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パーキンソン病

[2025.09.03]

はじめに

パーキンソン病は中脳の黒質にあるドパミン神経細胞が何らかの原因で少なくなり、身体の運動の調節などに関係しているドパミンという物質が不足することにより発症します。パーキンソン病はアルツハイマー型認知症に次いで頻度の高い神経変性疾患です。日本では人口10 万人あたり100 ~ 150人と推定され、2020年の厚生労働省の調査では患者総数は約29 万人と報告されています。パーキンソン病は欧米では男性に多いのですが、日本では女性に多い病気です。50 ~ 65 歳に発症することが多いですが、高齢になるほど発病率が増加するため、人口高齢化が進む中で患者数は世界的に急増しています。特に高齢パーキンソン病患者さんが急増しており、65歳以上の方では100人に1人の頻度の病気であることが示されています。

概 要

パーキンソン病は中脳黒質のドパミン神経細胞の変性・脱落により生じる疾患です。典型的な症例では運動緩慢、振戦、筋強剛、姿勢反射障害などの運動症状と様々な運動以外の症状がみられます。病理学的には、主に中脳の黒質や大脳基底核と呼ばれる部分の神経細胞に変性が見られ、神経細胞の数の減少と、αシヌクレインというタンパク質からなるレビー小体の蓄積が見られます。パーキンソン病の多くは遺伝しません(孤発性)が、5〜10%は家族内発症者がいる遺伝性パーキンソン病です。孤発性パーキンソン病は複数のリスク遺伝子に環境要因が加わって発症に至ると考えられています。加齢も発症リスクの1つです。現段階では黒質のドパミン神経細胞の変性・脱落の原因は完全には明らかになっていません。

症 状

パーキンソン病にみられる代表的な4つの症状は、運動緩慢、振戦、筋強剛、姿勢反射障害です。これらの運動症状は、左右どちらかの側から出現し、両側になったとしても、左右どちらかの症状がより強いというのが一般的な特徴です。近年、これらの運動に関係した症状に加え、様々な非運動症状(精神症状、自律神経障害、感覚障害、睡眠障害など)を呈することも明らかになりました。非運動症状の中には運動の不調をきたす前から認められる症状(うつ、便秘、嗅覚障害、レム睡眠行動異常症)もあり、パーキンソン病の早期診断という観点からも注目されています。しかし、これらの症状が全ての患者さんでみられるわけではなく、症状や経過に個人差が大きい病気です。多彩な症状を呈するため、病気の初期には脳神経内科ではなく総合内科、精神科、整形外科など他の科を受診する患者さんも多くいます。

 

運動症状

パーキンソン病の症状の重症度分類としてはヤールの重症度分類が用いられます。ヤールIが一番軽症で片側に症状が出ます。進行すると徐々に悪化し、ヤールVでは自力での日常生活が困難となり車椅子での移動やベッド上生活が中心となり。全面的な介助が必要となります。

運動緩慢・無動

動作が遅くなり、運動の大きさや量が減ってしまう症状です。症状がより高度になった状態を無動といいます。歩行・起き上がり・立ち上がり・寝返りなど様々な日常動作が障害されます。例えば、歩くのが遅くなったり、歩幅が小さくなったり(小刻み歩行)、食事動作、着脱衣、寝返りなどに支障をきたすことがあります。仮面をかぶっているような表情のない顔つき(仮面様顔貌)、小声で単調な抑揚のない話し方になります。以前に比べて字が下手になり、書くにしたがって文字が小さくなること(小字症)や、症状の進行に伴い食事の咀嚼や飲み込みが遅くなるなどの症状がみられることもあります。

振戦

手、足、顎や頭部に起こる「ふるえ」のことです。左右どちらかにより強いのが一般的です。ふるえがみられる病気は多くありますが、パーキンソン病のふるえは、安静にしていて動作をしていない時に強くふるえ、動作をすると軽くなったり、消失したりするのが特徴です。丸薬を丸めているような指の動きが特徴です(pill rolling tremorと言います)。振戦を認めないパーキンソン病の方もいます。

筋強剛(筋固縮とも)

筋肉の緊張が高まっている状態で、関節を曲げ伸ばしした際に抵抗を感じ、固く感じられます。手足を曲げ伸ばしした時に歯車のように抵抗を感じることもあれば、鉛の管を曲げるように一定の抵抗を感じる時もあります。

姿勢保持障害

人間の体は、倒れそうになると倒れないために姿勢を反射的に直す反応が備わっています。しかし、パーキンソン病患者さんでは、前方や後方に軽く押されただけで体勢を立て直せずに突進したり倒れたりしてしまうことがあります。立ち上がった時、歩いている時や方向転換時に倒れやすくなります。通常、病気の初期には認めず、発症してから数年経過した頃にみられるようになります。

歩行障害

歩行が遅く、歩幅が狭く、自然な腕の振りが減ってしまいます。膝を曲げ前屈みの姿勢で小刻みに歩きます。また、足がなかなか前に出ない(すくみ足)、歩き出すと早足となってしまい止まることができない(突進歩行)といった症状がみられます。すくみ足は歩き始めや方向転換時に強く出やすい傾向があります。

姿勢異常

比較的病初期から前傾姿勢、進行期には腰曲がり、首下がりといった姿勢異常が目立つようになることがあります。

 

非運動症状

精神症状

抑うつ、無気力・無関心、不安、パニック発作がみられる場合があります。抑うつ症状が病初期から強く、精神科を最初に訪れることもあります。病気の進行期には幻覚、妄想を認めることがあります。また、物事をスムーズに行えなくなる遂行機能障害、注意障害、視空間認知障害などの認知機能障害を呈することもあります。主に薬の副作用で病的賭博(ギャンブル依存)や性欲亢進、買い物依存、過食などの衝動制御障害が出現することもあります。

自律神経障害

便秘が最も多い症状ですが、排尿障害(頻尿)、起立性低血圧(立ちあがった時に血圧が下がってしまい立ち眩みがしたり、ひどい時には失神したりすることもあります)、発汗過多、インポテンスなどの症状があります。

感覚障害

嗅覚障害、痛みが出現することがあります。嗅覚障害は高頻度で認められる症状ですが、患者さんは自覚していないことも多く、検査をして初めて気づくことも多いです。

睡眠障害

不眠、日中の眠気、むずむず脚症候群、レム睡眠行動障害(以前ブログに書かせてもらいました)など多彩な症状が出現します。日中の眠気、突発的睡眠(予兆なく突然寝入ってしまう)はパーキンソン病自体の症状であると共に、パーキンソン病に対する薬の副作用で出現することもあります。

運動合併症

発症して数年が経ちますと、抗パーキンソン病薬(L-ドパ)の効いている時間が短くなり薬がきれる感じを自覚するようになります。薬が効いている時間(オン)と効いていない時間(オフ)で症状の差を感じるようになるということです(on-off現象)。そのような薬の効果持続時間の短縮による症状の日内変動をWearing-off現象といいます。また、主に抗パーキンソン病薬の血中濃度が高い時に出現する体をくねらせるような不随意運動をDyskinesiaといいます。Wearing-off現象とDyskinesiaを運動合併症といい、これらを認めるようなった患者さんを進行期と呼ぶのが一般的です。

診断・検査

パーキンソン病は、臨床所見(症状)、画像所見、治療の効果などから総合的に診断されます。
まずは運動緩慢がみられるかどうか、加えて振戦、筋強剛といった他の運動症状がみられるかどうか(パーキンソン症状があるか否か)を確認します。また、レム睡眠行動障害や嗅覚障害、便秘など多彩な非運動症状の存在の有無も参考にします。パーキンソン病らしい特徴があるかを確認していきます。症状、以下に記載した検査に加え、L-ドパ製剤やドパミンアゴニストなどのパーキンソン病に対する薬を用いることで症状の改善がみられるかどうか、治療反応性を確認することも診断において重要です(診断的治療)。パーキンソン病の症状は個人差が大きく、非典型的な症例では病初期は診断に迷うケースも少なくありません。

MIBG心筋シンチグラフィー検査

MIBGという放射性医薬品を用いた核医学検査と呼ばれる検査になります。MIBGは心臓の交感神経に取り込まれる物質であるため、どの程度MIBGが集積するかを画像化することで、心臓の交感神経の障害や分布を評価することができます。パーキンソン病では心臓の交感神経が障害、脱落するため、多くの症例で心臓への取り込みが低下します。

 

DAT スキャン

パーキンソン病はドパミン神経細胞が変性・脱落することで起こる疾患です。DATスキャンはイオフルパンという放射線医薬品を用いた検査であり、イオフルパンが線条体とよばれる場所でドパミン神経細胞にどの程度集積するかを画像化することで、ドパミン神経細胞の障害を評価することができます。パーキンソン病の場合はイオフルパンの線条体での集積が低下します。

 

頭部CT検査、頭部MRI検査

パーキンソン病は一般的な頭部CT検査、頭部MRI検査では特徴的な異常がみられません。ただしパーキンソン病に似た症状を呈する病気では特徴的な異常を示すものも多く、それらの病気との鑑別のためには有用です。

 

薬物治療

治療は内服薬による治療が主体で、症状を軽くして、日常生活を過ごしやすくすることを目標とします。内服治療を継続することで、症状を改善することが可能で、健康な方とほぼ同じように生活できることを目標とします。
パーキンソン病は神経変性疾患の中でも最も多くの薬剤が開発されています。最近は内服薬だけでなく皮膚貼付剤(パッチ剤)や皮下注射薬も使用されています。パーキンソン病は脳内のドパミンが不足してしまう病気ですので、不足しているドパミンを補うことが治療の中心になりますが、薬ごとに作用、作用機序が異なりますので、症状に応じて適切な薬を選んで治療を行っていくことが大事です。
発症して数年が経ちますと薬の効果持続時間の短縮などの運動合併症を認めることもありますが、さまざまな工夫により調整が可能です。

パーキンソン病の治療

認知症を合併しているなど精神症状を呈するリスクが高いもしくは当面の症状改善を優先させる特別な事情がある場合はL-ドパで治療を開始します。また、65歳以上発症で運動合併症のリスクが高くない場合はL-ドパで治療を開始します。これらの条件に当てはまらない場合はドパミン受容体刺激薬(ドパミンアゴニスト)もしくはモノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害薬で治療を開始します。

進行してきたり、振戦症状が強い場合には手術治療も考慮されます(脳神経外科にて)。

 

生活上の注意

日常生活では外出したり、ご家族や友人との会話、趣味やレクリエーションなど積極的な生活を送ることが大切です。リハビリを行う際はなるべく大きい動作を心掛け、筋力が落ちる前に行っておくことが重要です。ただし、その日の体調、睡眠の状態、気持ちの状態でも症状は変化するため、薬の効きめが悪く体が動きにくい時には、怪我をしないためにも無理をしないようにしなければなりません。またご本人だけではなく、ご家族の方にもパーキンソン病を良く知っていただき、患者さんをサポートしていただくことがより良い健康に重要となります。パーキンソン病は、症状が進行すると申請により公的支援を受けることができます。担当医や最寄りの保健所・福祉窓口に相談されることをおすすめします。

 

パーキンソン病は決して稀な疾患ではありません、体の動きが緩慢になってきた、何もしていない時に手足が振える、ご家族が見ていて笑わなくなった、顔の表情が乏しくなった、転びやすくなったなどの症状が出た時には、脳神経内科専門医を受診されることお勧めします。

院長 篠原 伸顕

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