します。

①📋 頭痛日記の準備

受診前1〜2か月の頭痛回数・強さ・服用薬・誘因(生理・天候・寝不足など)を記録。スマホアプリ「頭痛ーる」「マイグレーンレコード」も活用できます。

②🧠 初診・診断確認

国際頭痛分類(ICHD-3)に基づき片頭痛と診断。二次性頭痛が疑われる場合は頭部画像も検討。

③💊 治療方針の決定

5剤(注射3 + 経口2)からライフスタイル・既往歴・希望に応じて選択。CGRP薬は「月4日以上の片頭痛発作」または「日常生活に支障あり」が一般的な開始目安。

④💉 服薬開始+14日処方

通常60mgを1日1回。副作用や効果に応じて10/30mgへ調整可能。2週間ごとに通院して経過確認。

⑤📈 3か月時点の効果評価

片頭痛日数が 50%以上減少 しているかを目安に継続判定。十分な効果が得られない場合は別の作用機序の薬剤へ切替を検討。

⑥🔁 長期フォロー

原則6〜12か月以上の継続を推奨。安定すれば休薬チャレンジも検討可能。発売1年後(2027年4月〜)は長期処方が可能になります。

💰 費用の目安

アクイプタ®は 保険適用です。薬価は60mg錠で1錠あたり約1,000円台前半(発売直後・参考値)で、3割負担なら月およそ10,000〜13,000円程度の自己負担になる見込みです。高額療養費制度の対象でもあり、所得区分により実際の負担はさらに抑えられます。詳細な金額は処方時にご案内します。

💪 まずはご相談から──頭痛外来は予約優先です

「予防薬を始めるべきか」「自分にどの薬が合うか」「注射と経口どちらがよいか」など、治療開始前のご相談だけでも結構です。WEB予約(melmo)の備考欄に 「頭痛外来希望/アクイプタ相談」 とお書きください。土曜(9〜14時)は通院しやすい時間帯です。

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10. 関連ブログ・関連クリニック

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. アクイプタ®は誰でも処方してもらえますか?

A. 国際頭痛分類で片頭痛と診断され、月4日以上の発作、または日常生活に明らかな支障がある成人が一般的な開始対象です。妊娠・授乳中の方、重度肝障害の方は慎重投与または別の選択肢を検討します。初診時に頭痛日記をお持ちいただけると判断が早まります。

Q2. ナルティーク®からアクイプタ®へ切り替えできますか?

A. 可能です。ナルティーク®(1日おき+頓服)で「飲み方の管理が面倒」と感じた方、効果がもう一歩だった方は、毎日1回固定のアクイプタ®への切替を検討します。逆も可能です。切替時の休薬期間は通常不要ですが、個別に判断します。

Q3. 注射薬を使っている人がアクイプタ®に乗り換えるメリットは?

A. 「通院回数を減らしたい」「注射部位反応が強い」「自己注射の手技が負担」といった方には経口薬のメリットがあります。一方で、注射薬で安定している方は無理に乗り換える必要はありません。効果が頭打ちな場合、作用機序の異なる薬への切替(リガンド型↔受容体型)で改善することもあります。

Q4. アクイプタ®を飲んでも頭痛が起きてしまったら?

A. 予防薬は「発作回数を減らす」もので、ゼロにする薬ではありません。発作が起きた時は 従来通りトリプタン製剤・レイボー®・NSAIDs などで頓服対応します。アクイプタ®は急性期治療としての適応はないため、頓服には使えません(ナルティーク®は頓服でも使用可)。

Q5. 効果が出るまでどれくらいかかりますか?いつまで続ければよいですか?

A. 早い方は第1週から効果を実感されます。多くの方で 4〜12週 で安定した発症抑制が得られます。3か月時点で 片頭痛日数が50%以上減少 していれば継続を推奨。原則 6〜12か月以上 続け、安定後は休薬チャレンジも検討できます。

Q6. 便秘がもともとあります。アクイプタ®で悪化しますか?

A. CGRP関連薬は便秘を誘発しやすいため、もともと慢性便秘がある方は悪化に注意が必要です。水分・食物繊維・運動を意識的に増やし、必要なら下剤(マグミット®や新しい腸刺激薬)を併用します。重度の便秘で日常生活に支障が出る場合は、別の予防薬へ切替を検討します。投与開始後の便通の変化は、必ず受診時にお伝えください。

🔁 3軸クロスポイント:片頭痛予防を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

片頭痛は単独の病気ではなく、生活習慣・脳血管・全身の老化と密接に関わっています。当院の「糖尿病×認知症×抗加齢」3軸クロス診療は、CGRP薬の効果を底上げする土台でもあります。

🩸 軸1: 糖尿病・代謝

片頭痛患者では インスリン抵抗性・肥満・代謝症候群の合併が多いことが報告されています。血糖値スパイク(食後高血糖)や脱水は片頭痛の誘因。HbA1c 7%未満・適正体重・規則的な食事リズムは、CGRP薬を「効きやすい体」に整えるベースです。

🧠 軸2: 認知症・神経系

慢性片頭痛は脳の 白質病変・脳血管リスクの増加と関連が示唆されており、長期的には認知機能への影響も懸念されています。発作を減らすことは、神経系全体の負担を減らす予防医学そのもの。物忘れが気になる方は 認知症の種類ハブ記事 もご参照ください。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

睡眠の質(規則的な就寝・遮光・室温管理)、適度な有酸素運動、ストレスマネジメント、カフェイン・アルコールの過剰摂取の見直し、ホルモン(特に女性ホルモンの変動)への配慮──これらはすべて片頭痛の発作頻度に直結します。CGRP薬は 「土台が整っていればさらに効く」薬です。

執筆|五良ファミリークリニック センター南 院長 篠原 伸顕(神経内科・頭痛外来)

編集|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪


GORYO FAMILY CLINIC CENTER MINAMI
五良ファミリークリニック センター南
内科・小児科・神経内科・認知症外来・頭痛外来・アレルギー科・糖尿病内科・心療内科
内科 小児科 神経内科 認知症外来 頭痛外来
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※旧名称:浜クリニック
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理事長 五藤 良将

 

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