てんかん(epilepsy)
「祖母が突然意識を失った」「夫が朝起きると左手が勝手に動いた」──ご家族からそうしたご相談をいただくことがあります。
結論からお伝えします。てんかんは「子どもや若年者の病気」というイメージから、いま「高齢者の病気」へと姿を変えつつあります。とくに65歳以上では新規発症の割合がもっとも多く、認知症と間違われていることも少なくありません。
本記事では、てんかん発作のタイプ、診断の流れ、第一選択となるレベチラセタム・カルバマゼピン・ラモトリギン等の使い分け、ブリーバラセタムなど新しい薬、高齢者てんかんの特徴、運転免許や妊娠についての対応までを、神経内科を担当する立場から整理してお伝えします。
📖 目次
1. てんかんとは──「脳の電気的興奮」が起こす発作
てんかんは、脳の神経細胞が一時的に過剰に興奮することで「発作」を繰り返す病気です。有病率は約1%と高く、日本では約100万人が治療を受けています。発症は「小児期」と「高齢期」の二峰性で、近年は高齢発症が急増しています。
2. 発作のタイプ(焦点起始/全般起始)
| 分類 | 特徴 |
|---|---|
| 焦点意識保持発作 | 片手のしびれ・違和感・既視感など。意識は保たれる |
| 焦点意識減損発作 | 数十秒〜数分の意識朦朧・無反応・自動症(口をモグモグ・手をこする) |
| 強直間代発作(全般) | 突然意識消失・全身硬直・けいれん・舌咬傷・尿失禁。終了後は深い眠り |
| 欠神発作 | 小児に多い。数秒の意識消失。話の途中で「ボーッとする」 |
| ミオクロニー発作 | 手足のピクッとした一瞬の動き。朝に多い |
3. 高齢者てんかん──認知症と間違われやすい
高齢者てんかんは脳卒中・認知症・頭部外傷後・脳腫瘍などを背景に起こります。特徴はけいれんを伴わない「焦点意識減損発作」が多いことで、ご家族からは「ぼんやりする」「話が通じない」「同じことを繰り返す」と訴えられ、認知症と誤診されることが少なくありません。
📊 高齢者てんかんの「見逃しサイン」
- 突然の意識朦朧・無反応(数秒〜数分)が時々ある
- 同じ行動を繰り返す(自動症)
- 発作後に長時間(30分〜数時間)ぼんやりする
- 夜間に突然倒れていた/尿失禁があった
- 原因不明の転倒を繰り返す
当院は認知症外来併設のため、認知症と高齢者てんかんを同時に評価でき、必要に応じて脳波検査・MRI評価のため連携医療機関への紹介をスムーズに行えます。
4. 診断の流れ(脳波・MRI・血液検査)
| 検査 | わかること |
|---|---|
| 問診(本人+目撃者) | 発作の様子・前兆・経過。スマホ動画があると有用 |
| 脳波検査 | てんかん性異常波の有無。睡眠脳波で陽性率上昇 |
| 頭部MRI | 海馬硬化・脳腫瘍・脳梗塞・皮質形成異常等 |
| 血液検査 | 低血糖・低Na血症・甲状腺機能・アルコール等 |
5. 第一選択の抗てんかん薬
抗てんかん薬は10種類以上ありますが、発作のタイプ・年齢・性別・併存疾患・服用中の薬・妊娠希望の有無などに応じて選択します。新規発症の部分(焦点)てんかんでは、レベチラセタム・ラモトリギン・カルバマゼピンが第一選択です。
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| レベチラセタム(イーケプラ®) | 相互作用が少なく高齢者・併存疾患の多い方に第一選択。眠気・易刺激性に注意 |
| ラモトリギン(ラミクタール®) | 妊娠可能女性に好まれる。皮疹(重症型に注意) |
| カルバマゼピン | 焦点発作に有効。低Na・薬物相互作用に注意 |
| バルプロ酸 | 全般発作の第一選択。妊娠希望女性には原則使用しない |
6. 新しい抗てんかん薬(ラコサミド・ペランパネル・ブリーバラセタム等)
2010年代以降、新規抗てんかん薬が続々と承認されています。第一選択で効果不十分な場合や副作用回避のため、これらが選択肢に入ります。
💊 ラコサミド(ビムパット®)
部分発作の第二選択。注射薬もあり緊急時にも使用。
💊 ペランパネル(フィコンパ®)
焦点・全般どちらにも。1日1回(眠前)で済む。
💊 ブリーバラセタム(ブリィビアクト®)
2024年8月発売。レベチラセタム後継。用量漸増不要で立ち上がりが速い。
💊 ラモトリギン徐放/ゾニサミド/トピラマート
いずれも併用や難治例で有用。副作用プロフィールで選択。
7. 発作が起きたときの対応(家族向け)
🏥 強直間代発作(けいれん)への対応
- 周囲の危険物を遠ざける(机の角・熱いもの)
- 身体を抑えつけない/口に物を入れない(タオル・指も厳禁)
- 横向きに寝かせ、嘔吐物の誤嚥を防ぐ
- 発作の開始時刻と持続時間を記録。可能ならスマホで動画撮影
- 5分以上続く/繰り返す/発作後の意識回復が悪い場合は救急要請
8. 運転免許・就労・妊娠などの社会的課題
⚠ 運転免許の基本ルール
- 意識を失う発作が2年以上抑制されていれば運転可能(普通免許)
- 意識を保てる単純部分発作のみであれば、医師の診断書で運転可能になることも
- 大型・二種免許はさらに厳格(原則5年無発作)
- 申告義務あり。隠して事故を起こすと刑事責任を問われる
💡 妊娠とてんかん
妊娠を希望される場合、催奇形性の低い薬(ラモトリギン・レベチラセタム)への変更を検討します。葉酸の補充と計画的な治療調整でほとんどの方が安全に出産できます。妊娠を考え始めたら早めにご相談ください。
9. 薬の中止はいつ可能か(治療の長期計画)
発作が2〜5年抑制され、脳波・MRIに異常がなく、てんかんのタイプも軽症と判断される場合、薬の漸減・中止を検討することがあります。ただし自己中断は強直間代発作の誘発につながるため、必ず医師と相談しながら進めます。高齢者てんかんは原則継続が安全です。
🔁 3軸クロスポイント:てんかんを「糖尿病」「認知症」「抗加齢」の視点でとらえる
てんかんは脳の単独疾患ではなく、全身の代謝・脳血管・認知機能の交差点に位置します。とくに高齢者てんかんは、認知症と切り離して考えることはできません。
🩸 軸1: 糖尿病・代謝性誘因との関連
🧠 軸2: 認知症との関連(最重要)
🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命
10. 関連ブログ・関連クリニック
📚 当院ブログ・関連テーマ
🧠 認知症
高齢者てんかんとの鑑別
💗 脳梗塞後遺症
脳卒中後のてんかんリスク
💗 頭痛
てんかんと片頭痛の関係
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DEN-EN-CHOFU 竹内内科小児科医院
小児のてんかん・熱性けいれん
小児科併設の田園調布の竹内内科小児科医院では、お子さまの熱性けいれん・小児てんかんのご相談も承ります。
SHIROKANETAKANAWA 五良会クリニック白金高輪
休日のオンライン診療・胃カメラ・大腸カメラ
日祝はmelmoオンライン診療へ。当院最大の強みである胃・大腸内視鏡検査も白金高輪で対応します。
11. よくあるご質問(FAQ)
Q1. 一度けいれんを起こしました。てんかんと診断されますか?
A. 一度だけの発作では原則「てんかん」とは診断しません。ただし、脳波異常・MRI異常がある場合や、原因疾患(脳梗塞・腫瘍など)がある場合は、1回目から治療を開始することがあります。
Q2. 抗てんかん薬を飲み始めると一生やめられないのですか?
A. 必ずしもそうではありません。長期に発作が抑制され、脳波・MRIに異常がなければ漸減・中止が検討できます。一方で、高齢者てんかんや構造的な原因がある場合は継続が安全です。
Q3. 仕事中にぼんやりすると言われました。受診すべきですか?
A. はい。とくに数秒〜数分の意識途切れが時々ある、同じ動作を繰り返すといった指摘を受けた場合は、焦点意識減損発作の可能性があります。早めにご相談ください。
Q4. 発作の動画を撮ってもよいですか?
A. 大変有用です。本人・家族が安全を確保したうえで、スマホで撮影してください。診察時にお見せいただければ、診断の精度が大きく上がります。
Q5. 飲み合わせに気をつける薬はありますか?
A. はい。カルバマゼピン・フェニトインなど旧来薬は相互作用が多く、抗凝固薬・降圧薬・抗うつ薬・抗菌薬に影響します。新規薬(レベチラセタム・ラコサミド等)は相互作用が少なめです。すべての服薬を必ず申告してください。
執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将(日本抗加齢医学会専門医)
五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪
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