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脳梗塞後遺症(stroke-sequelae)

 
 
STROKE SEQUELAE 2026

脳梗塞のあとを「治療」と「再発予防」の両輪で支える
〜麻痺・言語・嚥下・血管性認知症まで〜

脳梗塞後の症状の整理、再発予防(抗血小板薬・DOAC・血圧・糖尿病管理)、リハビリ、血管性認知症の予防までを神経内科併設クリニックの立場でお伝えします。

脳梗塞後遺症
再発予防
DOAC
血管性認知症

「父が脳梗塞で入院し、退院してから外来をどこにすればいいか」「左手のしびれと言葉のもつれが残っている」──ご家族からそんなご相談を受けることが多くあります。

結論からお伝えします。脳梗塞は「退院がゴール」ではなく、「再発予防とリハビリの長い旅のスタート」です。1年以内の再発率は約10%、5年で20〜30%。再発させないこと、そして残された機能を最大限活かすことが、その後の人生を決めます。

本記事では、脳梗塞後に残る代表的な症状(運動麻痺・感覚障害・言語・嚥下・高次脳機能)、脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕に基づく再発予防(抗血小板薬・DOAC・スタチン・血圧)、血管性認知症の予防、そして当院での日常的フォロー体制までを整理してお伝えします。

1. 脳梗塞は「退院してから」が本番

脳卒中は日本人の死因第4位、要介護原因の第1位を占めます。なかでも脳梗塞は脳卒中の約75%を占め、急性期治療(t-PA静注療法・血栓回収療法)の進歩で多くの方が命を救えるようになりました。しかし救命できても、約7割の方になんらかの後遺症が残ります。

📊 退院後に立ちはだかる「再発」の壁

  • 1年以内の再発率:約10%
  • 5年以内の再発率:20〜30%
  • 再発例の多くは「服薬中断」「血圧管理不良」「禁煙未達」が背景
  • 再発するたびに後遺症が積み重なり、要介護度が上がる

2. 脳梗塞の3タイプ(ラクナ・アテローム血栓性・心原性)

タイプ 原因 再発予防の中心
ラクナ梗塞 細い穿通枝の閉塞。高血圧が最大要因 血圧管理+抗血小板薬
アテローム血栓性 頸動脈・大動脈の動脈硬化(プラーク) 抗血小板薬+高用量スタチン+糖尿病管理
心原性脳塞栓 心房細動由来の血栓が脳血管を閉塞 DOAC(直接経口抗凝固薬)

心原性脳塞栓はもっとも梗塞範囲が広く、後遺症も重くなりがちです。背景にある心房細動を早期に見つけ、DOACで予防することが極めて重要です。

3. 主な後遺症(運動麻痺・感覚障害)

脳梗塞の症状は「障害された脳の場所と広さ」で決まります。多くの場合、片側の手足の麻痺(片麻痺)・感覚障害(しびれ・痛覚低下)を残します。

💪 片麻痺・筋力低下

反対側の手足が動きにくい。歩行が不安定に。装具・杖の活用も。

🦶 痙縮(筋肉のこわばり)

手指の屈曲・足首の尖足。ボトックス治療・リハで緩和。

🌪 感覚障害・しびれ

触覚・温痛覚の鈍麻。火傷・転倒に注意が必要。

⚡ 中枢性疼痛

脳梗塞後しばらくして焼けるような痛み。薬物治療で対応。

4. 言語障害(失語症)と嚥下障害

左大脳半球の障害では、言葉が出ない・理解できない「失語症」が、両側の脳梗塞や脳幹梗塞では飲み込みがしにくくなる「嚥下障害」が問題になります。

⚠ 嚥下障害は誤嚥性肺炎の最大原因

  • 食事中のむせ・咳・声のかすれに注意
  • 発熱を繰り返す場合は誤嚥性肺炎を疑う
  • 口腔ケア・食事姿勢・とろみ調整で予防
  • 必要に応じて嚥下評価を実施(連携医療機関)

5. 高次脳機能障害(注意・遂行・社会的行動)

外見からは分かりにくいけれど、生活復帰の最大の壁になるのが高次脳機能障害です。

🧠 主な高次脳機能障害

  • 注意障害:気が散りやすい・長く集中できない
  • 記憶障害:新しいことを覚えられない
  • 遂行機能障害:段取りが組めない・優先順位がつけられない
  • 半側空間無視:片側の物・人・食事を認識できない
  • 社会的行動障害:感情コントロールが難しい・抑制困難

6. 再発予防の柱① 抗血小板薬・DOAC

脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2023〕では、脳梗塞のタイプ別に再発予防薬を細かく規定しています。

タイプ 推奨薬剤
ラクナ/アテローム血栓性 抗血小板薬(クロピドグレル/シロスタゾール/アスピリン)
心原性(心房細動) DOAC(ダビガトラン/リバーロキサバン/アピキサバン/エドキサバン)
DOAC使えない弁膜症性心房細動 ワルファリン(INR目標値内に厳格管理)

⚠ 自己判断で薬を中止しないでください
「血圧が下がった」「副作用が心配」と独断で薬を止めると、再発リスクが急上昇します。気になる症状があれば必ず主治医にご相談ください。

7. 再発予防の柱② 血圧・脂質・血糖・禁煙

🏥 脳梗塞既往者の管理目標(JSH2025/JAS等)

  • 血圧:原則 130/80 mmHg未満(家庭血圧)
  • LDLコレステロール70〜100 mg/dL未満(高リスク群はより厳格に)
  • HbA1c:年齢・併存症を踏まえ個別に。多くの方で 7.0%未満
  • 禁煙:必須。1日1本でもリスクは上がる
  • 節酒:日本酒1合/日以下
  • 運動:可能な範囲で週150分の中等度有酸素

8. リハビリの継続──回復は1年以降も続く

「リハビリは退院後6か月で終わり」と思っている方が多いですが、脳の可塑性(神経回路の組み替え)は長期にわたって続きます。退院後も継続的なリハビリ、自宅でのセルフトレーニング、装具やボトックスの活用で機能改善が期待できます。

🏥 維持期リハビリ

介護保険のデイケア・訪問リハ。継続が機能維持の鍵。

🚶 自主訓練

毎日少しでも続けるラジオ体操・歩行が脳を活性化。

💉 ボトックス注射

手指・足首の痙縮を緩和。連携医療機関で実施。

🦾 装具・自助具

短下肢装具で歩行安定、片手用調理器具で自立度UP。

9. 血管性認知症と脳卒中後うつ

脳梗塞後は血管性認知症を発症するリスクが高まります。さらに脳梗塞後の1〜3割に「脳卒中後うつ」が起こり、これがリハビリの最大の妨げになります。当院は心療内科併設のため、認知機能と気分の両方を一元的に評価できます。

💡 「やる気が出ない」を放置しない

脳卒中後うつは「気のせい」ではなく治療が必要な疾患です。リハビリの効果が出ない、表情が乏しい、食欲がない──こうしたサインが続く場合は早めにご相談ください。

🔁 3軸クロスポイント:脳梗塞後遺症を「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる

脳梗塞は単なる脳の血管障害ではなく、全身の動脈硬化・代謝異常・認知機能の交差点に立つ疾患です。センター南の3軸アプローチで、後遺症ケアと全身管理を一体化します。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連

脳梗塞既往者の多くは糖尿病・高血圧・脂質異常症を併存します。とくに糖尿病があると再発リスクは2倍、HbA1cが高いほど高くなります。SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬は脳卒中再発リスクをも下げる可能性が示されています。「内科+神経内科」を1か所で診ることが、再発予防のもっとも効率的な方法です。

🧠 軸2: 血管性認知症との関連

脳梗塞既往者は血管性認知症のリスクが4〜12倍と高まります。さらにアルツハイマー病とも合併しやすく、混合型認知症となることが多いです。認知症外来併設の当院では、脳梗塞のフォローと並行して認知機能評価を行い、早期に変化をキャッチします。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

脳梗塞は「血管年齢の老化が一気に表面化した状態」とも言えます。MIND食・運動・禁煙・睡眠・社会参加──これらの抗加齢医学アプローチは、リハビリの効果を高め、再発予防にも直結します。健康寿命と平均寿命のギャップ(男性約9年、女性約12年)の最大の原因のひとつが脳卒中であり、その先送りこそが3軸アプローチの目的です。

10. 関連ブログ・関連クリニック

📚 当院ブログ・関連テーマ

🧠 認知症

血管性認知症の予防

 


💗 頭痛

危険な頭痛のサイン

 


🦶 末梢神経障害(しびれ)

脳梗塞との見極め

 

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高血圧・脂質異常症の長期管理

脳梗塞再発予防の柱は血圧と脂質。田園調布の竹内内科小児科医院でじっくり管理。

 


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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 退院後、どのくらいの頻度で通院が必要ですか?

A. 状態が安定していれば月1回程度が基本です。血圧・血液検査・薬の調整を行います。家庭血圧の記録をお持ちいただくと診療が充実します。

Q2. リハビリは継続したほうがよいですか?

A. はい。介護保険のデイケア・訪問リハ、自宅での自主訓練を組み合わせることで機能維持・改善が期待できます。ケアマネジャーとの連携もお手伝いします。

Q3. 血圧が下がりすぎることがあります。どうしたら?

A. 朝の起立時にふらつく、収縮期血圧が100mmHg未満が続くなどの場合は薬の調整が必要です。自己判断で中止せず、診察時に家庭血圧の記録を見ながら一緒に調整します。

Q4. DOACを飲んでいますが、胃カメラ・大腸カメラはできますか?

A. 可能ですが、生検やポリープ切除が想定される場合は事前の調整(一時休薬)が必要です。当院最大の強みである胃・大腸カメラは姉妹院の白金高輪で対応しています。事前にご相談ください。

Q5. 認知症が始まっているか心配です。

A. 脳梗塞後は血管性認知症のリスクが上がるため、定期的な認知機能評価をおすすめします。当院は認知症外来併設のため、フォローのなかでHDS-R等の検査も併せて実施できます。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪


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