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パーキンソニズム

[2025.09.10]

 前回はパーキンソン病についてブログを書かせてもらいました。パーキンソン病自体は比較的典型的な症状が揃っている事とパーキンソン病の薬が効き易い事で判断は付きやすいのですが、中にはパーキンソン病の典型的な症状が揃わなかったり、パーキンソン病の薬が予想より効きにくいケースがあります。その際に我々はお恥ずかしい限りではありますが、“本当にパーキンソン病と診断をしてよいのだろうか?”と不安になります。と言いますのは、初期の頃はパーキンソン病と似ていますが、原因や病気が違う“パーキンソン病類似疾患”があるためです。そこでパーキンソン病類似疾患について鑑別しなければならなくなります。

パーキンソン病類似疾患には下記の様な病気があります。

パーキンソン症候群(パーキンソニズム)

 一見パーキンソン病に似ている動作の緩慢、歩幅の減少(小刻み歩行)、筋固縮などの症状を呈する疾患をパーキンソン症候群(パーキンソニズム)と呼びます。パーキンソン症候群(パーキンソニズム)の主な原因には、薬剤性、中毒性、脳血管性、正常圧水頭症,パーキンソン病以外の変性疾患があります。

1)薬剤性パーキンソニズム

2)脳血管性パーキンソニズム

3)正常圧水頭症

4)パーキンソン病以外の変性疾患

  a.進行性核上性麻痺(PSP)

  b.大脳皮質基底核変性症(CBD)

  c.多系統萎縮症(MSA)

 

1) 薬剤性パーキンソニズム

パーキンソン病に関与するドパミンの受容体をブロックする作用のある薬剤を投与する事によりパーキンソン病に似た症状が引き起こされる状態です。パーキンソン病とは異なり、当初から左右両方に症状が出る事が多く、手足の振るえ(振戦)がある場合も、パーキンソン病に特徴的な安静時振戦ではなく、動作時に振戦が出る事が多くあります。以前より精神科領域で頻用されるハロペリドール、クロルプロマジンなどが有名です。最近では第二世代の抗精神病薬であるリスペリドンなどにもその危険性はあります。また、精神科的使用以外にも胃・十二指腸潰瘍治癒促進剤として使われるスルピリドや嘔気を抑える目的で良く処方されるメトクロプラミドの使用でも薬剤性パーキンソニズムが出現する事があります。

2) 脳血管性パーキンソニズム

 脳血管障害に伴うパーキンソニズムという概念です。脳のCTやMRI検査で大脳基底核という部分に多発性の小さな梗塞(ラクナ梗塞)が確認された場合や、大脳半球に広範な白質変化(虚血性変化;脳血流障害)を来すビンスワンガー病などの例でパーキンソニズムが見られることがあります。パーキンソン病との違いは筋が固くなる筋固縮にあります。パーキンソン病の筋固縮では歯車様(歯車をギコギコ回す様な固さ)で、脳血管性パーキンソニズムの筋固縮では鉛のパイプを曲げる様な一定に固く抵抗感が出るものです。

3) 正常圧水頭症        

 脳と脊髄は体内にある髄膜で囲まれた袋の中で、髄液という液体の中に浮いている状態です。髄液は脳の中で産生と吸収を繰り返し、1日3回入れ替わると言われています。この髄液の産生と吸収にアンバランスが生じた場合(産生↑で吸収↓)に、脳内にある髄液を溜めている脳室が拡大をしてきます。正常圧水頭症では脳のCTやMRIで特徴的な画像所見を認めます。この状態になりますと認知機能低下、尿失禁、歩行障害をきたします。この歩行障がいがパーキンソン病ではないかと依頼が来ることがあります。ただ正常圧水頭症の歩行障害は、パーキンソン病の歩行障害とはやや異なる歩き方ですので、画像所見も参考にして判断をして行きます。もし正常圧水頭症であれば、溜まった髄液を脳の外へ逃がすシャント術を行う事で症状は軽減します。

4) パーキンソン病以外の変性疾患

 a. 進行性核上性麻痺(PSP)

 発症の初期から姿勢反射障がいが強く、繰り返し転倒をするのが特徴です。歩行は開脚気味で、またパーキンソン病と似たすくみ足や突進歩行も見られます。手足より頸部や体幹部の筋固縮が目立ちます。この病気の一番の特徴として、進行しますと上下の眼球運動に制限が見られます。特に下向きの眼球運動制限が強い為に,足元が見にくくなりつまづいたり転倒をしやすくなります。呂律が回りにくくなり、飲み込みにも障がいが出やすくなります。認知機能の低下も伴いやすくなります。

 b. 大脳皮質基底核変性症(CBD)

 左右非対称の筋固縮や無動、自分の意思とは関係なく体が振るえてしまうミオクローヌスや姿勢に異常を来たすジストニアが見られます。その他に大脳の障がいによる症状として、種々の失行(手足は正常に動くのに、目的の動作を正しく行えない状態)、強制把握(手のひらに刺激を与えると把握反射が誘発され、一度掴んだ物を意図的に離す事が困難になる状態)、他人の手徴候(自分の意思とは関係がなく勝手に腕や手が動く)といった症状も出ます。

 c. 多系統委縮症(MSA)

 大脳、小脳、脳幹、脊髄の神経細胞の変性により委縮が見られる疾患です。パーキンソン病の様な症状だけでなく、小脳失調(体のバランスが取れなくなる)や自律神経障がい(起立性低血圧や排尿障がい)が見られる疾患です。脳MRI画像で大脳の一部や脳幹部、小脳に委縮が目立つことでパーキンソン病と鑑別ができます。

 

 パーキンソン病は65歳以上の日本人で100人に一人が発症します。もう決して珍しくない病気ですが、パーキンソン病と似た症状を認める疾患には、上記の様に色々あります。

 正しい診断が受けられる様に脳神経内科専門医の外来を受診される事をお勧めします。

 

院長 篠原 伸顕

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