アレルギー性鼻炎
アレルギー性鼻炎とは(Allergic Rhinitis)
アレルギー性鼻炎は、空気中のアレルゲン(抗原)に対して免疫系が過剰に反応することで起こる鼻粘膜の炎症性疾患です。日本では国民の約40%が何らかのアレルギー性鼻炎を有していると報告されており、特にスギ花粉症はその代表格です(Okubo et al., 2020)。
分類
アレルギー性鼻炎は大きく2つに分けられます:
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季節性アレルギー性鼻炎(季節性花粉症)
スギ、ヒノキ、イネ、ブタクサなどの花粉によって引き起こされ、特定の季節に症状が出ます。 -
通年性アレルギー性鼻炎
ハウスダスト(ダニ、カビ、ペットの毛など)により、一年中症状が続くタイプです。
主な症状
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透明で水っぽい鼻水(鼻漏)
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鼻づまり(鼻閉)
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発作的に連発するくしゃみ
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鼻や目のかゆみ(結膜炎を伴うことも)
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嗅覚障害、頭重感、集中力低下など
これらの症状は、アレルゲンが鼻の粘膜に接触することで、IgEを介した即時型アレルギー反応によって引き起こされます。
診断
診断は以下の要素を総合的に判断して行います:
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問診(症状の出現時期、家族歴、ペットや住環境など)
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鼻鏡検査(鼻腔内の粘膜の腫脹や分泌物の性状)
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血液検査(特異的IgE抗体測定、RAST法など)
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皮膚プリックテスト(必要時)
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鼻汁中好酸球の検出(必要時)
治療法
1. 薬物療法(Pharmacotherapy)
以下の薬剤が使用されます:
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抗ヒスタミン薬(第2世代が主流):くしゃみ、鼻水に有効
例:フェキソフェナジン、ロラタジン、デスロラタジン -
ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA):鼻閉に効果的
例:モンテルカスト -
点鼻ステロイド薬:全症状に有効であり第一選択薬
例:モメタゾン、フルチカゾン -
経口ステロイド薬:重症例に短期間使用
→ ガイドライン推奨:日本アレルギー学会の「アレルギー性鼻炎診療ガイドライン2020」に基づき、症状や年齢に応じて薬剤選択を行います。
2. アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法)
アレルゲンを少量から投与することで体を慣らし、根本的な体質改善を目指します。スギ花粉とダニに対する舌下錠(シダキュア、ミティキュア)が保険適用されています。理事長の五藤良将・医師はシダトレン・シダキュア・ミティキュア受講修了、エピペン処方登録医(登録済)(アナフィラキシー対応・エピペン処方対応)しております。院長の阿部馨子・医師はシダキュア・ミティキュア受講修了しております。
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治療期間:3~5年
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有効率:70〜80%
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文献:Fujimura et al., 2016, Allergol Int.
3. 手術療法
薬物療法で改善が得られない重症例では、下甲介粘膜焼灼術やレーザー治療が検討されます。
環境整備と生活習慣の見直し
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空気清浄機の使用、こまめな掃除、寝具のダニ対策
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花粉の多い日は外出・洗濯物の干し方に注意
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マスク・眼鏡の着用
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禁煙とストレス管理も重要です(免疫バランスに影響)
小児のアレルギー性鼻炎
子どもでは集中力の低下や睡眠障害、学業成績にも影響する可能性が指摘されています(Katelaris et al., 2017)。五良ファミリークリニックセンター南では、小児への薬剤選択や投与量にも十分配慮した治療を行っています。
当院での対応
当院では、日本アレルギー学会所属を含む医師による丁寧な診断と治療を提供しております。必要に応じてアレルゲン検査や舌下免疫療法の導入も可能です。
主な参考文献・ガイドライン
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Okubo K, et al. Japanese Guidelines for Allergic Rhinitis 2020. Allergol Int. 2020;69(3):331–345.
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Fujimura T, et al. Sublingual immunotherapy for Japanese cedar pollinosis. Allergol Int. 2016;65(1):8–13.
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Katelaris CH, et al. Impact of allergic rhinitis on school performance. J Paediatr Child Health. 2017;53(7):622–628.
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日本アレルギー学会「アレルギー性鼻炎診療ガイドライン2020」
