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ぜんそくの治療






 
 
ASTHMA CONTROL GINA 2025

気管支喘息と上手に付き合う
〜発作ゼロを目指すコントロールの全戦略〜

GINA 2025ガイドラインに基づく吸入ステロイドの正しい使い方、AIR/MART療法、重症喘息に対する生物学的製剤(テゼスパイア等)、発作時アクションプランまでを徹底解説します。

気管支喘息
吸入ステロイド
GINA 2025
生物学的製剤

「夜中に咳で目が覚めてつらい」「子どもが運動するとゼーゼーいう」「風邪のたびに発作で救急外来」――当院(旧・浜クリニック)にも、喘息でお悩みの方が連日いらっしゃいます。

結論からお伝えします。気管支喘息は「気道の慢性炎症」が本体であり、発作時だけ薬を使うのではなく、症状がない日も吸入ステロイドで気道炎症を抑え続けることが治療の柱です。これにより、ほとんどの患者さんは「症状ゼロ・発作ゼロ」の生活が可能です。

本記事では、GINA 2025ガイドラインに沿った最新の治療戦略(AIR/MART療法、ステップ別治療、重症喘息に対する5種類の生物学的製剤)、発作時のアクションプラン、生活環境整備までを総合的に解説します。

1. 気管支喘息とは(気道の慢性炎症)

気管支喘息は、気道(空気の通り道)に慢性的な炎症が起きている病気です。炎症によって気道が狭くなりやすく、外からの刺激(風邪・運動・アレルゲン・冷気・ストレスなど)に過剰反応します。発作時だけでなく、症状のない日でも気道では炎症が続いており、これを放置すると「気道リモデリング」と呼ばれる不可逆的な変化(壁が厚くなる、気道がもとに戻りにくくなる)が進行します。日本では成人の約10%、小児の約10〜14%が喘息と言われ、決して稀な病気ではありません。

💡 「発作のときだけ吸入」では治療にならない

喘息治療の最大の誤解は「発作が出たときだけ薬を使う」というもの。実際には、症状がなくても気道では炎症が続いており、毎日の吸入ステロイドで炎症を抑え続けることが治療の本体です。これにより、発作・救急受診・入院・気道リモデリングをまとめて防げます。

2. 症状とコントロール状態の評価

喘息の代表的な症状は、咳・喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼー)・息苦しさ・胸の圧迫感。特に夜間〜早朝に悪化するのが特徴です。「風邪のあとに咳だけが長引く」「運動すると咳き込む」「冷たい空気で咳が出る」のもサイン。

項目(過去4週間) 良好(コントロール良好) 不十分
日中の症状 週2回以下 週3回以上
夜間覚醒 なし あり
発作止め(SABA)使用 週2回以下 週3回以上
活動の制限 なし あり

4項目すべて良好なら「コントロール良好」、1〜2項目が不十分なら「部分コントロール」、3項目以上が不十分なら「コントロール不良」と判定し、治療強度を見直します。ピークフロー値(PEF)を朝晩測ることで、症状の出ない時期も気道の状態を「見える化」できます。

3. 発作のトリガー(風邪・運動・アレルゲン)

🦠 ウイルス感染

最大トリガー。発作の60〜80%はライノ・RSウイルスがきっかけ。

🌿 アレルゲン

ダニ・ハウスダスト・ペット・花粉・カビ。アトピー型喘息の主因。

🏃 運動・冷気

EIB(運動誘発性喘息)。冬の朝の運動は要注意。

🚭 タバコ・大気汚染

受動喫煙でも悪化。PM2.5・黄砂シーズンの注意。

💊 薬剤

アスピリン喘息(NSAIDsで発作)、β遮断薬。

😰 ストレス・睡眠不足

自律神経・免疫変動。月経前増悪も。

4. 治療の柱:吸入ステロイド(ICS)

喘息治療の絶対的中心は吸入ステロイド(ICS:Inhaled Corticosteroid)。気道炎症を直接抑え、発作を予防します。ICSは「気道に直接届く」ため、内服ステロイドのような全身副作用(骨粗鬆症・血糖上昇・白内障)はほぼなく、適切に使えば子どもでも長期使用が可能です。

📊 「ICS自己中断」は最も危険な選択

  • 「症状がなくなった」「副作用が怖い」「面倒くさい」でやめる方が多い
  • しかし気道炎症は症状がない日も進行している
  • 中断後しばらくして発作・救急受診・入院になるケースが非常に多い
  • 減量は必ず医師と相談。3か月以上良好なら緩やかに減量を検討

💊 主な吸入薬の種類(一例)

  • ICS単剤:パルミコート、フルタイド、アズマネックス、オルベスコ など
  • ICS/LABA配合:シムビコート、アドエア、レルベア、フルティフォーム など
  • ICS/LABA/LAMA配合(トリプル):テリルジー、ビレーズトリ、エナジア など
  • 発作止め(SABA):メプチンエアー、サルタノール

5. GINA 2025 ステップ別治療とAIR/MART療法

最新のGINA 2025(Global Initiative for Asthma)では、12歳以上のすべての喘息患者でICS-ホルモテロール配合剤(シムビコート、ブデホル等)を中心とした治療が推奨されています。「発作止めだけ(SABA単独)」の治療は否定され、必要時にもICS-ホルモテロールを使うAIR療法(Anti-Inflammatory Reliever)、定期+頓用で同じ吸入を使うMART療法(Maintenance And Reliever Therapy)が標準です。

📊 GINA 2025 ステップ治療(成人・12歳以上)

  • ステップ1〜2:症状時に低用量ICS-ホルモテロール(AIR)
  • ステップ3:低用量ICS-ホルモテロール定期+頓用(MART)
  • ステップ4:中用量ICS-ホルモテロール(MART)
  • ステップ5:高用量ICS-LABA+LAMA/生物学的製剤の追加検討

6. 💉 重症喘息と生物学的製剤5種

高用量ICSや経口ステロイドを使っても発作が抑えきれない重症喘息には、生物学的製剤(抗体製剤)が革命をもたらしました。日本では現在5剤が使用可能で、それぞれ標的が異なります。

薬剤名 標的 適応の目安
ゾレア(オマリズマブ) 抗IgE アレルギー型でIgE高値
ヌーカラ(メポリズマブ) 抗IL-5 好酸球性喘息
ファセンラ(ベンラリズマブ) 抗IL-5受容体α 好酸球性喘息
デュピクセント(デュピルマブ) 抗IL-4/IL-13 2型炎症・アトピー合併
テゼスパイア(テゼペルマブ) 抗TSLP(最上流) 表現型を問わない/非好酸球性にも

📊 テゼスパイア(テゼペルマブ)の特徴

気道上皮細胞から放出されるTSLP(炎症カスケードの最上流に位置するアラーミン)を抑えるため、2型炎症だけでなく非2型炎症の重症喘息にも効くのが特徴。臨床試験では年間増悪率を約56%減少させたと報告されています(NEJM, NAVIGATOR試験)。日本では2022年承認、4週間に1回 210mg皮下注。

7. ⚠ 発作時のアクションプラン

発作時の対応は事前に「アクションプラン」として決めておくと、慌てずに対処できます。当院でも患者さんごとに作成してお渡ししています。

⚠ 発作時の基本ステップ

  • 1. 発作止め(SABA)を吸入。20分間隔で3回まで使用可
  • 2. 改善があれば普段のICS吸入を継続。早めに受診
  • 3. 改善が乏しければ救急受診(救急車要請を躊躇しない)
  • 4. SpO₂ 94%以下、会話が困難、口唇チアノーゼは即119番
  • 5. 横にならず、楽な姿勢(前かがみ)で呼吸を整える

⚠ 「SABA頼り」になっていませんか
発作止め(SABA)を月1本以上使っている方は、コントロール不良のサインです。SABAの過剰使用は死亡リスクを高めることが知られており(SABINA研究)、GINA 2025もSABA単独治療を強く推奨していません。当院で治療内容を見直しましょう。

8. 環境整備・禁煙・予防接種

🌱 喘息と上手に付き合うための生活術

  • 禁煙・受動喫煙回避(最重要)
  • ダニ対策:寝具の高温洗濯、防ダニカバー、こまめな掃除機がけ
  • ペット飼育の見直し(アレルゲン陽性なら)
  • 毎年のインフル・コロナワクチン接種と高齢者は肺炎球菌ワクチン
  • 寒い朝の運動は避け、ウォーミングアップを十分に
  • ピークフロー値喘息日誌で「見える化」
  • ストレスマネジメントと十分な睡眠

9. 救急要請のレッドフラグ

📊 ためらわず救急車(119番)を

  • 会話が単語単位(息継ぎが間に合わない)
  • SpO₂ 92%以下
  • 意識がもうろうとしている
  • 口唇・指先がチアノーゼ(紫色)
  • SABAを吸っても改善しない/効果が30分続かない
  • 姿勢を変えても呼吸が楽にならない


🔁 3軸クロスポイント:喘息を糖尿病・認知症・抗加齢の視点で

喘息は呼吸器の病気ではあるものの、糖尿病・認知症・抗加齢医学の観点からも非常に重要な意味を持ちます。

🩸 軸1: 糖尿病・生活習慣病との関連

重症発作で経口ステロイド(プレドニン)を繰り返し使うと、血糖上昇・体重増加・骨粗鬆症などのリスクが高まります。糖尿病をお持ちの方で経口ステロイド頻用が必要なら、生物学的製剤への切り替えで全身ステロイドを減らせる可能性があります。「経口ステロイドを毎月使う喘息」は治療強度を見直すサインです。

🧠 軸2: 認知症・神経系との関連

高齢者の喘息は呼吸困難→低酸素→認知機能低下という負の連鎖を起こしやすい。また夜間覚醒が続くと睡眠の質が落ち、認知症リスクや日中の眠気・転倒リスクが上がります。「夜中に咳で目が覚める」状態を放置しないことが、脳の健康にも直結します。

🌱 軸3: 抗加齢医学・健康寿命

気道の慢性炎症は全身の慢性炎症(インフラメイジング)と連動し、老化を加速させます。喘息のコントロール改善は、運動耐容能・筋力・QOLを大きく向上させ、健康寿命を延ばす投資です。「息切れで歩けない」が「平気で坂道を歩ける」に変わると、生活全体が好転します。

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GINA 2025に基づく治療戦略

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11. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 吸入ステロイドを長く使うと副作用が心配です

A. 吸入は気道に直接届くため、全身に回る量はごくわずかです。長期使用でも内服ステロイドのような骨粗鬆症・血糖上昇・白内障はほぼ起こりません。注意すべきは口腔カンジダ症と嗄声で、吸入後にうがいすることで予防できます。「中断するリスク」のほうがはるかに大きい点を強調します。

Q2. 子どもの喘息は大人になれば治りますか?

A. 思春期までに約半数で症状が軽快します。ただし「治った」のではなく「眠っている」状態のことも多く、成人後に再燃する例もあります。気道リモデリングを防ぐためにも、小児期からの適切な吸入治療が重要です。

Q3. 風邪を引いたとき、吸入はどう調整すれば?

A. 絶対に中断せず、むしろ強化が原則です。AIR/MART療法ならICS-ホルモテロールを症状に応じて頓用追加。発作の前兆を感じたら早めに受診を。当院では風邪受診時に喘息の評価も同時に行います。

Q4. 生物学的製剤はいくらくらいかかりますか?

A. 3割負担で月3〜5万円程度が目安ですが、高額療養費制度指定難病制度(重症喘息は対象外ですが付随疾患により対象例も)、医療費控除を組み合わせると実質負担は下げられます。導入の際は、必要に応じて連携医療機関にご紹介します。

Q5. ピークフローはどう使えばいいですか?

A. 朝・夕の2回、3回測定して最大値を記録。自己最良値の80%以下で要注意、60%以下で急いで受診のサインです。日記アプリやノートで推移を「見える化」すると、発作の予兆を早期にキャッチできます。

執筆|医療法人社団 正友会 理事長 五藤 良将

五良ファミリークリニック センター南/竹内内科小児科医院/五良会クリニック白金高輪


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